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三百二十一話
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土気色のオーブに白色の線が溶け込む。
マーブル模様となった球体の表面は、あたかも惑星を象る模型のようでもある。
オッドが伸ばした手に吸い付くように、球体がひとりでに飛んできた。
自分を使えと言わんばかりに手の平におさまると、まるで飴細工のように平たく伸び出しオッドの右手に貼りついた。
タオウ―のオーブは新たなる宿主を探し求めていた。
丈夫で健全な肉体なら誰も構わない。
内に秘めた膨大な龍脈のエネルギーによって四凶を再誕させようとしているのだから。
運良く、新しい器は見つかった……一つだけ誤算があるとすれば、宿主の特異体質を考慮しなかったことだ。
触れた瞬間から変異は始まった。
「おぉぉぉ―――!! この変化は……」
自己制御できなくなってしまったオーブがオッドの身体中を駆け回り、力を付与してゆく。
少年の身体に吸着するようにタオウ―の外殻を形成し、身体に覆い被さってくる。
その過程において外殻に変化が生じた。
もっとシャープに機敏な動作が取れるようになるまで形状を変えていた。
最適化というよりも進化と表現するのが正しい。
鎧甲冑の姿が徐々に溶け落ちて、狒々の兜からグリフォンたる大鷹の造形が混じる。
兜ののみならず四凶の姿を削りながら、全身に新しき物を取り込む。
完全に混ざり合うと翼をを持つ鳥人の鎧が完成した。
タオウ―をベースとし必要な部分だけを、大鷲に変えた鎧は、オッドのためにワンオフされた物といっても過言ではない。
「その姿、四凶に魂でも喰われたのか?」
「どうってことはない! 俺は俺だ!! お前を倒す力はすでに揃った。覚悟しておけよ」
「面白いなお前ぇー、その威勢はどこまで持つかな? 試してやるよ」
クドの興味が完全に少女たちからそれた。
倒れたまま動けないパスバインと瀕死の状態にあるフキ姫を包むようにして大きな花弁が床下から浮きあがってくる。
紅色の風船を膨らませたような花は、彼女たちの身を保護する籠であり、どんなに重量があるものでも宙へと浮き上がらせる特性がある。
蔦を縄のように使い、ウネは二つの花風船を運びだした。
目的地はそう遠くはない。
まずはこの下層にいる少女と合流するのが先決だ。
ウネは敵に気づかれないようにコッソリと移動を開始した。
風船につかまり飛んでゆく、その背中を見てオッドは口元を緩めた。
兜の下の素顔が隠されているおかげで、自分たちの思惑に気づかれずに済む。
反対に、こちらは相手の動きが鮮明に見え、そこからどう動くのかさえフルオートで予測してくる。
魔獣化とまた違った感覚は、極薄の鎧をまとっている様な身軽さだ。
「もう好きにはやらせるかよ!」
オッドは声を張り上げながら、突き出てくる二本の刃をいなした。
鋭く伸びた爪は、刃物と変わりなく干将莫邪の刀身を絡め取る。
予期せぬ、オッドの変化にクドの眼の色が変わった。
それまで、一般人となんら変わり映えしない相手が、急成長して浮く様はクドの好奇心を十二分に掻き立てていた。
「……ガリュウの時と同じで凄まじいパワーを持っているな!」
「まだだ! まだ序の口だ。こっから上げてゆくぜ、スパルタクス!!」
タオウ―の鎧に搭載されている加速炉は、闘気を燃料として全身に行き渡る力を生む。
スパルタクスは、加速炉のエネルギーを急上昇させ爆発的なパワーを放出させる。
一端、停止した状態でオッドの体当たりが直撃すれば、クドでもたちまち意識が飛んでしまうだろう。
「近づくこと自体が危険だ。ミサイルを素手で殴っていると変わらん!!」
干将莫邪をしまったクドがテイク・ア・ストレージで取り出したのは炎の槍だった。
フキ姫から奪った魔法、フレイムランスを駆使して距離を取ろうとする。
だいぶ、近距離攻撃を警戒している。
組手となった瞬間に強烈な一撃を見舞ってやろうとするオッドだが、クドの方が守りに徹してしまっている。
炸裂する炎をものともせずに、オッドは翼を拡げて闘気を注入した。
「キーリングバイス……この翼がお前を撃ち抜く爆撃となる」
両方の翼が形状を変化させ、細長い筒状に変化してゆく。
一対のバスターランチャーと化した翼から灼熱の光弾が放たれ、瞬時に床板を解け落とした。
煙りが吹き出ている溶断部分を見詰めながらクドが苦笑する。
「危ない危ない、バケモンクラスの破壊力か!? 非情に厄介な相手だが、やり易くもある……もう、その攻撃は俺には通用しない!」
「なら、その考えごとぶっ壊すだけだ!!」
マーブル模様となった球体の表面は、あたかも惑星を象る模型のようでもある。
オッドが伸ばした手に吸い付くように、球体がひとりでに飛んできた。
自分を使えと言わんばかりに手の平におさまると、まるで飴細工のように平たく伸び出しオッドの右手に貼りついた。
タオウ―のオーブは新たなる宿主を探し求めていた。
丈夫で健全な肉体なら誰も構わない。
内に秘めた膨大な龍脈のエネルギーによって四凶を再誕させようとしているのだから。
運良く、新しい器は見つかった……一つだけ誤算があるとすれば、宿主の特異体質を考慮しなかったことだ。
触れた瞬間から変異は始まった。
「おぉぉぉ―――!! この変化は……」
自己制御できなくなってしまったオーブがオッドの身体中を駆け回り、力を付与してゆく。
少年の身体に吸着するようにタオウ―の外殻を形成し、身体に覆い被さってくる。
その過程において外殻に変化が生じた。
もっとシャープに機敏な動作が取れるようになるまで形状を変えていた。
最適化というよりも進化と表現するのが正しい。
鎧甲冑の姿が徐々に溶け落ちて、狒々の兜からグリフォンたる大鷹の造形が混じる。
兜ののみならず四凶の姿を削りながら、全身に新しき物を取り込む。
完全に混ざり合うと翼をを持つ鳥人の鎧が完成した。
タオウ―をベースとし必要な部分だけを、大鷲に変えた鎧は、オッドのためにワンオフされた物といっても過言ではない。
「その姿、四凶に魂でも喰われたのか?」
「どうってことはない! 俺は俺だ!! お前を倒す力はすでに揃った。覚悟しておけよ」
「面白いなお前ぇー、その威勢はどこまで持つかな? 試してやるよ」
クドの興味が完全に少女たちからそれた。
倒れたまま動けないパスバインと瀕死の状態にあるフキ姫を包むようにして大きな花弁が床下から浮きあがってくる。
紅色の風船を膨らませたような花は、彼女たちの身を保護する籠であり、どんなに重量があるものでも宙へと浮き上がらせる特性がある。
蔦を縄のように使い、ウネは二つの花風船を運びだした。
目的地はそう遠くはない。
まずはこの下層にいる少女と合流するのが先決だ。
ウネは敵に気づかれないようにコッソリと移動を開始した。
風船につかまり飛んでゆく、その背中を見てオッドは口元を緩めた。
兜の下の素顔が隠されているおかげで、自分たちの思惑に気づかれずに済む。
反対に、こちらは相手の動きが鮮明に見え、そこからどう動くのかさえフルオートで予測してくる。
魔獣化とまた違った感覚は、極薄の鎧をまとっている様な身軽さだ。
「もう好きにはやらせるかよ!」
オッドは声を張り上げながら、突き出てくる二本の刃をいなした。
鋭く伸びた爪は、刃物と変わりなく干将莫邪の刀身を絡め取る。
予期せぬ、オッドの変化にクドの眼の色が変わった。
それまで、一般人となんら変わり映えしない相手が、急成長して浮く様はクドの好奇心を十二分に掻き立てていた。
「……ガリュウの時と同じで凄まじいパワーを持っているな!」
「まだだ! まだ序の口だ。こっから上げてゆくぜ、スパルタクス!!」
タオウ―の鎧に搭載されている加速炉は、闘気を燃料として全身に行き渡る力を生む。
スパルタクスは、加速炉のエネルギーを急上昇させ爆発的なパワーを放出させる。
一端、停止した状態でオッドの体当たりが直撃すれば、クドでもたちまち意識が飛んでしまうだろう。
「近づくこと自体が危険だ。ミサイルを素手で殴っていると変わらん!!」
干将莫邪をしまったクドがテイク・ア・ストレージで取り出したのは炎の槍だった。
フキ姫から奪った魔法、フレイムランスを駆使して距離を取ろうとする。
だいぶ、近距離攻撃を警戒している。
組手となった瞬間に強烈な一撃を見舞ってやろうとするオッドだが、クドの方が守りに徹してしまっている。
炸裂する炎をものともせずに、オッドは翼を拡げて闘気を注入した。
「キーリングバイス……この翼がお前を撃ち抜く爆撃となる」
両方の翼が形状を変化させ、細長い筒状に変化してゆく。
一対のバスターランチャーと化した翼から灼熱の光弾が放たれ、瞬時に床板を解け落とした。
煙りが吹き出ている溶断部分を見詰めながらクドが苦笑する。
「危ない危ない、バケモンクラスの破壊力か!? 非情に厄介な相手だが、やり易くもある……もう、その攻撃は俺には通用しない!」
「なら、その考えごとぶっ壊すだけだ!!」
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