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自由へのゴング
18話 グゼンの宅配便
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「この不潔! お下劣! 淫行罪で極刑にしてやるわ……グスンッ」
「まぁ、リンさんを泣かせるなんて……とんだクズカスがいるものですわ」
泣きじゃくりながら神官にあやされる軽装の少女。
腹部丸出しの省エネコスチュームを着ながら、人を性犯罪者扱いするとは、いかかがなものか?
解せぬ! 冤罪である以上、断じて解せぬ!
「へぇ~。お前、なかなか面白いな! 名前は?」
「聞いてよ! サトラン。この変態、アタイの胸をずっと触り続けていたんだよ」
「そう、カッカするのは良くないよ。君だって、満更でもなかっただろ? 触られるのが嫌なら、すぐに叩けば良かったものを」
「そっ……それはっ」
魔術師に指摘され、彼女は耳の先まで赤くし目を伏せる。
それを見た神官が「まさしく、火ダルマですわ~」と茶化す。
こんな、むさ苦しい野郎ばかり吹き溜まりで、青春劇されても俺たちが困る……。
「なぁ? お前、新人冒険者でもないのに弱っちいな。でも、リンの一撃は見えていたな? 普通、アレを喰らったら意識が飛ぶぞ」
困ると言えば、コイツだ。
新しい玩具でも見つけた時の子供のように、瞳を輝かせ色々と質問してくる。
あまり、しっこいんで同性愛者じゃないかと疑いたくなった。
「よしっ、決めた! お前、僕たちの仲間になれ!」
その一言で、コイツの頭のネジは全部、バカになっているのがうかがい知れた。
ハッキリ、言って意味不明だ。
どうして、お前の一存で俺の運命が左右されないといけなんだ。
つぅーか、どこぞの王のパクリじゃねぇか! せめて、自身の言葉で口説き落とせや。
「ちょっと! 信じらんない!? サトラン、本気で言ってんの?」
案の定、取り巻きが騒ぎだした。
奇遇だな、俺も同じ意見だ……と同調したいところではあるも、それはできない。
リンとやらの否定には、仲間うんぬんではなく、俺自身の存在が許せないという意味合いしかない。
できれば、無実を証明したかった。
けど、それ以上にコイツらと関わるのは危険だ。
「僕は本気さ。アナライズで彼のランキングを見たけど、いいね! 僕たちが探し求めていた条件にピッタリだ」
特にコイツはヤバイ……さっさと辞退しよう。
「悪いが俺には、ありったけ夢はかき集められない。集められるのは草だけだわ……」
「いいのかい? コッチは、その気になれば慰謝料だって請求できるんだ。ここで、素直に従っておくのが君にとって幸せだと思うけどなぁ~」
悪魔が耳元で囁いた。
仲間の不幸だろうが何だろうが、この男は躊躇しない。使えるモノは全て使ってくる。
脅しだけで済めばいい。
けど、コイツはその先に足を踏み込んでしまっている。
断ることは悪手だった。断れば、見せしめに報復してくる。
コイツはそういう奴の眼をしている。
「聞くが、新人を星団船に連れてゆき何をするつもりだ?」
「ん? 新人でも強い奴は連れていけないな。僕たちが求めるのは弱者だ。弱い者たちを集めているのは、力をつけて魔王討伐するためなんだ……」
真剣な面持ちではある。
嘘をついているようには見えない……本当に人を騙すのが上手い奴だ、油断ならない。
口先に惑わされず、ちゃんと考えてみれば矛盾に気づける。
まず、本気で魔王討伐をやるのなら、新人募集と並行して討伐募集をかけるはずだ。
星団船を根城にしている魔王たちは、冒険者数名ていどでは絶対に太刀打ちできない。
それこそ、数百、数千人単位の人数が必要だ。
だからこそ、ここ百年以上は誰も魔王に挑もうとはしなかった。
だったら、どうして分かりやすい嘘をつくのか?
理由は二つ、俺が拒否できないことを理解しているのと、俺の実力を試している。
弱い奴が欲しいけど、無能はいらない。と言ったところか……。
なら、こちらは無能を演じるだけだ。
そうすれば、飽きて向こうから追放してくれるかもしれない。
「僕は賢者のサトラン。宜しくな」
「マイトだ。職業は……フリーターだ」
さすがに無職とは言えなかった。適当に、それっぽい言葉を使って誤魔化そうとした。
後に知ることだが、サトランも前世の記憶を持つ転生者だ。
俺の言い訳など意味を成さなかったわけだ。
契約が完了したところで、力強く出入り口の扉が開かれた。
唐突な出来事に冒険者一同は、扉へと注目する。
行軍する重戦車のごとくドスドスと床を踏み鳴らす筋肉質の男がやって来た。
その両腕でかかげるのは、見たこともない特大サイズの肉塊。
大皿に乗せた、それはこんがりと焼け、香ばしい匂いを漂わせていた。
「お前ら、待たせたな! 冒険者でありながらも、料理四天王であるグゼン様が、スペシャルな一品を持ってきてやったぜ! なんせ、ギルドは血の気が多い奴らばかりだ。そりゃあ、すぐに腹も減るわな! 腹が減れば気持ちも落ち着かなくなる、どーせ、今も喧嘩してたんだろう? ならば、食え! そして腹を満たせ! さすれば、怒りは自然と消えよう」
なんか、変な奴が出てきた。
言いたい事は分からくもないが、誰も一人お前を待ってはいない。
というよりも、誰なのか? さえも知らない。
「あちゃあ~……そう来るか」
サトランが頭を抱えていた。美女二人も知らん顔をしている。
まさか、コイツもパーティーメンバーだというのか?
だとしたら……上手くやっていける自信がない。
「まぁ、リンさんを泣かせるなんて……とんだクズカスがいるものですわ」
泣きじゃくりながら神官にあやされる軽装の少女。
腹部丸出しの省エネコスチュームを着ながら、人を性犯罪者扱いするとは、いかかがなものか?
解せぬ! 冤罪である以上、断じて解せぬ!
「へぇ~。お前、なかなか面白いな! 名前は?」
「聞いてよ! サトラン。この変態、アタイの胸をずっと触り続けていたんだよ」
「そう、カッカするのは良くないよ。君だって、満更でもなかっただろ? 触られるのが嫌なら、すぐに叩けば良かったものを」
「そっ……それはっ」
魔術師に指摘され、彼女は耳の先まで赤くし目を伏せる。
それを見た神官が「まさしく、火ダルマですわ~」と茶化す。
こんな、むさ苦しい野郎ばかり吹き溜まりで、青春劇されても俺たちが困る……。
「なぁ? お前、新人冒険者でもないのに弱っちいな。でも、リンの一撃は見えていたな? 普通、アレを喰らったら意識が飛ぶぞ」
困ると言えば、コイツだ。
新しい玩具でも見つけた時の子供のように、瞳を輝かせ色々と質問してくる。
あまり、しっこいんで同性愛者じゃないかと疑いたくなった。
「よしっ、決めた! お前、僕たちの仲間になれ!」
その一言で、コイツの頭のネジは全部、バカになっているのがうかがい知れた。
ハッキリ、言って意味不明だ。
どうして、お前の一存で俺の運命が左右されないといけなんだ。
つぅーか、どこぞの王のパクリじゃねぇか! せめて、自身の言葉で口説き落とせや。
「ちょっと! 信じらんない!? サトラン、本気で言ってんの?」
案の定、取り巻きが騒ぎだした。
奇遇だな、俺も同じ意見だ……と同調したいところではあるも、それはできない。
リンとやらの否定には、仲間うんぬんではなく、俺自身の存在が許せないという意味合いしかない。
できれば、無実を証明したかった。
けど、それ以上にコイツらと関わるのは危険だ。
「僕は本気さ。アナライズで彼のランキングを見たけど、いいね! 僕たちが探し求めていた条件にピッタリだ」
特にコイツはヤバイ……さっさと辞退しよう。
「悪いが俺には、ありったけ夢はかき集められない。集められるのは草だけだわ……」
「いいのかい? コッチは、その気になれば慰謝料だって請求できるんだ。ここで、素直に従っておくのが君にとって幸せだと思うけどなぁ~」
悪魔が耳元で囁いた。
仲間の不幸だろうが何だろうが、この男は躊躇しない。使えるモノは全て使ってくる。
脅しだけで済めばいい。
けど、コイツはその先に足を踏み込んでしまっている。
断ることは悪手だった。断れば、見せしめに報復してくる。
コイツはそういう奴の眼をしている。
「聞くが、新人を星団船に連れてゆき何をするつもりだ?」
「ん? 新人でも強い奴は連れていけないな。僕たちが求めるのは弱者だ。弱い者たちを集めているのは、力をつけて魔王討伐するためなんだ……」
真剣な面持ちではある。
嘘をついているようには見えない……本当に人を騙すのが上手い奴だ、油断ならない。
口先に惑わされず、ちゃんと考えてみれば矛盾に気づける。
まず、本気で魔王討伐をやるのなら、新人募集と並行して討伐募集をかけるはずだ。
星団船を根城にしている魔王たちは、冒険者数名ていどでは絶対に太刀打ちできない。
それこそ、数百、数千人単位の人数が必要だ。
だからこそ、ここ百年以上は誰も魔王に挑もうとはしなかった。
だったら、どうして分かりやすい嘘をつくのか?
理由は二つ、俺が拒否できないことを理解しているのと、俺の実力を試している。
弱い奴が欲しいけど、無能はいらない。と言ったところか……。
なら、こちらは無能を演じるだけだ。
そうすれば、飽きて向こうから追放してくれるかもしれない。
「僕は賢者のサトラン。宜しくな」
「マイトだ。職業は……フリーターだ」
さすがに無職とは言えなかった。適当に、それっぽい言葉を使って誤魔化そうとした。
後に知ることだが、サトランも前世の記憶を持つ転生者だ。
俺の言い訳など意味を成さなかったわけだ。
契約が完了したところで、力強く出入り口の扉が開かれた。
唐突な出来事に冒険者一同は、扉へと注目する。
行軍する重戦車のごとくドスドスと床を踏み鳴らす筋肉質の男がやって来た。
その両腕でかかげるのは、見たこともない特大サイズの肉塊。
大皿に乗せた、それはこんがりと焼け、香ばしい匂いを漂わせていた。
「お前ら、待たせたな! 冒険者でありながらも、料理四天王であるグゼン様が、スペシャルな一品を持ってきてやったぜ! なんせ、ギルドは血の気が多い奴らばかりだ。そりゃあ、すぐに腹も減るわな! 腹が減れば気持ちも落ち着かなくなる、どーせ、今も喧嘩してたんだろう? ならば、食え! そして腹を満たせ! さすれば、怒りは自然と消えよう」
なんか、変な奴が出てきた。
言いたい事は分からくもないが、誰も一人お前を待ってはいない。
というよりも、誰なのか? さえも知らない。
「あちゃあ~……そう来るか」
サトランが頭を抱えていた。美女二人も知らん顔をしている。
まさか、コイツもパーティーメンバーだというのか?
だとしたら……上手くやっていける自信がない。
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