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自由へのゴング
20話 ハンターの追撃
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賞金稼ぎはそのポイント目的で集まってくる。
基本、奴らは容赦ない。
そこに常識も倫理もくそもない……獲物がいるのなら、迷わず刈り取ってくる。
非常に偏った思想を持つ危険な集団だ。
「一人で何ができんだ? あぁ!」
お約束といわんばかりにグゼンがマウンティングしようとしていた。
その辺のチンピラと、なんら変わりない威嚇っぷりだ。
「いいや……トモダチを百人ほど連れてきたよ!!」
小指で耳糞をかっぽじりながら鎌男は答えた。
辺りを見渡すと、周囲に続々とギャラリーが集結していた。
これが賊の集会でないとしたら、全員バウンティハンターという事になる。
「ふっ……すでに一年生は卒業済みか」
何、言ってんだ……この戦士は。
強がるグゼンだが、その足下は小鹿ように震えている。
無理もない、仮に連中がグゼンよりランキングが低くとも集団でかかれば、話は別だ。
いくら弱い攻撃でも回数を重ねれば、ダメージは蓄積されてゆく。
いわばレイドのモンスター状態。
俺たちでは、百人もの相手にどうにかできるとは思えない。
「数の暴力かよ……」
口元を噛みしめる俺を見て、鎌男がニチャニチャと含み笑いを浮かべていた。
その姿にふと、自分たちの姿を重ね合わせていた。
俺たちも下位ランカーを追い詰めて、このようなイヤらしい顔をしていたに違いない。
無抵抗の者をなぶるのは、抵抗があった。
にもかかわらず、周りの雰囲気にのまれて手を貸してしまったのは誰でもない。
この俺自身だ。
「かかれ。奴らを討ち取った者には報酬を上乗せするぞ」
鎌男の号令に、場がいっそう活気づく。
手柄は自分のものだと我先にハンターたちがひしめき合う。
すでに囲まれて始めている状況を、どう切り抜ければいいと言うんだ。
「ボサッとしてんじゃねぇよ! あくしろ、マイト」
「無理だグゼン! 足が折れて動けない」
「ちっ……」グゼンが屈み、背中をこちらに向けた。
らしくない戦士の行動に、戸惑っていると怒号が飛んでくる。
「おら、早くしろ! このままだと、俺たち全員、消されるぞ!!」
勢いに負け彼の背に飛び乗った。
グゼンの言うとおりだ。こうなった以上、四の五の言ってられない。
「ウオオオオオオオ―――――レッツ! トライ!」
意味不明な掛け声とともに戦士が厳つい身体を突き動かす。
ダンジョン奥にむかい駆けだしているが人一人を背負っている分、やはり速度が上がらない。
進行方向にハンターたちが塊だしている。
やはり、この窮地を脱するには彼女の力に頼るしかない!
「スキルブック、フォトグラファー! 出でよ、魔王――――」
魂の叫びに敵味方問わず、沈黙した。
シーンと静まりかえる中、ドタドタと足音だけが近づいてくる。
群れだ……人が猛牛のようだ。
「マイトよ……今の寒い台詞は何な「やめてぇええええええ―――――!!」
発動したのは、真スキルではなくグラビアの方だった。
グラビアである以上、当然ながら魔王デスブリンガーは出てこない。
スライムと戦った時のファインプレーはまぐれだった……のか。
気落ちする暇もなく、状況は厳しくなる。
「こうなれば、本日のレシピで奴らを一網打尽にしてやるぜ!」
「落ち着けよ。俺を背負ったまま、その大包丁を豪快に振り回せるわけないだろう」
依然として両手に握られた大剣型の包丁二本。
さっきまで調理用で使用していた刃で人を切り伏せようとしている、この男は軽く頭が逝ってる。
なんにせよ、その包丁は使わせていけない。
今後の食卓が血生臭くなる。
メインウエポンであるツヴァイヘンダーのムタソードは置き去りにしたままだった。
戦士としては致命的だが、戦士としての活躍が見込めない彼には問題なかろう。
「もう、敵が前に来ているぞ!」
「クッソ――――、頼む、力を貸してくれ」
祈るような気持ちでグラビアを開く。
躍起になった苦し紛れの行動は思いもよらない結果を生んだ。
開いたページの中から次々に、人物写真が飛び出してくる。
「なんだ? これは? マイト、お前のスキルブックどうなってんだよ!?」
不可解な出来事に、グゼンが真顔で鼻の下を伸ばしていた。
「――――ぎ特集だ」
「ほぉん? けしからんぞ、これはぁああ!!」
「輝け! 水着アイドル特集ぅぅぅ。全国のツツウラウラのアイドルたちが一挙に集結した大スペクタル、その一ページがこれだぁあああ!!」
俺たちの青春が始まった。
この暗く空気の淀んだ穴ぐらの中で、ひとときのオアシスが訪れた。
右を見ればスクール水着。左を見ればビキニ。
背後では今をときめくアイドルたち五十人が整列し、自慢のプロポーションでハンターたちを悩殺している。
「しゃああああ、勝ったぁあああ!」先生の自壊作にご期待ください。
基本、奴らは容赦ない。
そこに常識も倫理もくそもない……獲物がいるのなら、迷わず刈り取ってくる。
非常に偏った思想を持つ危険な集団だ。
「一人で何ができんだ? あぁ!」
お約束といわんばかりにグゼンがマウンティングしようとしていた。
その辺のチンピラと、なんら変わりない威嚇っぷりだ。
「いいや……トモダチを百人ほど連れてきたよ!!」
小指で耳糞をかっぽじりながら鎌男は答えた。
辺りを見渡すと、周囲に続々とギャラリーが集結していた。
これが賊の集会でないとしたら、全員バウンティハンターという事になる。
「ふっ……すでに一年生は卒業済みか」
何、言ってんだ……この戦士は。
強がるグゼンだが、その足下は小鹿ように震えている。
無理もない、仮に連中がグゼンよりランキングが低くとも集団でかかれば、話は別だ。
いくら弱い攻撃でも回数を重ねれば、ダメージは蓄積されてゆく。
いわばレイドのモンスター状態。
俺たちでは、百人もの相手にどうにかできるとは思えない。
「数の暴力かよ……」
口元を噛みしめる俺を見て、鎌男がニチャニチャと含み笑いを浮かべていた。
その姿にふと、自分たちの姿を重ね合わせていた。
俺たちも下位ランカーを追い詰めて、このようなイヤらしい顔をしていたに違いない。
無抵抗の者をなぶるのは、抵抗があった。
にもかかわらず、周りの雰囲気にのまれて手を貸してしまったのは誰でもない。
この俺自身だ。
「かかれ。奴らを討ち取った者には報酬を上乗せするぞ」
鎌男の号令に、場がいっそう活気づく。
手柄は自分のものだと我先にハンターたちがひしめき合う。
すでに囲まれて始めている状況を、どう切り抜ければいいと言うんだ。
「ボサッとしてんじゃねぇよ! あくしろ、マイト」
「無理だグゼン! 足が折れて動けない」
「ちっ……」グゼンが屈み、背中をこちらに向けた。
らしくない戦士の行動に、戸惑っていると怒号が飛んでくる。
「おら、早くしろ! このままだと、俺たち全員、消されるぞ!!」
勢いに負け彼の背に飛び乗った。
グゼンの言うとおりだ。こうなった以上、四の五の言ってられない。
「ウオオオオオオオ―――――レッツ! トライ!」
意味不明な掛け声とともに戦士が厳つい身体を突き動かす。
ダンジョン奥にむかい駆けだしているが人一人を背負っている分、やはり速度が上がらない。
進行方向にハンターたちが塊だしている。
やはり、この窮地を脱するには彼女の力に頼るしかない!
「スキルブック、フォトグラファー! 出でよ、魔王――――」
魂の叫びに敵味方問わず、沈黙した。
シーンと静まりかえる中、ドタドタと足音だけが近づいてくる。
群れだ……人が猛牛のようだ。
「マイトよ……今の寒い台詞は何な「やめてぇええええええ―――――!!」
発動したのは、真スキルではなくグラビアの方だった。
グラビアである以上、当然ながら魔王デスブリンガーは出てこない。
スライムと戦った時のファインプレーはまぐれだった……のか。
気落ちする暇もなく、状況は厳しくなる。
「こうなれば、本日のレシピで奴らを一網打尽にしてやるぜ!」
「落ち着けよ。俺を背負ったまま、その大包丁を豪快に振り回せるわけないだろう」
依然として両手に握られた大剣型の包丁二本。
さっきまで調理用で使用していた刃で人を切り伏せようとしている、この男は軽く頭が逝ってる。
なんにせよ、その包丁は使わせていけない。
今後の食卓が血生臭くなる。
メインウエポンであるツヴァイヘンダーのムタソードは置き去りにしたままだった。
戦士としては致命的だが、戦士としての活躍が見込めない彼には問題なかろう。
「もう、敵が前に来ているぞ!」
「クッソ――――、頼む、力を貸してくれ」
祈るような気持ちでグラビアを開く。
躍起になった苦し紛れの行動は思いもよらない結果を生んだ。
開いたページの中から次々に、人物写真が飛び出してくる。
「なんだ? これは? マイト、お前のスキルブックどうなってんだよ!?」
不可解な出来事に、グゼンが真顔で鼻の下を伸ばしていた。
「――――ぎ特集だ」
「ほぉん? けしからんぞ、これはぁああ!!」
「輝け! 水着アイドル特集ぅぅぅ。全国のツツウラウラのアイドルたちが一挙に集結した大スペクタル、その一ページがこれだぁあああ!!」
俺たちの青春が始まった。
この暗く空気の淀んだ穴ぐらの中で、ひとときのオアシスが訪れた。
右を見ればスクール水着。左を見ればビキニ。
背後では今をときめくアイドルたち五十人が整列し、自慢のプロポーションでハンターたちを悩殺している。
「しゃああああ、勝ったぁあああ!」先生の自壊作にご期待ください。
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