問答無用!でランキングブレイカー!! ースキル、グラビアこそ最強最高ですー

心絵マシテ

文字の大きさ
上 下
45 / 122
ぼっちの魔王

45話 遺跡の管理人

しおりを挟む
「ホント……アンタ、よく悪知恵ばっか働くわね」

「師匠がカツオだからな」

 エレベーターが降下する最中、リンの俺を見る目が変わっていた。
 具体的に言うと、冷蔵庫にしまっていた納豆と三ヶ月ぶりの再会を果たした時のようなものだ。
 元々、発酵していたものがドス黒く死滅している様を彼女は疑似体験によって見ていた。

 そうは言っても、リンには前世の記憶がないらしい。
 記憶を失っているか、あるいは転生していないのか?
 コミュニティにいる連中の大多数は、転生者だからの彼女のような事例は珍しい。

「……っと、着いたようだな」

 ガタッ! キーボードを叩いて立ち上がったわけじゃない。
 エレベーターが停止し振動したのだ。

 扉が徐々に開かれる。そこで俺たちを出迎えてきたのは、巨大な祭祀さいし遺跡だった。
 てっきり、鍾乳洞だと思い込んでいた俺たちは度肝を抜かれた。
 確かな文明の形跡が、ここには残されていた。それだけで胸の奥に高鳴りを感じていた。

 一本路が続く、その先は階段となっていた。
 エン・ソフのほこらは、この上にある。
 ひび割れた階段を俺たちは一歩ずつ、ゆっくりと登っていった。
 地底だとは思えないほど、周りは明るかった。
 それもそのはず、そもそもここは本物の地底ではなく、ダンジョンの中だ。
 星団船という一つ生命が創り出す幻想的なセカイには、俺たちの常識なんてちっぽけなモノは通用しない。

 複雑怪奇な構造で、構築されたダンジョン全てを研究し知り尽くそうとしても、人が持つ時間では到底、足りない。
 それこそ膨大な年月、悠久の刻を生きる魔王と呼ばれる存在ぐらいしか成し遂げられないだろう。

「泉があるわね……凄い! 水が透き通っていて水面が輝いている」

 遺跡の天辺はカルデラのように窪地くぼちとなり、溜まった地下水により泉ができていた。
 神秘的な光景が放つ、神聖なる空気を浴びると思わず浄化されそうになる。
「あっぶねぇー」などと笑いながら、己の汚さに内心では傷ついてしまう。

「まさに、神のおわす場所ね……人が通った形跡はないようだけど」

 泉の傍に佇んでいたリンが、しゃがみ込み水面を眺めていた。
 水鏡に映る、その顔は酷く疲れ切っているようにも見えた。

「いや、まだ奥に道が続いているぞ」

 ここで、しょげていても始まらない。
 俺たちの目的は、魔王の本体とシャルの捜索だ。
 先にある道は、こことは相反して胸をザワつかせるような気配が漂っている。
 魔王の本体は、そこにある。直感のようなものが俺に、そう告げてくる。

『臭う。臭うぞ! そなた、悪しき者の手下ぞな』
 いきなり、雅やかな幻聴が襲ってきた。
 これから魔王の封印を解かなけばならないのに、しっかりしろ、俺!

『神たる余をシカトするとは、なんたる不届き者! この様な、愚行に走るのは相当な馬鹿か、あるいは図太い精神を持つアスペか、どちらかであろう』

 最初、悪の手下って言ったじゃねぇか……。
 幻聴は、勝手に盛り上がり、勝手にご立腹になっていた。
 まったく、神だの魔王だのとか言う、奴らはどんだけ自己中心的なんだ。
 セカイは、お前のために回っているわけじゃねぇーぞ。

 話を聞いて貰いたくば、まずその仰々ぎょうぎょうしい態度を改めよ!
 俺は心の中で暴言を吐いてやった。

『うっく、そこまで言わなくも良いではないか!? いけずぅ』

 しまった、神という設定だった。口には出さなくと、意地汚く心を読んで来やがる。
 いくら、イケボで悲観されても野郎に同情するつもりは、一切がっさいない。
 さっさと失せろ、今すぐ消えろ……でなけりゃ、上にいるハウスキーパーを連れてくるぞ。

『待たれよ、ソナタ! なにゆえ、余に冷たく当たる? 余が何かしたというのか?』

 別に何もしてはいないが……強いてあげるなら、お前は神様じゃねぇーよな?
 まったく手入れされていないロン毛は目にするだけで、むさ苦しい。
 しかも、一眼レフカメラを首から下げている神様がどこの世界にいるというのだ。
 泉のど真ん中で座り込んでいる、その姿はどう見ても入水自殺した霊にしかみえない。

『いや、霊界にも昇級試験というモノがあってだな……余は三万浪の末、神に昇格したのだよ』

 マジか……何、その救済システム。というか、何気に霊であったこと認めているぞ。
 しかも――――

「苦労人かよ……」せきを切ったように呟く俺を見て、ヤバい奴に接した時の距離感でリンが小首を傾げる。
 霊の声は、俺だけにしか聞こえていないようだ。

『だから、霊ではない神だぞ! 少しはうやまったらどうだ!』

 たとえばだ……道端で出会った、見ず知らずの大学生に俺は神だから尊敬しろって言われたら、お前はどおぉぉ思うんだぁ? 通報するだろっ? フツ――――に。

『ごもっとも……突然、声をかけて済まぬな。余はヨシユキという、この場に眠るエン・ソフ様に代わって、祭祀遺跡の管理を任されている者だ』

 自称神を名乗る男の本名は、わりと普通だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。

なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。 しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。 探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。 だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。 ――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。 Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。 Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。 それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。 失意の内に意識を失った一馬の脳裏に ――チュートリアルが完了しました。 と、いうシステムメッセージが流れる。 それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜

O.T.I
ファンタジー
レティシア=モーリスは転生者である。 しかし、前世の鉄道オタク(乗り鉄)の記憶を持っているのに、この世界には鉄道が無いと絶望していた。 …無いんだったら私が作る! そう決意する彼女は如何にして異世界に鉄道を普及させるのか、その半生を綴る。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

処理中です...