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最強! 最高! さあ、逝こう!!

7話 大乱闘2

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 地鳴りが止まない。
 それに追随して、ダンジョン全体が大きく震動していた。
 地震とは違う。まるで、嵐の海原で大波にさらわれた船のような不安定な動きだ。

 手前からドバッと噴出した土石流が押し寄せてきた。

 不味い――――――――――これは、どうにも手に負えない。

 瞳を見開いたまま、俺はその場に立ち尽くした。
 恐怖も不安もない、ただ逃れられない絶望を前に平然と思考する自分がいた。

「ホーリーシールド!!」

「エクスタシーゾーン」

 土砂に飲まれる直前で、シャルの防御魔法とワカモトさんの空間を切り裂くヤツがパーティー全体をおおうカタチで発動した。

 普段は鈍感な癖に、ここ一番で実力を発揮する聖女と奇術という名の魔法を扱うベテラン占い師。
 この二人がスライムの攻撃に対応できたのは奇跡に近い。
 このまま、土石流を抑え込めばイケる。
 そう思った矢先、ワカモトさんが苦しそうに膝をついて屈んでしまった。

「やっぱ、歳には叶わんわ」

 これがということなのか? マイペースを通り越し潔い諦め方をする老婆がそこにいた。

 防御の一角が失われてゆく。そこから少しずつ光の防御壁がひび割れてきた。

 終わった――隣に立つリンが唇を震わせていた。
 俺より上位である彼女でもどうにもできない、その状況が直視できない現実を突きつけてくる。

「はぁー、つくづく使えない奴らだな。スプラッシュファウンテン」

 ホーリーシールドが砕けるのと同時に、複数の水柱が俺たちを取り囲んだ。
 スキルブック・ファンタジアに記載されている水属性攻撃魔法だ。
 所持者の賢者サトランは、それを幾重にも発動させ即席の防御カーテンを生成した。

 悔しいが、アイツは魔法に関しては天才だ。ムッツリスケベな変態だが、賢者で食っていけているだけはある。
 歴然たる力の差を見せつけられてしまえば、奴がいかなる暴言を吐こうともすべて水に流される。
 だからこそ、このパーティー、ゴースティングのリーダーとして座している。
 言動が小者くさかろうと、誰も文句は言えない。
 サトランが、その才を維持し続ける限り……皆、彼のことを正しいと認めざるを得ない。

 なぜなら、俺たちはなのだから。
 ギルドに在籍していても、同業者を狩る俺たちを目のカタキにする奴らは多い。
 このメンツでは行き場など何処にもありはしない。
 お互いが共存関係である事を前提に組まれたパーティーだ。
 その理念は、持ちつ持たれつであったはずだ。
 けれど、いつしか……その中から、わだかまりが生じてしまった。

 俺という例外のせいだ……。

「ボサッとしてんじゃないぞ! リン、マイト、奴の左右を動き回ってかく乱しろ」

「でも、倒してもすぐに再生するしアイツ!」

「心配するな、リン。僕が特大魔法を撃ちこんでやる!!」

 リーダーの頼もしい言葉に、俺とリンは頷いた。
 そもそも、サトランのランキングはキャタピラースライムを少しだけ上回る。
 状況的には有利だ。その上、こちらの方が人数は多い。
 力を一つにすれば、勝機は充分に見いだせる。

 リンが右側に回り込み、俺が左側を担当する。
 布陣は整った、後は隙をついてサトランが攻撃魔法をぶちかますだけだ!

「サトラン!!!」反対側からリンの悲鳴が上がった。

 彼女の視線の先を追うと、背を向けて逃走する俺たちのリーダーの姿があった。

 裏切られた―――――反射的にそう思う一方で何か、特別な策があるのではないとすがる情けない自分がいた。
 冷静に思い返せば分かることだった……俺たちはここ一、二か月まともな戦闘をしていない。
 いくら、ランキングを上げて強くなっていても、ペース配分を間違えれば、体力や魔力も不足する。
 ここで、サトランが俺たちを囮につかったのは、魔力が尽きたからだ。
 魔力を自然回復させるには休息が必要だ。
 それを、アイツは弱小冒険者が相手だからといって舐めプしていたのだ。

「ざけんな……これはゲームじゃねぇんだよ!! 仲間を犠牲に自分だけ助かろうだなんて許さないからなぁぁああ、サトラン!!」

 どれだけ罵詈雑言を並べても、事態は好転しない。やかましい怒号がダンジョンの中で反響するだけだ。
 逃げ出したヤツを追いかけている暇は俺たちにはない。
 腹をくくらなければならない。
 間近にいる強敵、星団船ダンジョンの洗礼とも呼べるスライムの亜種をどうにかしなければ、此処で全滅だ!!

 グゼンとワカモトさんは行動不能。
 女子、二人は戦意喪失……。

 最悪の結果に、手汗が止まらない。

「オープン、ブック!」

「ちょっ……マイト? そんなの持ち出して何をするつもり? 早く逃げないと!!」

「リンさんの仰る通りです。私も撤退を推奨しますわ」

 俺の奇行に、女子たちは目を丸くしていた。
 自分でも、どうして使えないスキルブックを開いたのか分からない。
 ただ、何となくそうしなければいけない気がした。
 この手にした一冊のグラビアが、俺に何かを語りかけているような気がする。

『汝、声にし求めよ、ならば我が与えよう』

「求める? どういう意味だ?」気づけば、本の声に耳を澄ませていた。

 追い詰められ過ぎて精神に異常をきたしたのかと、不安になったがそうでもないようだ。
 本が火傷しそうなほど熱い! そう感じた直後、グラビアから眩い光が飛び出し、視界が真っ白になった。
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