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ぼっちの魔王
37話 思い出の剣
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「決まっておる、ドンドン先に進みポイントを貯めるのじゃああ!」
「アタイも進んだ方がいいと思う。シャルが連れていかれた本殿は、この近くにあると思うから……」
「ここでのタイムロスは手痛いか……ヘルシィを倒したとはいえ、奴の部下が何をしでかすのか? 分からないというのもある。うしっ、このまま進むぞ!」
話がまとまったところで、俺たち行動を――「待てぃぃぃ――!!」
「……なんだよ?」魔王が思考のインターセプトを華麗に決めてきた。
わりとイラっとした俺の声は通常よりもトーンダウンしていた。
「そんな装備で大丈夫なのかぇ? 主よ」
「そんな、エルシャダイみたいなこと言われても、俺ぁ笑わないぞ!」
「エル? まぁ、良いわ。せっかく、カタログがあるんじゃ、活用せぬ手はなかろう!」
「つまり、俺に武器を新調しろと……?」
「そういうことじゃ!」
セールスマンか……コイツは。隙あれば商品を押し売りしてきやがって。
兄貴まで残り490ポイント、無駄な消費は避けたい。
武器か……思えば、この鉄の剣はグゼンから借りたモノだった。
空気は読めないが、面倒見は良いんだよな、アイツ。空気は読めないけど。
「アタイもアンタのスキルブックを見てみたい。確か、カタログとかいう機能で物が買えるんでしょっ、どうでもいいけど」
よほど、気になるらしい。リンガが話に便乗してきた。
どうでも良くないです。カタログで買えるモノは、このセカイでは入手不可能なモノばかりですぅ。
そう言いいながら、カタログを凄さを見せつけてやりたい。
「けどなぁ……」俺は、視線を落とした。
腰にぶら下がる剣は、何だかんだと苦楽をともにした相棒だ。そう簡単に買い替えられるわけがない。
何より、俺がこのセカイで初めて手にした剣だ……手入れさえすれば、まだ現役でいけるはずだ。
「やっぱ、慣れた剣じゃないと手にしっくりこないんだよな~」
「でも、ガタがきているでしょ? そのクズ鉄の剣。さっさと替えた方が無難よ」
「クズ鉄……? 鉄の剣じゃないの?」
「違う違う。鉄の剣はマイトには勿体ないって、グゼンがケチって、そこら辺の露店で捨て売りされていた奴を渡しただけ」
「捨て……あの空樽の中にまとめて入っている奴か? あぅんの、筋肉猿め!」
あまりのショックに卒倒しそうになった。
クズ鉄、すなわち剣としては失敗作だ。そんなモノに俺は命を預けていたのか? ある意味、呪われた剣よりも恐ろしいモノを装備していたんじゃないか……。
「さらば、マイメモリー」俺はクズ鉄の剣をそこらに投げ棄てた。
だんじて不法投棄ではない。そもそも、ダンジョン内に法の縛りはないし……なんだ、武器を無くし困窮した冒険者が拾ってくれるかもしれない。
俺はおもむろにスキルブックを開いた。このカタログの中に真の相棒が俺を待っている。
そう思うだけで、動悸が激しくなってくる。
――――――先に結論から言おう。
手持ちの590ポイントでは、剣は買えない。うん、知っていた。
一番安いモノでも1000ポイントはかかる。
なんてこった……世の中、世知辛いのにもほどがある。
「どんまい……次があるって」
落胆する俺にリンが優しく声をかける……ツライ。
「チッ、使えん奴じゃのう……我がおるのにポイント不足とは。ほれ、そこにぶら下がっておる奴からさっさとポイントを奪ってこい」
他者の心情を察せない魔王が人外染みたことを言ってくる……悪魔か……悪魔だったわ。
「ハッ、アハハッ……手持ちで買える刃物ならあるじゃないか! ほら、果物ナイフなら350ポイントで買えるぞ」
「マイト! アンタ、正気なの? いくら、ショックだからって自暴自棄なるんじゃないわよ! よーく、考えて! 果物ナイフなんて買っても戦闘では役に立たないわよ。それどころか、一度も使用せずに終わるわよ!」
「終わりじゃない! これは、始まりだぁああ――――」
完全に頭がバグっていた。何の躊躇いもなく購入ボタンを押してしまった。
兄貴まで残り60ポイント、果物ナイフだけではなく衝動買いでボディーソープが80。
計、430ポイント使用していた。
後悔? そんなモノは涙と一緒に流れ落ちたさ。
これから、俺はこの果物ナイフで伝説を築き上げてゆくんだ。
のちに、このナイフもマイトのナイフと呼ばれ国宝級の宝となるだろう。
「主よ、コイツはここに置いていくつもりかぇ?」
「ああっ、果物ナイフに乗り替えた身だ。俺には、もうソイツを握る資格はない!」
などと、格好つけてみたが……ぶっちゃけ、一度捨てたモノを拾うのはダサすぎるし貧乏性だとバレてしまう。
女子たちがいる手前、拾うのを断念せざるを得なかった。
「アタイも進んだ方がいいと思う。シャルが連れていかれた本殿は、この近くにあると思うから……」
「ここでのタイムロスは手痛いか……ヘルシィを倒したとはいえ、奴の部下が何をしでかすのか? 分からないというのもある。うしっ、このまま進むぞ!」
話がまとまったところで、俺たち行動を――「待てぃぃぃ――!!」
「……なんだよ?」魔王が思考のインターセプトを華麗に決めてきた。
わりとイラっとした俺の声は通常よりもトーンダウンしていた。
「そんな装備で大丈夫なのかぇ? 主よ」
「そんな、エルシャダイみたいなこと言われても、俺ぁ笑わないぞ!」
「エル? まぁ、良いわ。せっかく、カタログがあるんじゃ、活用せぬ手はなかろう!」
「つまり、俺に武器を新調しろと……?」
「そういうことじゃ!」
セールスマンか……コイツは。隙あれば商品を押し売りしてきやがって。
兄貴まで残り490ポイント、無駄な消費は避けたい。
武器か……思えば、この鉄の剣はグゼンから借りたモノだった。
空気は読めないが、面倒見は良いんだよな、アイツ。空気は読めないけど。
「アタイもアンタのスキルブックを見てみたい。確か、カタログとかいう機能で物が買えるんでしょっ、どうでもいいけど」
よほど、気になるらしい。リンガが話に便乗してきた。
どうでも良くないです。カタログで買えるモノは、このセカイでは入手不可能なモノばかりですぅ。
そう言いいながら、カタログを凄さを見せつけてやりたい。
「けどなぁ……」俺は、視線を落とした。
腰にぶら下がる剣は、何だかんだと苦楽をともにした相棒だ。そう簡単に買い替えられるわけがない。
何より、俺がこのセカイで初めて手にした剣だ……手入れさえすれば、まだ現役でいけるはずだ。
「やっぱ、慣れた剣じゃないと手にしっくりこないんだよな~」
「でも、ガタがきているでしょ? そのクズ鉄の剣。さっさと替えた方が無難よ」
「クズ鉄……? 鉄の剣じゃないの?」
「違う違う。鉄の剣はマイトには勿体ないって、グゼンがケチって、そこら辺の露店で捨て売りされていた奴を渡しただけ」
「捨て……あの空樽の中にまとめて入っている奴か? あぅんの、筋肉猿め!」
あまりのショックに卒倒しそうになった。
クズ鉄、すなわち剣としては失敗作だ。そんなモノに俺は命を預けていたのか? ある意味、呪われた剣よりも恐ろしいモノを装備していたんじゃないか……。
「さらば、マイメモリー」俺はクズ鉄の剣をそこらに投げ棄てた。
だんじて不法投棄ではない。そもそも、ダンジョン内に法の縛りはないし……なんだ、武器を無くし困窮した冒険者が拾ってくれるかもしれない。
俺はおもむろにスキルブックを開いた。このカタログの中に真の相棒が俺を待っている。
そう思うだけで、動悸が激しくなってくる。
――――――先に結論から言おう。
手持ちの590ポイントでは、剣は買えない。うん、知っていた。
一番安いモノでも1000ポイントはかかる。
なんてこった……世の中、世知辛いのにもほどがある。
「どんまい……次があるって」
落胆する俺にリンが優しく声をかける……ツライ。
「チッ、使えん奴じゃのう……我がおるのにポイント不足とは。ほれ、そこにぶら下がっておる奴からさっさとポイントを奪ってこい」
他者の心情を察せない魔王が人外染みたことを言ってくる……悪魔か……悪魔だったわ。
「ハッ、アハハッ……手持ちで買える刃物ならあるじゃないか! ほら、果物ナイフなら350ポイントで買えるぞ」
「マイト! アンタ、正気なの? いくら、ショックだからって自暴自棄なるんじゃないわよ! よーく、考えて! 果物ナイフなんて買っても戦闘では役に立たないわよ。それどころか、一度も使用せずに終わるわよ!」
「終わりじゃない! これは、始まりだぁああ――――」
完全に頭がバグっていた。何の躊躇いもなく購入ボタンを押してしまった。
兄貴まで残り60ポイント、果物ナイフだけではなく衝動買いでボディーソープが80。
計、430ポイント使用していた。
後悔? そんなモノは涙と一緒に流れ落ちたさ。
これから、俺はこの果物ナイフで伝説を築き上げてゆくんだ。
のちに、このナイフもマイトのナイフと呼ばれ国宝級の宝となるだろう。
「主よ、コイツはここに置いていくつもりかぇ?」
「ああっ、果物ナイフに乗り替えた身だ。俺には、もうソイツを握る資格はない!」
などと、格好つけてみたが……ぶっちゃけ、一度捨てたモノを拾うのはダサすぎるし貧乏性だとバレてしまう。
女子たちがいる手前、拾うのを断念せざるを得なかった。
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