24 / 122
恋するコペルニクス
24話 古拙の聖殿へ
しおりを挟む
「マイトちゃん、大変だよ!!」
「痛い痛い、落ち着けて、ワカモトさん」
俺の肩をしつこく叩いてくるので、脱臼するかと思った。
大変だと訴えているが、一番ヤバイのはワカモトさん自身だ。
目の前の占い師は、推定年齢、八十ぐらいの婆さんだったはずだ。
なのに、どうだろう……魔力枯渇から復帰した彼女は、二十ほど若返っているような気がする。
試しに目をこすってみるも何ら変わり映えはしない。
本当に若返っている……どうなってんだ? この人の身体は?
「落ち着いてなんかいられないよ。シャルちゃんたちが、オメガとかいうハンターに捕まっちまったんだよ~」
「ナ、ナンダッテ?」
まったく、もって何を言い出すのやら。
確か、ボカァー、君たちに締め出しをくらったはずですよね……。
よりよって、ワカモトさんはまだ俺の中に仲間意識があると信じ切っている。
けれど、俺は違う……。
冒険者とって信頼感というのはもっとも重要だ。
一度失ったら、なかなか取り戻せない。
仲間とは、ダンジョン攻略にて、背中を預ける相手だ。
容易に切り捨ててくる輩とは、なるべく関わりたくはない。
理由が理由であるため、シビアになるのは当然のことである。
まぁ……話を聞くだけ聞いてみるか。
「まさか、俺たちに二人を助ける手伝いをしろと? 見ての通り俺の足はこの有様だ……手当したのおかげで少しずつ痛みは和らいでいるが、走るまで回復するのには、まだ時間が必要だ」
「世話がやける子だね、どれ婆に診せてみな。スキルブック、知恵袋……回復魔法、モルフィーネ!」
「ちょっ……やめ……って? おおぅ! なんか痛みが急に消えたぞ!!」
名前からしてヤバそうな魔法をかけられ、一瞬だけ意識が途切れかけた。
このまま生死の境をさまようのか? そう思った矢先、婆の魔法が効果を発揮した。
負傷していた足が復活した。もう痛みを堪えることもないし、グゼンに背負われる心配もない。
厳密には完治していなくとも、嬉しさのあまり、そこはスルーされることとなった。
「ハンターたちは私たちだけじゃない。マイトちゃんたちも捕まえようと躍起になっているのよ」
「知っている。俺たちの方も、同じ名前のハンターから襲撃を受けた。三兄弟って言っていたから多分、残りの一人はサトランを追っているかもしれない」
「なんだい!? さっちゃんとはぐれちまったのかい……そうなると荷物が増えるだけさね」
おいおいおいおい、本音がだだ漏れですぞ。
オブラートに包むとかできませんかね?
よほど、サトランを当てにしていたのだろう。居ないとわかった途端の落胆ぶりが実に顕著だ。
とは言え、悪いの俺らではない。
なりふり構わず逃げ出した、さっちゃんの奴だ。
隙あらば、マウントを取ってやろうと思ったが……なかなか難しそうだ。
まず、ワカモトさんは、俺のスキルブックが進化した事を知らない。
彼女の評価は、囮役のマイトのままで止まっている。
役立たずの汚名を返上するには、フォトグラファーのスキルブックで例の魔王を召喚できればいいのだが……どうやれば発動成功するのか、分からない。
仮にできたとしても、やはり召喚するのは躊躇われる。
あの勝手、気ままな魔王が俺の言うことを素直に聞くと思えないからだ。
「どの道、このままでは全員、お縄になっちまう。捕まるとどうなるのか、アンタだって分かっているはず……。納得いかないだろうけど、利害は一致してんだ。再度、パーティーを結成しようじゃないか!?」
「素敵な提案だが、ゴメンこうむる。そう手のひらを返されても、簡単に応じられるわけないだろう! 一度壊れた関係は修復するのは並大抵のことではできないと思う」
ありのままの気持ちを俺は、追放した彼女にぶつけた。
断られたことにどのような反応を示すのか? 内心、不安だった。
逆上して魔法攻撃されたらたまったモノではない。
俺の予想とは裏腹に、ワカモトさんの反応は素気ないモノだった。
「そうかい、残念だね」と言っただけで終了してしまった。
さすが、年の功だと感心……できるわけがない。
この手の引き際の良さは非常に危険だ。
澄ました顔をしているが、おそらく、内心では腸を煮えくり返している。
いずれ、どこかで仕返しされる。そんな悪い予感しかしない。
「おい、婆! 聞いていたぜ。テメェー何、俺抜きで話を進めてんだ?」
色々と吸い取られていたグゼンがようやく復活した。
トラウマを植え付けられて、正直、軽く精神が逝ったんじゃないと思われたが、存外平気みたいだ。
「大丈夫なのか? グゼン、一時は干物みたいになっていたけど……」
「んあ? 何の話だ? それよりもマイト、俺はガールズたちを助けるぜ」
白い歯を見せながら、爽やかに笑っているがガールズは複数形で達は不要ではないのか?
相変わらず、ツッコミどころが満載だ。
今の返答から察するに、奴はワカモトさんに唇を奪われたこと自体、記憶から消去してしまっている。
憶えていないのなら、それにこしたことはない。
できれば、その隠しきれていない下心も消せていれば良かったのだが……。
「いや、アンタは要らんわ」
股間を設営するグゼンに、心の底から嫌悪感を吐き出すワカモトさん。
生理現象だと、フォローをいれるべきなのだろうか?
依然として二人の不仲さは、まったく変動していないようだ。
このままでは、ハンターに捕えられたリンたちを救うのは望み薄だろう。
「痛い痛い、落ち着けて、ワカモトさん」
俺の肩をしつこく叩いてくるので、脱臼するかと思った。
大変だと訴えているが、一番ヤバイのはワカモトさん自身だ。
目の前の占い師は、推定年齢、八十ぐらいの婆さんだったはずだ。
なのに、どうだろう……魔力枯渇から復帰した彼女は、二十ほど若返っているような気がする。
試しに目をこすってみるも何ら変わり映えはしない。
本当に若返っている……どうなってんだ? この人の身体は?
「落ち着いてなんかいられないよ。シャルちゃんたちが、オメガとかいうハンターに捕まっちまったんだよ~」
「ナ、ナンダッテ?」
まったく、もって何を言い出すのやら。
確か、ボカァー、君たちに締め出しをくらったはずですよね……。
よりよって、ワカモトさんはまだ俺の中に仲間意識があると信じ切っている。
けれど、俺は違う……。
冒険者とって信頼感というのはもっとも重要だ。
一度失ったら、なかなか取り戻せない。
仲間とは、ダンジョン攻略にて、背中を預ける相手だ。
容易に切り捨ててくる輩とは、なるべく関わりたくはない。
理由が理由であるため、シビアになるのは当然のことである。
まぁ……話を聞くだけ聞いてみるか。
「まさか、俺たちに二人を助ける手伝いをしろと? 見ての通り俺の足はこの有様だ……手当したのおかげで少しずつ痛みは和らいでいるが、走るまで回復するのには、まだ時間が必要だ」
「世話がやける子だね、どれ婆に診せてみな。スキルブック、知恵袋……回復魔法、モルフィーネ!」
「ちょっ……やめ……って? おおぅ! なんか痛みが急に消えたぞ!!」
名前からしてヤバそうな魔法をかけられ、一瞬だけ意識が途切れかけた。
このまま生死の境をさまようのか? そう思った矢先、婆の魔法が効果を発揮した。
負傷していた足が復活した。もう痛みを堪えることもないし、グゼンに背負われる心配もない。
厳密には完治していなくとも、嬉しさのあまり、そこはスルーされることとなった。
「ハンターたちは私たちだけじゃない。マイトちゃんたちも捕まえようと躍起になっているのよ」
「知っている。俺たちの方も、同じ名前のハンターから襲撃を受けた。三兄弟って言っていたから多分、残りの一人はサトランを追っているかもしれない」
「なんだい!? さっちゃんとはぐれちまったのかい……そうなると荷物が増えるだけさね」
おいおいおいおい、本音がだだ漏れですぞ。
オブラートに包むとかできませんかね?
よほど、サトランを当てにしていたのだろう。居ないとわかった途端の落胆ぶりが実に顕著だ。
とは言え、悪いの俺らではない。
なりふり構わず逃げ出した、さっちゃんの奴だ。
隙あらば、マウントを取ってやろうと思ったが……なかなか難しそうだ。
まず、ワカモトさんは、俺のスキルブックが進化した事を知らない。
彼女の評価は、囮役のマイトのままで止まっている。
役立たずの汚名を返上するには、フォトグラファーのスキルブックで例の魔王を召喚できればいいのだが……どうやれば発動成功するのか、分からない。
仮にできたとしても、やはり召喚するのは躊躇われる。
あの勝手、気ままな魔王が俺の言うことを素直に聞くと思えないからだ。
「どの道、このままでは全員、お縄になっちまう。捕まるとどうなるのか、アンタだって分かっているはず……。納得いかないだろうけど、利害は一致してんだ。再度、パーティーを結成しようじゃないか!?」
「素敵な提案だが、ゴメンこうむる。そう手のひらを返されても、簡単に応じられるわけないだろう! 一度壊れた関係は修復するのは並大抵のことではできないと思う」
ありのままの気持ちを俺は、追放した彼女にぶつけた。
断られたことにどのような反応を示すのか? 内心、不安だった。
逆上して魔法攻撃されたらたまったモノではない。
俺の予想とは裏腹に、ワカモトさんの反応は素気ないモノだった。
「そうかい、残念だね」と言っただけで終了してしまった。
さすが、年の功だと感心……できるわけがない。
この手の引き際の良さは非常に危険だ。
澄ました顔をしているが、おそらく、内心では腸を煮えくり返している。
いずれ、どこかで仕返しされる。そんな悪い予感しかしない。
「おい、婆! 聞いていたぜ。テメェー何、俺抜きで話を進めてんだ?」
色々と吸い取られていたグゼンがようやく復活した。
トラウマを植え付けられて、正直、軽く精神が逝ったんじゃないと思われたが、存外平気みたいだ。
「大丈夫なのか? グゼン、一時は干物みたいになっていたけど……」
「んあ? 何の話だ? それよりもマイト、俺はガールズたちを助けるぜ」
白い歯を見せながら、爽やかに笑っているがガールズは複数形で達は不要ではないのか?
相変わらず、ツッコミどころが満載だ。
今の返答から察するに、奴はワカモトさんに唇を奪われたこと自体、記憶から消去してしまっている。
憶えていないのなら、それにこしたことはない。
できれば、その隠しきれていない下心も消せていれば良かったのだが……。
「いや、アンタは要らんわ」
股間を設営するグゼンに、心の底から嫌悪感を吐き出すワカモトさん。
生理現象だと、フォローをいれるべきなのだろうか?
依然として二人の不仲さは、まったく変動していないようだ。
このままでは、ハンターに捕えられたリンたちを救うのは望み薄だろう。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
ダンジョン美食倶楽部
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。
身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。
配信で明るみになる、洋一の隠された技能。
素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。
一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。
※カクヨム様で先行公開中!
※2024年3月21で第一部完!
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?
カタナヅキ
ファンタジー
現実世界で普通の高校生として過ごしていた「白崎レナ」は謎の空間の亀裂に飲み込まれ、狭間の世界と呼ばれる空間に移動していた。彼はそこで世界の「管理者」と名乗る女性と出会い、彼女と何時でも交信できる能力を授かり、異世界に転生される。
次に彼が意識を取り戻した時には見知らぬ女性と男性が激しく口論しており、会話の内容から自分達から誕生した赤子は呪われた子供であり、王位を継ぐ権利はないと男性が怒鳴り散らしている事を知る。そして子供というのが自分自身である事にレナは気付き、彼は母親と供に追い出された。
時は流れ、成長したレナは自分がこの世界では不遇職として扱われている「支援魔術師」と「錬金術師」の職業を習得している事が判明し、更に彼は一般的には扱われていないスキルばかり習得してしまう。多くの人間から見下され、実の姉弟からも馬鹿にされてしまうが、彼は決して挫けずに自分の能力を信じて生き抜く――
――後にレナは自分の得た職業とスキルの真の力を「世界の管理者」を名乗る女性のアイリスに伝えられ、自分を見下していた人間から逆に見上げられる立場になる事を彼は知らない。
※タイトルを変更しました。(旧題:不遇職に役立たずスキルと馬鹿にされましたが、実際はそれほど悪くはありません)。書籍化に伴い、一部の話を取り下げました。また、近い内に大幅な取り下げが行われます。
※11月22日に第一巻が発売されます!!また、書籍版では主人公の名前が「レナ」→「レイト」に変更しています。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~
川原源明
ファンタジー
秋津直人、85歳。
50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。
嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。
彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。
白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。
胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。
そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。
まずは最強の称号を得よう!
地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語
※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編
※医療現場の恋物語 馴れ初め編
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる