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一章 神官とケモ耳娘

17話 決着

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 まだ、魔除けとしての効力を失ったわけではない。
 急いでペンダントを拾い上げ、再度、術をほどこす。
 途端、息を吹き返すように力強い光が辺りを照らした。

 大鬼は苦痛で片膝をついていた。
 姿勢が低くなった今なら、彼女にコレを渡せる。

「受け取って、キィーナ!」

 五芒星のペンダントが宙を舞った。
 投げ渡された魔除けをパシッとキャッチするなり、キィーナがケガレの方を真っすぐに見つめていた。
 私が言葉を発するより先に、だらしなく開いている大鬼の口へとペンダントが投下された。
 彼女は自分がどうすべきか、すでに理解していた。

 あの大鬼自体が、穢れの集合体だ。
 内部から直接、浄化すれば鬼のカタチすら保持することができなくなるはずだ。
 
「ゲギャヤアアアアァアアアアアンア――――!!」
 
 魔除けを飲み込み断末魔をあげる異形から、不浄な闇が取り除かれてゆく。
 大鬼の体内を満たした聖浄の輝きが、ケガレを打ち消し、やがて空洞全体に清らかな風が吹き抜けてきた。

 ケガレの消滅とともに、辺り一帯に充満していた瘴気が瞬く間に消し去ってしまった。
 そこは、もう魔物の住処ではない。
 山景色の一部として、大きく開いた空洞がそこにある。

「地面に流れて続けていた瘴気が消えたね。これで、村の井戸は復活するはずだよ」

 土を手に取り、感触を確かめた。
 ほんのりと冷めたいが、生命力に満ち溢れている。
 ここはもう大丈夫だ……問題は―――

「怖い思いさせちゃったね、ごめん……キィーナ」
 私に抱きついたまま離れようとしない彼女だ。
 キィーナのおかげで、ケガレを祓うことはできた。
 けど、こんなに辛い思いをさせるぐらいなら村長に預けておくべきだった。
 自分の判断の甘さが、今回のような危機を招いた。
 そう考えると悔しさと歯がゆさが滲んでくる。

 私にできる精一杯は、泣きじゃくるキィーナの背中をさすってあげることぐらいだ。
 普段は辛抱強い、この子が泣くのは……見ていて心が痛くなってくる。
 もし、私が聖女としての――――いや、やめておこう。
 今さら、それを持ち出したところで何かが変わるわけでもない。

「家に帰ろう」キィーナの手を取りながら私たちは下山した。
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