問答無用!でランキングブレイカー!! ースキル、グラビアこそ最強最高ですー

心絵マシテ

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恋するコペルニクス

33話 近道

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 マーダーとの関係は聞くだけ野暮というものだ。
 知っていたとしても俺に出来ることなど、あるわけもない。
 ササブリだって俺の過去は詮索してこない。

 安易に踏み込んでがならない境界線がそこにはある。
 目に見えていなくとも、存在自体は肌で感じ取れる。
 まとわりつくような空気が、常に俺を阻害し彼女に近づけないようにしてくる。

 誰にも渡さないと。
 誰にも傷つけはさせないと。

 なにかの怨嗟が働き、ササブリを守ろうとしている。
 すっかり忘れていた彼女が魔王であることを……。
 無邪気な笑顔、得意気な顔、不満で小さな唇を尖らせる様、顔を真っ赤にして怒る分かりやすさ。
 普段は、どこどう取っても、お年頃の女の子にしか見えない。
 だからだろう。魔王の側面が色濃くなった途端、手が届かなくなるまでの距離感が生じるのは。

 なんの、因果か知らない。
 偶然というものを超越した奇跡で、俺たちのスキルブックは混ざり合った。
 俺のグラビアとデスブリンガーのカタログ。
 これらが組み合わさってフォトグラファーは誕生した。

 これは俺の推測でも、希望的な観測でもない。
 ちゃんと事実に基づいた情報だ。
 なぜなら、フォトグラファーの一ページ目にある取説の項目にきっちりと記載されているからだ。
 最初は魔族文字が翻訳されていなかったり、未更新のページが多いこともあって理解できなかった。
 こうして時間が経ち、ようやくスキルブックとして完成されようとしている。

「原因も分かったんだ。さっさと探索を再開するぞ……ササブリ、マジで賞金首を見つけられるんだよな?」

「当然じゃ。我の力であれば、かのような岩壁なんぞ一撃で粉砕するぞえ!」

「はぁ? 拳で壁に穴を開けるとでも……」

「左様、壊してゆけばいずれ、出口に達するじゃろうて。となれば、確実に賞金首どもと鉢合わせになるわい」

 あいたたた……頭痛が痛い。
 誤用などではなく、実際にそういう心境だ。
 頭痛で苦しんでいるところを鈍器で殴打された衝撃に近い。
 力というのは何らかの比喩だと勘違いしてしまった。ササブリが言う、力とはすなわち破壊力なり!
 クソがぁ! そのまんまじゃないか。
 魔王なら、もっとこう……権力系の力を行使してカッコイイ感じで進めるもんだと思ったのが俺のギルティなのか?

 穴ぁ、掘るだぁ――? 俺たちは炭鉱夫かよ。
 それに鍾乳洞内で穴なんぞ開けまくってみろ、天井が崩落するぐらい考えれば分かるだろうが。
 ササブリの怪力なら余計、危険性が高まるに決まっている。

「ウェイッ。そんなことしなくも、モットいい方法あるよ」

「……聞こうか」

「なんで、オマエ偉そうなんだ? まあ、恩人だから教えてあげるさ。そこの岩壁、スライドタイプよ」

「バッ、カジャネェ――ノ!?」

 アルファポメオの情報が、あまりに有益すぎて罵倒を浴びせてしまった。
 最初から部屋を調べていれば、こうならずには済んだというのに。
 それこれも全部、ポメオのせいだ!
 これ見よがしに、部屋の真ん中で石化してんじゃねぇよ。
 せめて、部屋の四隅にでも鎮座していてくれれば、壁の異常に気づけたかもしれない。

「後悔、先絶たずか。なってしまった事は気にしても仕方ない。ポメオ、壁を動かすの手伝ってくれ」

 ポメオが示した壁の前に立ち、二人して横に引いた。
 指先を壁のくぼみに引っ掛けて、後方に体重をかける。
 ズリ……ズリ……ズズズッと音を立てて、岩戸が動き出した。
 そこから、篝火の光が薄っすらと射しこむ。
 それまで隠されていた通路が、コンニチワしている。

「ゴー! カモン! ヤサグレタマキン」

「なんだと! この野郎。この場で生き埋めにしたろうか!?」

 路が開けた途端、頼んでもいないのにポメオが、ハッスルし始めた。
 他者よりも一歩先をリードする未来志向型の彼は、間違いなく最初の犠牲者となる。

「うおっ!! っぶうねねええ――!」すぐ目の前を火矢が横切った。

 前にいるポメオを睨みつけると小さく「ソーリー」と謝ってきた。
 謝って許されるなら警察はいらない。
 謝るより先に誤りを正せ。
 罠探知もせずに、自由気ままに駆けてゆくんじゃない。
 ここは大草原じゃないぞ。

「なかなか、威勢の良い奴じゃの~」

 こちこちはこっちで、感心している場合か!
 リードでもつけていないと、一人でドンドン進んでゆくぞアイツ。

「ファァァアアアァァアアアッ―――――!!」
 断末魔の悲鳴と共にパァン! と銃声が響いた。

「なんじゃ? 何が起きた!?」

「ここからだと先が見えない。急ぐぞ! ポメオの奴、罠にでもかかったのかもしれん」

 ササブリと二人で駆けつけると、路の先に上階に向かって伸びる螺旋階段が見えた。
 階段の脇にはポメオが倒れている。

「この傷は銃創か? 弾は貫けているのか……? クソ、出血が酷くて分かり辛い」

「主よ! 階段の上に人がおるぞ!」

 ササブリの警告と同時に二発目の銃声が聖殿に響いた。 
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