13 / 52
一章 神官とケモ耳娘
12話 華麗なる縦走劇
しおりを挟む
ラグース氏の勧めで登山に必要な装備を整えた。
登山初心者である私は完全に山を舐めくっていた。
あのまま、山に向かっていたら遭難確定だったであろう。
そのあたりを含め、ラグース氏に厳しく注意されてしまった。
とにかくこれで、準備万端だ。
護衛をつとめてくれるラグース氏を先頭に、キィーナ、私の順で隊列を組む。
どんな荒地でも機敏に動けるキィーナよりも体力がない自分の方が不安だった。
聞けば、高山病という病もあるというではないか……。
ウィルスに感染しないようにマスクを準備しようとしたが「ヤメテおけ」の一言で却下されてしまった。
登頂を開始すると案の定、私以外の二人がスイスイと傾斜を登ってゆく。
負けじと私も後に続くが、日頃の運動不足がたたり早くも足がパンパンになってきた。
「ディ、平気?」
早くも、キィーナに心配されてしまった。
もし、二人が私のペースに合わせてくれなければ、確実に千切れる自信はある。
――――嫌だ、もう帰りたい。
などと内心では叫んでいるが、そこはオトナだ。
キィーナに格好悪いところなんか見せられないと、グッとこらえた。
ほどなくして、平坦な場所に出た。
「休憩だ。10分したら、また移動するぞ」
息を切られながら、その場にへたり込む私。
「あと、どれくらいで……頂上ですか?」
何度も耳にしたそのフレーズに辟易したのか?
「聞きたいか?」と呟くラグース氏の視線が冷たく感じる。
こんな時に肉体を強化する魔法でも使えれば、楽になると思うかもしれない、
しかし、その考えは甘い。
苦なくして楽はないとはよく言ったものだ。
魔法の効力がきれた途端、地獄のような筋肉痛が全身を襲ってくるという。
そんな、凶悪な魔法を私が習得するわけがない。
「そろそろ行くぞ。日が高いうちに登らないと山小屋に辿り着けないぞ」
「やまごや………………?? つかぬ事をうかがいますが、今日中に終わらないんですか?」
「終わるわけないだろう。ここいらの山の標高が低いとはいえ、峰と峰が連なっているんだ縦走する覚悟が必要だ」
縦走というパワーワードが私の五臓六腑をイジメようとしていた。
登山初心者である私は完全に山を舐めくっていた。
あのまま、山に向かっていたら遭難確定だったであろう。
そのあたりを含め、ラグース氏に厳しく注意されてしまった。
とにかくこれで、準備万端だ。
護衛をつとめてくれるラグース氏を先頭に、キィーナ、私の順で隊列を組む。
どんな荒地でも機敏に動けるキィーナよりも体力がない自分の方が不安だった。
聞けば、高山病という病もあるというではないか……。
ウィルスに感染しないようにマスクを準備しようとしたが「ヤメテおけ」の一言で却下されてしまった。
登頂を開始すると案の定、私以外の二人がスイスイと傾斜を登ってゆく。
負けじと私も後に続くが、日頃の運動不足がたたり早くも足がパンパンになってきた。
「ディ、平気?」
早くも、キィーナに心配されてしまった。
もし、二人が私のペースに合わせてくれなければ、確実に千切れる自信はある。
――――嫌だ、もう帰りたい。
などと内心では叫んでいるが、そこはオトナだ。
キィーナに格好悪いところなんか見せられないと、グッとこらえた。
ほどなくして、平坦な場所に出た。
「休憩だ。10分したら、また移動するぞ」
息を切られながら、その場にへたり込む私。
「あと、どれくらいで……頂上ですか?」
何度も耳にしたそのフレーズに辟易したのか?
「聞きたいか?」と呟くラグース氏の視線が冷たく感じる。
こんな時に肉体を強化する魔法でも使えれば、楽になると思うかもしれない、
しかし、その考えは甘い。
苦なくして楽はないとはよく言ったものだ。
魔法の効力がきれた途端、地獄のような筋肉痛が全身を襲ってくるという。
そんな、凶悪な魔法を私が習得するわけがない。
「そろそろ行くぞ。日が高いうちに登らないと山小屋に辿り着けないぞ」
「やまごや………………?? つかぬ事をうかがいますが、今日中に終わらないんですか?」
「終わるわけないだろう。ここいらの山の標高が低いとはいえ、峰と峰が連なっているんだ縦走する覚悟が必要だ」
縦走というパワーワードが私の五臓六腑をイジメようとしていた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
義弟の婚約者が私の婚約者の番でした
五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」
金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。
自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。
視界の先には
私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる