追放神官とケモミミ探偵

心絵マシテ

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一章 神官とケモ耳娘

6話 堂々魔

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 難色を示す村人の態度に、私は苛立ちを覚えていた。
 以前なら、村がどうなろうとも知らないと依頼を破棄するレベルの酷さだ。
 今はキィーナがいるから、かろうじて耐えている。
 だが、魔物を退治するとなると本当に護衛が必要不可欠だ。

「誰も、協力して下さる方は居ないようですね。一応、調査のほうは継続しますが期待はしないでください、私は魔物退治のではないので」

「誠に申し訳ございません、神官様。なにぶん村として成り立ったのは、つい最近。皆、ここに永住するのか、決めかねているのです」

 村長の言い分は、分からなくもない。
 この村には物資も充分に確保できていない上、本格的な開拓はこれからだ。
 村の者たちが、汗水を流し動いていかないことには発展の目途はたたない。
 現状、安定していないこの村を誰が危険を冒してまで守ろうというのか?
 こう考えれば、納得もいく。
 ただし、理解はできない……。

 楽して得たモノに果たしてどれほど価値があるのか、疑問の天秤にかける意味もない。
 価値など見いだせるわけもない。
 価値は、苦の代価だ。
 夢や希望は、困難だからこそ叶えたいと、誰しも強く想う。
 彼らは無駄と努力を同一視してしまっている。
 だからこそ、面倒事で片づけてしまうんだ。

 これが、英雄の冒険譚なら勇敢なる剣士がタイミング良く名乗りを上げてくれたのかもしれない。
 でも、現実はそう都合良くは出来ていない、欠陥だらけだ。

「ディ、こんな時こそ推理だよ」途方に暮れる私の腕をつかみ、キィーナが進言した。

「推理って何を――――」そう言いかけた私だったが、ふと昔読んだ探偵小説を思い出した。
 内容こそ、ありきたりな一般ウケを狙った作品だった。
 トリックの設定の奇抜さもなく、犯行動機も当たり障りのないもの。
 ただの凡作でしかなかったが、一点だけ刺さるモノがあった。
 それは、探偵である主人公の台詞だった。

『推理とは、事実から答え導き出すものである。そこに時間軸は存在しない、推理のことわりを用いれば過去だけはなく未来すら見えてくる』

 キィーナは、時間があれば、よく読書をしていた。
 今、思い返すとアレはすべて私が愛読して探偵小説だった。
 彼女は、その内容をしっかりと覚えていた。
 だからこそ、私に伝わるカタチでと表現したのだ。
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