追放神官とケモミミ探偵

心絵マシテ

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二章、後編 聖地の落とし物

45話 古時計

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 お婆様の行方を導き出す答えは、この屋敷の中にある。
 外観では気付かなかった歪さ。それは室内をくまなく探れば、至るところに見受けられる。
 まず、この屋敷は全体的に傾いている……それも歩いただけでは気づかない微々たる違いだ。
 寝室だけが他と比べて、一段低くなっている。
 なっていて当然。
 この部屋は完全に後から付け足されたものだからだ。

 むろん、それだけが根拠というわけでもない。
 あくまで、一階にいた時点では、予想の範疇をとどまっていた。
 これが確定したのは二階へと上がった時だった。

 渡り廊下を挟んで並ぶ部屋の位置、左右で明確なほどズレている。
 建屋の構造上、左右の客室は普通、揃えるものだ。
 でなければ、一階の形状が合わなくなってしまうからだ。

「一階より総面積がある二階、それなら外から見た時に特徴ある形に見えないと変だからね。それが見えないということは一階に隠し部屋があるということを示唆しているんだ」

「そ、そんな! ここで暮らしていたのに……ちっとも気づかなかったなんて」

「存外、人の慣れなんてそういうものよ。意識が当たり前と認識していれば疑う余地なんてないもの。それに、ソフィーに気づかれないように、お婆様が対処していたんだと思うよ」

 新事実、発覚に足取りが覚束ないソフィー。
 タネが分かっただけでは、この問題は解決しない。
 肝心なのは、ここからだ。
 誰がいつ、一体、何の目的のために隠し部屋などを作ったのか?
 今回の場合、正確には部屋を増設して隠したわけだが……。

「ディ! キィ分かったよ、隠し部屋の入口がどこにあるのか?」

「本当ですか!? キィーナちゃん、凄い」

 驚いた表情をするソフィーに、上機嫌となったキィーナが尻尾を振っている。
「そこだよ」と彼女が指さしたのは寝室にある柱時計。
 ずいぶんと、くたびれていて時計自体は機能していない。
 だからこそ余計に目立つ、ことの異変。
 使われていないはずなのに、ホコリ一つ被っていない。
 それどころか、寝室の間取りに対して大きすぎる柱時計は、邪魔以外の何者でもない。

 手つかずのまま長期間、放っておけるとは思えない。
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