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一章 神官とケモ耳娘

15話 穢れ

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「ハァ……ハァ……クッ!」

目のまえに迫る恐怖。
闇を切り裂いた先に、赤銅のひとみをたぎらせる異形がいた。
とてもじゃないが、お友達にはなれそうにない。
鋭い角と牙を持ったアレは私たちを、としか見ていない……。

足の震えが止まらなかった。
走りすぎて脇腹が痛む。
濃密度の瘴気のせい呼吸がままならない。

そりゃ、そうだ。
常人なら必ず逃げ出すであろう、こんな強大なバケモノをどう相手しろというのだ。
今まで、何度かけがれと対峙したことはあったけど、すべて人畜無害な小動物だった。
正直、今回も同程度のモノしか出てこないと高を括っていた……。
まさか、山奥に大鬼が住んでいるなんて思いもしなかった。

ドスゥ――――――ン!!!

腐敗した大地が割れた。
牛一頭ほどの大きなツルハシ。
それは土埃つちぼこりを巻きあげ、目の前でとまった。

「ツルハシじゃないのか……」

間近で眼にした、それは船のいかりだった……。
ともかく、これ以上は鬼を刺激していけない。

背後をチラリとみた。
護衛として同行していたラグースさんがキィーナに介抱されている。
この空洞、大鬼の巣窟に吸い込まれた際、彼は鬼に殴り飛ばされてしまった。
サイズだけで自身よりも一回りも大きい拳が直撃したのだ。
無事で済むわけがない。

グズグズしているヒマはなさそうだ。
早く、医者に見せてやらないと手遅れになるかもしれない。
意識が戻らない様子に気持ちだけが焦った。

方法は一つだけ。
可能性は未知数だが……背に腹はかえられない――――

首から下げていたペンダントをつかみ取る。
五芒星ペンタグラムの中心に蒼い石が取りつけられている。

これは、祖母から渡された魔避け。
コレのおかげで、今まで何度も穢れを追いはらってこれた。

今回のように、凶悪きょうあくなヤツには、効果は薄い。
それでも、近づければ怯えさせることぐらいはできるはずだ。

バケモノは地面にささった錨をひきぬこうと躍起やっきになっている。
チャンスは一度だ。
祈るような気持ちで前進した。
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