32 / 74
天上へ続く箱庭
ふるおぺん
しおりを挟む
どうやら、ハウリングノイズが効果を発揮したようだ。
井戸の近くにいると思もわしき男二人の声。
まだ、イマイチ精度が低く彼らの会話が所々、聞き取り辛いがもう少し距離を詰めれば音声もクリアになってくるはずだ。
しばらくは井戸に身を潜め情報を集めるべきか?
井戸の出口が見えてくると、それまでおぼろげだった男達の会話はより鮮明なってきた。
こうして人の会話に聞き耳を立てるというのも妙な背徳感があるが、冷静に考えるとこれは諜報活動の一環だ。
良いも悪いもへったくれもない。
とても重要なことであり、致し方無いことなのだ。
「お前、マジですげぇ――な!! 本気でやるんだな?」
「ああ、すでに何度か実証済みだ。だが、タイミングが肝だ。一歩しくじれば不自然になってしまう!!」
「で、できた……のか?」
「ふっ、知りたいか? そうか、知りたいのだな。あれは奇跡プレイ、驚きの解放感に我が心は新世界の扉をノックしてしまった」
「くっそぉおお、何言ってるのかさっぱりだ!! オレも勇者様みたいに格好良く決めたいぜ! マジで、うらやましすぐるわ――」
「そう嘆くな、お前にも俺のZENKAIを見せてあげんよ。刮目せよ! これが転移者直伝の奥義――開けぇええ!! オープンステータスぅうう――!!」
「……で、どこにステータス画面が出ているんだ? しかも、開けとオープンって同じだよな?」
お願い……それ以上はツッコまないであげて……あなたの友人とって消せない黒歴史になってしまうから。
何かと思って聞いてみれば、門番の連中は他愛もない会話で盛り上がっていたらしい。
致し方がない理由があるならまだしも、いい歳した若者が恥じらいもなく人前で無闇やたらにオープンステータスしてはならない。
あまつさえ、個人情報の保護には気を遣う現代だ。隠ぺい魔法もなしで開示するのは、生まれたままの姿で街中をうろつく事に値する。
それこそ、バレたら即アウトな情報まで……。
とはいえ、転移者でない彼らにオープンステータスは少々、ハードルが高かったようだ。
まぁ、めげずに頑張ってとしか言いようがない。
「確かに……俺にはできなかったさ、ステータス開示は……けど、よく見てみろ!! 開いているだろっ!? 俺の股間がぁあ」
「ま……マジかよ。すんげぇぇええ――!! ロゴスを捨て去った捨て身、全開じゃないか! まさ……か、オレたちのステータスって」
「フッ、どうやらお前も気づいたようだな。そう、俺達がオープンステータスを唱えると何故か勝手にズボンのチャックが開く現象が起きる。なぜなら、それこそが我々のステータスシンボルだからだぁぁ――!! ってなわけあるかぁああ――!! ううっ、あんまりだ……これじゃ、下半身が本体だと言われているも同然だ」
「待て、どこに行こうとして!? そっちには古井戸しかないぞ! 早まるなぁぁあ!! そなたはまだ若いぃぃ」
キィー…………キィッ……
「なんだ? 古井戸の方からヘンな音が聞こえる。見、見ろ。あそこ、井戸の手前で何かうごめいていないか?」
「き、き、気のせいじゃないかな………そう、見間違いだとも……ち、近寄ってくるなあぁぁああ! そんな風に俺達を睨むな!! まさか、君なのか? 幼少のころ、いつも我が屋敷の前で恨めしそうに立っていた不審な家政婦!?」
「オマエんち家政婦じゃねぇか、それ! オマエが不要に屋敷から締め出すから、知らないうちにオレんちキッチンの戸棚の中に入っていたぞ、アイツ。ヤバイヤバイ、這いよってきているぞぉぉ――――!!」
は、入っていたって……菓子か何かじゃないんだから。というか、それは立派な不法侵入でしょ。
とても低次元の会話を耳にしたせいで井戸から出てくる際、思わず前のめりに倒れてしまった。
バランスを崩し、そのまま水汲みから垂れ下がっていたロープに足を引っ掛けてしまったのだ。
颯爽と飛び出そうとしたのも相まって、錆びた滑車が揺れに揺れ不気味に鳴いていた。
「はううわわわあああ――。許してくれ、君を自由にさせたかったんだ!! いつも、家事仕事に追われて外出もできなかっただろう?」
眼鏡をかけた衛兵はズボンのチャック全開のまま一心不乱に頭を下げていた。
なんせ私には関係のない過去の出来事だ、イマイチ会話が漠然しているが、この人の事情など元から知ったことではない。
対する相方はというと、すでに白目をむいて気絶している。
この際だ、彼らは放置しておこう。
大樹に直結する地点ということで充分に警戒していたが、これなら難なく突破でき――――そうでもない。
なんと、門の向こう側から他の男達がぞろぞろとやってくる。
全員衛兵だとしたら、目も当てられない。
「おい? おいおいおい、そこの女が侵入者じゃないのか!? お前ら、奴を生け捕るぞ!!」
そのまさかだ……門前で鉢合わせになると、男達は真向から私の方へ詰め寄ってきた。
思わぬほど洗練された動きに、気圧されそうになりながらも私は逃走をはかった。
門前での鬼ごっこが始まった。
ここで戦闘に持ち込むのは得策ではない。
この警備の厳重さは完全にこちらの手の内が見透かされている証拠だ。
そうなると、いくら強力な魔法を有していようと私一人では捌ききれなくなる。
それに、ここが敵の本拠地である以上、敵の数は今までの比ではないとみるべきだ。
一度でも応戦すれば、瞬く間に数の暴力に圧倒されてしまうだろう。
こうなったら、混乱に乗じて何処かに身を隠した方が良さげだ。
幸い広さだけは充分、確保されているのでに逃げ場には困ることはなさそうだ。
すでに、向こうには三十人以上の人数が集結していた。
いくら逃げても次から次へとひっきりなしに刺客が放たれるのは容易に想像がついていた。
私はできるだけ自力で走った。
策とかそういったものは抜きにして魔法に頼って逃げ出すよりも、普通に走った方が捕まりにくいからだ。
エアーブラストでの水平移動は直線的な動きで捕まりやすいし、ライトニングムーブは相手をいなし翻弄できるけど距離が稼げない。
その上、魔法の連発は体力の消耗が早い。
このような状況下においては致命的な問題になる。
それはそうとして……もとから走るのが不得意な私だ、こんな風に考えを巡らせている間にも衛兵との距離は縮まってきていた。
対処法としては――
「風に注意しろ! 直撃すれば吹き飛ばされるぞ!!」
ダウンバーストで足止めするぐらいだが、相手側にも魔法に精通している者がいるようだ。
即座に、回避行動を取られてしまっては手の打ちようもない。
「くっ、最初から包囲網が敷かれていたみたいだね。完全に詰んでいるかも……」
耳元でヒュンと何かが空を切る音がなった。
順々に地へと突き刺さる、ソレに私は足止めを喰らってしまった。
弓矢だ。
獲物を威嚇し行動を阻害することに長けた、大昔から人と共に在る狩猟道具。
門を中心に四隅に建てられた見張り櫓に、あらかじめ待機していたであろう弓使い達は、こちらに弓を構えていた。
不味い、こうなってしまったら腹くくって、ゴリ押しするしかない。
「何だぁああ――――貴様ァアアアは!? よせ! うひゃあああ――」
それまで、気にも留めなかったが大樹への開路には最低でも二つの門は通過しなければならない。
この先にまだ門があるのか? は別として今、私の前にある門を内門とすると、後ろは外門と呼ばれる方になる。
その門の存在を無視し、爆発音とともに外壁を打ち抜いてきたソレは突如として私達の前に姿を現した。
魔物だ、筋肉の張った逞しい肉付きをした牡牛、あるいはバッファローと類似するソイツの背には――
「ひゃはっ~! モチん、遅れてあそばせぇ――」
不思議な言語を操る問題児がまたがっていた。
「グ、グレイデさん。どうしてここに来ているんですか!?」
「チッチッ、みなまで言うなし。婆に助っ人をまかされたのよ、コイツら私のピッピに酷い事したから、私も許せないわけよ」
「オラァ! グレイデ! 俺たちに歯向かう意味が理解できねーほど頭のネジが足りなくなっちまったのかぁ~?」
「はっ? 雑兵ボーイズは黙ってろよ! 大人しくナックの奴にケツでも振ってろよ」
「んだと……誰が、何だって!?」
うわっ……なんかスゴイ、ローカル感。
田舎あるあるの村人全員が顔見知り。
グレイデさんと衛兵達の関係も例に漏れず口を開く度にお互い罵倒し合っている。
外野な私は、すっかり蚊帳の外に追い出せれてしまったが、よくよく見れば連中の注意はグレイデさんに注がれている。
もしかしてもなく、これは好機ではないか?
今の内に内門を通り抜けてしまおう。
井戸の近くにいると思もわしき男二人の声。
まだ、イマイチ精度が低く彼らの会話が所々、聞き取り辛いがもう少し距離を詰めれば音声もクリアになってくるはずだ。
しばらくは井戸に身を潜め情報を集めるべきか?
井戸の出口が見えてくると、それまでおぼろげだった男達の会話はより鮮明なってきた。
こうして人の会話に聞き耳を立てるというのも妙な背徳感があるが、冷静に考えるとこれは諜報活動の一環だ。
良いも悪いもへったくれもない。
とても重要なことであり、致し方無いことなのだ。
「お前、マジですげぇ――な!! 本気でやるんだな?」
「ああ、すでに何度か実証済みだ。だが、タイミングが肝だ。一歩しくじれば不自然になってしまう!!」
「で、できた……のか?」
「ふっ、知りたいか? そうか、知りたいのだな。あれは奇跡プレイ、驚きの解放感に我が心は新世界の扉をノックしてしまった」
「くっそぉおお、何言ってるのかさっぱりだ!! オレも勇者様みたいに格好良く決めたいぜ! マジで、うらやましすぐるわ――」
「そう嘆くな、お前にも俺のZENKAIを見せてあげんよ。刮目せよ! これが転移者直伝の奥義――開けぇええ!! オープンステータスぅうう――!!」
「……で、どこにステータス画面が出ているんだ? しかも、開けとオープンって同じだよな?」
お願い……それ以上はツッコまないであげて……あなたの友人とって消せない黒歴史になってしまうから。
何かと思って聞いてみれば、門番の連中は他愛もない会話で盛り上がっていたらしい。
致し方がない理由があるならまだしも、いい歳した若者が恥じらいもなく人前で無闇やたらにオープンステータスしてはならない。
あまつさえ、個人情報の保護には気を遣う現代だ。隠ぺい魔法もなしで開示するのは、生まれたままの姿で街中をうろつく事に値する。
それこそ、バレたら即アウトな情報まで……。
とはいえ、転移者でない彼らにオープンステータスは少々、ハードルが高かったようだ。
まぁ、めげずに頑張ってとしか言いようがない。
「確かに……俺にはできなかったさ、ステータス開示は……けど、よく見てみろ!! 開いているだろっ!? 俺の股間がぁあ」
「ま……マジかよ。すんげぇぇええ――!! ロゴスを捨て去った捨て身、全開じゃないか! まさ……か、オレたちのステータスって」
「フッ、どうやらお前も気づいたようだな。そう、俺達がオープンステータスを唱えると何故か勝手にズボンのチャックが開く現象が起きる。なぜなら、それこそが我々のステータスシンボルだからだぁぁ――!! ってなわけあるかぁああ――!! ううっ、あんまりだ……これじゃ、下半身が本体だと言われているも同然だ」
「待て、どこに行こうとして!? そっちには古井戸しかないぞ! 早まるなぁぁあ!! そなたはまだ若いぃぃ」
キィー…………キィッ……
「なんだ? 古井戸の方からヘンな音が聞こえる。見、見ろ。あそこ、井戸の手前で何かうごめいていないか?」
「き、き、気のせいじゃないかな………そう、見間違いだとも……ち、近寄ってくるなあぁぁああ! そんな風に俺達を睨むな!! まさか、君なのか? 幼少のころ、いつも我が屋敷の前で恨めしそうに立っていた不審な家政婦!?」
「オマエんち家政婦じゃねぇか、それ! オマエが不要に屋敷から締め出すから、知らないうちにオレんちキッチンの戸棚の中に入っていたぞ、アイツ。ヤバイヤバイ、這いよってきているぞぉぉ――――!!」
は、入っていたって……菓子か何かじゃないんだから。というか、それは立派な不法侵入でしょ。
とても低次元の会話を耳にしたせいで井戸から出てくる際、思わず前のめりに倒れてしまった。
バランスを崩し、そのまま水汲みから垂れ下がっていたロープに足を引っ掛けてしまったのだ。
颯爽と飛び出そうとしたのも相まって、錆びた滑車が揺れに揺れ不気味に鳴いていた。
「はううわわわあああ――。許してくれ、君を自由にさせたかったんだ!! いつも、家事仕事に追われて外出もできなかっただろう?」
眼鏡をかけた衛兵はズボンのチャック全開のまま一心不乱に頭を下げていた。
なんせ私には関係のない過去の出来事だ、イマイチ会話が漠然しているが、この人の事情など元から知ったことではない。
対する相方はというと、すでに白目をむいて気絶している。
この際だ、彼らは放置しておこう。
大樹に直結する地点ということで充分に警戒していたが、これなら難なく突破でき――――そうでもない。
なんと、門の向こう側から他の男達がぞろぞろとやってくる。
全員衛兵だとしたら、目も当てられない。
「おい? おいおいおい、そこの女が侵入者じゃないのか!? お前ら、奴を生け捕るぞ!!」
そのまさかだ……門前で鉢合わせになると、男達は真向から私の方へ詰め寄ってきた。
思わぬほど洗練された動きに、気圧されそうになりながらも私は逃走をはかった。
門前での鬼ごっこが始まった。
ここで戦闘に持ち込むのは得策ではない。
この警備の厳重さは完全にこちらの手の内が見透かされている証拠だ。
そうなると、いくら強力な魔法を有していようと私一人では捌ききれなくなる。
それに、ここが敵の本拠地である以上、敵の数は今までの比ではないとみるべきだ。
一度でも応戦すれば、瞬く間に数の暴力に圧倒されてしまうだろう。
こうなったら、混乱に乗じて何処かに身を隠した方が良さげだ。
幸い広さだけは充分、確保されているのでに逃げ場には困ることはなさそうだ。
すでに、向こうには三十人以上の人数が集結していた。
いくら逃げても次から次へとひっきりなしに刺客が放たれるのは容易に想像がついていた。
私はできるだけ自力で走った。
策とかそういったものは抜きにして魔法に頼って逃げ出すよりも、普通に走った方が捕まりにくいからだ。
エアーブラストでの水平移動は直線的な動きで捕まりやすいし、ライトニングムーブは相手をいなし翻弄できるけど距離が稼げない。
その上、魔法の連発は体力の消耗が早い。
このような状況下においては致命的な問題になる。
それはそうとして……もとから走るのが不得意な私だ、こんな風に考えを巡らせている間にも衛兵との距離は縮まってきていた。
対処法としては――
「風に注意しろ! 直撃すれば吹き飛ばされるぞ!!」
ダウンバーストで足止めするぐらいだが、相手側にも魔法に精通している者がいるようだ。
即座に、回避行動を取られてしまっては手の打ちようもない。
「くっ、最初から包囲網が敷かれていたみたいだね。完全に詰んでいるかも……」
耳元でヒュンと何かが空を切る音がなった。
順々に地へと突き刺さる、ソレに私は足止めを喰らってしまった。
弓矢だ。
獲物を威嚇し行動を阻害することに長けた、大昔から人と共に在る狩猟道具。
門を中心に四隅に建てられた見張り櫓に、あらかじめ待機していたであろう弓使い達は、こちらに弓を構えていた。
不味い、こうなってしまったら腹くくって、ゴリ押しするしかない。
「何だぁああ――――貴様ァアアアは!? よせ! うひゃあああ――」
それまで、気にも留めなかったが大樹への開路には最低でも二つの門は通過しなければならない。
この先にまだ門があるのか? は別として今、私の前にある門を内門とすると、後ろは外門と呼ばれる方になる。
その門の存在を無視し、爆発音とともに外壁を打ち抜いてきたソレは突如として私達の前に姿を現した。
魔物だ、筋肉の張った逞しい肉付きをした牡牛、あるいはバッファローと類似するソイツの背には――
「ひゃはっ~! モチん、遅れてあそばせぇ――」
不思議な言語を操る問題児がまたがっていた。
「グ、グレイデさん。どうしてここに来ているんですか!?」
「チッチッ、みなまで言うなし。婆に助っ人をまかされたのよ、コイツら私のピッピに酷い事したから、私も許せないわけよ」
「オラァ! グレイデ! 俺たちに歯向かう意味が理解できねーほど頭のネジが足りなくなっちまったのかぁ~?」
「はっ? 雑兵ボーイズは黙ってろよ! 大人しくナックの奴にケツでも振ってろよ」
「んだと……誰が、何だって!?」
うわっ……なんかスゴイ、ローカル感。
田舎あるあるの村人全員が顔見知り。
グレイデさんと衛兵達の関係も例に漏れず口を開く度にお互い罵倒し合っている。
外野な私は、すっかり蚊帳の外に追い出せれてしまったが、よくよく見れば連中の注意はグレイデさんに注がれている。
もしかしてもなく、これは好機ではないか?
今の内に内門を通り抜けてしまおう。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
私を裏切った相手とは関わるつもりはありません
みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。
未来を変えるために行動をする
1度裏切った相手とは関わらないように過ごす
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
彼女が望むなら
mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。
リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる