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二章、後編 聖地の落とし物

43話 お婆様の行方

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 家にいるはずの祖母が居ない。
 もぬけの殻となった寝室を見て、ソフィーは過呼吸になるほど気が動転していた。
 一旦、落ち着くように椅子へと前屈みに座らせ飴を手渡した。
 極度の緊張やストレスで起きる症状だ。気が楽になれば、次第に回復する。

 ソフィーの悩みの種は、やはり祖母の病だろう。
 獣人害が悪化すると最悪周囲に被害が及ぶ。
 この集落のように狭い社会では、ことさら影響が大きい。

「ソフィーおねえちゃんの、おばあちゃんはキィたちが見つけるから心配しないで」

「ありがとぅ、キィーナちゃん」

 ソフィーを気遣い、キィーナがルーペを取り出した。
 虫眼鏡と呼んでいたら「チガウもん!」と一喝いっかつされてしまった。
 なので、今後はルーペと呼ぶ。

 それは、さておき、問題はソフィーのお婆様がどこにいるのかだ。
 神隠しにでも会わない限り事件性は低いと現時点で、私は判断している。

 玄関からダイニング、リビング、寝室と三ヶ所の部屋を回ったけれど、どこもが荒らされた形跡がない。
 ご丁寧に散らかした場所を元に戻す泥棒など聞いたこともない、よって強盗の線は消えた。

 ならば、どこかに出掛けた可能性は?
 これは、一概いちがいに否定しにくい。
 田舎は治安が良いからと戸締りもせずに、外出する場合がある。
 もしくは、うっかり締め忘れたのかもしれない。

「ソフィー、貴女のお婆様はよく外出とかするのかな?」

 外出したのか、どうか探るには、やはり身内から情報を得るのが手っ取り早い。
 聞き込みを開始するが、問いに対しソフィーの反応は薄い。

「いえ、祖母は足が悪くて長い距離を歩くことはできません」

「誰かが背負ってくれるとかは?」

「うーん、考えにくいです。そもそも玄関には祖母の靴が残ったままです」

 どうやら、彼女も外出の可能性は低いと見ているようだ。
 ソフィーの証言により、この家のどこかにいる可能性がグンと高くなった。

「二階の方も、見に行きたいんだけどいいかな?」

「分かりました、案内しますね」
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