12 / 50
一章 神官とケモ耳娘
11話 山奥に潜むモノ
しおりを挟む
「ラグースさん、こちらの手違いで疑ってしまい、すみません。ディズ様にも、ご迷惑をかけてしまいましたね」
探していたモノが見つかった途端、ハルツ氏は私たちの前で深々と頭を下げた。
その潔さは信用を重んじる商人らしいとも言える。
無論、そこまで真摯に謝罪されたら誰だって、つい許してしまうだろう。
強面のラグースさんでさえ、自分が疑われていたのにも関わず、ハルツさん肩を叩いて励ましているくらいだ。
謝罪の気持ちとしてハルツ氏から、高価そうなスカーフを二枚も頂いてしまった。
もちろん、遠慮はしたものの……。
「それでは、僕の気持ちが晴れません。どうか、人助けだと思い受け取ってください」
などと、言われてしまったら立場状、断りきれなかった。
去ってゆく馬車を見送りながら、ふと気づいた。
この村での仕事はまだ、手つかずのままだと……。
いけない、現状に満足して危うく帰路につくところだった。
引き受けると話してしまったのだ。白紙に戻すわけにもいかない。
危険な場所にキィーナを連れてゆくのは忍びないが、誰かに預けたりする方がよほど心配だ。
ただでさえ、近頃は悪魔憑きの子供を誘拐し、売り飛ばす悪人もいるという噂だ。
よほど、信頼にたる人物でなければ、この娘を任せることなどできない。
「ふあぁ~、終わった、終わった。礼金もたんまり色つけてもらったし、一杯ひっかけるか! なぁ、神官さんよ」
大あくびをしながら、手にした革袋をジャラジャラと鳴らすラグース氏。
どういうわけか、私たちは飲みに誘われているようだ。
「お気持ちは有難いのですが……私たちは、これから一仕事がありますので失礼します」
「ちょっと、待ちな」
早々に立ち去ろうとしたが、ガッと肩をつかまれ引き戻されてしまう。
神官とは、こうも非力なのか? それとも彼の腕力が異常なのか?
分からないまま、とりあえずラグース氏の話を聞くことにした。
「ハルツから聞いたぜ。アンタ、この村を井戸を浄化するために派遣された神官なんだって?」
「まぁ、そうなりますね……今から、私たちで山奥の何処かに潜んでいる魔物を退治することになるかもしれませんが……」
「アンタと嬢ちゃんだけでか? ククック! 正気かよ。いくら、神官でも護衛も付けないつもりかよ」
豪快に笑い飛ばす彼に、私はムスッとした。
私だって好きで単身乗り込もうとしているわけではない。
この村にギルドがないから冒険者もろくにいないし、依頼をだすこともできない。
協力を求めても、さっきのように応じてはもらえない。
「そんな顔すんなって、別に馬鹿にするつもりで笑ったわけじゃないんだ。嫌いじゃないぜ、アンタみたいな滅茶苦茶な奴は。そうだな……よしっ! 俺が協力してやる」
「いいのですか? 礼金は、大して払えないですよ?」
「んなモン、気にすんな。アンタと嬢ちゃんには、無実を証明してもらったんだ。今度、俺の番だろっ!」
ラグース氏の好意に、思わず息を飲んでしまった。
これが推理がもたらす奇跡の力なのか?
待ち望んでいた助っ人は、意外なところで見つかった。
探していたモノが見つかった途端、ハルツ氏は私たちの前で深々と頭を下げた。
その潔さは信用を重んじる商人らしいとも言える。
無論、そこまで真摯に謝罪されたら誰だって、つい許してしまうだろう。
強面のラグースさんでさえ、自分が疑われていたのにも関わず、ハルツさん肩を叩いて励ましているくらいだ。
謝罪の気持ちとしてハルツ氏から、高価そうなスカーフを二枚も頂いてしまった。
もちろん、遠慮はしたものの……。
「それでは、僕の気持ちが晴れません。どうか、人助けだと思い受け取ってください」
などと、言われてしまったら立場状、断りきれなかった。
去ってゆく馬車を見送りながら、ふと気づいた。
この村での仕事はまだ、手つかずのままだと……。
いけない、現状に満足して危うく帰路につくところだった。
引き受けると話してしまったのだ。白紙に戻すわけにもいかない。
危険な場所にキィーナを連れてゆくのは忍びないが、誰かに預けたりする方がよほど心配だ。
ただでさえ、近頃は悪魔憑きの子供を誘拐し、売り飛ばす悪人もいるという噂だ。
よほど、信頼にたる人物でなければ、この娘を任せることなどできない。
「ふあぁ~、終わった、終わった。礼金もたんまり色つけてもらったし、一杯ひっかけるか! なぁ、神官さんよ」
大あくびをしながら、手にした革袋をジャラジャラと鳴らすラグース氏。
どういうわけか、私たちは飲みに誘われているようだ。
「お気持ちは有難いのですが……私たちは、これから一仕事がありますので失礼します」
「ちょっと、待ちな」
早々に立ち去ろうとしたが、ガッと肩をつかまれ引き戻されてしまう。
神官とは、こうも非力なのか? それとも彼の腕力が異常なのか?
分からないまま、とりあえずラグース氏の話を聞くことにした。
「ハルツから聞いたぜ。アンタ、この村を井戸を浄化するために派遣された神官なんだって?」
「まぁ、そうなりますね……今から、私たちで山奥の何処かに潜んでいる魔物を退治することになるかもしれませんが……」
「アンタと嬢ちゃんだけでか? ククック! 正気かよ。いくら、神官でも護衛も付けないつもりかよ」
豪快に笑い飛ばす彼に、私はムスッとした。
私だって好きで単身乗り込もうとしているわけではない。
この村にギルドがないから冒険者もろくにいないし、依頼をだすこともできない。
協力を求めても、さっきのように応じてはもらえない。
「そんな顔すんなって、別に馬鹿にするつもりで笑ったわけじゃないんだ。嫌いじゃないぜ、アンタみたいな滅茶苦茶な奴は。そうだな……よしっ! 俺が協力してやる」
「いいのですか? 礼金は、大して払えないですよ?」
「んなモン、気にすんな。アンタと嬢ちゃんには、無実を証明してもらったんだ。今度、俺の番だろっ!」
ラグース氏の好意に、思わず息を飲んでしまった。
これが推理がもたらす奇跡の力なのか?
待ち望んでいた助っ人は、意外なところで見つかった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
【完結】薔薇の花をあなたに贈ります
彩華(あやはな)
恋愛
レティシアは階段から落ちた。
目を覚ますと、何かがおかしかった。それは婚約者である殿下を覚えていなかったのだ。
ロベルトは、レティシアとの婚約解消になり、聖女ミランダとの婚約することになる。
たが、それに違和感を抱くようになる。
ロベルト殿下視点がおもになります。
前作を多少引きずってはいますが、今回は暗くはないです!!
11話完結です。
追放された聖女の悠々自適な側室ライフ
白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」
平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。
そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。
そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。
「王太子殿下の仰せに従います」
(やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや)
表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。
今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。
マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃
聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる