36 / 55
二章、後編 聖地の落とし物
35話 格差社会
しおりを挟む
工房が近づくにつれて、いたたまれない気持ちが強くなった。
ソフィーの暮らす、そこは工房とは名ばかりの藁ぶき屋根のくたびれた家屋だった。
辛うじて原型を保っている工房は、嵐が来たら簡単に飛ばされてしまいそうなほど、頼りない感じがする。
木の壁は腐りかけており、所々に補修を加えた形跡がある。
建屋の周辺には庭などなく、雑草がお生い茂っている。使わなくなりフタをされた井戸の滑車も赤サビ塗れになっている。
「そんなに、見ないでください。見すぼらしいモノを見せてすみません」
「き、気にしないで! ウチも、ここと良いとこ勝負だから」
「でも、教会はとても綺麗な場所じゃないですか!? 神聖だし……」
「教会ってもピンキリだよ。この村の教会がおかしいだけの話だよ……プッ」
互いの家屋について、言い合っていると自然と笑いがこみ上げてきた。
ソフィーも腹を抱えながら一緒になって笑っていた。
「アハァ……私たちは何を一生懸命になっているんだろう?」
「クスッ、さあ? 立ち話もなんですから、入って下さい。中は、外よりもまともですから」
急かされるようにして、屋内に招かれる。ソフィーが構わないと言ってくれるのなら、中を拝見させて貰おう。
意気込むようにして私たちは、工房の中へと入った。
「わあぁ――――」傍からキィーナの感極まった悲鳴が聞こえた。
そこまで驚くのも無理もない。彼女の反応は至って普通、まともだ。
部屋の中に入った瞬間、別世界に迷い込んだような錯覚に陥ってしまった。
あのボロボロになっている外観からは想像できないほど、工房内は彩色豊かに、美しく飾り付けられていた。
壁全体に、光沢を放つ純白クロースが張られている様は、どこか式典会場を彷彿させる。
あのオンボロの壁にクロースなどつけても意味がない。
そう思われがちだが、実は室内には外壁とは異なる一つの壁が存在する。
間取りの面積は一回り小さくはなるも、それでも充分なスペースを確保できていた。
床には厚みある絨毯をしき、天井はあえて古風な梁をむき出しにしている。
何より、目を見張るのは並べられた彼女の作品だ。
仕立て屋と言うだけあってトルソーには見事な出来栄えの衣装が着せてあった。
ソフィーの暮らす、そこは工房とは名ばかりの藁ぶき屋根のくたびれた家屋だった。
辛うじて原型を保っている工房は、嵐が来たら簡単に飛ばされてしまいそうなほど、頼りない感じがする。
木の壁は腐りかけており、所々に補修を加えた形跡がある。
建屋の周辺には庭などなく、雑草がお生い茂っている。使わなくなりフタをされた井戸の滑車も赤サビ塗れになっている。
「そんなに、見ないでください。見すぼらしいモノを見せてすみません」
「き、気にしないで! ウチも、ここと良いとこ勝負だから」
「でも、教会はとても綺麗な場所じゃないですか!? 神聖だし……」
「教会ってもピンキリだよ。この村の教会がおかしいだけの話だよ……プッ」
互いの家屋について、言い合っていると自然と笑いがこみ上げてきた。
ソフィーも腹を抱えながら一緒になって笑っていた。
「アハァ……私たちは何を一生懸命になっているんだろう?」
「クスッ、さあ? 立ち話もなんですから、入って下さい。中は、外よりもまともですから」
急かされるようにして、屋内に招かれる。ソフィーが構わないと言ってくれるのなら、中を拝見させて貰おう。
意気込むようにして私たちは、工房の中へと入った。
「わあぁ――――」傍からキィーナの感極まった悲鳴が聞こえた。
そこまで驚くのも無理もない。彼女の反応は至って普通、まともだ。
部屋の中に入った瞬間、別世界に迷い込んだような錯覚に陥ってしまった。
あのボロボロになっている外観からは想像できないほど、工房内は彩色豊かに、美しく飾り付けられていた。
壁全体に、光沢を放つ純白クロースが張られている様は、どこか式典会場を彷彿させる。
あのオンボロの壁にクロースなどつけても意味がない。
そう思われがちだが、実は室内には外壁とは異なる一つの壁が存在する。
間取りの面積は一回り小さくはなるも、それでも充分なスペースを確保できていた。
床には厚みある絨毯をしき、天井はあえて古風な梁をむき出しにしている。
何より、目を見張るのは並べられた彼女の作品だ。
仕立て屋と言うだけあってトルソーには見事な出来栄えの衣装が着せてあった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
一人暮らしのおばさん薬師を黒髪の青年は崇めたてる
朝山みどり
ファンタジー
冤罪で辺境に追放された元聖女。のんびりまったり平和に暮らしていたが、過去が彼女の生活を壊そうとしてきた。
彼女を慕う青年はこっそり彼女を守り続ける。
言いたいことはそれだけですか。では始めましょう
井藤 美樹
恋愛
常々、社交を苦手としていましたが、今回ばかりは仕方なく出席しておりましたの。婚約者と一緒にね。
その席で、突然始まった婚約破棄という名の茶番劇。
頭がお花畑の方々の発言が続きます。
すると、なぜが、私の名前が……
もちろん、火の粉はその場で消しましたよ。
ついでに、独立宣言もしちゃいました。
主人公、めちゃくちゃ口悪いです。
成り立てホヤホヤのミネリア王女殿下の溺愛&奮闘記。ちょっとだけ、冒険譚もあります。
悪役令嬢の涙
拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
だって私、悪役令嬢なんですもの(笑)
みなせ
ファンタジー
転生先は、ゲーム由来の異世界。
ヒロインの意地悪な姉役だったわ。
でも、私、お約束のチートを手に入れましたの。
ヒロインの邪魔をせず、
とっとと舞台から退場……の筈だったのに……
なかなか家から離れられないし、
せっかくのチートを使いたいのに、
使う暇も無い。
これどうしたらいいのかしら?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる