26 / 122
恋するコペルニクス
26話 試練
しおりを挟む
「よし! そうと決まれば、ちゃっちゃと幼気な乙女たちを救いにいくぞ!」
頼んでもいないのに、痛いだけの奴が仕切り始めた。
口にはしないが、そういう所だ。
サトランにも、きつく言われていたが、グゼンは場の空気とか全然読もうとしない。
考えるよりも、まず行動。それが周囲にとってどれだけ悪影響をもたらすのか、説明してもすぐに忘れる。
早い話、自分が間違ったことしているとは、自覚していないのだ。
だから、反省もしないし、他者と対立することが多々ある。
勝手に先陣を切ってゆく戦士は、放置しておきたくたとも今は、そうすべきタイミングではない。
敵は、あのワカモトさんを吹き飛ばし、残りの二人までも打ち負かした。
先のスライム戦で消耗しきっていたことも、そうだがそれなりの実力者と見ておいた方が良いだろう。
それを踏まえると、どうしても前衛であるグゼンの力が必要不可欠になる。
ワカモトさんは、彼を否定していたのは、あくまで私怨だ。
ランキング順位は高くなくとも、俺よか戦力として見込めるのは違いない。
俺たちもグゼンを追うように聖殿の中に入った―――
古拙とは良く言ったものだ。
聖殿内部は、想像してものとは完全に異なっていた。
建築技術が未熟どころか、これを建築と呼べるのかすら怪しいレベルだ。
入口こそ、立派な神殿のような造りをしていたが……そこまでだ。
内部はただの巨大な空洞であった。
空洞には、ところどころ手を加えて作られた柱や階段などが点在するが、だからなんだと言いたくもなる。
地質、九割以上は自然の恩恵でできている。
唯一、建築家の頑張り見受けられる箇所は、夜の営みについて描かれた卑猥な壁画だけだ。
これを素朴で趣があるモノと評価した奴らの感性を疑う。
「まだ、かがり火がついているな。注意して進もう」
開けた場所に着くなり、グゼンがらしからぬことを言ってきた。
戦士の勘がそう告げるのか、ここに来て辺りを警戒しだした。
どこにどんな危険が潜んでいるのか?
分からないのはかなり、精神に堪える。
できるだけ目立たないように俺たちは物陰に隠れて先へと向かった。
「グゼン、そこの床を踏むんじゃないよ!」
「あっ? 床がどうしたんだ?」
ワカモトさんが忠告した傍から、グゼンの足元がガクッと沈み込んだ。
途端、頭上に垂れ下がっていた、つららのような鋭角が、有無を言わさず降り注いできた。
俺たちは死に物狂いで、その場から走り去った。
移動していても尚、つらら石が後を追ってくる。
「のぉ、ざけんなよぉ――――!!」
先頭をゆくグゼンが喚き出した。
見ると前方の坂から、大玉の岩石がこちらに向かって転がり落ちて来ていた。
迂回する道などどこにもない、俺たちはこのまま真っすぐに突き進んで大玉をどうにかしないといけない。
切羽詰まった状態で、誰かが解決策を導いてくれることを期待したくとも、肝心の二人は、俺の方に視線を注いで
いる。
駄目だ、こりゃ……他力、本願もいいところだ。
「婆、魔法であの岩を粉々できねぇのかよ!?」
「馬鹿言ってんじゃないよ。あんな大岩どうやって破壊するんだい? アンタこそ自慢の剣技でどうにかしなっ!」
転がり落ちてくる大玉は、丁度通路ギリギリのサイズ。
俺たちが逃れるとしたら、唯一スペースが拡がっている天井の方だ。
しかし、ことはそう上手くはいかない。
壁を登るにしても、この突起もないツルツルの壁を登るのは、ほぼ不可能に近い。
「うわわわぁああ―――。もう、駄目だぁあ――――!! 岩に潰されちまうぅぅぅ」
「グゼン、狼狽えるな! くそっ、上が駄目なら……こうだ!!」
自身のスキルブックを開いたまま、俺は進行方向へとかざした。
ぶっちゃけ、こういう使い方だけはしたくはなかった。
けれど、背に腹は代えられない。これは、ゲームではなく現実だ……死んだらリスポーンすることなどない。
だからこそ、自信の甘さを捨て覚悟する必要がある。
スキルブックから、大量のグラビアが放流される。
積み重なってゆく、それらは瞬く間に本の山を築き滑空台へとなる。
「二人とも、足を止めるなよ。このまま、構わず突っ走るんだ!」
即席のジャンプ台に誘導され大玉が俺たちの真上を飛翔する。
けれど、浮力より重さの方が勝って充分な高さが確保できていない。
「しまっ―――」
「任せろ! ソニックブーム!!」
グゼンによる追撃の衝撃波が大玉を更に上へと押し上げた。
今がチャンスだと、グラビラの山を瞬時に回収する。
背後で地響きが鳴り空洞全体を振動させた。
息を切らせながらも坂道を登りきった俺たちは、全身汗だくとなっていた。
頼んでもいないのに、痛いだけの奴が仕切り始めた。
口にはしないが、そういう所だ。
サトランにも、きつく言われていたが、グゼンは場の空気とか全然読もうとしない。
考えるよりも、まず行動。それが周囲にとってどれだけ悪影響をもたらすのか、説明してもすぐに忘れる。
早い話、自分が間違ったことしているとは、自覚していないのだ。
だから、反省もしないし、他者と対立することが多々ある。
勝手に先陣を切ってゆく戦士は、放置しておきたくたとも今は、そうすべきタイミングではない。
敵は、あのワカモトさんを吹き飛ばし、残りの二人までも打ち負かした。
先のスライム戦で消耗しきっていたことも、そうだがそれなりの実力者と見ておいた方が良いだろう。
それを踏まえると、どうしても前衛であるグゼンの力が必要不可欠になる。
ワカモトさんは、彼を否定していたのは、あくまで私怨だ。
ランキング順位は高くなくとも、俺よか戦力として見込めるのは違いない。
俺たちもグゼンを追うように聖殿の中に入った―――
古拙とは良く言ったものだ。
聖殿内部は、想像してものとは完全に異なっていた。
建築技術が未熟どころか、これを建築と呼べるのかすら怪しいレベルだ。
入口こそ、立派な神殿のような造りをしていたが……そこまでだ。
内部はただの巨大な空洞であった。
空洞には、ところどころ手を加えて作られた柱や階段などが点在するが、だからなんだと言いたくもなる。
地質、九割以上は自然の恩恵でできている。
唯一、建築家の頑張り見受けられる箇所は、夜の営みについて描かれた卑猥な壁画だけだ。
これを素朴で趣があるモノと評価した奴らの感性を疑う。
「まだ、かがり火がついているな。注意して進もう」
開けた場所に着くなり、グゼンがらしからぬことを言ってきた。
戦士の勘がそう告げるのか、ここに来て辺りを警戒しだした。
どこにどんな危険が潜んでいるのか?
分からないのはかなり、精神に堪える。
できるだけ目立たないように俺たちは物陰に隠れて先へと向かった。
「グゼン、そこの床を踏むんじゃないよ!」
「あっ? 床がどうしたんだ?」
ワカモトさんが忠告した傍から、グゼンの足元がガクッと沈み込んだ。
途端、頭上に垂れ下がっていた、つららのような鋭角が、有無を言わさず降り注いできた。
俺たちは死に物狂いで、その場から走り去った。
移動していても尚、つらら石が後を追ってくる。
「のぉ、ざけんなよぉ――――!!」
先頭をゆくグゼンが喚き出した。
見ると前方の坂から、大玉の岩石がこちらに向かって転がり落ちて来ていた。
迂回する道などどこにもない、俺たちはこのまま真っすぐに突き進んで大玉をどうにかしないといけない。
切羽詰まった状態で、誰かが解決策を導いてくれることを期待したくとも、肝心の二人は、俺の方に視線を注いで
いる。
駄目だ、こりゃ……他力、本願もいいところだ。
「婆、魔法であの岩を粉々できねぇのかよ!?」
「馬鹿言ってんじゃないよ。あんな大岩どうやって破壊するんだい? アンタこそ自慢の剣技でどうにかしなっ!」
転がり落ちてくる大玉は、丁度通路ギリギリのサイズ。
俺たちが逃れるとしたら、唯一スペースが拡がっている天井の方だ。
しかし、ことはそう上手くはいかない。
壁を登るにしても、この突起もないツルツルの壁を登るのは、ほぼ不可能に近い。
「うわわわぁああ―――。もう、駄目だぁあ――――!! 岩に潰されちまうぅぅぅ」
「グゼン、狼狽えるな! くそっ、上が駄目なら……こうだ!!」
自身のスキルブックを開いたまま、俺は進行方向へとかざした。
ぶっちゃけ、こういう使い方だけはしたくはなかった。
けれど、背に腹は代えられない。これは、ゲームではなく現実だ……死んだらリスポーンすることなどない。
だからこそ、自信の甘さを捨て覚悟する必要がある。
スキルブックから、大量のグラビアが放流される。
積み重なってゆく、それらは瞬く間に本の山を築き滑空台へとなる。
「二人とも、足を止めるなよ。このまま、構わず突っ走るんだ!」
即席のジャンプ台に誘導され大玉が俺たちの真上を飛翔する。
けれど、浮力より重さの方が勝って充分な高さが確保できていない。
「しまっ―――」
「任せろ! ソニックブーム!!」
グゼンによる追撃の衝撃波が大玉を更に上へと押し上げた。
今がチャンスだと、グラビラの山を瞬時に回収する。
背後で地響きが鳴り空洞全体を振動させた。
息を切らせながらも坂道を登りきった俺たちは、全身汗だくとなっていた。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
起きるとそこは、森の中。可愛いトラさんが涎を垂らして、こっちをチラ見!もふもふ生活開始の気配(原題.真説・森の獣
ゆうた
ファンタジー
起きると、そこは森の中。パニックになって、
周りを見渡すと暗くてなんも見えない。
特殊能力も付与されず、原生林でどうするの。
誰か助けて。
遠くから、獣の遠吠えが聞こえてくる。
これって、やばいんじゃない。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
風ノ旅人
東 村長
ファンタジー
風の神の寵愛『風の加護』を持った少年『ソラ』は、突然家から居なくなってしまった母の『フーシャ』を探しに旅に出る。文化も暮らす種族も違う、色んな国々を巡り、個性的な人達との『出会いと別れ』を繰り返して、世界を旅していく——
これは、主人公である『ソラ』の旅路を記す物語。
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる