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一章 神官とケモ耳娘
9話 落とし穴
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「いや……本当に小麦粉の袋はあったんですって! ほら、このリストにしっかりと記載されています」
「失礼、拝見しても?」
いまだ、納得しきっていないハルツ氏から帳簿を受け取った。
確かに、馬車に何をどれくらい積んだのか、事細かく表記されている。
日用雑貨から、布地、衣類や食料、調味料、燃料となる油までもある。
どれも生活には欠かせない物ばかりだ。
例の小麦粉もリストには載っている。
ただ、この帳簿を見てハッキリとしたことが一つある。
盗難の可能性が極めて低いことだ。
仮に、小麦粉が盗まれたとしても犯人が、どうしてソレを狙ったのか動機付けができない。
食料を調達するため馬車の中を物色したのであれば、保存の利く燻製肉や干し魚、野菜などたくさん量を持ち運べるものがあったはずだ。
それらには一切、手をつけずワザワザ、重量のある小麦粉の袋を持っていくのだろうか?
一袋、20キログラムはある物をいくつも抱えて運んでゆくのは、無理もいいところだ。
「ん? ハルツさん。小麦粉を入れた袋って麻でできた物なんですよね?」
「ええ、そうです。一目で分かるように出荷直前で袋にラベルを貼っているんですよ」
「もし、そのラベルが間違ったモノだったとしたらどうです」
「はい? ラベルはすべて貼ったので、間違えたとしても現物の袋は残っているはずですが?」
意味が分からないと言った感じでハルツ氏の声が上ずった。
間違いをなくすために張られたラベルが間違いの元になっている。
そう言われても、ピンと来ないはずだ。
私だって、リストを見なければ気づかなかったかもしれない。
ずばり! 私が注目したのは、リストの内容だけではなく品物の数だ。
「いいですか? 今回、小麦粉は六袋と積み込まれています。同様、麻袋に詰め込まれた穀類が他にも同じ数で存在します」
「えーと、確かに……そば粉が六袋と書かれていますね。それが、どうしたのですか? 麻袋は、計十二袋なければおかしいことに変わりませんが??」
「その認識が誤っています。今から、それを証明しましょう……キィーナ、そば粉の袋を調べてみて」
「失礼、拝見しても?」
いまだ、納得しきっていないハルツ氏から帳簿を受け取った。
確かに、馬車に何をどれくらい積んだのか、事細かく表記されている。
日用雑貨から、布地、衣類や食料、調味料、燃料となる油までもある。
どれも生活には欠かせない物ばかりだ。
例の小麦粉もリストには載っている。
ただ、この帳簿を見てハッキリとしたことが一つある。
盗難の可能性が極めて低いことだ。
仮に、小麦粉が盗まれたとしても犯人が、どうしてソレを狙ったのか動機付けができない。
食料を調達するため馬車の中を物色したのであれば、保存の利く燻製肉や干し魚、野菜などたくさん量を持ち運べるものがあったはずだ。
それらには一切、手をつけずワザワザ、重量のある小麦粉の袋を持っていくのだろうか?
一袋、20キログラムはある物をいくつも抱えて運んでゆくのは、無理もいいところだ。
「ん? ハルツさん。小麦粉を入れた袋って麻でできた物なんですよね?」
「ええ、そうです。一目で分かるように出荷直前で袋にラベルを貼っているんですよ」
「もし、そのラベルが間違ったモノだったとしたらどうです」
「はい? ラベルはすべて貼ったので、間違えたとしても現物の袋は残っているはずですが?」
意味が分からないと言った感じでハルツ氏の声が上ずった。
間違いをなくすために張られたラベルが間違いの元になっている。
そう言われても、ピンと来ないはずだ。
私だって、リストを見なければ気づかなかったかもしれない。
ずばり! 私が注目したのは、リストの内容だけではなく品物の数だ。
「いいですか? 今回、小麦粉は六袋と積み込まれています。同様、麻袋に詰め込まれた穀類が他にも同じ数で存在します」
「えーと、確かに……そば粉が六袋と書かれていますね。それが、どうしたのですか? 麻袋は、計十二袋なければおかしいことに変わりませんが??」
「その認識が誤っています。今から、それを証明しましょう……キィーナ、そば粉の袋を調べてみて」
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