超絶転身少女 インフィニティアニキ 特撮ヒーローから魔法少女系νtuberに転職します

心絵マシテ

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五十四話 アニキ、選択を迫られる

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「ふぅ~やれやれだ……五十点だ」

「へっ?」

しばしの沈黙の後、敵のくせにブルジョアレッドに溜息をつかれてしまった。
やっちゃった……思い返しても赤面してしまう。
恥ずかしさを捨てきれなかったばかり、ぎこちない動きになってしまった。
これは戦隊ヒーローだった時とは勝手が違いすぎる。
勢い任せで手足を振っても粗さが目立つだけだ。

「フェアリーとか言ったな。なんでインド人みたいな踊りを踊った? しかも、その手に握っているのは何だ? マイスプーンか!? 食いしん坊キャラなのか、オマエは!」

レッドがやけに口うるさかった。
こういう評論家気取りの輩は一定数いるが、ボクのメンタルでは到底辛口に耐えられない。
平気なのはカレーの辛さだけだ。

「ちょっと、貴方ね。こっちは、まだ駆け出しの魔法少女なのよ。いきなりプロレベルな物を要求されてもできることとできないことがあるの!」

「仮にも魔法少女と名乗るんだ。事前に訓練を積んでおくのが常識だろうよ。お前たちみたいなニワカが入っていい世界じゃないんだよ!!」

「あのねぇ、貴方こそ自分が怪人であることを忘れていない? らしくないのは、どっちよ!」

「俺は正義のヒーローだ!! 貴様らのような自己顕示欲の塊に裁きの鉄鎚を下すのが、俺の使命だ」

「そういうのを、お節介魔っていうのよ!! 誰のための正義よ。貴方は自分が望んだように行かないことが気に要らないだけでしょっ? 貴方のような人に世界を良くして貰いたいなんて誰も望んでいないわ。そろそろ、そのことに気づいたら?」

唐突な口論が始まった。
初めから存在自体が矛盾をはらんでいるレッドは何を言おうともブーメラン返しで突き刺さっていた。
もはや、ハーネスのワンサイドゲームでしかない。
ゲームと一言で片づけてしまえば語弊ごへいを生んでしまうけれど、ボクが立ち入る隙もないほどにレッドは完膚なきまで叩きのめされて途中から恍惚な表情を浮かべていた。
さすがは変態、苦痛に快感を覚えている。

というか、いつファイナルフィニッシャーを決めるのだろうか……少し、不安になってきた。

「なんて女だ。重箱の隅を突くどころか、楊枝でほじくってくるぞ!! もういい! 俺たちに言葉は不要だ! あとは拳で語るのみ」

「そう? じゃ、フェザーブレイキングチェーン!!」

「きっ、たねぇぇえええええええええええええええええ―――――」

跳躍する鎖の鞭にブルジョアレッドは小躍りするかのように逃げ惑う。
無造作に動き回っているように見えても、かなり素早い。
チェーンの不規則な動きを見切り、容易に回避しているようにも思われる。
床下に打ちつけられた鎖から火花が飛び散る。
物に打ち当てることで動きに、さらなる変化を与えている。
にもかかわらず、ハーネスを挑発するように、金色の肉体は四方八方を駆け回っている。

「エスカレーション、スマッシュ―――――!!」

どこにも隙が見当たらない、その瀬戸際でボクはキャリバーで超加速し必殺の一撃を叩き込んだ。
その時だった、レッドのマスクの口元が裂けたのは―――
イヤらしく笑いながらボクのことを一瞥いちべつすると血管が浮き出るほどのイカツイ腕でコスモブレイドを受け止めた。

「理不尽の障壁! デッドリバーシ」

攻撃を受け止めながら、レッドはバリアを張り出した。
タイミング的には完全にずれているような気がする。
当人はまったく持って平然としていた。奴の行動が常識の範疇を越えているのは既に承知している。
なのに、この胸をざわつかせる空気は一体……。

「きゃっ――――――!!」

ハーネスの悲鳴とともに、ボクも拡散するバリアの衝撃をモロに喰らい弾き飛ばされていた。
防御に使用するのではなく攻撃に転じる、理不尽の壁とはよく言ったものだ。
ツゥ―と鼻下を流れ落ちる鼻血を手の甲で拭いながら立ち上がる。
既にレッドはハーネスの方へと移動し彼女の胸グラを掴んで持ち上げていた。

「新人とは言えよくやったほうだが、まだまだ甘いな。やれやれ、俺も敗北というものを知りたいものだ。もっとも、そんなことができる相手など……この世界にはいないだろうがぁ!!」

「があぁぁ…………」

ピュアグランガントレットに換装し攻撃をしかけるボクをレッドは足で蹴り飛ばしてきた。
文字通り一蹴。ビルダーのごとき筋骨隆々の美脚から、殺人的な破壊力が伝ってボクを襲ってくる。
ガントレットで受け止めれなければ即死だった。
ダメージ受けたせいで身体が硬直してしまっている。
惨めにも床に這いつくばる状態に陥ってしまった。

「ふふん~ふ。さて、どうしたものか? 貴様らをこのまま葬り去るのは簡単だ。だが、俺もヒーローだ。そこは寛大といこうじゃないか! どちらか、一方は身逃がしてあげる……けど、生き残れるのは相手を殺した方だけだよぉ!!」

「ふ、ふざけるな!!!」

よりによって、怪人はボクらに同士討ちを強要してきた。
セコイヤも似たように悪趣味を好む傾向があった。
当然ながら、即行で否定した。仲間を討つなんてできるわけがない。
ハーネスだってきっと――――

「分かったわ……だから、その汚らしい手を離して頂戴」

耳を疑う一言が彼女から発せられた。けれど、それが本心ではないことはボクにはちゃんと伝わっている。
ハーネスのことだ。敵の油断を誘い、上手い方法を考えてくれているはずだ。
ボクにできることは、そのサーポトに徹することだ。

「はぁ~、ああ―――あ! シラケるわ。仲間を裏切るフリをして自分を犠牲にするつもりなんだろう? 分かる! 分かるよぉぉぉ~、だって俺はヒーローだからさ。決めたよ、希望通り君の命でフェアリーを助けてやろう!」

「ヤメロォォオオオオ―――――――――!!!」
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