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自由へのゴング
13話 咎人
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覚醒したスキル、フォトグラファーのおかげで九死に一生を得た。
慣れないスキルを使用したのと、安堵感からか、どっと疲れが押し寄せてきた。
誰一人として勝利に歓喜する者はいない。
俺同様、最悪を覚悟していたパーティーメンバーたちも、その場でへたり込んでいた。
「な、ななん…………なの、この娘!」
リンがササブリを指さし取り乱していた。
別次元の力……理解の及ばない、格の差を目の当たりにして、彼女は自制心が保てなくなっていた。
なんせ、相手は胸に二つの爆弾を抱え込んでいるんだ。見た目だけで一線を画している。
もとから非力な俺とは違い、リンはそれなりに腕の立つ冒険者でプライドもある。
そんな彼女が戦わずして敗北した。
だからこそ余計に、ポッと出てきた新人の活躍が解せないのだろう。
「ち、違うわよ! このセクハラ変態!! どうして、アンタのスキルブックから女の子が出てきたのか? 分からないから混乱してんのよ」
「それは、どうでもいい事じゃないのか……?」
「あるわけないでしょ!! 馬鹿マイト!」
怒られた……前世から数えて四半世紀ぶりにツンデレを見たような気がする。
まぁ、前世の記憶なんてほとんど残っていないけど。
「私も気になります。すみませんが、ロビー君の状況を説明してくれませんか?」
どうやら、女子たちから詰問を受けているようだ。
若干、強めの口調に俺のスキルについて説明しなくちゃいけない空気になっていた。
スキルのついて無理やり聞きだすのは冒険者とのしてマナー違反だ。
能力とは基本、自らひけらかすものだ。
ただ、時と場合によっては明かさないといけないこともある。
「おい! 主よ、我を本に戻すのじゃ……」
女子たちにどう説明しようか、膝を抱える俺にササブリが懇願してきた。
高圧的な態度であっても、子犬のようなその瞳で見つめられては、聞かないわけがない。
「クローズブック!」スキルブックをしまうと、すぐそこにいた彼女の姿は忽然と消えた。
「はい! 皆、注も――く!」
突如、手を叩くサトランの奇行に全員が目を見張った。
信じらないことに仲間を見捨てて逃走しておきながら、ちゃっかり帰って来やがった。
全員が恨めしい目で睨み返すが、コイツの心にはまったく届いちゃいない。
「今の戦いで、この中にまったーく役に立たないクズがいたねぇ~。それは誰かな?」
「グゼンだろ」俺は真顔で答えた。
「いいや、君だよマイト!! 皆が一生懸命に戦っているのに、君は何をしていたのかなぁ~?」
とんでもない発現に耳を疑った。敵前逃亡した奴が言っていい台詞ではない。
そもそも、俺が魔王を呼び出してスライムを討伐したはずだ! 非難されるいわれはない。
分かっている。コイツがわけも分からない事を言い続けているのは論点ずらしだ。
リーダーとしての責務を放棄したことで皆からの叱責を恐れている。
俺のことを否定することでウヤムヤにし自身の体裁を保とうとしている。
賢者が聞いて呆れる、これでは道化に逆戻りだ。
おどけてみせるサトランは今季一番、気持ち悪かった。
いつものように、女子に囲まれ、チヤホヤされる迷想にふけっている時でさえも、もう少しマシな顔をしている。
「大変、残念だが君はクビだ。僕のパーティーには邪魔な存在だ。出て行け!! 帰って糞して寝ろ」
まったく好き勝手言ってくれる。雇用主気分もいい所だ。
そもそも、このパーティーに参加したのはサトランにしつこく勧誘されたからだ。
俺の方から頼み込んだ覚えは一切ない。
自分たちのランキングポイント稼ぎために利用するだけ利用して、都合が悪くなったら切り捨てる。
ここまで不条理な扱いをされているのに、文句すら言えやしない。
なぜなら、自分が未だ最弱のままだからだ。
スキルブックがなければ、何もできないのは変わらない。
今まで自身の弱さを盾に、彼らの力に頼りきっていた後ろめたさもある。
これがランキングの力。
この弱肉強食の世界で強者の資格を得る為には必要な実績だ。
強者は弱者を支配し、弱者には人権すらあたえられない……ポストアポカリプス。
理由は分からないが、俺のランキングは上昇しない。
普通なら、ランキングはポイントさえ溜めれば勝手に上がるモノらしい。
したがって適性のない俺には冒険者など夢のまた夢だ。
なのに、このセカイではそれ以外に、生きる術がない。
幸い、こんな俺でもパーティーに参加できるだけ利点があった。
低ランク者のみに与えられる特典、獲得ポイント、30パーセント上昇。
戦闘では非力ではあるも、この自身の特性を活かしてパーティーの強化をサポートしてきた。
実際、他のメンバーからも、わりと重宝されていた。
サトランは、リーダーの立場を悪用して独断で俺を追放しようとしていた。
あまりにも傲慢な態度に、周囲も彼の意見に耳を傾けようとはしない。
慣れないスキルを使用したのと、安堵感からか、どっと疲れが押し寄せてきた。
誰一人として勝利に歓喜する者はいない。
俺同様、最悪を覚悟していたパーティーメンバーたちも、その場でへたり込んでいた。
「な、ななん…………なの、この娘!」
リンがササブリを指さし取り乱していた。
別次元の力……理解の及ばない、格の差を目の当たりにして、彼女は自制心が保てなくなっていた。
なんせ、相手は胸に二つの爆弾を抱え込んでいるんだ。見た目だけで一線を画している。
もとから非力な俺とは違い、リンはそれなりに腕の立つ冒険者でプライドもある。
そんな彼女が戦わずして敗北した。
だからこそ余計に、ポッと出てきた新人の活躍が解せないのだろう。
「ち、違うわよ! このセクハラ変態!! どうして、アンタのスキルブックから女の子が出てきたのか? 分からないから混乱してんのよ」
「それは、どうでもいい事じゃないのか……?」
「あるわけないでしょ!! 馬鹿マイト!」
怒られた……前世から数えて四半世紀ぶりにツンデレを見たような気がする。
まぁ、前世の記憶なんてほとんど残っていないけど。
「私も気になります。すみませんが、ロビー君の状況を説明してくれませんか?」
どうやら、女子たちから詰問を受けているようだ。
若干、強めの口調に俺のスキルについて説明しなくちゃいけない空気になっていた。
スキルのついて無理やり聞きだすのは冒険者とのしてマナー違反だ。
能力とは基本、自らひけらかすものだ。
ただ、時と場合によっては明かさないといけないこともある。
「おい! 主よ、我を本に戻すのじゃ……」
女子たちにどう説明しようか、膝を抱える俺にササブリが懇願してきた。
高圧的な態度であっても、子犬のようなその瞳で見つめられては、聞かないわけがない。
「クローズブック!」スキルブックをしまうと、すぐそこにいた彼女の姿は忽然と消えた。
「はい! 皆、注も――く!」
突如、手を叩くサトランの奇行に全員が目を見張った。
信じらないことに仲間を見捨てて逃走しておきながら、ちゃっかり帰って来やがった。
全員が恨めしい目で睨み返すが、コイツの心にはまったく届いちゃいない。
「今の戦いで、この中にまったーく役に立たないクズがいたねぇ~。それは誰かな?」
「グゼンだろ」俺は真顔で答えた。
「いいや、君だよマイト!! 皆が一生懸命に戦っているのに、君は何をしていたのかなぁ~?」
とんでもない発現に耳を疑った。敵前逃亡した奴が言っていい台詞ではない。
そもそも、俺が魔王を呼び出してスライムを討伐したはずだ! 非難されるいわれはない。
分かっている。コイツがわけも分からない事を言い続けているのは論点ずらしだ。
リーダーとしての責務を放棄したことで皆からの叱責を恐れている。
俺のことを否定することでウヤムヤにし自身の体裁を保とうとしている。
賢者が聞いて呆れる、これでは道化に逆戻りだ。
おどけてみせるサトランは今季一番、気持ち悪かった。
いつものように、女子に囲まれ、チヤホヤされる迷想にふけっている時でさえも、もう少しマシな顔をしている。
「大変、残念だが君はクビだ。僕のパーティーには邪魔な存在だ。出て行け!! 帰って糞して寝ろ」
まったく好き勝手言ってくれる。雇用主気分もいい所だ。
そもそも、このパーティーに参加したのはサトランにしつこく勧誘されたからだ。
俺の方から頼み込んだ覚えは一切ない。
自分たちのランキングポイント稼ぎために利用するだけ利用して、都合が悪くなったら切り捨てる。
ここまで不条理な扱いをされているのに、文句すら言えやしない。
なぜなら、自分が未だ最弱のままだからだ。
スキルブックがなければ、何もできないのは変わらない。
今まで自身の弱さを盾に、彼らの力に頼りきっていた後ろめたさもある。
これがランキングの力。
この弱肉強食の世界で強者の資格を得る為には必要な実績だ。
強者は弱者を支配し、弱者には人権すらあたえられない……ポストアポカリプス。
理由は分からないが、俺のランキングは上昇しない。
普通なら、ランキングはポイントさえ溜めれば勝手に上がるモノらしい。
したがって適性のない俺には冒険者など夢のまた夢だ。
なのに、このセカイではそれ以外に、生きる術がない。
幸い、こんな俺でもパーティーに参加できるだけ利点があった。
低ランク者のみに与えられる特典、獲得ポイント、30パーセント上昇。
戦闘では非力ではあるも、この自身の特性を活かしてパーティーの強化をサポートしてきた。
実際、他のメンバーからも、わりと重宝されていた。
サトランは、リーダーの立場を悪用して独断で俺を追放しようとしていた。
あまりにも傲慢な態度に、周囲も彼の意見に耳を傾けようとはしない。
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