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魔王様はアイドル!?
53話 元魔王のワシ、スキルブック地獄大革命を使用するも汚名挽回でアンダーグラウンドへ直行する話
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シャルの執拗な攻めの前に、ササブリの表情が凍りついていた。
聖女でありながらも、気に入ったモノに対しては慎みなんかありゃしない。
欲しい物は、いかなる手段を用いても手元に置こうとする悪癖。
その辺り、リンよりも盗賊としての高い資質を持っている。
それは当人も自覚はしているのだが……スイッチが入ると周りが見えなくなる。
シャルの行動は、彼女が飽きるまで続けられる。
ササブリよ、そこのところは諦め給え。
依然、大騒ぎする魔王。
その傍に、気不味そうな面持ちでリンがやってきた。
ササブリと目が合うと、リンは伏し目がちになってしまった。
それでも、彼女は俺が言ったことをちゃんと覚えていてくれた。
「石を投げつけたり、馬鹿にしたりして……ゴメン。アタイもやり過ぎたよ、アンタに嫌な思いさせちまったよ」
そう言いながら頭を下げたのだ。
「ふん。そのような些細なこと、もう忘れたわ。我は自分がやった事を悪いとは認めぬ。魔王たる者、常に王としての責任が問われるからだ……じゃが、己にとっては違うのであろう? ならば、我もスマヌと侘びよう」
「ササブリ……色々とあったけど、これからよろしくね」
「だぁああああ! カン違いするでないぞ。我が人間なんぞと和気藹々するわけがなかろう。というか誰がササブリじゃ!! 」
「でも、アンタさ。マイトの使い魔なんでしょ? なら、アタイたちと一緒に行動することになるんじゃない?」
「使い……? 我がマイトの小間使いだと申すのか……。フフッ……マイト、この薄板は叩きのめしてよいか?」
良いわけあるか……同じことの繰り返しは勘弁な。
「えっ? なんか、聞き捨てならない言葉が聞こえたような気がしたけど? アンタこそ乳の大きさばかりこだわっているけど……ひょっとして、それしか自慢できるものがないわけ? あら、ヤダ~魔王っての存外、不憫よね」
待て待て待て、お前たちはスゴロク大会でもやっているんかい!?
せっかく、和解したのに口を開けば、もう言い争っていやがる。
ったく……これから先が思いやられるわ。
「ほんに、困った子たちだね。ほれ、飴ちゃんあげるから喧嘩はおやめ」
じゃじゃ馬どころか、荒れ馬どもの手綱を掴めず困り果てていると心強い助っ人が現れた。
ワカモトさんだ。
そう言えば、彼女はデュアル・ゴースティングで心のリーダーと呼ばれていた。
ワカモトさんがいれば、どんなにギスギスした状況のパーティーでも問題が解消され、絆を取り戻す。
大袈裟などではなく、これは俺たち自身で実証されていることだ。
彼女は人の心に沿うが上手く。傷ついた心を癒す、一流のセラピストだ。
特に、女子勢からは信頼が厚い。やはり、女同士でしか相談できないことがあるというのは大きい。
グゼンとはアレだが、基本は誰とでも上手く接することできる。
このパーティーだからこそ、彼女の力が必要となる場面は多くなりそうだ。
贅沢は言えないが、出来ればアイツらの仲を上手く取り持って欲しい。
パーティーメンバーとのコミュニケーションが今後の課題となるだろう。
そういった点を踏まえて、ササブリと他のメンバーを関わらせていかなければならない。
もっとも……ここから先、全員ともに行動するのか決まってはいないが……。
「もう、いいかい!? デスブリンガーと人間ども。話があるというから律儀に待っててやれば、ワシのことをそっちのけで、ワイワイ愉しくやりおってっぇぇえええ!!」
離れた場所から、焼肉の魔王が頭を抱えて喚き出した。
存在感のなさに、すっかり忘れていたがアレはもう駄目だ。
脳内の思考回路が完全にキャパオーバーを迎えている。
どんだけ、不満を溜め込んでいたのか知らないけど、これからは普通の焼肉大好き爺さんとして養生してくれ。
「じゃあ、俺たち帰るから……爺さんも達者でな」
「帰る? どこへだ? 貴様に帰る場所はない」
「主! そこから離れろ!!」
ササブリの声がしたかと思うと、急に上空が薄暗くなった。顔を上げた途端、息が詰まりかけた。
すぐそこに、巨大な建築物のようなものが降下して来ていた。
それが何か、判断する間もなく俺たちの頭上に蓋をしている。
「なぁ――にしてくれとんじゃ!? ジジイ!」
巨大化したササブリの両腕が、押し迫ってくる悪夢をキャッチした。
「ダークネスブリンガー!!」同時に漆黒の破壊光線を放出し、その一塊を塵一つ残さず、すべて消去する。
「おい! ジジイ。我は後にしろと言ったよなぁ~。どこぞの魔王か知らんが、我の主とそのツレに手を出すとは、ふざけた奴じゃのう……ミンチにされる覚悟は出来ておるのか!?」
「愚問よのう、デスブリンガー。貴様こそ、ワシの地獄大革命で葬り去ってくれるわい!」
聖女でありながらも、気に入ったモノに対しては慎みなんかありゃしない。
欲しい物は、いかなる手段を用いても手元に置こうとする悪癖。
その辺り、リンよりも盗賊としての高い資質を持っている。
それは当人も自覚はしているのだが……スイッチが入ると周りが見えなくなる。
シャルの行動は、彼女が飽きるまで続けられる。
ササブリよ、そこのところは諦め給え。
依然、大騒ぎする魔王。
その傍に、気不味そうな面持ちでリンがやってきた。
ササブリと目が合うと、リンは伏し目がちになってしまった。
それでも、彼女は俺が言ったことをちゃんと覚えていてくれた。
「石を投げつけたり、馬鹿にしたりして……ゴメン。アタイもやり過ぎたよ、アンタに嫌な思いさせちまったよ」
そう言いながら頭を下げたのだ。
「ふん。そのような些細なこと、もう忘れたわ。我は自分がやった事を悪いとは認めぬ。魔王たる者、常に王としての責任が問われるからだ……じゃが、己にとっては違うのであろう? ならば、我もスマヌと侘びよう」
「ササブリ……色々とあったけど、これからよろしくね」
「だぁああああ! カン違いするでないぞ。我が人間なんぞと和気藹々するわけがなかろう。というか誰がササブリじゃ!! 」
「でも、アンタさ。マイトの使い魔なんでしょ? なら、アタイたちと一緒に行動することになるんじゃない?」
「使い……? 我がマイトの小間使いだと申すのか……。フフッ……マイト、この薄板は叩きのめしてよいか?」
良いわけあるか……同じことの繰り返しは勘弁な。
「えっ? なんか、聞き捨てならない言葉が聞こえたような気がしたけど? アンタこそ乳の大きさばかりこだわっているけど……ひょっとして、それしか自慢できるものがないわけ? あら、ヤダ~魔王っての存外、不憫よね」
待て待て待て、お前たちはスゴロク大会でもやっているんかい!?
せっかく、和解したのに口を開けば、もう言い争っていやがる。
ったく……これから先が思いやられるわ。
「ほんに、困った子たちだね。ほれ、飴ちゃんあげるから喧嘩はおやめ」
じゃじゃ馬どころか、荒れ馬どもの手綱を掴めず困り果てていると心強い助っ人が現れた。
ワカモトさんだ。
そう言えば、彼女はデュアル・ゴースティングで心のリーダーと呼ばれていた。
ワカモトさんがいれば、どんなにギスギスした状況のパーティーでも問題が解消され、絆を取り戻す。
大袈裟などではなく、これは俺たち自身で実証されていることだ。
彼女は人の心に沿うが上手く。傷ついた心を癒す、一流のセラピストだ。
特に、女子勢からは信頼が厚い。やはり、女同士でしか相談できないことがあるというのは大きい。
グゼンとはアレだが、基本は誰とでも上手く接することできる。
このパーティーだからこそ、彼女の力が必要となる場面は多くなりそうだ。
贅沢は言えないが、出来ればアイツらの仲を上手く取り持って欲しい。
パーティーメンバーとのコミュニケーションが今後の課題となるだろう。
そういった点を踏まえて、ササブリと他のメンバーを関わらせていかなければならない。
もっとも……ここから先、全員ともに行動するのか決まってはいないが……。
「もう、いいかい!? デスブリンガーと人間ども。話があるというから律儀に待っててやれば、ワシのことをそっちのけで、ワイワイ愉しくやりおってっぇぇえええ!!」
離れた場所から、焼肉の魔王が頭を抱えて喚き出した。
存在感のなさに、すっかり忘れていたがアレはもう駄目だ。
脳内の思考回路が完全にキャパオーバーを迎えている。
どんだけ、不満を溜め込んでいたのか知らないけど、これからは普通の焼肉大好き爺さんとして養生してくれ。
「じゃあ、俺たち帰るから……爺さんも達者でな」
「帰る? どこへだ? 貴様に帰る場所はない」
「主! そこから離れろ!!」
ササブリの声がしたかと思うと、急に上空が薄暗くなった。顔を上げた途端、息が詰まりかけた。
すぐそこに、巨大な建築物のようなものが降下して来ていた。
それが何か、判断する間もなく俺たちの頭上に蓋をしている。
「なぁ――にしてくれとんじゃ!? ジジイ!」
巨大化したササブリの両腕が、押し迫ってくる悪夢をキャッチした。
「ダークネスブリンガー!!」同時に漆黒の破壊光線を放出し、その一塊を塵一つ残さず、すべて消去する。
「おい! ジジイ。我は後にしろと言ったよなぁ~。どこぞの魔王か知らんが、我の主とそのツレに手を出すとは、ふざけた奴じゃのう……ミンチにされる覚悟は出来ておるのか!?」
「愚問よのう、デスブリンガー。貴様こそ、ワシの地獄大革命で葬り去ってくれるわい!」
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