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最強! 最高! さあ、逝こう!!
6話 大乱闘
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「アナ〇ライズ!」追い打ちをかける婆さんの掛け声に思わず、鼻水が吹き出そうになった。
ここまでくると、もうボケているかも疑わしくなる。
「ぜってぇー、わざとだ」とサトランもニヤニヤしている。
これだから、俺たちは万年低ランクパーティーなんだ。
崩れた壁を注視しながら、俺はパーティーの最前列に立った。
それが当たり前だと誤認し、自ら死地に向かう奴隷タンク。
そうすることでしか、仲間の役に立てないからだ。
瓦礫の向こうに、瞳を輝かせ蠢く生き物がいた。
スライム――違う! 数珠つなぎになっている、あれは恒常生体から解放された、詰まるところスライム族亜種、キャタピラースライムだ!!
「推奨ランキング、7800位以上の魔物だよ。マイト、リン、シャルターナ、アンタたちじゃ手に負えない! 後方に下がりな!!」
「っ、ババア! 何を勝手に指示してんだ!! 決めるのは、リーダーである僕だ!!」
強敵が迫ってきている状態にも関わらず、賢者と婆さんが口論しだした。
うちのパーティーで7800位以上のランキングにいるのは、この二人だ。
頼みの綱が絡み合ってしまっていては、他のメンバーも思うように行動できない。
キャタピラースライムが細長い身体をクネクネと動かして俺たちに襲いかかってきた。
「くるぞ! 酸のブレスだ!!」
「スキルブック! ロイヤルオーダー、ホーリーシールド!!」
サトランの一声に合わせ、聖女がシールドを展開した。
シャルターナのスキルブックはロイヤルオーダー、聖典に書き記された奇跡を能力して発動させることができる。
酸の息は見事、聖なる盾にブロックされた。
「おしっ! 敵の引きつけぐらいなら任せな、ティーミアスの乱闊歩!」
盗賊の技能が詰め込まれたスキルブック、ブラックシートを開きながらリンが走り込む。
山ほど巨大な自分の間合いへと果敢に飛び込んでくる人間に、興味を持ったらしい。
リンを追うようにして、スライムが弾力性ある身体を打ちつけている。
一撃でも食らえば身が持たないが、さすがリン肝がすわっている。
怯まずスライムの動きをかく乱してゆく。
「ファンタジア、ドライブリザード! そのまま凍てつき眠れ……」
覚醒したばかりの厨房ご用達な台詞にのせて、サトランの魔法がイキリ発射する。
仕様はアレだが、威力はスゲェェエエエエ――!!!
吹き荒ぶ、冷気の嵐が周囲の空気ごと、魔物を凍らせていく。
「どうやら、フィニッシュはワタシだね……」
ワカモトさんがほくそ笑む。
年配の彼女が言うと、妙に生々しく聞こえてしまうのは偶然だろうか?
できれば、自重して欲しい……。
「匠の知恵袋、シルバーガイド……ちっ、ちん? 何だい……読めねぇじゃないかね」
ワカモトさんはブレなかった。
肝心な時、しっかりと外してくるスタンスは、ダーウィン賞、一歩手前まで肉薄している。
いい加減、漢字にルビを振っておくべきだ。
「仕方ないんね~、これでいいか。ババデイ―――ン!!」
まるで、夕飯の献立を思い出したときのように、放たれた雷撃魔法。
雷音がババババァ―――ン!! と極太フォントで表示され喧しいし鬱陶しいたら、ありゃしない。
ともあれ、高ランキングの占い師が使う呪文だ。
弱いわけがない……先に受けたサトランの氷結魔法の効果も相まって、全身を駆け巡る雷撃により、スライムは感電していた。
「終わったのか……!?」そう呟く俺の隣で、シャルが首を横に振る。
「魔物から未だ生命エネルギーの波動を感じます。お二人の攻撃は、確実に効いていますが……このスライムの厄介なところは、生命力の高さにあります」
団子状につらなったスライムの最後尾が色あせていた。
それがポンと本体から切り離されると、それまで弱り切っていたキャタピラースライムに変化が生じた。
たちまち回復してゆく、どうやら身体の一部を消耗することで復活するタイプの魔物のようだ。
「気をつけろ! 何か、仕掛けてくるぞ。おい! 盾役、さっさと前に出て仕事しろよ!!」
サトランが俺の方に近づき叫んだ。
「へぇ? 俺?」
「当たり前だろっ! オマエのせいでグゼンがのびているんだ」
がっしりと腕をつかまれ、強引に前衛へと押し出された。
無茶苦茶だ。いくら何でも、キャタピラースライムの攻撃を防ぐことは俺では不可能だ。
不測の事態でできることは、テンパりながら盾を構えることぐらいしかない。
俺のスキルブック、グラビアは観賞用でしか輝けない。
魔物に対抗する手立てがない。
その事は、アイドルマスターのリーダーが一番、知っているはずだ。
ということは……肉の壁になれと言っているのか?
横目で、両隣りにいる仲間の様子をうかがった。
リンもワカモトさんも目を合わせようとはしてくれない。
分かっている……誰も最初から俺には期待していないんだ。
ランキングがすべてを物語る、この世界では俺なんて有象無象の一端にも満たないだろう。
だとしても……ランキングによって必ずしも勝敗の優劣が決まるとは限らない。
知恵と勇気、幸運。これらだって最良の結果を導きだす鍵となるはずだ。
その証に、この悪夢のようなダンジョンを俺は生き抜いてきた。
小さくか弱い力しかなくとも、気持ちだけは他のメンバーに後れを取っていないつもりだ。
やってやる! 俺だって、ポイント稼ぎ以外にもパーティーに貢献できることを証明してやる!!
「うわああああ!!」
使い慣れていない鉄の剣を鞘から引き抜き、魔物に突撃してゆく。
何の策も持ち合わせていない、ただただ勢い任せに突っ込んでいく。
自殺行為でしかないなんて考えている余裕はない。
こちらの捨て身に気づいたスライムが、長い身体をくねらせ、その身を地に叩きつけた。
ここまでくると、もうボケているかも疑わしくなる。
「ぜってぇー、わざとだ」とサトランもニヤニヤしている。
これだから、俺たちは万年低ランクパーティーなんだ。
崩れた壁を注視しながら、俺はパーティーの最前列に立った。
それが当たり前だと誤認し、自ら死地に向かう奴隷タンク。
そうすることでしか、仲間の役に立てないからだ。
瓦礫の向こうに、瞳を輝かせ蠢く生き物がいた。
スライム――違う! 数珠つなぎになっている、あれは恒常生体から解放された、詰まるところスライム族亜種、キャタピラースライムだ!!
「推奨ランキング、7800位以上の魔物だよ。マイト、リン、シャルターナ、アンタたちじゃ手に負えない! 後方に下がりな!!」
「っ、ババア! 何を勝手に指示してんだ!! 決めるのは、リーダーである僕だ!!」
強敵が迫ってきている状態にも関わらず、賢者と婆さんが口論しだした。
うちのパーティーで7800位以上のランキングにいるのは、この二人だ。
頼みの綱が絡み合ってしまっていては、他のメンバーも思うように行動できない。
キャタピラースライムが細長い身体をクネクネと動かして俺たちに襲いかかってきた。
「くるぞ! 酸のブレスだ!!」
「スキルブック! ロイヤルオーダー、ホーリーシールド!!」
サトランの一声に合わせ、聖女がシールドを展開した。
シャルターナのスキルブックはロイヤルオーダー、聖典に書き記された奇跡を能力して発動させることができる。
酸の息は見事、聖なる盾にブロックされた。
「おしっ! 敵の引きつけぐらいなら任せな、ティーミアスの乱闊歩!」
盗賊の技能が詰め込まれたスキルブック、ブラックシートを開きながらリンが走り込む。
山ほど巨大な自分の間合いへと果敢に飛び込んでくる人間に、興味を持ったらしい。
リンを追うようにして、スライムが弾力性ある身体を打ちつけている。
一撃でも食らえば身が持たないが、さすがリン肝がすわっている。
怯まずスライムの動きをかく乱してゆく。
「ファンタジア、ドライブリザード! そのまま凍てつき眠れ……」
覚醒したばかりの厨房ご用達な台詞にのせて、サトランの魔法がイキリ発射する。
仕様はアレだが、威力はスゲェェエエエエ――!!!
吹き荒ぶ、冷気の嵐が周囲の空気ごと、魔物を凍らせていく。
「どうやら、フィニッシュはワタシだね……」
ワカモトさんがほくそ笑む。
年配の彼女が言うと、妙に生々しく聞こえてしまうのは偶然だろうか?
できれば、自重して欲しい……。
「匠の知恵袋、シルバーガイド……ちっ、ちん? 何だい……読めねぇじゃないかね」
ワカモトさんはブレなかった。
肝心な時、しっかりと外してくるスタンスは、ダーウィン賞、一歩手前まで肉薄している。
いい加減、漢字にルビを振っておくべきだ。
「仕方ないんね~、これでいいか。ババデイ―――ン!!」
まるで、夕飯の献立を思い出したときのように、放たれた雷撃魔法。
雷音がババババァ―――ン!! と極太フォントで表示され喧しいし鬱陶しいたら、ありゃしない。
ともあれ、高ランキングの占い師が使う呪文だ。
弱いわけがない……先に受けたサトランの氷結魔法の効果も相まって、全身を駆け巡る雷撃により、スライムは感電していた。
「終わったのか……!?」そう呟く俺の隣で、シャルが首を横に振る。
「魔物から未だ生命エネルギーの波動を感じます。お二人の攻撃は、確実に効いていますが……このスライムの厄介なところは、生命力の高さにあります」
団子状につらなったスライムの最後尾が色あせていた。
それがポンと本体から切り離されると、それまで弱り切っていたキャタピラースライムに変化が生じた。
たちまち回復してゆく、どうやら身体の一部を消耗することで復活するタイプの魔物のようだ。
「気をつけろ! 何か、仕掛けてくるぞ。おい! 盾役、さっさと前に出て仕事しろよ!!」
サトランが俺の方に近づき叫んだ。
「へぇ? 俺?」
「当たり前だろっ! オマエのせいでグゼンがのびているんだ」
がっしりと腕をつかまれ、強引に前衛へと押し出された。
無茶苦茶だ。いくら何でも、キャタピラースライムの攻撃を防ぐことは俺では不可能だ。
不測の事態でできることは、テンパりながら盾を構えることぐらいしかない。
俺のスキルブック、グラビアは観賞用でしか輝けない。
魔物に対抗する手立てがない。
その事は、アイドルマスターのリーダーが一番、知っているはずだ。
ということは……肉の壁になれと言っているのか?
横目で、両隣りにいる仲間の様子をうかがった。
リンもワカモトさんも目を合わせようとはしてくれない。
分かっている……誰も最初から俺には期待していないんだ。
ランキングがすべてを物語る、この世界では俺なんて有象無象の一端にも満たないだろう。
だとしても……ランキングによって必ずしも勝敗の優劣が決まるとは限らない。
知恵と勇気、幸運。これらだって最良の結果を導きだす鍵となるはずだ。
その証に、この悪夢のようなダンジョンを俺は生き抜いてきた。
小さくか弱い力しかなくとも、気持ちだけは他のメンバーに後れを取っていないつもりだ。
やってやる! 俺だって、ポイント稼ぎ以外にもパーティーに貢献できることを証明してやる!!
「うわああああ!!」
使い慣れていない鉄の剣を鞘から引き抜き、魔物に突撃してゆく。
何の策も持ち合わせていない、ただただ勢い任せに突っ込んでいく。
自殺行為でしかないなんて考えている余裕はない。
こちらの捨て身に気づいたスライムが、長い身体をくねらせ、その身を地に叩きつけた。
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