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ぼっちの魔王
43話 焼肉ホロモン
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「肉と野菜は飛び散ってしまったが、幸い、鉄板は無事だわい。ヨッコラショっと!」
鉄板の名を冠する銅鑼が玉座に置かれた。
床に敷いた際に音が鳴らないようにい慎重にゆっくりと準備を進めてゆく。
無駄に器用な爺さんだ。火力は口から炎を吐いて調節している。
「お爺ちゃん、ハウスキーパーの人に怒られたばかりだよね? まだ、続ける気なの?」
「モチのロンだわい! 嬢ちゃん、ワシの焼く情熱は、メイビスちゃんごときに止められるモンではないぞ、グハハハッッハア!!」
反省の色がない爺さんは、死亡フラグをバンバン立てまくっている。
まったく豪胆というか……思慮に欠けるというか……マイペースが過ぎる。
切り替えが早いのは、結構なことだが過去を見直さなくてもいいということではない。
焼肉馬鹿すぎて目も当てられない。
これにはリンも呆れて、黙ってしまった。
「せっかくだ。オメェらも食ってくか?」
ジュージューと鉄板が音を奏で肉や野菜を焼く。
立ち込める蒸気の向こうで、魔王ホロモンが上機嫌になって聞いてきた。
腹が減ってきたのは、確かだが…………得体の知れない肉を口にするのはいささか抵抗がある。
「ちなみに聞くが……その血色の悪く、酷い獣臭がする肉は何の肉だ?」
「これか? ゴブリン肉だわ!」
「ゴブッ! ……残念ながら、人間にゴブリンを食べるという習慣はない」
いささか程度では、済まされなかった。危うく、毒物を摂取させられるところだったわ……。
「そうか、こんなにウメェのにな~。何かワシだけ食ってて悪いな~」
そう思うのなら、止めたらどうなんだ。
アンタがゴブリン肉を焼く度に、悪臭で、こちらの鼻が曲がりそうになるんだよ!
種族の壁はぶ厚い。
表面上では事なきよう取り繕うが、内心では互いの価値観、倫理観が合わず苛立ってしまう。
もしも、あと少しだけその距離を縮められたのなら、魔王の見方も変わったかもしれない。
ササブリとも気持ちが通じあえた可能性だってある。
遠い分、手を伸ばせばどうにかできたはずだ。
なのに…………俺は……そうしなかった。それができなかった。
「童、何を悔いておる?」思いがけない一言に俺は面を上げた。
いつものように、独り呟いたぐらいでは、銅鑼の向こうにいる爺さんには俺の声が聞こえないはずだ。
「どうして? って面構えだな。ワシを誰だと思っておる? 魔王ホロモン様だぞ! 人間の考えていることなんぞ、ソイツの面ぁ、見れば分かるもんよ!」
「なら、さっきの質問に答えてくれ。後、俺の魔王を返してくれないか?」
「グハハアッ! 気づいていたか。オメェの魔王はこの中だぁ!!」
ホロモンが小瓶を取り出した。
すると、俺の手元にフォトグラファーが顕現し小瓶を照らし出した。
そこに、ササブリが閉じ込められていると伝えるように、淡く光を放つ。
「どういう事? マイト、ホントにあのチビ魔王が捕まっているの?」
「……奴の言ってことは本当だ。どうやって、ササブリを取り押えたのかは分からない。どうにかして、取り返さないと」
「お爺ちゃん、なんでこんな酷いことすんの? アタイたちを助けてくれたのは、お爺ちゃんなんだろ!?」
真白な顎鬚を弄りながら、ホロモンはリンを見詰めていた。
話なんか聞いていやしない。
ただ、この人間をどう処理するか、頭をひねらせている。
「つくづく愚かだな、オメェたち人間は。ちっと芝居してやりゃ、コロと騙される。魔王に虫けらの道理なんぞ、通じるわけがなかろう……そもそも、ワシの領地に他所の魔王を連れてきやがったのはオメェらだ!! 何されても文句言われる筋合いはねぇぞ!!」
「なら、わざわざ俺たちを生かす必要はないだろう? 俺を殺せば、魔王は消える」
「……オメェたちを生かしたのは取引きするためだ」
「取引きだと……信用置けない悪魔相手にできるわけがない」
「どうするか? はオメェの自由だ。ただ、応じないのであれば、デスブリンガーを取り戻すことはできなくなるがな」
形勢はこちらが圧倒的不利を被っていた。
無知は罪か……魔王たちには独自のルールが存在しているらしい。
よく、考えもせずササブリを連れ回したのは俺だ。彼女と分かり合おうとしなかったのも俺だ。
自業自得と言われても、ぐうの音もでない。
だが、これは取引きなんかじゃない。
人質を取った時点で脅迫以外の何物でもない。
いかに、正論を用いろうが、正しければ何をしても良いというわけじゃない! 間違いは間違いだ。
これは絶対に屈せない戦いだ。なぜならば、正論では誰も幸せにできないことを俺は知っているからだ。
鉄板の名を冠する銅鑼が玉座に置かれた。
床に敷いた際に音が鳴らないようにい慎重にゆっくりと準備を進めてゆく。
無駄に器用な爺さんだ。火力は口から炎を吐いて調節している。
「お爺ちゃん、ハウスキーパーの人に怒られたばかりだよね? まだ、続ける気なの?」
「モチのロンだわい! 嬢ちゃん、ワシの焼く情熱は、メイビスちゃんごときに止められるモンではないぞ、グハハハッッハア!!」
反省の色がない爺さんは、死亡フラグをバンバン立てまくっている。
まったく豪胆というか……思慮に欠けるというか……マイペースが過ぎる。
切り替えが早いのは、結構なことだが過去を見直さなくてもいいということではない。
焼肉馬鹿すぎて目も当てられない。
これにはリンも呆れて、黙ってしまった。
「せっかくだ。オメェらも食ってくか?」
ジュージューと鉄板が音を奏で肉や野菜を焼く。
立ち込める蒸気の向こうで、魔王ホロモンが上機嫌になって聞いてきた。
腹が減ってきたのは、確かだが…………得体の知れない肉を口にするのはいささか抵抗がある。
「ちなみに聞くが……その血色の悪く、酷い獣臭がする肉は何の肉だ?」
「これか? ゴブリン肉だわ!」
「ゴブッ! ……残念ながら、人間にゴブリンを食べるという習慣はない」
いささか程度では、済まされなかった。危うく、毒物を摂取させられるところだったわ……。
「そうか、こんなにウメェのにな~。何かワシだけ食ってて悪いな~」
そう思うのなら、止めたらどうなんだ。
アンタがゴブリン肉を焼く度に、悪臭で、こちらの鼻が曲がりそうになるんだよ!
種族の壁はぶ厚い。
表面上では事なきよう取り繕うが、内心では互いの価値観、倫理観が合わず苛立ってしまう。
もしも、あと少しだけその距離を縮められたのなら、魔王の見方も変わったかもしれない。
ササブリとも気持ちが通じあえた可能性だってある。
遠い分、手を伸ばせばどうにかできたはずだ。
なのに…………俺は……そうしなかった。それができなかった。
「童、何を悔いておる?」思いがけない一言に俺は面を上げた。
いつものように、独り呟いたぐらいでは、銅鑼の向こうにいる爺さんには俺の声が聞こえないはずだ。
「どうして? って面構えだな。ワシを誰だと思っておる? 魔王ホロモン様だぞ! 人間の考えていることなんぞ、ソイツの面ぁ、見れば分かるもんよ!」
「なら、さっきの質問に答えてくれ。後、俺の魔王を返してくれないか?」
「グハハアッ! 気づいていたか。オメェの魔王はこの中だぁ!!」
ホロモンが小瓶を取り出した。
すると、俺の手元にフォトグラファーが顕現し小瓶を照らし出した。
そこに、ササブリが閉じ込められていると伝えるように、淡く光を放つ。
「どういう事? マイト、ホントにあのチビ魔王が捕まっているの?」
「……奴の言ってことは本当だ。どうやって、ササブリを取り押えたのかは分からない。どうにかして、取り返さないと」
「お爺ちゃん、なんでこんな酷いことすんの? アタイたちを助けてくれたのは、お爺ちゃんなんだろ!?」
真白な顎鬚を弄りながら、ホロモンはリンを見詰めていた。
話なんか聞いていやしない。
ただ、この人間をどう処理するか、頭をひねらせている。
「つくづく愚かだな、オメェたち人間は。ちっと芝居してやりゃ、コロと騙される。魔王に虫けらの道理なんぞ、通じるわけがなかろう……そもそも、ワシの領地に他所の魔王を連れてきやがったのはオメェらだ!! 何されても文句言われる筋合いはねぇぞ!!」
「なら、わざわざ俺たちを生かす必要はないだろう? 俺を殺せば、魔王は消える」
「……オメェたちを生かしたのは取引きするためだ」
「取引きだと……信用置けない悪魔相手にできるわけがない」
「どうするか? はオメェの自由だ。ただ、応じないのであれば、デスブリンガーを取り戻すことはできなくなるがな」
形勢はこちらが圧倒的不利を被っていた。
無知は罪か……魔王たちには独自のルールが存在しているらしい。
よく、考えもせずササブリを連れ回したのは俺だ。彼女と分かり合おうとしなかったのも俺だ。
自業自得と言われても、ぐうの音もでない。
だが、これは取引きなんかじゃない。
人質を取った時点で脅迫以外の何物でもない。
いかに、正論を用いろうが、正しければ何をしても良いというわけじゃない! 間違いは間違いだ。
これは絶対に屈せない戦いだ。なぜならば、正論では誰も幸せにできないことを俺は知っているからだ。
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