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三十四話 アニキ、ライバル現る
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アンガーラックの能力により、ハーネスのチェーンがたわんだ。
フェザーブレイキングの拘束が解けたのと同時に、怪人はハーネスを襲おうとしていた。
「危ない!」とボクが声を上げる前に、しなった鎖が乱舞する。
その緩みを活かし今度は首元でではなく、身体全体に巻き付いて動きを止める。
抵抗しようとするアンガーラックだが、藻搔けば藻掻くほどチェーンが余計に絡みついてくる。
「これで終いよ! その変異破壊してみせるわ」
倒れた変体に、銃口を突きつけるハーネス。
よくよく考えてみれば、自分以外の魔法少女が怪人を倒すところは初めて見る。
ドブさんは、ボクの能力は人や物を変異させる力だと言っていた。
その力を応用して、ボクは今まで変体化してしまった人たちを戻してきた。
ならば、ハーネスがトドメを刺すとどうなるのか?
『見ててごらん。ここからがキュイちゃんと他の魔法少女の違いだよ』
ハンドガンの一撃がアンガーラックの額に当たった。
すると、変体の身体に亀裂が生じ砕け散った。その破片は、シルフィードハーネスの胸元にある星型のペンダントに吸い込まれている様だった。
何が起きているのか分からないボクは、ただただ瞬きするしかない。
『敵を倒して変質を吸収しているんだよ。キュイちゃんは、その身体自体が変質だから何のコストもなく魔法少女に変身できるけど、他の娘は違う。魔法少女になる為には怪人から力を奪わなければいけないんだ』
「もし、力が補充できなくて戦えなくなったらどうなるの?」
『魔法少女系νTuberの資格をはく奪されて、BANされるのさ』
「にゅーちゅーばぁって……? それにバン? って……アカウントじゃないだし…………」
初めて聞く単語に頭の中が?だらけになって思考が混線していた。
それまでボクは、魔法少女とは変身アイテムの力で変身しているものだと思いこんでいた。
しかし、今の話によれば皆、怪人の力を再利用しているという……その定義に当てはめると、ボクは魔法少女ではありながらも怪人であるという異質な存在となるのだが……その先が怖くてドブさんに聞けない。
『νTuberとは、君やハーネスを含んだ疑似的魔法少女の呼称さ。魔法少女チャンネルνという組織によって管理されているんだ。バンについては文字通りだよ……だから彼女たちは必死なんだ! 効率化を考えて大抵は数名でチームを結成していたりもする。ハーネスのように単独で活動しているのは珍しいことさ』
魔法少女でありながら何らかの使命を帯びた特別なものではない。
組織よって生み出された新たなる魔法少女の概念は、いつでも、どこでも、アナタの身近にある存在だと言う。
そのメリットとは、条件さえ満たせば誰もが憧れの魔法少女になれるということだ。
田宮さんに関しては自主的ではないにしろ。
トリガーとなるバックルを手に入れたことで、魔法少女の一員として登録されているようだ。
「ふぇー、情報量が多すぎるよ」
『そうかい? キュイちゃんに話しても訳ワカメになると思ったから言わなかったけど、想像を裏切らないよね。因みに、まだ半分も話してないのよ』
「うげっ……いいです。少しずつ、追々で聞かせて貰いますから……あっ、戻った」
ようやくフニャフニャの身体から解放されたボクは、身体についた埃を払い落していた。
「ひゃあぁぁぁ! そら、見たことか。私の言った通り、他の奴に先を越されてんじゃん」
「あらあら、残念ですぅー。せっかく、新しい変身ポーズを試そうと思いましたのに」
息つく暇もなく、非常階段の方から賑やかな声が響いてきた。
どう見ても普通の女学生三人組が、急ぎ足でコチラへと向かってきていた。
逃げ遅れた一般人かと思ったけれど様子がおかしい。
まさかとは思うけど反応からしてボク達と同じ魔法少女なのか……?
「ああ―――もう! ノロのせいだぞ。オマエがグズグズしているから、戦い終わってんよ」
「ごごご、ゴメン! アイカちゃん」
「まぁまぁ、二人とも。チームメイト同士の喧嘩は止しましょうよ。アチラさんが驚かれてますよー」
突然、現れた少女三人がボクたちの方に目を向けてきた。
健康そうな肌艶をした三つ編みの女の子と、彼女に叱られ背を丸めるショートボブの少女。
そして、いかにも深窓の令嬢と言った感じの切れ長の瞳した女子とバラエティー豊かに揃っている。
友人にしては……学校制服も、まばらだし、見た目からして好みが一緒だとは到底、思えない。
それを言ったら、ボクたちもいいとこ勝負なのだが……やはり、見た目だけではなく内面的な意味でも違和感がにじみ出ている。
「何か用?」ハーネスが手短に発した。
他の魔法少女であろう、彼女たちとは交友的ではない様子。
さきほど、ドブさんが話していたことが思い出される。
ハーネス……田宮さんにとって彼女たちはライバルと呼べる。
互いに数すくない怪人というエネルギー源を取り合っている。
敵対心を燃やすのは、何ら不思議ではないが……彼女たちは、どうして正体を隠さずにボクらの前に出てきたのだろうか? 疑問は尽きない。
フェザーブレイキングの拘束が解けたのと同時に、怪人はハーネスを襲おうとしていた。
「危ない!」とボクが声を上げる前に、しなった鎖が乱舞する。
その緩みを活かし今度は首元でではなく、身体全体に巻き付いて動きを止める。
抵抗しようとするアンガーラックだが、藻搔けば藻掻くほどチェーンが余計に絡みついてくる。
「これで終いよ! その変異破壊してみせるわ」
倒れた変体に、銃口を突きつけるハーネス。
よくよく考えてみれば、自分以外の魔法少女が怪人を倒すところは初めて見る。
ドブさんは、ボクの能力は人や物を変異させる力だと言っていた。
その力を応用して、ボクは今まで変体化してしまった人たちを戻してきた。
ならば、ハーネスがトドメを刺すとどうなるのか?
『見ててごらん。ここからがキュイちゃんと他の魔法少女の違いだよ』
ハンドガンの一撃がアンガーラックの額に当たった。
すると、変体の身体に亀裂が生じ砕け散った。その破片は、シルフィードハーネスの胸元にある星型のペンダントに吸い込まれている様だった。
何が起きているのか分からないボクは、ただただ瞬きするしかない。
『敵を倒して変質を吸収しているんだよ。キュイちゃんは、その身体自体が変質だから何のコストもなく魔法少女に変身できるけど、他の娘は違う。魔法少女になる為には怪人から力を奪わなければいけないんだ』
「もし、力が補充できなくて戦えなくなったらどうなるの?」
『魔法少女系νTuberの資格をはく奪されて、BANされるのさ』
「にゅーちゅーばぁって……? それにバン? って……アカウントじゃないだし…………」
初めて聞く単語に頭の中が?だらけになって思考が混線していた。
それまでボクは、魔法少女とは変身アイテムの力で変身しているものだと思いこんでいた。
しかし、今の話によれば皆、怪人の力を再利用しているという……その定義に当てはめると、ボクは魔法少女ではありながらも怪人であるという異質な存在となるのだが……その先が怖くてドブさんに聞けない。
『νTuberとは、君やハーネスを含んだ疑似的魔法少女の呼称さ。魔法少女チャンネルνという組織によって管理されているんだ。バンについては文字通りだよ……だから彼女たちは必死なんだ! 効率化を考えて大抵は数名でチームを結成していたりもする。ハーネスのように単独で活動しているのは珍しいことさ』
魔法少女でありながら何らかの使命を帯びた特別なものではない。
組織よって生み出された新たなる魔法少女の概念は、いつでも、どこでも、アナタの身近にある存在だと言う。
そのメリットとは、条件さえ満たせば誰もが憧れの魔法少女になれるということだ。
田宮さんに関しては自主的ではないにしろ。
トリガーとなるバックルを手に入れたことで、魔法少女の一員として登録されているようだ。
「ふぇー、情報量が多すぎるよ」
『そうかい? キュイちゃんに話しても訳ワカメになると思ったから言わなかったけど、想像を裏切らないよね。因みに、まだ半分も話してないのよ』
「うげっ……いいです。少しずつ、追々で聞かせて貰いますから……あっ、戻った」
ようやくフニャフニャの身体から解放されたボクは、身体についた埃を払い落していた。
「ひゃあぁぁぁ! そら、見たことか。私の言った通り、他の奴に先を越されてんじゃん」
「あらあら、残念ですぅー。せっかく、新しい変身ポーズを試そうと思いましたのに」
息つく暇もなく、非常階段の方から賑やかな声が響いてきた。
どう見ても普通の女学生三人組が、急ぎ足でコチラへと向かってきていた。
逃げ遅れた一般人かと思ったけれど様子がおかしい。
まさかとは思うけど反応からしてボク達と同じ魔法少女なのか……?
「ああ―――もう! ノロのせいだぞ。オマエがグズグズしているから、戦い終わってんよ」
「ごごご、ゴメン! アイカちゃん」
「まぁまぁ、二人とも。チームメイト同士の喧嘩は止しましょうよ。アチラさんが驚かれてますよー」
突然、現れた少女三人がボクたちの方に目を向けてきた。
健康そうな肌艶をした三つ編みの女の子と、彼女に叱られ背を丸めるショートボブの少女。
そして、いかにも深窓の令嬢と言った感じの切れ長の瞳した女子とバラエティー豊かに揃っている。
友人にしては……学校制服も、まばらだし、見た目からして好みが一緒だとは到底、思えない。
それを言ったら、ボクたちもいいとこ勝負なのだが……やはり、見た目だけではなく内面的な意味でも違和感がにじみ出ている。
「何か用?」ハーネスが手短に発した。
他の魔法少女であろう、彼女たちとは交友的ではない様子。
さきほど、ドブさんが話していたことが思い出される。
ハーネス……田宮さんにとって彼女たちはライバルと呼べる。
互いに数すくない怪人というエネルギー源を取り合っている。
敵対心を燃やすのは、何ら不思議ではないが……彼女たちは、どうして正体を隠さずにボクらの前に出てきたのだろうか? 疑問は尽きない。
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