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二章、前編 聖地への訪問

30話 黄金色の畑

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 私たちを乗せた馬車は、そのまま休むことなくソフィーが暮らすというメボの村を目指していた。

「ここまで来れば、問題なさそうだね」

 襲撃を受けた場所から、かなり距離が離れた。
 しばらく、後方を監視していたけれど、無事に野盗を撒くことができたようだ。
 ひとまず、これで落ち着ける。
 荷台側板に身をあずけながら揺られていると、分厚い雲の切れ間から光が射し込んできた。
 温暖な日差しを浴びると、ついつい眠ってしまいそうになる。
 キィーナも、またウトウトとしながら私の肩に寄りかかってきた。

「あのぅ……失礼ながら一つ、お伺いしても宜しいでしょうか?」
 ソフィーが指先をモゾモゾと動かしながら尋ねてきた。
 どこか、落ち着きのない様子に「ええっ」とだけ短く返す。
 こういう時は、大抵、相手の中に迷いが生じている。
 私がどうこう言って先走るのではなく、彼女自身の言葉できちんと話をしてもらった方がいい。
 だから、それなく距離を作って様子を窺う。

「その子と神官様は込み入った話、どういう関係なんでしょうか? 神官様の年齢からして、親子ではないですよね? 歳の離れた妹さんとか……ですかね?」

「気になりますか? 聖職者が悪魔つきの子供を連れていることが?」

「それは……その…………やはり、先程の遠吠えを……聞いてしまった以上は、気になります」

 こちらに気遣ったのだろう。ソフィーはあえて遠回しに聞いてきた。
 着衣で誤魔化していたが、キィーナが能力を使用したことにより、正体がバレてしまった。
 それでも、キィーナと同じ境遇のソフィーなら問題はない。
 そう、思い私はキィーナとの出会い、彼女の生い立ちを打ち明けることにした。

「グスッ、グスッ、なんか……ずびまぜん! どうじても、他人事には思えなぐで~」

 話を聞くなり、ソフィーは、鼻をすすりながら号泣していた。
 悪魔つきを見る世間の眼は、どこも変わらない。
 彼女も人知れず苦労を重ねてきたはずだ。
 ゆえに、自身とキィーナを重ねて見てしまう。

「オメェさんがた、村が見えてきたでよ」

 御者ぎょしゃのお爺さんが声をかけてながら、前方を指さしていた。
 なだらかな起伏の手前には一面、黄金色に輝く大地があった。
 目を奪うほどの悠然とした光景に、私は心を震わせていた。
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