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恋するコペルニクス
24話 古拙の聖殿へ
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「マイトちゃん、大変だよ!!」
「痛い痛い、落ち着けて、ワカモトさん」
俺の肩をしつこく叩いてくるので、脱臼するかと思った。
大変だと訴えているが、一番ヤバイのはワカモトさん自身だ。
目の前の占い師は、推定年齢、八十ぐらいの婆さんだったはずだ。
なのに、どうだろう……魔力枯渇から復帰した彼女は、二十ほど若返っているような気がする。
試しに目をこすってみるも何ら変わり映えはしない。
本当に若返っている……どうなってんだ? この人の身体は?
「落ち着いてなんかいられないよ。シャルちゃんたちが、オメガとかいうハンターに捕まっちまったんだよ~」
「ナ、ナンダッテ?」
まったく、もって何を言い出すのやら。
確か、ボカァー、君たちに締め出しをくらったはずですよね……。
よりよって、ワカモトさんはまだ俺の中に仲間意識があると信じ切っている。
けれど、俺は違う……。
冒険者とって信頼感というのはもっとも重要だ。
一度失ったら、なかなか取り戻せない。
仲間とは、ダンジョン攻略にて、背中を預ける相手だ。
容易に切り捨ててくる輩とは、なるべく関わりたくはない。
理由が理由であるため、シビアになるのは当然のことである。
まぁ……話を聞くだけ聞いてみるか。
「まさか、俺たちに二人を助ける手伝いをしろと? 見ての通り俺の足はこの有様だ……手当したのおかげで少しずつ痛みは和らいでいるが、走るまで回復するのには、まだ時間が必要だ」
「世話がやける子だね、どれ婆に診せてみな。スキルブック、知恵袋……回復魔法、モルフィーネ!」
「ちょっ……やめ……って? おおぅ! なんか痛みが急に消えたぞ!!」
名前からしてヤバそうな魔法をかけられ、一瞬だけ意識が途切れかけた。
このまま生死の境をさまようのか? そう思った矢先、婆の魔法が効果を発揮した。
負傷していた足が復活した。もう痛みを堪えることもないし、グゼンに背負われる心配もない。
厳密には完治していなくとも、嬉しさのあまり、そこはスルーされることとなった。
「ハンターたちは私たちだけじゃない。マイトちゃんたちも捕まえようと躍起になっているのよ」
「知っている。俺たちの方も、同じ名前のハンターから襲撃を受けた。三兄弟って言っていたから多分、残りの一人はサトランを追っているかもしれない」
「なんだい!? さっちゃんとはぐれちまったのかい……そうなると荷物が増えるだけさね」
おいおいおいおい、本音がだだ漏れですぞ。
オブラートに包むとかできませんかね?
よほど、サトランを当てにしていたのだろう。居ないとわかった途端の落胆ぶりが実に顕著だ。
とは言え、悪いの俺らではない。
なりふり構わず逃げ出した、さっちゃんの奴だ。
隙あらば、マウントを取ってやろうと思ったが……なかなか難しそうだ。
まず、ワカモトさんは、俺のスキルブックが進化した事を知らない。
彼女の評価は、囮役のマイトのままで止まっている。
役立たずの汚名を返上するには、フォトグラファーのスキルブックで例の魔王を召喚できればいいのだが……どうやれば発動成功するのか、分からない。
仮にできたとしても、やはり召喚するのは躊躇われる。
あの勝手、気ままな魔王が俺の言うことを素直に聞くと思えないからだ。
「どの道、このままでは全員、お縄になっちまう。捕まるとどうなるのか、アンタだって分かっているはず……。納得いかないだろうけど、利害は一致してんだ。再度、パーティーを結成しようじゃないか!?」
「素敵な提案だが、ゴメンこうむる。そう手のひらを返されても、簡単に応じられるわけないだろう! 一度壊れた関係は修復するのは並大抵のことではできないと思う」
ありのままの気持ちを俺は、追放した彼女にぶつけた。
断られたことにどのような反応を示すのか? 内心、不安だった。
逆上して魔法攻撃されたらたまったモノではない。
俺の予想とは裏腹に、ワカモトさんの反応は素気ないモノだった。
「そうかい、残念だね」と言っただけで終了してしまった。
さすが、年の功だと感心……できるわけがない。
この手の引き際の良さは非常に危険だ。
澄ました顔をしているが、おそらく、内心では腸を煮えくり返している。
いずれ、どこかで仕返しされる。そんな悪い予感しかしない。
「おい、婆! 聞いていたぜ。テメェー何、俺抜きで話を進めてんだ?」
色々と吸い取られていたグゼンがようやく復活した。
トラウマを植え付けられて、正直、軽く精神が逝ったんじゃないと思われたが、存外平気みたいだ。
「大丈夫なのか? グゼン、一時は干物みたいになっていたけど……」
「んあ? 何の話だ? それよりもマイト、俺はガールズたちを助けるぜ」
白い歯を見せながら、爽やかに笑っているがガールズは複数形で達は不要ではないのか?
相変わらず、ツッコミどころが満載だ。
今の返答から察するに、奴はワカモトさんに唇を奪われたこと自体、記憶から消去してしまっている。
憶えていないのなら、それにこしたことはない。
できれば、その隠しきれていない下心も消せていれば良かったのだが……。
「いや、アンタは要らんわ」
股間を設営するグゼンに、心の底から嫌悪感を吐き出すワカモトさん。
生理現象だと、フォローをいれるべきなのだろうか?
依然として二人の不仲さは、まったく変動していないようだ。
このままでは、ハンターに捕えられたリンたちを救うのは望み薄だろう。
「痛い痛い、落ち着けて、ワカモトさん」
俺の肩をしつこく叩いてくるので、脱臼するかと思った。
大変だと訴えているが、一番ヤバイのはワカモトさん自身だ。
目の前の占い師は、推定年齢、八十ぐらいの婆さんだったはずだ。
なのに、どうだろう……魔力枯渇から復帰した彼女は、二十ほど若返っているような気がする。
試しに目をこすってみるも何ら変わり映えはしない。
本当に若返っている……どうなってんだ? この人の身体は?
「落ち着いてなんかいられないよ。シャルちゃんたちが、オメガとかいうハンターに捕まっちまったんだよ~」
「ナ、ナンダッテ?」
まったく、もって何を言い出すのやら。
確か、ボカァー、君たちに締め出しをくらったはずですよね……。
よりよって、ワカモトさんはまだ俺の中に仲間意識があると信じ切っている。
けれど、俺は違う……。
冒険者とって信頼感というのはもっとも重要だ。
一度失ったら、なかなか取り戻せない。
仲間とは、ダンジョン攻略にて、背中を預ける相手だ。
容易に切り捨ててくる輩とは、なるべく関わりたくはない。
理由が理由であるため、シビアになるのは当然のことである。
まぁ……話を聞くだけ聞いてみるか。
「まさか、俺たちに二人を助ける手伝いをしろと? 見ての通り俺の足はこの有様だ……手当したのおかげで少しずつ痛みは和らいでいるが、走るまで回復するのには、まだ時間が必要だ」
「世話がやける子だね、どれ婆に診せてみな。スキルブック、知恵袋……回復魔法、モルフィーネ!」
「ちょっ……やめ……って? おおぅ! なんか痛みが急に消えたぞ!!」
名前からしてヤバそうな魔法をかけられ、一瞬だけ意識が途切れかけた。
このまま生死の境をさまようのか? そう思った矢先、婆の魔法が効果を発揮した。
負傷していた足が復活した。もう痛みを堪えることもないし、グゼンに背負われる心配もない。
厳密には完治していなくとも、嬉しさのあまり、そこはスルーされることとなった。
「ハンターたちは私たちだけじゃない。マイトちゃんたちも捕まえようと躍起になっているのよ」
「知っている。俺たちの方も、同じ名前のハンターから襲撃を受けた。三兄弟って言っていたから多分、残りの一人はサトランを追っているかもしれない」
「なんだい!? さっちゃんとはぐれちまったのかい……そうなると荷物が増えるだけさね」
おいおいおいおい、本音がだだ漏れですぞ。
オブラートに包むとかできませんかね?
よほど、サトランを当てにしていたのだろう。居ないとわかった途端の落胆ぶりが実に顕著だ。
とは言え、悪いの俺らではない。
なりふり構わず逃げ出した、さっちゃんの奴だ。
隙あらば、マウントを取ってやろうと思ったが……なかなか難しそうだ。
まず、ワカモトさんは、俺のスキルブックが進化した事を知らない。
彼女の評価は、囮役のマイトのままで止まっている。
役立たずの汚名を返上するには、フォトグラファーのスキルブックで例の魔王を召喚できればいいのだが……どうやれば発動成功するのか、分からない。
仮にできたとしても、やはり召喚するのは躊躇われる。
あの勝手、気ままな魔王が俺の言うことを素直に聞くと思えないからだ。
「どの道、このままでは全員、お縄になっちまう。捕まるとどうなるのか、アンタだって分かっているはず……。納得いかないだろうけど、利害は一致してんだ。再度、パーティーを結成しようじゃないか!?」
「素敵な提案だが、ゴメンこうむる。そう手のひらを返されても、簡単に応じられるわけないだろう! 一度壊れた関係は修復するのは並大抵のことではできないと思う」
ありのままの気持ちを俺は、追放した彼女にぶつけた。
断られたことにどのような反応を示すのか? 内心、不安だった。
逆上して魔法攻撃されたらたまったモノではない。
俺の予想とは裏腹に、ワカモトさんの反応は素気ないモノだった。
「そうかい、残念だね」と言っただけで終了してしまった。
さすが、年の功だと感心……できるわけがない。
この手の引き際の良さは非常に危険だ。
澄ました顔をしているが、おそらく、内心では腸を煮えくり返している。
いずれ、どこかで仕返しされる。そんな悪い予感しかしない。
「おい、婆! 聞いていたぜ。テメェー何、俺抜きで話を進めてんだ?」
色々と吸い取られていたグゼンがようやく復活した。
トラウマを植え付けられて、正直、軽く精神が逝ったんじゃないと思われたが、存外平気みたいだ。
「大丈夫なのか? グゼン、一時は干物みたいになっていたけど……」
「んあ? 何の話だ? それよりもマイト、俺はガールズたちを助けるぜ」
白い歯を見せながら、爽やかに笑っているがガールズは複数形で達は不要ではないのか?
相変わらず、ツッコミどころが満載だ。
今の返答から察するに、奴はワカモトさんに唇を奪われたこと自体、記憶から消去してしまっている。
憶えていないのなら、それにこしたことはない。
できれば、その隠しきれていない下心も消せていれば良かったのだが……。
「いや、アンタは要らんわ」
股間を設営するグゼンに、心の底から嫌悪感を吐き出すワカモトさん。
生理現象だと、フォローをいれるべきなのだろうか?
依然として二人の不仲さは、まったく変動していないようだ。
このままでは、ハンターに捕えられたリンたちを救うのは望み薄だろう。
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