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三百十話
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悪魔が杖をついて口元を拡げた。
それを合図に双方が前へと駆け出す。
死を司る輪がギデオンの首を狙う。
輪を頭部に通すのではなく、ダイレクトに輪っかの外側のエッジを刃代わりに使用してきた。
「ミラージュショット!!」
二つ目の神威は白き輝きを放つライフルだった。ところどころに銀の細工が施されている。
特に白葡萄の彫金がスコルの紅と対照的で目を見張る。
頑強な造形というよりも、まるで女性のような繊細さを持つ細身を銃身であるが、その一撃は闘気弾を鋭く噴き上げる。
「むっ、消えただと……ブワアアアアアアア――――――!!」
左右にブレながら、闘気弾が消失した。
相手の攻撃が見えなくなったことでガイサイの動きが止まった。
歩を止めることは、戦闘時において決してやってはいけない。
止まった瞬間、的になり撃ち抜かれる。
一発の銃弾は、姿をくらました間に増殖し銃撃を雨を飛ばしていた。
ハチの巣にされるガイサイの全身が激しく震動してのたうち回っている。
マリオネットダンスと呼ばれる動きだが、その人形の糸は常に手中にある。
黒ずんだ闘気を放ちながら、宿主の肉体に厚い層を形成してゆく。
ギデオンの放ったミラージュショットは、すべて寸前のところで受け止められてしまっていた。
与えられたのはせいぜい打撲程度のダメージだ。
首の関節を鳴らしながら、再度突進してくる。
「ちぃ、猛牛かよ……これだから呪具は厄介なんだ。動きが不規則すぎて読み切れない」
「ハハハッ! アァ八ッハハハハア!! さぁ、惨たらしく喚いて、散らされ許しをこえ!! 情けなく命乞いする無様な姿を余に晒してみなさぁーい」
「少しは、本気を出したらどうだ? でなければ、お前は即行でこの銃に撃ち落とされるぞ!!」
「やれぇぇばいいじゃなぁああい!?」
「その言葉、覚悟しろよ……ブリンク・バル・エフェクト!!」
頭上に銃口を向けるとギデオンは何発か射撃した。
ほぼ音もなく、空へと吸い込まれる蒼の弾丸。
その最中で、ガイサイが首狩り鎌を素振りすると、空を切り裂く線状の一撃が発生しギデオンを狙った。
「他者の忠告は聞くんだな。思っていたよりも慎重な呪具だな」
迫り来る異物を排除するかのように空から蒼い閃光飛んできた。
一閃ではなく列を成したソレらは、邪悪なる力を打ち消してゆく。
その様子を目の当たりにしたガイサイが一気に腰を引いて後退していた。
厳密に言えば、ブリンク・バル・エフェクトを拒絶したのは、首狩り鎌のほうだ。
怨念という猛毒をもった武器にとって、今の攻撃はもっとも恐れ忌み嫌う清浄の力、審判の光である。
「何でだ……神官でもないのに、どうして退魔術が扱える」
「元は神徒だからだ。この聖銃ハーティは僕の中に燻っていた善の感情をベースとして新たに生み出した神威だ。お前のような物理が通らなさそうな奴を想定していたんが、さっそく試せる機会がくるとはな」
「少々、肝を冷やしもしたが、なんてことはないですね。当たらなければ問題ないし、直撃したところで余を打ち消すことなど到底、不可能ぞ」
「だったら、どうして逃げようとした? 対策が不十分だったからじゃないのか?」
「ホーリーオーダークラスかと、警戒したまでよ。首狩り鎌を弱体化させるのは、余の望むところではないからな」
ここに来て面倒なことにギデオンは気づいた。
すでに首狩り鎌に意識を支配されていると思われたガイサイが自我を失っていなかった。
おそらく、半々だ。彼は呪いと共存し人格を共有しているのだと考えられる。
それゆえ、言動がチグハグだ。
「……まさか、人格が残っているとはな。謝罪するつもりは微塵もない。すべては、お前が決めたことの延長線の上にある」
「何を囀っている? 小鳥のように騒いでも百鬼夜行は止められんぞ」
「分かっていないのはお前のほうだ、ガラクタ。本気で来いと言ったのに逃げた時点で結果は出ている」
パン……パン! パパン!! と弾ける音が聞こえた。
それはガイサイの皮膚が内から突き破られた音だった。
「ガアアアア――――!! な、内部から破壊されているだとぉぉぉ!!! あり得ない……余の練功を無視して内部から弾丸が出て来るなどとは……断じてあってはならぬことだぁああああ」
切羽つまったガイサイは、自身の身体を腕で包む。
それでも、肉体を破壊してゆく攻撃は止まず全身流血しながら、その場で倒れ込んだ。
呆気なく崩れおちてゆく体躯は首狩り鎌でもどうにもできないようだ。
虫の息となったドルゲニアの第一王子の傍に寄るとギデオンは告げた。
「教えたはずだ。ハーティの攻撃は物質的なものじゃないって……いや、言ってなかったか?」
それを合図に双方が前へと駆け出す。
死を司る輪がギデオンの首を狙う。
輪を頭部に通すのではなく、ダイレクトに輪っかの外側のエッジを刃代わりに使用してきた。
「ミラージュショット!!」
二つ目の神威は白き輝きを放つライフルだった。ところどころに銀の細工が施されている。
特に白葡萄の彫金がスコルの紅と対照的で目を見張る。
頑強な造形というよりも、まるで女性のような繊細さを持つ細身を銃身であるが、その一撃は闘気弾を鋭く噴き上げる。
「むっ、消えただと……ブワアアアアアアア――――――!!」
左右にブレながら、闘気弾が消失した。
相手の攻撃が見えなくなったことでガイサイの動きが止まった。
歩を止めることは、戦闘時において決してやってはいけない。
止まった瞬間、的になり撃ち抜かれる。
一発の銃弾は、姿をくらました間に増殖し銃撃を雨を飛ばしていた。
ハチの巣にされるガイサイの全身が激しく震動してのたうち回っている。
マリオネットダンスと呼ばれる動きだが、その人形の糸は常に手中にある。
黒ずんだ闘気を放ちながら、宿主の肉体に厚い層を形成してゆく。
ギデオンの放ったミラージュショットは、すべて寸前のところで受け止められてしまっていた。
与えられたのはせいぜい打撲程度のダメージだ。
首の関節を鳴らしながら、再度突進してくる。
「ちぃ、猛牛かよ……これだから呪具は厄介なんだ。動きが不規則すぎて読み切れない」
「ハハハッ! アァ八ッハハハハア!! さぁ、惨たらしく喚いて、散らされ許しをこえ!! 情けなく命乞いする無様な姿を余に晒してみなさぁーい」
「少しは、本気を出したらどうだ? でなければ、お前は即行でこの銃に撃ち落とされるぞ!!」
「やれぇぇばいいじゃなぁああい!?」
「その言葉、覚悟しろよ……ブリンク・バル・エフェクト!!」
頭上に銃口を向けるとギデオンは何発か射撃した。
ほぼ音もなく、空へと吸い込まれる蒼の弾丸。
その最中で、ガイサイが首狩り鎌を素振りすると、空を切り裂く線状の一撃が発生しギデオンを狙った。
「他者の忠告は聞くんだな。思っていたよりも慎重な呪具だな」
迫り来る異物を排除するかのように空から蒼い閃光飛んできた。
一閃ではなく列を成したソレらは、邪悪なる力を打ち消してゆく。
その様子を目の当たりにしたガイサイが一気に腰を引いて後退していた。
厳密に言えば、ブリンク・バル・エフェクトを拒絶したのは、首狩り鎌のほうだ。
怨念という猛毒をもった武器にとって、今の攻撃はもっとも恐れ忌み嫌う清浄の力、審判の光である。
「何でだ……神官でもないのに、どうして退魔術が扱える」
「元は神徒だからだ。この聖銃ハーティは僕の中に燻っていた善の感情をベースとして新たに生み出した神威だ。お前のような物理が通らなさそうな奴を想定していたんが、さっそく試せる機会がくるとはな」
「少々、肝を冷やしもしたが、なんてことはないですね。当たらなければ問題ないし、直撃したところで余を打ち消すことなど到底、不可能ぞ」
「だったら、どうして逃げようとした? 対策が不十分だったからじゃないのか?」
「ホーリーオーダークラスかと、警戒したまでよ。首狩り鎌を弱体化させるのは、余の望むところではないからな」
ここに来て面倒なことにギデオンは気づいた。
すでに首狩り鎌に意識を支配されていると思われたガイサイが自我を失っていなかった。
おそらく、半々だ。彼は呪いと共存し人格を共有しているのだと考えられる。
それゆえ、言動がチグハグだ。
「……まさか、人格が残っているとはな。謝罪するつもりは微塵もない。すべては、お前が決めたことの延長線の上にある」
「何を囀っている? 小鳥のように騒いでも百鬼夜行は止められんぞ」
「分かっていないのはお前のほうだ、ガラクタ。本気で来いと言ったのに逃げた時点で結果は出ている」
パン……パン! パパン!! と弾ける音が聞こえた。
それはガイサイの皮膚が内から突き破られた音だった。
「ガアアアア――――!! な、内部から破壊されているだとぉぉぉ!!! あり得ない……余の練功を無視して内部から弾丸が出て来るなどとは……断じてあってはならぬことだぁああああ」
切羽つまったガイサイは、自身の身体を腕で包む。
それでも、肉体を破壊してゆく攻撃は止まず全身流血しながら、その場で倒れ込んだ。
呆気なく崩れおちてゆく体躯は首狩り鎌でもどうにもできないようだ。
虫の息となったドルゲニアの第一王子の傍に寄るとギデオンは告げた。
「教えたはずだ。ハーティの攻撃は物質的なものじゃないって……いや、言ってなかったか?」
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