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魔王様はアイドル!?
50話 光陰矢の如し
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余計なお世話なんだよ! お前に俺の何が分かる? なぁ? 答えられるのなら答えてみろよ!
耐えきれず、自身の醜悪な部分が出てきてしまった。
当然だ、俺は聖人どころか悪人だ。弱くて脆い、ただの人間なんだ。
ササブリは悪くない……そんなことは百も承知している。
俺を励まそうと、心の中にまで現れてくれている。
けれど、逆にそれが辛い……。自分の惨めさが顕著になる苦痛に負けて、つい彼女にキツくあたってしまう。
「ブワッカ~なのか、主は? 我が知るわけないだろうがぁ!! だいたい、我のことが言えるのか? 主だって我のことは、よく知らんじゃろうに」
「それは……ごめん。俺、お前のこと、分かろうともしなかった」
心の奥でチクリとトゲが刺さった。謝罪していても、これが本心なのかも分からなくなっている。
でも、この痛みだけは本物だ。謝罪したいという想いも確かにあった。
急に、頬をつねられたような感触に、驚いてまばたきすると間近に彼女の顔があった。
その素手で俺の頬を軽く引っ張っていた。
「謝るな。我は、そのような謝罪は求めておらぬ、どうしても、その想いを伝えたいのならば、直に話せ」
「ササブリ……お前は、それが俺にできると信じているのか?」
「我だけではないぞ。あの平板を含め、主の珍妙な仲間たちも信じて力を貸してくれたであろう! 思い出せ、マイト。お前にはあるじゃろう、唯一無二の最強最高の力が!」
「最強最高の力……」
嗚呼、そうだ! どんなに辛い時でも、脱糞しそうなほど苦しい時でも、貧し過ぎて飢え死にしそうだった時でさえも、俺にはコレがあった。コレがあったからこそ、今日という日まで生きてこられたんだ!!
ムフフな本、グラビアこそが俺の想像力を掻き立て、脳を活性化させる。
無限大の野望、尽きる事のない性欲、それこそがヒューマンパワー!!
「いや……主、なんか道を外しておらんかぇ……?」
「見えたぞ! このほとばしるパトスこそが自身の闇を切り開く、青春の鍵だ。さぁ! 行こう美女たちが待つパラダイスへ!! ふっへえっへえ~」
「トリップするのは良いが……ちゃんと戻ってくるのじゃぞ」
折り重なる影の打ち抜く、一筋の閃光。
生命の刃が、死の象徴たる邪を祓ってゆく。
飛び散る影の中から、再起した俺は宝剣片手にスキルブックをかかげた。
本から飛び出したのは、ペットボトル入りの水。
30ポイントのコイツにより、条件は見たされた。
『ポイント使用数が1000に到達しました。兄貴召喚の特典を発動します』
ついに、この禁じ手を使う時が来てしまったのか。
感慨に耽る、俺の正面に魔法陣が出現した。果たして、この異次元の扉から、どんな兄貴が出てくるのか?
いいいや! 問題はそこじゃない!
うっかり忘れるところだったが……わきで握った、おにぎりを食わされるんだぞ。
兄貴、おにぎり。おにぎり、兄貴。まさかぁ――!! グゼンか? グゼンが来るというかぁ――!?
「月の光に導かれ、やって来たるは魔の巣窟。貴様の悪行三昧、お天道様ぁーが見過ごしても、このレンズは見逃さない。魔王を滅するその光もと参上つかまる使者こそが! 神に変わったヨシユキよ!」
おっ……お前かよ。
期待外れもいいところじゃねぇーか。
魔法陣から飛び出してきた細身(ヒョロガリ)に不安と落胆が打ち寄せてきた。
つーか、絶対に握らせない。なんとしてでも魔王の本体と相打ちにさせて消し去ってやる。
「およ、やはりソナタか。早速、余を頼るとはやるではないか……して米はどこにある。
コイツ……早くも握るつもりだ。この非常時を無視して握る気満々だ。
「あー、あの中だ」俺は迷うことなく魔王の本体を指さした。
米を持参してこなかったのは不幸中の幸いだ。
奴も地縛霊のはしくれ、この影を祓いのけ道を作ることぐらいはできよう。
「こら、心の声がだだ漏れぞ。ソナタ、余を謀る気であろう?」
「そうだけど、何か? というか、魔王の本体を前にして、マジでおにぎりを握る気じゃないよな?」
「ぬぬぬっ、開き直りおって……まぁ、よい。余にできるのは道を開けるだけだ、あ奴を始末できるのは宝剣を扱えるソナタだけぞ」
「充分だ、いくぞぉぉおぉ!!」
「ふむ、これぞ」ヨシユキがペットボトルの水を、カメラで激写し始めた。
地面に寝そべりながら、身体を回転させる様に、本気で踏みつけてやろうかと思った。
何度も言うが、写真は一枚で済む。そうしないのは、ベストショットにこだわる奴の悪癖だ。
「これぞ、大海変化の儀なり」
撮影済みのペットボトルを勢いよく振るとヨシユキはキャップを外した。
そこから、大水が出てくる……そう勝手に思い込んでいる俺の尻に鮮烈な衝撃が走ってきた。
こともあろうことか、奴は人のケツにペットボトルをブチこんできた。
物理的に入るわけもないソレは、神の力により尻とドッキングしていた。
「アモーレぃぃぃ!!」
人を小馬鹿したヨシユキの掛け声とともに、圧縮された水流が一挙に解放された。
すでに、おわかりいただけただろうか?
消防ホースごとく放水開始するそれは、正真正銘の人間ペットボトルロケットだった。
俺のケツは加速した。
耐えきれず、自身の醜悪な部分が出てきてしまった。
当然だ、俺は聖人どころか悪人だ。弱くて脆い、ただの人間なんだ。
ササブリは悪くない……そんなことは百も承知している。
俺を励まそうと、心の中にまで現れてくれている。
けれど、逆にそれが辛い……。自分の惨めさが顕著になる苦痛に負けて、つい彼女にキツくあたってしまう。
「ブワッカ~なのか、主は? 我が知るわけないだろうがぁ!! だいたい、我のことが言えるのか? 主だって我のことは、よく知らんじゃろうに」
「それは……ごめん。俺、お前のこと、分かろうともしなかった」
心の奥でチクリとトゲが刺さった。謝罪していても、これが本心なのかも分からなくなっている。
でも、この痛みだけは本物だ。謝罪したいという想いも確かにあった。
急に、頬をつねられたような感触に、驚いてまばたきすると間近に彼女の顔があった。
その素手で俺の頬を軽く引っ張っていた。
「謝るな。我は、そのような謝罪は求めておらぬ、どうしても、その想いを伝えたいのならば、直に話せ」
「ササブリ……お前は、それが俺にできると信じているのか?」
「我だけではないぞ。あの平板を含め、主の珍妙な仲間たちも信じて力を貸してくれたであろう! 思い出せ、マイト。お前にはあるじゃろう、唯一無二の最強最高の力が!」
「最強最高の力……」
嗚呼、そうだ! どんなに辛い時でも、脱糞しそうなほど苦しい時でも、貧し過ぎて飢え死にしそうだった時でさえも、俺にはコレがあった。コレがあったからこそ、今日という日まで生きてこられたんだ!!
ムフフな本、グラビアこそが俺の想像力を掻き立て、脳を活性化させる。
無限大の野望、尽きる事のない性欲、それこそがヒューマンパワー!!
「いや……主、なんか道を外しておらんかぇ……?」
「見えたぞ! このほとばしるパトスこそが自身の闇を切り開く、青春の鍵だ。さぁ! 行こう美女たちが待つパラダイスへ!! ふっへえっへえ~」
「トリップするのは良いが……ちゃんと戻ってくるのじゃぞ」
折り重なる影の打ち抜く、一筋の閃光。
生命の刃が、死の象徴たる邪を祓ってゆく。
飛び散る影の中から、再起した俺は宝剣片手にスキルブックをかかげた。
本から飛び出したのは、ペットボトル入りの水。
30ポイントのコイツにより、条件は見たされた。
『ポイント使用数が1000に到達しました。兄貴召喚の特典を発動します』
ついに、この禁じ手を使う時が来てしまったのか。
感慨に耽る、俺の正面に魔法陣が出現した。果たして、この異次元の扉から、どんな兄貴が出てくるのか?
いいいや! 問題はそこじゃない!
うっかり忘れるところだったが……わきで握った、おにぎりを食わされるんだぞ。
兄貴、おにぎり。おにぎり、兄貴。まさかぁ――!! グゼンか? グゼンが来るというかぁ――!?
「月の光に導かれ、やって来たるは魔の巣窟。貴様の悪行三昧、お天道様ぁーが見過ごしても、このレンズは見逃さない。魔王を滅するその光もと参上つかまる使者こそが! 神に変わったヨシユキよ!」
おっ……お前かよ。
期待外れもいいところじゃねぇーか。
魔法陣から飛び出してきた細身(ヒョロガリ)に不安と落胆が打ち寄せてきた。
つーか、絶対に握らせない。なんとしてでも魔王の本体と相打ちにさせて消し去ってやる。
「およ、やはりソナタか。早速、余を頼るとはやるではないか……して米はどこにある。
コイツ……早くも握るつもりだ。この非常時を無視して握る気満々だ。
「あー、あの中だ」俺は迷うことなく魔王の本体を指さした。
米を持参してこなかったのは不幸中の幸いだ。
奴も地縛霊のはしくれ、この影を祓いのけ道を作ることぐらいはできよう。
「こら、心の声がだだ漏れぞ。ソナタ、余を謀る気であろう?」
「そうだけど、何か? というか、魔王の本体を前にして、マジでおにぎりを握る気じゃないよな?」
「ぬぬぬっ、開き直りおって……まぁ、よい。余にできるのは道を開けるだけだ、あ奴を始末できるのは宝剣を扱えるソナタだけぞ」
「充分だ、いくぞぉぉおぉ!!」
「ふむ、これぞ」ヨシユキがペットボトルの水を、カメラで激写し始めた。
地面に寝そべりながら、身体を回転させる様に、本気で踏みつけてやろうかと思った。
何度も言うが、写真は一枚で済む。そうしないのは、ベストショットにこだわる奴の悪癖だ。
「これぞ、大海変化の儀なり」
撮影済みのペットボトルを勢いよく振るとヨシユキはキャップを外した。
そこから、大水が出てくる……そう勝手に思い込んでいる俺の尻に鮮烈な衝撃が走ってきた。
こともあろうことか、奴は人のケツにペットボトルをブチこんできた。
物理的に入るわけもないソレは、神の力により尻とドッキングしていた。
「アモーレぃぃぃ!!」
人を小馬鹿したヨシユキの掛け声とともに、圧縮された水流が一挙に解放された。
すでに、おわかりいただけただろうか?
消防ホースごとく放水開始するそれは、正真正銘の人間ペットボトルロケットだった。
俺のケツは加速した。
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