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二章、前編 聖地への訪問
29話 包囲網を突破せよ
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白き光の中から、キィーナの喚びかけに応じた光の獣たちが姿を現わした。
リスやウサギ、アライグマとイタチ、鹿に熊などそうそうたる仲間たちが集ってきた。
どうして、キィーナにこの様な力があるのか? 私にも解明できてはいない。
分かっているのは、彼女が聖なる光を通して動物の魂を引き寄せられるということだけだ。
「おわわわああ――!!」
馬車を囲うよう陣取った光の動物たちが早速、襲撃してくる悪漢たちを追い払う。
噛みついたり、引っかいたり、角で押したりして防御網となって私たちを守ってくれている。
その間に、馬車は徐々に速度をあげてゆく。
このまま正面から突破できれば申し分はないのだが、現実は甘くない。
大旗を握りしめ構えたゲゲルが馬車の進行方向を塞いでいた。
あんなモノで、馬を傷つけられたら荷台ごと横転してしまう。
なんとかして、あの男から逃げなければならない。
「ディ、こんなのがあったよ」
「香辛料が入った瓶?」
キィーナが見つけたのは、粉末にした香辛料の大瓶だった。
その中に入っているのは、普段、キッチンで見かける胡椒のようだ。
「これだ! これをゲゲルにぶつければ……」
閃いた私は、香辛料の瓶を持ち上げた。
両手で抱えられるほどのサイズの瓶はずっしりと重く、とてもじゃないが一人では荷台から放り投げることなどできない。
「て、手伝います!」
「キィーもお手伝いする」
ソフィーとキィーナのおかげで、瓶の重さが大分軽くなった。
これならイケそうだ。
「「せぇーの!!」」
三人で息を合わせて、野盗のボスに大瓶を投げつけてやった。
飛ばされたモノが何のか? 考えようともしない彼は大旗で瓶を叩き落とす。
障害となる物はすべて脊髄反射のごとく破壊してしまう。
その癖が仇となり、ゲゲルは頭からモロに胡椒をかぶっていた。
「ぐえぇえ!! ゲホッ、ゴホッゴホッ! うがあああ―――目が! 目がしみる!! ぶえええぇぇ――くしょん!!! おえぇえ……べええええくしょ――――ん!!」
胡椒地獄に苦しんでいるゲゲルの脇を、空かさず馬車で通りぬける。
どうやら、私たちの作戦は上手くいったようだ。
この馬車について来るカタチで、他の馬車も逃走し出していた。
野盗が追ってくる気配は、見られなかった。
リスやウサギ、アライグマとイタチ、鹿に熊などそうそうたる仲間たちが集ってきた。
どうして、キィーナにこの様な力があるのか? 私にも解明できてはいない。
分かっているのは、彼女が聖なる光を通して動物の魂を引き寄せられるということだけだ。
「おわわわああ――!!」
馬車を囲うよう陣取った光の動物たちが早速、襲撃してくる悪漢たちを追い払う。
噛みついたり、引っかいたり、角で押したりして防御網となって私たちを守ってくれている。
その間に、馬車は徐々に速度をあげてゆく。
このまま正面から突破できれば申し分はないのだが、現実は甘くない。
大旗を握りしめ構えたゲゲルが馬車の進行方向を塞いでいた。
あんなモノで、馬を傷つけられたら荷台ごと横転してしまう。
なんとかして、あの男から逃げなければならない。
「ディ、こんなのがあったよ」
「香辛料が入った瓶?」
キィーナが見つけたのは、粉末にした香辛料の大瓶だった。
その中に入っているのは、普段、キッチンで見かける胡椒のようだ。
「これだ! これをゲゲルにぶつければ……」
閃いた私は、香辛料の瓶を持ち上げた。
両手で抱えられるほどのサイズの瓶はずっしりと重く、とてもじゃないが一人では荷台から放り投げることなどできない。
「て、手伝います!」
「キィーもお手伝いする」
ソフィーとキィーナのおかげで、瓶の重さが大分軽くなった。
これならイケそうだ。
「「せぇーの!!」」
三人で息を合わせて、野盗のボスに大瓶を投げつけてやった。
飛ばされたモノが何のか? 考えようともしない彼は大旗で瓶を叩き落とす。
障害となる物はすべて脊髄反射のごとく破壊してしまう。
その癖が仇となり、ゲゲルは頭からモロに胡椒をかぶっていた。
「ぐえぇえ!! ゲホッ、ゴホッゴホッ! うがあああ―――目が! 目がしみる!! ぶえええぇぇ――くしょん!!! おえぇえ……べええええくしょ――――ん!!」
胡椒地獄に苦しんでいるゲゲルの脇を、空かさず馬車で通りぬける。
どうやら、私たちの作戦は上手くいったようだ。
この馬車について来るカタチで、他の馬車も逃走し出していた。
野盗が追ってくる気配は、見られなかった。
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