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最強! 最高! さあ、逝こう!!
1話 最下層の六人
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「はあっ、はあっ……み、見逃してください」
薄暗いダンジョンの中、俺は男に懇願した。
「悪いねぇ~。この世界はランキングがすべてだから……大丈夫、痛いの一瞬、先っぽだけだからさぁ~ねぇ?」
いやらしく微笑む名すら知らない男は、新人狩りを生業とする冒険者。
ドミネーションズと呼ばれる下賤な連中の一人で、ランキングポイント欲しさに新人を狙って襲ってくる。
ランキングとは強さのバロメーターだ。
低ければ、搾取される弱者と見做され、高ければ、支配する強者となる。
このセカイ独自の狂ったシステムで、対象はこのセカイ全ての人間だ。
十八日間に一度、更新されるランキングは、それまでに稼いだ貢献ポイントの合計数で順位づけされる。
ランキング順位に結果より、個々の身体能力は増減する。それは上位ほど恩恵がある。
順位は絶対だ……たとえ、数字一つ差であろうとも下位の者が上位の者に勝ることはない。
実力、人気、社会的地位、どれを取ってもランキングで決まる。
次回の更新が来るまで、それは継続される。
ポイント加算は、冒険者としての行動によってもたらされる。
たとえば、困っている他の冒険者を助けたりした場合、ポイントは加点される。
そう…………このように。
「なあ、兄ちゃん。俺のツレに何してくれてんだ?」
屈強な戦士がドミネーションズの肩を叩いた。
「どうでも良いけど……ビギナー狩りだなんてダサいこと、やってて恥ずかしくないの?」
女盗賊が呆れ顔で近づいてきた。
「あなた最低ですね。すみません、墓地送りにさせていただきます」
二人ともに悪漢を取り囲む聖女が、神罰を告げる。
これほどまでに歪な、弱肉強食のセカイなど他に類を見ないだろう?
馬鹿で非力な俺には、これしか選択の余地がなかったのだ。
だからこそ、彼らにとって都合の良い撒き餌になった。
ダンジョン内における、俺の役目は他の冒険者に襲われることだ。
善人だろうと、悪人だろうと関係ない。
アイツらが、狩れると判断した冒険者は全員狩られるのみ……。
今回のように、襲われた犠牲者のふりをしたり、場合によっては因縁を吹っかけ争いごとを起こす小悪党を演じたりもする。
タンク、または引きつけ役。アイツらが好んでつかう言葉だ。
聞こえはいいが、ぶっちゃけ囮にすぎない。
「チガウ! 俺はそんなんじゃ……」
ドミネーションズが今更何を? 許しを請おうが意味はない。俺たちの目的は最初からアンタから得られる貢献ポイントだ。
卑怯だろうが、汚かろうが表向きでも悪党を討伐したのであれば、それは正義と見做される。
「言い訳など聞きたくもない……貴様のように醜態をさらす輩が冒険者の品位を落としているのだ! 我が魔法の餌食にしてくれよう!」
絶妙なタイミングで、俺たちのリーダーである賢者が出てきた。
コイツが来たのなら、この悪漢は終わりだ。
底辺ランクの俺を狩ろうとしたばかりに、逆に襲撃されているのだから惨めなもんだ。
「お前たちこそ、よってたかって卑怯だ……まさか! 噂のハンター狩り……」
ようやく、俺たちの正体に気づき、男は腰を抜かして尻もちをつく。
顔面を真っ青し、四つん這いで逃げようとする。
もはや、逃げ場などない。
すがるようにして男が掴んだモノは、老齢の女占い師がまとうローブの裾だ。
「そんな人聞きの悪いこと言われてもねぇ~。皆、生活がかかっているんだ、諦めてくれないかねぇ」
「あっ、あっあっああああああああああああ――――――」
占い師の諭すような言葉とは、反対に凄惨な悲鳴がダンジョンにこだました。
命までは取らないが、ダンジョン内での敗北はある意味、死よりも恐ろしい結果が待っている。
行動不能に陥ると、冒険者ランキングがはく奪される上に、倒された相手に所持品を没収される。
つまり、赤子のような無防備状態でダンジョンの出口まで移動しなければならない。
その間に、モンスターや他の冒険者に襲われれば、コイツは完全に助からない。
言っちゃ悪いが……同情の余地はない。
獲物を狩るということは、自分も狩られることを覚悟しないといけない。
何より、ここまでクソ真面目に独り語りしてしまった自分に虚しさを覚える。
ほら! 目蓋を閉じれば親の顔よりも鮮明に見える。
やれ、長い説明すんなだの、意味不明な独り言が多いだの……。
リーダーであるアイツが俺に小言をたれる光景が浮かんでくる。
主婦の強敵かよ……アイツは。
「いい加減、次の転入先、決めないとな……」
薄暗いダンジョンの中、俺は男に懇願した。
「悪いねぇ~。この世界はランキングがすべてだから……大丈夫、痛いの一瞬、先っぽだけだからさぁ~ねぇ?」
いやらしく微笑む名すら知らない男は、新人狩りを生業とする冒険者。
ドミネーションズと呼ばれる下賤な連中の一人で、ランキングポイント欲しさに新人を狙って襲ってくる。
ランキングとは強さのバロメーターだ。
低ければ、搾取される弱者と見做され、高ければ、支配する強者となる。
このセカイ独自の狂ったシステムで、対象はこのセカイ全ての人間だ。
十八日間に一度、更新されるランキングは、それまでに稼いだ貢献ポイントの合計数で順位づけされる。
ランキング順位に結果より、個々の身体能力は増減する。それは上位ほど恩恵がある。
順位は絶対だ……たとえ、数字一つ差であろうとも下位の者が上位の者に勝ることはない。
実力、人気、社会的地位、どれを取ってもランキングで決まる。
次回の更新が来るまで、それは継続される。
ポイント加算は、冒険者としての行動によってもたらされる。
たとえば、困っている他の冒険者を助けたりした場合、ポイントは加点される。
そう…………このように。
「なあ、兄ちゃん。俺のツレに何してくれてんだ?」
屈強な戦士がドミネーションズの肩を叩いた。
「どうでも良いけど……ビギナー狩りだなんてダサいこと、やってて恥ずかしくないの?」
女盗賊が呆れ顔で近づいてきた。
「あなた最低ですね。すみません、墓地送りにさせていただきます」
二人ともに悪漢を取り囲む聖女が、神罰を告げる。
これほどまでに歪な、弱肉強食のセカイなど他に類を見ないだろう?
馬鹿で非力な俺には、これしか選択の余地がなかったのだ。
だからこそ、彼らにとって都合の良い撒き餌になった。
ダンジョン内における、俺の役目は他の冒険者に襲われることだ。
善人だろうと、悪人だろうと関係ない。
アイツらが、狩れると判断した冒険者は全員狩られるのみ……。
今回のように、襲われた犠牲者のふりをしたり、場合によっては因縁を吹っかけ争いごとを起こす小悪党を演じたりもする。
タンク、または引きつけ役。アイツらが好んでつかう言葉だ。
聞こえはいいが、ぶっちゃけ囮にすぎない。
「チガウ! 俺はそんなんじゃ……」
ドミネーションズが今更何を? 許しを請おうが意味はない。俺たちの目的は最初からアンタから得られる貢献ポイントだ。
卑怯だろうが、汚かろうが表向きでも悪党を討伐したのであれば、それは正義と見做される。
「言い訳など聞きたくもない……貴様のように醜態をさらす輩が冒険者の品位を落としているのだ! 我が魔法の餌食にしてくれよう!」
絶妙なタイミングで、俺たちのリーダーである賢者が出てきた。
コイツが来たのなら、この悪漢は終わりだ。
底辺ランクの俺を狩ろうとしたばかりに、逆に襲撃されているのだから惨めなもんだ。
「お前たちこそ、よってたかって卑怯だ……まさか! 噂のハンター狩り……」
ようやく、俺たちの正体に気づき、男は腰を抜かして尻もちをつく。
顔面を真っ青し、四つん這いで逃げようとする。
もはや、逃げ場などない。
すがるようにして男が掴んだモノは、老齢の女占い師がまとうローブの裾だ。
「そんな人聞きの悪いこと言われてもねぇ~。皆、生活がかかっているんだ、諦めてくれないかねぇ」
「あっ、あっあっああああああああああああ――――――」
占い師の諭すような言葉とは、反対に凄惨な悲鳴がダンジョンにこだました。
命までは取らないが、ダンジョン内での敗北はある意味、死よりも恐ろしい結果が待っている。
行動不能に陥ると、冒険者ランキングがはく奪される上に、倒された相手に所持品を没収される。
つまり、赤子のような無防備状態でダンジョンの出口まで移動しなければならない。
その間に、モンスターや他の冒険者に襲われれば、コイツは完全に助からない。
言っちゃ悪いが……同情の余地はない。
獲物を狩るということは、自分も狩られることを覚悟しないといけない。
何より、ここまでクソ真面目に独り語りしてしまった自分に虚しさを覚える。
ほら! 目蓋を閉じれば親の顔よりも鮮明に見える。
やれ、長い説明すんなだの、意味不明な独り言が多いだの……。
リーダーであるアイツが俺に小言をたれる光景が浮かんでくる。
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