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二章、後編 聖地の落とし物
50話 家族との絆
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「シルヴィさんのおかげで色々と見えてきました。ありがとうございました!」
「いえっ、そんな……お礼を言うのは私の方よ。助けてくださり有難う。貴女がいなければ、ここから一歩も動けず助からなかったわ」
互いにお辞儀をしながら、笑い合う。
本当に素敵な御仁だ。少しだけソフィーが羨ましく思う。
獣人害事件当時の話が聞けたのは、私とって大きなヒントにつながった。
それまで隠れていた真相が目に見えてきた。
……とその前に依頼を先に片づけておこう。
「お婆ちゃん、どうしてこんな場所に居たの?」
「それはね、精霊様の住処を護るためよ。ソフィー、今まで内緒にしてごめんなさいね。ちゃんと見える人でないと精霊様も怖がってしまうし、貴女に変な心配をかけたくなかったのよ」
「そんなのって……」
ソフィーの目が疑心暗鬼に憑りつかれていた。
不安に押し負けそうな彼女の様子に、妙な胸騒ぎを覚えた……。
「ソフィ……人は見えざるものを容易に信用することはできない。たとえ、お婆様の言葉でも、貴女には精霊の存在を確かめるすべはないから……とくに獣人害の発作を恐れている貴女は、病の一環として見てしまう。シルヴィさんは、そのことを危惧していたんだよ」
「ディズさんの言った通りですね。私の心配する気持ちが、かえってお婆ちゃんを不安させていただなんて……」
「ソフィー、アンタは何も悪くないのよ! 悪いのは、ずっと本当のことを言えなかった、私よ。私はね、アンタを病のことで束縛したくなかったんだよ。アンタには、デザイナーになるという夢と才能があるから。若い今のうちから追い求めてほしい。そうやって、応援したかったのよ」
表情を曇らせ落胆する彼女に励ましの言葉を贈るのは、やはり肉親の彼女だった。
最初から私の出る幕はなかったようだ。
ソフィーにはちゃんと彼女のことを想ってくれる家族がいる。
「ごめん……お婆ちゃん。お婆ちゃんが、そこまで私のことを考えてくれていたなんて。なのに、私は……私は!」
泣きじゃくりながら、手のひらで自身の涙をぬぐうソフィー。
そんな彼女を祖母であるシルヴィさんが優しく抱きしめ頭をなでていた。
しばらくは、二人にしておいてあげた方が良さそうだ。
家族だけの時間というものがあるのだから……。
これ以上、ここに留まれるほど無粋ではない。
私は静かにその場から離れた。
「キィーナ、行くよ」
「ディ! ケッカイのところへ行くの?」
「えっ? 知っていたの?」
「うん、この子が教えてくれたんだよ。この子も、いっしょに行きたいんだって」
今まで、キィーナには何度も驚かせれたが……今回は特大の衝撃を喰らった。
精霊を視認できる人間は、まれにいるが精霊と会話できる人間がいるケースは一度も聞いたことがない。
私には聞こえない以上、どうやって会話しているのか? 想像もつかない。
彼女が精霊と会話したと言うのなら、それが真実だ。
キィーナは私の家族だ。いままで、ずっと一緒に同じ時を過ごしてきた。
だから、疑う余地などどこにもない。
「いえっ、そんな……お礼を言うのは私の方よ。助けてくださり有難う。貴女がいなければ、ここから一歩も動けず助からなかったわ」
互いにお辞儀をしながら、笑い合う。
本当に素敵な御仁だ。少しだけソフィーが羨ましく思う。
獣人害事件当時の話が聞けたのは、私とって大きなヒントにつながった。
それまで隠れていた真相が目に見えてきた。
……とその前に依頼を先に片づけておこう。
「お婆ちゃん、どうしてこんな場所に居たの?」
「それはね、精霊様の住処を護るためよ。ソフィー、今まで内緒にしてごめんなさいね。ちゃんと見える人でないと精霊様も怖がってしまうし、貴女に変な心配をかけたくなかったのよ」
「そんなのって……」
ソフィーの目が疑心暗鬼に憑りつかれていた。
不安に押し負けそうな彼女の様子に、妙な胸騒ぎを覚えた……。
「ソフィ……人は見えざるものを容易に信用することはできない。たとえ、お婆様の言葉でも、貴女には精霊の存在を確かめるすべはないから……とくに獣人害の発作を恐れている貴女は、病の一環として見てしまう。シルヴィさんは、そのことを危惧していたんだよ」
「ディズさんの言った通りですね。私の心配する気持ちが、かえってお婆ちゃんを不安させていただなんて……」
「ソフィー、アンタは何も悪くないのよ! 悪いのは、ずっと本当のことを言えなかった、私よ。私はね、アンタを病のことで束縛したくなかったんだよ。アンタには、デザイナーになるという夢と才能があるから。若い今のうちから追い求めてほしい。そうやって、応援したかったのよ」
表情を曇らせ落胆する彼女に励ましの言葉を贈るのは、やはり肉親の彼女だった。
最初から私の出る幕はなかったようだ。
ソフィーにはちゃんと彼女のことを想ってくれる家族がいる。
「ごめん……お婆ちゃん。お婆ちゃんが、そこまで私のことを考えてくれていたなんて。なのに、私は……私は!」
泣きじゃくりながら、手のひらで自身の涙をぬぐうソフィー。
そんな彼女を祖母であるシルヴィさんが優しく抱きしめ頭をなでていた。
しばらくは、二人にしておいてあげた方が良さそうだ。
家族だけの時間というものがあるのだから……。
これ以上、ここに留まれるほど無粋ではない。
私は静かにその場から離れた。
「キィーナ、行くよ」
「ディ! ケッカイのところへ行くの?」
「えっ? 知っていたの?」
「うん、この子が教えてくれたんだよ。この子も、いっしょに行きたいんだって」
今まで、キィーナには何度も驚かせれたが……今回は特大の衝撃を喰らった。
精霊を視認できる人間は、まれにいるが精霊と会話できる人間がいるケースは一度も聞いたことがない。
私には聞こえない以上、どうやって会話しているのか? 想像もつかない。
彼女が精霊と会話したと言うのなら、それが真実だ。
キィーナは私の家族だ。いままで、ずっと一緒に同じ時を過ごしてきた。
だから、疑う余地などどこにもない。
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