上 下
45 / 55
二章、後編 聖地の落とし物

44話 希望の轍

しおりを挟む
 ダイニングとリビングに挟まるカタチで、二階への階段が設置されていた。
 向って時計周りにコの字となっている階段を早速上がる。
 二階にが上がると丁度、家屋北側の端に出るようになっている。
 そこから南に向かって渡り廊下が一直線に通っていた。
 
 廊下の左右には、いくつかの個室が見える。
 扉の数だけ数えると左手に三部屋、右手に二部屋となっていた。
 因みに廊下の突き当りはトイレになっている。

「ここが、以前に私が使用していた部屋です。他の部屋と同様ベッドぐらいしか残っていませんが」

 右側手前の部屋が、ソフィーの部屋だったそうだ。一応、すべての部屋をチェックしてみた。
 彼女の証言どおり、部屋にモノと呼べるモノは残っていそうにない。

「やはり、祖母は誰かに誘拐されたのでは……」

 ソフィーがまた良からぬ、妄想し始めた。
 病弱な老人を誘拐するのは、犯人にとってもリスキーだと説明したが、浮かない顔をしている。
 奴隷商人なら、子供や若者をさらうことも考えられるが……そもそも、ここは外からの人通りがないに等しい。
 こんな遺跡の中に集落があると誰も気づきはしない。

「ところでキィーナ、どうして私が二階を見たいと言ったのか、わかるかな?」

 キィーナが現状をどれだけ把握できているのか? 確かめてみた。
 これから探偵の卵を目指す彼女だ。実際に推理をするように促して、なるべく経験を積ませておきたい。
 実のところ、子供ならではの思考や感性にも期待している。
 大人が見過ごすことにしっかりと目を向けている、子供の感受性は決してバカにはできない。

 さすがにムズ過ぎた……キィーナがしきり唸り、考え込んでしまった。
 答えが返ってくるまで、しばし待つこととなった。
 それでも彼女は真剣に考え答えをひねり出した。

「う~ん、部屋の中でおばあちゃんが、かくれんぼしているから? だから、どこにどの部屋があるのか知りたかった……とか?」

「惜しい、着眼点は悪くないけど、どうしてかくれんぼをしているのか? 考えないとね」

「ムッ、ディは分かるの?」

「そうね。その辺りをこれから説明するよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!

暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい! 政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

その聖女は身分を捨てた

メカ喜楽直人
ファンタジー
ある日突然、この世界各地に無数のダンジョンが出来たのは今から18年前のことだった。 その日から、この世界には魔物が溢れるようになり人々は武器を揃え戦うことを覚えた。しかし年を追うごとに魔獣の種類は増え続け武器を持っている程度では倒せなくなっていく。 そんな時、神からの掲示によりひとりの少女が探し出される。 魔獣を退ける結界を作り出せるその少女は、自国のみならず各国から請われ結界を貼り廻らせる旅にでる。 こうして少女の活躍により、世界に平和が取り戻された。 これは、平和を取り戻した後のお話である。

悪役令嬢の涙

拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

【完結】殿下、自由にさせていただきます。

なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」  その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。  アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。  髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。  見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。  私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。  初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?  恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。  しかし、正騎士団は女人禁制。  故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。  晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。     身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。    そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。  これは、私の初恋が終わり。  僕として新たな人生を歩みだした話。  

一人暮らしのおばさん薬師を黒髪の青年は崇めたてる

朝山みどり
ファンタジー
冤罪で辺境に追放された元聖女。のんびりまったり平和に暮らしていたが、過去が彼女の生活を壊そうとしてきた。 彼女を慕う青年はこっそり彼女を守り続ける。

処理中です...