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二章、後編 聖地の落とし物

35話 格差社会

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 工房が近づくにつれて、いたたまれない気持ちが強くなった。
 ソフィーの暮らす、そこは工房とは名ばかりのわらぶき屋根のくたびれた家屋だった。
 辛うじて原型を保っている工房は、嵐が来たら簡単に飛ばされてしまいそうなほど、頼りない感じがする。
 木の壁は腐りかけており、所々に補修を加えた形跡がある。
 建屋の周辺には庭などなく、雑草がお生い茂っている。使わなくなりフタをされた井戸の滑車も赤サビ塗れになっている。

「そんなに、見ないでください。見すぼらしいモノを見せてすみません」

「き、気にしないで! ウチも、ここと良いとこ勝負だから」

「でも、教会はとても綺麗な場所じゃないですか!? 神聖だし……」

「教会ってもピンキリだよ。この村の教会がおかしいだけの話だよ……プッ」

 互いの家屋について、言い合っていると自然と笑いがこみ上げてきた。
 ソフィーも腹を抱えながら一緒になって笑っていた。

「アハァ……私たちは何を一生懸命になっているんだろう?」

「クスッ、さあ? 立ち話もなんですから、入って下さい。中は、外よりもまともですから」
 急かされるようにして、屋内に招かれる。ソフィーが構わないと言ってくれるのなら、中を拝見させて貰おう。
 意気込むようにして私たちは、工房の中へと入った。

「わあぁ――――」傍からキィーナの感極まった悲鳴が聞こえた。
 そこまで驚くのも無理もない。彼女の反応は至って普通、まともだ。

 部屋の中に入った瞬間、別世界に迷い込んだような錯覚に陥ってしまった。
 あのボロボロになっている外観からは想像できないほど、工房内は彩色豊かに、美しく飾り付けられていた。

 壁全体に、光沢を放つ純白クロースが張られている様は、どこか式典会場を彷彿させる。
 あのオンボロの壁にクロースなどつけても意味がない。
 そう思われがちだが、実は室内には外壁とは異なる一つの壁が存在する。
 間取りの面積は一回り小さくはなるも、それでも充分なスペースを確保できていた。

 床には厚みある絨毯をしき、天井はあえて古風な梁をむき出しにしている。
 何より、目を見張るのは並べられた彼女の作品だ。
 仕立て屋と言うだけあってトルソーには見事な出来栄えの衣装が着せてあった。
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