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一章 神官とケモ耳娘
11話 山奥に潜むモノ
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「ラグースさん、こちらの手違いで疑ってしまい、すみません。ディズ様にも、ご迷惑をかけてしまいましたね」
探していたモノが見つかった途端、ハルツ氏は私たちの前で深々と頭を下げた。
その潔さは信用を重んじる商人らしいとも言える。
無論、そこまで真摯に謝罪されたら誰だって、つい許してしまうだろう。
強面のラグースさんでさえ、自分が疑われていたのにも関わず、ハルツさん肩を叩いて励ましているくらいだ。
謝罪の気持ちとしてハルツ氏から、高価そうなスカーフを二枚も頂いてしまった。
もちろん、遠慮はしたものの……。
「それでは、僕の気持ちが晴れません。どうか、人助けだと思い受け取ってください」
などと、言われてしまったら立場状、断りきれなかった。
去ってゆく馬車を見送りながら、ふと気づいた。
この村での仕事はまだ、手つかずのままだと……。
いけない、現状に満足して危うく帰路につくところだった。
引き受けると話してしまったのだ。白紙に戻すわけにもいかない。
危険な場所にキィーナを連れてゆくのは忍びないが、誰かに預けたりする方がよほど心配だ。
ただでさえ、近頃は悪魔憑きの子供を誘拐し、売り飛ばす悪人もいるという噂だ。
よほど、信頼にたる人物でなければ、この娘を任せることなどできない。
「ふあぁ~、終わった、終わった。礼金もたんまり色つけてもらったし、一杯ひっかけるか! なぁ、神官さんよ」
大あくびをしながら、手にした革袋をジャラジャラと鳴らすラグース氏。
どういうわけか、私たちは飲みに誘われているようだ。
「お気持ちは有難いのですが……私たちは、これから一仕事がありますので失礼します」
「ちょっと、待ちな」
早々に立ち去ろうとしたが、ガッと肩をつかまれ引き戻されてしまう。
神官とは、こうも非力なのか? それとも彼の腕力が異常なのか?
分からないまま、とりあえずラグース氏の話を聞くことにした。
「ハルツから聞いたぜ。アンタ、この村を井戸を浄化するために派遣された神官なんだって?」
「まぁ、そうなりますね……今から、私たちで山奥の何処かに潜んでいる魔物を退治することになるかもしれませんが……」
「アンタと嬢ちゃんだけでか? ククック! 正気かよ。いくら、神官でも護衛も付けないつもりかよ」
豪快に笑い飛ばす彼に、私はムスッとした。
私だって好きで単身乗り込もうとしているわけではない。
この村にギルドがないから冒険者もろくにいないし、依頼をだすこともできない。
協力を求めても、さっきのように応じてはもらえない。
「そんな顔すんなって、別に馬鹿にするつもりで笑ったわけじゃないんだ。嫌いじゃないぜ、アンタみたいな滅茶苦茶な奴は。そうだな……よしっ! 俺が協力してやる」
「いいのですか? 礼金は、大して払えないですよ?」
「んなモン、気にすんな。アンタと嬢ちゃんには、無実を証明してもらったんだ。今度、俺の番だろっ!」
ラグース氏の好意に、思わず息を飲んでしまった。
これが推理がもたらす奇跡の力なのか?
待ち望んでいた助っ人は、意外なところで見つかった。
探していたモノが見つかった途端、ハルツ氏は私たちの前で深々と頭を下げた。
その潔さは信用を重んじる商人らしいとも言える。
無論、そこまで真摯に謝罪されたら誰だって、つい許してしまうだろう。
強面のラグースさんでさえ、自分が疑われていたのにも関わず、ハルツさん肩を叩いて励ましているくらいだ。
謝罪の気持ちとしてハルツ氏から、高価そうなスカーフを二枚も頂いてしまった。
もちろん、遠慮はしたものの……。
「それでは、僕の気持ちが晴れません。どうか、人助けだと思い受け取ってください」
などと、言われてしまったら立場状、断りきれなかった。
去ってゆく馬車を見送りながら、ふと気づいた。
この村での仕事はまだ、手つかずのままだと……。
いけない、現状に満足して危うく帰路につくところだった。
引き受けると話してしまったのだ。白紙に戻すわけにもいかない。
危険な場所にキィーナを連れてゆくのは忍びないが、誰かに預けたりする方がよほど心配だ。
ただでさえ、近頃は悪魔憑きの子供を誘拐し、売り飛ばす悪人もいるという噂だ。
よほど、信頼にたる人物でなければ、この娘を任せることなどできない。
「ふあぁ~、終わった、終わった。礼金もたんまり色つけてもらったし、一杯ひっかけるか! なぁ、神官さんよ」
大あくびをしながら、手にした革袋をジャラジャラと鳴らすラグース氏。
どういうわけか、私たちは飲みに誘われているようだ。
「お気持ちは有難いのですが……私たちは、これから一仕事がありますので失礼します」
「ちょっと、待ちな」
早々に立ち去ろうとしたが、ガッと肩をつかまれ引き戻されてしまう。
神官とは、こうも非力なのか? それとも彼の腕力が異常なのか?
分からないまま、とりあえずラグース氏の話を聞くことにした。
「ハルツから聞いたぜ。アンタ、この村を井戸を浄化するために派遣された神官なんだって?」
「まぁ、そうなりますね……今から、私たちで山奥の何処かに潜んでいる魔物を退治することになるかもしれませんが……」
「アンタと嬢ちゃんだけでか? ククック! 正気かよ。いくら、神官でも護衛も付けないつもりかよ」
豪快に笑い飛ばす彼に、私はムスッとした。
私だって好きで単身乗り込もうとしているわけではない。
この村にギルドがないから冒険者もろくにいないし、依頼をだすこともできない。
協力を求めても、さっきのように応じてはもらえない。
「そんな顔すんなって、別に馬鹿にするつもりで笑ったわけじゃないんだ。嫌いじゃないぜ、アンタみたいな滅茶苦茶な奴は。そうだな……よしっ! 俺が協力してやる」
「いいのですか? 礼金は、大して払えないですよ?」
「んなモン、気にすんな。アンタと嬢ちゃんには、無実を証明してもらったんだ。今度、俺の番だろっ!」
ラグース氏の好意に、思わず息を飲んでしまった。
これが推理がもたらす奇跡の力なのか?
待ち望んでいた助っ人は、意外なところで見つかった。
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