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二章、前編 聖地への訪問
18話 アンニュイな日常
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「ぬわんじゃ……こりゃあああ!」
教会の応接間に自身の喚きが響く。
開拓村での浄化依頼をこなしてから数日後、ログワークから郵便が再度、届いた。
同封されていたのは、一通の手紙と前回の依頼報酬である小切手。
それに、ずいぶんと古ぼけた地図ときた。
手紙を内容を把握する前から、嫌な予感がしなかった。
悪い予感は的中した、礼状にかこつけた新たな依頼申請が記載されている。
前回は、ログワーク推理協会という探偵育成機関からの、個人依頼として受理したけど、どうにも腑に落ちない。
立て続けに依頼を出してくる、教会本部の図々しさ。
くわえて、褒賞金の額の少なさが私の神経を逆なでしてくる。
こっちは命がけでケガレを浄化したのに、これでは割に合わなさすぎだ。
「どうかしたの?」
通りかかったキィーナが不思議そうに目を向けていた。
「いや、何でもないよ。おや? 珍しいね、キィーナが食器を片付けするなんて」
彼女に気づかれないように、サッと郵便物を懐に隠す。
にしても、今日のキィーナはやけにお利口さんだ。
普段ならやらない食器の後片付けを率先してやっている。
「まぁ、たまにわね~」
それとなくクレバーに言い放っているが、長いこと同居している私には分かる。
こういう時の、彼女は何かをおねだりしようとしている。
さしずめ、新しい探偵小説でもご所望なのだろう。
私の機嫌を取る点数稼ぎだとしても、彼女の行い自体は褒められる。
むしろ、子供らしくて可愛らしくもある。
なにより、自分がどうしたいかを考えて行動している所に成長を感じられた。
「よし! 気晴らしに出かけますか!」
私が勢いよくソファーから立ち上がる。
すると、キッチンの方からドタドタと足音を鳴らしキィーナがやってきた。
「ディ、おでかけするの?」
「うん、久しぶりに青空市場にでも行こうかなって思って、キィーナも来る?」
「行く!! すぐに用意するから、待っていて」
コクコクと頷きながら、家中を走る姿に私は苦笑した。
よほど、市場に行きたかったようだ。
たまには、外出するのも悪くはないだろう。
特に気分がスッキリとしない、こんな日は。
教会の応接間に自身の喚きが響く。
開拓村での浄化依頼をこなしてから数日後、ログワークから郵便が再度、届いた。
同封されていたのは、一通の手紙と前回の依頼報酬である小切手。
それに、ずいぶんと古ぼけた地図ときた。
手紙を内容を把握する前から、嫌な予感がしなかった。
悪い予感は的中した、礼状にかこつけた新たな依頼申請が記載されている。
前回は、ログワーク推理協会という探偵育成機関からの、個人依頼として受理したけど、どうにも腑に落ちない。
立て続けに依頼を出してくる、教会本部の図々しさ。
くわえて、褒賞金の額の少なさが私の神経を逆なでしてくる。
こっちは命がけでケガレを浄化したのに、これでは割に合わなさすぎだ。
「どうかしたの?」
通りかかったキィーナが不思議そうに目を向けていた。
「いや、何でもないよ。おや? 珍しいね、キィーナが食器を片付けするなんて」
彼女に気づかれないように、サッと郵便物を懐に隠す。
にしても、今日のキィーナはやけにお利口さんだ。
普段ならやらない食器の後片付けを率先してやっている。
「まぁ、たまにわね~」
それとなくクレバーに言い放っているが、長いこと同居している私には分かる。
こういう時の、彼女は何かをおねだりしようとしている。
さしずめ、新しい探偵小説でもご所望なのだろう。
私の機嫌を取る点数稼ぎだとしても、彼女の行い自体は褒められる。
むしろ、子供らしくて可愛らしくもある。
なにより、自分がどうしたいかを考えて行動している所に成長を感じられた。
「よし! 気晴らしに出かけますか!」
私が勢いよくソファーから立ち上がる。
すると、キッチンの方からドタドタと足音を鳴らしキィーナがやってきた。
「ディ、おでかけするの?」
「うん、久しぶりに青空市場にでも行こうかなって思って、キィーナも来る?」
「行く!! すぐに用意するから、待っていて」
コクコクと頷きながら、家中を走る姿に私は苦笑した。
よほど、市場に行きたかったようだ。
たまには、外出するのも悪くはないだろう。
特に気分がスッキリとしない、こんな日は。
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