問答無用!でランキングブレイカー!! ースキル、グラビアこそ最強最高ですー

心絵マシテ

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恋するコペルニクス

26話 試練

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「よし! そうと決まれば、ちゃっちゃと幼気いたいけな乙女たちを救いにいくぞ!」

 頼んでもいないのに、痛いだけの奴が仕切り始めた。
 口にはしないが、そういう所だ。
 サトランにも、きつく言われていたが、グゼンは場の空気とか全然読もうとしない。
 考えるよりも、まず行動。それが周囲にとってどれだけ悪影響をもたらすのか、説明してもすぐに忘れる。
 早い話、自分が間違ったことしているとは、自覚していないのだ。
 だから、反省もしないし、他者と対立することが多々ある。

 勝手に先陣を切ってゆく戦士は、放置しておきたくたとも今は、そうすべきタイミングではない。
 敵は、あのワカモトさんを吹き飛ばし、残りの二人までも打ち負かした。
 先のスライム戦で消耗しきっていたことも、そうだがそれなりの実力者と見ておいた方が良いだろう。
 それを踏まえると、どうしても前衛であるグゼンの力が必要不可欠になる。

 ワカモトさんは、彼を否定していたのは、あくまで私怨だ。
 ランキング順位は高くなくとも、俺よか戦力として見込めるのは違いない。

 俺たちもグゼンを追うように聖殿の中に入った―――

 古拙こせつとは良く言ったものだ。
 聖殿内部は、想像してものとは完全に異なっていた。
 建築技術が未熟どころか、これを建築と呼べるのかすら怪しいレベルだ。
 入口こそ、立派な神殿のような造りをしていたが……そこまでだ。
 内部はただの巨大な空洞であった。
 空洞には、ところどころ手を加えて作られた柱や階段などが点在するが、だからなんだと言いたくもなる。
 地質、九割以上は自然の恩恵でできている。
 唯一、建築家の頑張り見受けられる箇所は、夜の営みについて描かれた卑猥な壁画だけだ。
 これを素朴で趣があるモノと評価した奴らの感性を疑う。

「まだ、かがり火がついているな。注意して進もう」
 開けた場所に着くなり、グゼンがらしからぬことを言ってきた。
 戦士の勘がそう告げるのか、ここに来て辺りを警戒しだした。

 どこにどんな危険が潜んでいるのか? 
 分からないのはかなり、精神に堪える。
 できるだけ目立たないように俺たちは物陰に隠れて先へと向かった。

「グゼン、そこの床を踏むんじゃないよ!」

「あっ? 床がどうしたんだ?」

 ワカモトさんが忠告した傍から、グゼンの足元がガクッと沈み込んだ。
 途端、頭上に垂れ下がっていた、つららのような鋭角が、有無を言わさず降り注いできた。

 俺たちは死に物狂いで、その場から走り去った。
 移動していても尚、つらら石が後を追ってくる。

「のぉ、ざけんなよぉ――――!!」

 先頭をゆくグゼンが喚き出した。
 見ると前方の坂から、大玉の岩石がこちらに向かって転がり落ちて来ていた。
 迂回する道などどこにもない、俺たちはこのまま真っすぐに突き進んで大玉をどうにかしないといけない。
 切羽詰まった状態で、誰かが解決策を導いてくれることを期待したくとも、肝心の二人は、俺の方に視線を注いで
 いる。
 駄目だ、こりゃ……他力、本願もいいところだ。

「婆、魔法であの岩を粉々できねぇのかよ!?」

「馬鹿言ってんじゃないよ。あんな大岩どうやって破壊するんだい? アンタこそ自慢の剣技でどうにかしなっ!」

 転がり落ちてくる大玉は、丁度通路ギリギリのサイズ。
 俺たちが逃れるとしたら、唯一スペースが拡がっている天井の方だ。
 しかし、ことはそう上手くはいかない。
 壁を登るにしても、この突起もないツルツルの壁を登るのは、ほぼ不可能に近い。

「うわわわぁああ―――。もう、駄目だぁあ――――!! 岩に潰されちまうぅぅぅ」

「グゼン、狼狽えるな! くそっ、上が駄目なら……こうだ!!」

 自身のスキルブックを開いたまま、俺は進行方向へとかざした。
 ぶっちゃけ、こういう使い方だけはしたくはなかった。
 けれど、背に腹は代えられない。これは、ゲームではなく現実だ……死んだらリスポーンすることなどない。
 だからこそ、自信の甘さを捨て覚悟する必要がある。
 スキルブックから、大量のグラビアが放流される。
 積み重なってゆく、それらは瞬く間に本の山を築き滑空台へとなる。

「二人とも、足を止めるなよ。このまま、構わず突っ走るんだ!」

 即席のジャンプ台に誘導され大玉が俺たちの真上を飛翔する。
 けれど、浮力より重さの方が勝って充分な高さが確保できていない。

「しまっ―――」
「任せろ! ソニックブーム!!」

 グゼンによる追撃の衝撃波が大玉を更に上へと押し上げた。
 今がチャンスだと、グラビラの山を瞬時に回収する。
 背後で地響きが鳴り空洞全体を振動させた。
 息を切らせながらも坂道を登りきった俺たちは、全身汗だくとなっていた。
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