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魔王様はアイドル!?
52話 魔王 VS 魔王
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俺の言葉にホロモンの眉がピクリと動いた。
むろん、ブラフなんかじゃない。
弱った爺さん魔王の力で、あのササブリを封じることなんで出来るはずがない。
俺は確信していた。そして、何故? 彼女が抜け出そうとしないのか疑問に思っていた。
「ほら! どうした? 最凶、最悪の魔王なんだろう!? デスブリンガー様の力は、そんな程度のもんか? 大体、俺に謝たりたければ直に言え、つったのはどちらさんでしたっけ? 嗚呼、そうです、そうですよねぇ~自称大魔王(笑)たるブリ様だよね。まさか? 俺に構ってもらえ無くてイジけて引きこもっている何て、ないよな~」
「お、おい! 貴様、止めろ!! 魔王というのは、オメェらが考えている以上にナイーブなんだぞ!!」
何故か、爺さんの方も精神的なダメージを受けていた。
心中、察するにメイビスさんが原因として挙げられる。
だが、今はこの魔王を相手にしてはいられない。
ここまで小馬鹿にされたんだ! 黙ったまま、何もしないなんてアイツらしくない。
「そんなに構ってほしいなら、魔王じゃくてアイドルでもやったらどうだ!? 有名になれば四六時中、皆がお前をチヤホヤと構ってくれるぞ。 ササブリ、俺は逃げなかったぞ……お前が俺の背中を押してくれたから! 今度は俺の番だ。俺がお前の背中を押してやる! だからっ、もう逃げんなよ!!」
ホロモンの服の袖口から、スポンと小瓶が飛び出した。
禍々しい、魔力を帯び空中浮遊しながらホロモンのそばを離れてゆく。
ガタガタと小刻みに振動する小瓶。
内側から、でたらめな力が加えられているのが分かる。
その様に、俺の口元が自然と緩みだしてきた。
ササブリは抜け出そうとしている暗くて狭い、孤高の世界から。
さぞかし、俺に文句を言いたいのだろう。叱り飛ばしたいのだろう。鬱憤をはらしたいのだろう。
それでいい……アイツが出てきてくれれば、それだけでいい。
俺の想いに応じ、紫炎に包まれたスキルブックが顕現した。本が吐き出した炎が小瓶に直撃した。
瞬間、一気に燃え上がり磁気でできた瓶が粉々に弾け飛んだ。
「こぉんの! たわけがぁぁああ!! 舐め腐りおって……我を誰だと思っておる。死を統べる者にして、超 絶 大 魔 王、デスブリンガァアア――――!!! 様じゃぞ!」
現れた魔王は瓶の時と同様、莫大な魔力を放出しながら宙に浮遊した。
全身を紫色に染め上げる負のオーラが宮殿全体を振動させていた。
もはや、気合が入っているとか言うレベルではない。着実に何かを滅ぼそうしている。
復活そうそう、奴の中二病は悪化していた……怒り狂って出てくるとは思っていたけど、奴の自己価値への見積もりは生半可なもんじゃない。
他者に、どうこういわれようがビクともしない。
ある意味、鋼の意思を持っている。
そんな、剛の者をよく引きずり出せたなと我ながら感心する。
とにかく、これで形勢は逆転した。
今度は、俺たちがホロモンを追い詰める番だ!
「久しぶりだな……デスブリンガー。ワシのことを覚えておるか……」
「んあ? 誰だか知らんが、爺はすっこんでおれ! 我は、コイツらと話がある」
「なん……だと」
出だしから、ホロモンの面子が潰れた。
ササブリから、まるでペットを扱うように手でシッシッと追い払われていた。
彼の口元がカチカチと震えていた。
仮にも同じ魔王、その同僚にただの爺さんとしてしか見られなかったんだ。
奴の心の傷はかなり深い。
床に降り立ったササブリが、こちらに向かって歩いてくる。
「マイトちゃん、あの娘も魔王かい? なんて日だい。今日は厄日だよ~」
「大丈夫だ、ワカモトさん。コイツは俺たちの味方で――――」
説明している最中、背後からゾクッとする殺気を感じた。
恐る恐る振り向くと、ササブリの拳が目の前にあった。
殴られる! 正直そう思った……でも、とうに腹は括っている。直立したまま、俺は歯を食いしばっていた。
「……本当に逃げなくなったのだな」
「えっ? ササブリ……お前」
「何でもないわ。さっさと、この者たちに我のことを話すがよい。誤解を受けたままでは敵わぬわ」
ササブリは止む無しと、片目だけ開けながら両腕を組んだ。
彼女が頭を振ると長く伸びたツインテールがふわりと持ち上がり肩口でなびく。
「まぁ、何て美しい金の髪なんでしょう!! まるで、お人形さんよう……ああっ! この肌触りときめ細かさ絹糸そのものですわ!! 枝毛もなく、しっかりとお手入れされてますわぁ~」
「なんじゃあ――!? 己は、なにゆえ我の高貴なる髪を、無断で触れておる。やめろぉぉ!! 頬ずりするなぁあぁ!! マイト! この変態を引き離せぇええええい……ひゃあああっ! 匂いを嗅ぐな」
豹変したシャルターナに、魔王もガチでビビッていた。
どうやら、ササブリの髪を気に入ってしまったらしい。こうなったシャルを止める術はない。
俺は両腕を十字に交差させ頭上にかかげた。
むろん、ブラフなんかじゃない。
弱った爺さん魔王の力で、あのササブリを封じることなんで出来るはずがない。
俺は確信していた。そして、何故? 彼女が抜け出そうとしないのか疑問に思っていた。
「ほら! どうした? 最凶、最悪の魔王なんだろう!? デスブリンガー様の力は、そんな程度のもんか? 大体、俺に謝たりたければ直に言え、つったのはどちらさんでしたっけ? 嗚呼、そうです、そうですよねぇ~自称大魔王(笑)たるブリ様だよね。まさか? 俺に構ってもらえ無くてイジけて引きこもっている何て、ないよな~」
「お、おい! 貴様、止めろ!! 魔王というのは、オメェらが考えている以上にナイーブなんだぞ!!」
何故か、爺さんの方も精神的なダメージを受けていた。
心中、察するにメイビスさんが原因として挙げられる。
だが、今はこの魔王を相手にしてはいられない。
ここまで小馬鹿にされたんだ! 黙ったまま、何もしないなんてアイツらしくない。
「そんなに構ってほしいなら、魔王じゃくてアイドルでもやったらどうだ!? 有名になれば四六時中、皆がお前をチヤホヤと構ってくれるぞ。 ササブリ、俺は逃げなかったぞ……お前が俺の背中を押してくれたから! 今度は俺の番だ。俺がお前の背中を押してやる! だからっ、もう逃げんなよ!!」
ホロモンの服の袖口から、スポンと小瓶が飛び出した。
禍々しい、魔力を帯び空中浮遊しながらホロモンのそばを離れてゆく。
ガタガタと小刻みに振動する小瓶。
内側から、でたらめな力が加えられているのが分かる。
その様に、俺の口元が自然と緩みだしてきた。
ササブリは抜け出そうとしている暗くて狭い、孤高の世界から。
さぞかし、俺に文句を言いたいのだろう。叱り飛ばしたいのだろう。鬱憤をはらしたいのだろう。
それでいい……アイツが出てきてくれれば、それだけでいい。
俺の想いに応じ、紫炎に包まれたスキルブックが顕現した。本が吐き出した炎が小瓶に直撃した。
瞬間、一気に燃え上がり磁気でできた瓶が粉々に弾け飛んだ。
「こぉんの! たわけがぁぁああ!! 舐め腐りおって……我を誰だと思っておる。死を統べる者にして、超 絶 大 魔 王、デスブリンガァアア――――!!! 様じゃぞ!」
現れた魔王は瓶の時と同様、莫大な魔力を放出しながら宙に浮遊した。
全身を紫色に染め上げる負のオーラが宮殿全体を振動させていた。
もはや、気合が入っているとか言うレベルではない。着実に何かを滅ぼそうしている。
復活そうそう、奴の中二病は悪化していた……怒り狂って出てくるとは思っていたけど、奴の自己価値への見積もりは生半可なもんじゃない。
他者に、どうこういわれようがビクともしない。
ある意味、鋼の意思を持っている。
そんな、剛の者をよく引きずり出せたなと我ながら感心する。
とにかく、これで形勢は逆転した。
今度は、俺たちがホロモンを追い詰める番だ!
「久しぶりだな……デスブリンガー。ワシのことを覚えておるか……」
「んあ? 誰だか知らんが、爺はすっこんでおれ! 我は、コイツらと話がある」
「なん……だと」
出だしから、ホロモンの面子が潰れた。
ササブリから、まるでペットを扱うように手でシッシッと追い払われていた。
彼の口元がカチカチと震えていた。
仮にも同じ魔王、その同僚にただの爺さんとしてしか見られなかったんだ。
奴の心の傷はかなり深い。
床に降り立ったササブリが、こちらに向かって歩いてくる。
「マイトちゃん、あの娘も魔王かい? なんて日だい。今日は厄日だよ~」
「大丈夫だ、ワカモトさん。コイツは俺たちの味方で――――」
説明している最中、背後からゾクッとする殺気を感じた。
恐る恐る振り向くと、ササブリの拳が目の前にあった。
殴られる! 正直そう思った……でも、とうに腹は括っている。直立したまま、俺は歯を食いしばっていた。
「……本当に逃げなくなったのだな」
「えっ? ササブリ……お前」
「何でもないわ。さっさと、この者たちに我のことを話すがよい。誤解を受けたままでは敵わぬわ」
ササブリは止む無しと、片目だけ開けながら両腕を組んだ。
彼女が頭を振ると長く伸びたツインテールがふわりと持ち上がり肩口でなびく。
「まぁ、何て美しい金の髪なんでしょう!! まるで、お人形さんよう……ああっ! この肌触りときめ細かさ絹糸そのものですわ!! 枝毛もなく、しっかりとお手入れされてますわぁ~」
「なんじゃあ――!? 己は、なにゆえ我の高貴なる髪を、無断で触れておる。やめろぉぉ!! 頬ずりするなぁあぁ!! マイト! この変態を引き離せぇええええい……ひゃあああっ! 匂いを嗅ぐな」
豹変したシャルターナに、魔王もガチでビビッていた。
どうやら、ササブリの髪を気に入ってしまったらしい。こうなったシャルを止める術はない。
俺は両腕を十字に交差させ頭上にかかげた。
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