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二章、前編 聖地への訪問
24話 ジレンマとトラブル
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ソフィーとともに国境門をくぐる。
聖職者である私はもちろんのこと、家族だという理由からキィーナにも、すぐに手形が用意された。
面倒な書類手続きもなく、ありがたいけど優遇されすぎだ。
前々から、知っていたが教会という機関はつくづく、国を代表する権力の象徴なのだと思い知らされる。
キィーナと話あった結果、ソフィーに同行し彼女が住んでいる農村に行くことにした。
すぐに家に帰りたいと、ごねるかと思っていたが、キィーナは存外、あっさりと了承してくれた。
訊くところによると、実際に遺跡を見学してみたいそうだ。
何とも彼女らしい意見に顔がほころぶ。
とはいえ、うかうかもしていられない。
ソフィーの村はログワーク推理協会が指定してきた依頼先だ。
ヴィンセント遺跡での調査が主な活動内容であり、キィーナと一緒に行動することに支障はない。
ただ、遺跡の調査を求められるということは、問題がそこから生じている可能性を否めない。
前回の嫌な記憶が、未だ頭から離れない。
まずは、私自身が遺跡の安全を確かめてから、決めるべきだ。
「徒歩で、すみません。本当ならば、馬車の一台でも準備しておくべきなのに……」
「そんな、畏まらないでください。これも何かの縁、丁度、貴女の村に用があったんですから」
「そう言って下さると楽になります。この平野をもう少し進んでいけば村が見えてきますので」
平野というだけあって、街道はしっかりと舗装されていた。
人通りもそうだが、通行する馬車の量も多い。
頻繁に往来するのだから交渉して途中まで乗せてもらう方法もある。
それでも、私は歩く方を選んだ。
キィーナも何一つ言わない……というより彼女場合は、虫メガネで道端の草花を夢中になって観察しているだけだが……。
ともあれ、これだけ見通しが良ければ魔物に襲われる心配もない。
長い一本道が続く中を、散策と洒落こもうではないか。
と意気込んだも束の間、ヒヒィ――ンと前方から馬の悲鳴が聞こえてきた。
「何? トラブルかな?」
「人の足音がたくさん聞こえるよ。ディ、気をつけて」
道の先に馬車が止まっていた。
キィーナの忠告通り、進路を塞ぐように大勢の男たちが群がっていた。
聖職者である私はもちろんのこと、家族だという理由からキィーナにも、すぐに手形が用意された。
面倒な書類手続きもなく、ありがたいけど優遇されすぎだ。
前々から、知っていたが教会という機関はつくづく、国を代表する権力の象徴なのだと思い知らされる。
キィーナと話あった結果、ソフィーに同行し彼女が住んでいる農村に行くことにした。
すぐに家に帰りたいと、ごねるかと思っていたが、キィーナは存外、あっさりと了承してくれた。
訊くところによると、実際に遺跡を見学してみたいそうだ。
何とも彼女らしい意見に顔がほころぶ。
とはいえ、うかうかもしていられない。
ソフィーの村はログワーク推理協会が指定してきた依頼先だ。
ヴィンセント遺跡での調査が主な活動内容であり、キィーナと一緒に行動することに支障はない。
ただ、遺跡の調査を求められるということは、問題がそこから生じている可能性を否めない。
前回の嫌な記憶が、未だ頭から離れない。
まずは、私自身が遺跡の安全を確かめてから、決めるべきだ。
「徒歩で、すみません。本当ならば、馬車の一台でも準備しておくべきなのに……」
「そんな、畏まらないでください。これも何かの縁、丁度、貴女の村に用があったんですから」
「そう言って下さると楽になります。この平野をもう少し進んでいけば村が見えてきますので」
平野というだけあって、街道はしっかりと舗装されていた。
人通りもそうだが、通行する馬車の量も多い。
頻繁に往来するのだから交渉して途中まで乗せてもらう方法もある。
それでも、私は歩く方を選んだ。
キィーナも何一つ言わない……というより彼女場合は、虫メガネで道端の草花を夢中になって観察しているだけだが……。
ともあれ、これだけ見通しが良ければ魔物に襲われる心配もない。
長い一本道が続く中を、散策と洒落こもうではないか。
と意気込んだも束の間、ヒヒィ――ンと前方から馬の悲鳴が聞こえてきた。
「何? トラブルかな?」
「人の足音がたくさん聞こえるよ。ディ、気をつけて」
道の先に馬車が止まっていた。
キィーナの忠告通り、進路を塞ぐように大勢の男たちが群がっていた。
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