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二百四十五話
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姿なき邂逅。
謎の少女と言葉だけしか交わせなかったのに不思議と胸の奥からじんわりとした温かさが拡がってゆく。
信じられないことに、あれほど感じていた手足の痛みが消し飛んでいた。
まるで、これから始まる奇跡を予期させるかのように運命の流れはギデオンの方へと向きだしていた。
意識が回復すると世界がスローモーションに展開していた。
ナンダが放つ不朽のカランドリエが、闘気で出来た指先を広げるようにして間近に迫っていた。
三十センチも満たない狭い隙間からスッと後退し抜け出す。
ギデオン自身でも理解が追いつかない―――タキサイキア現象。
自然とそうできてしまったのだから、言葉を用いても説明しようがない。
いつになく頭の中が鮮明になっていた。
――――何故、ナンダには通じるはずの極天が届かないのか? 考えている間に、並列思考が展開される。
今の自分には何が必要なのか? ヒントはロッティからもらい受けている。
遠距離のでの極天攻撃が必須だった―――ナンダとの距離が近ければ近いほど死角がなくなる。
油断も隙もないことがチオンチ強みを最大限に引き出してくる。
死角とは、通常は視界が届かない角度を指す言葉である。
しかし、練功術の場合は、それはまた別の意味を持つ。
全身をくまなく防御する為には絶えず気を循環させる必要がある。
いくら達人でも全身の隅々まで気を張り続けるのは至難の業だ。
少しでも注意がそれれば手薄な部分が出てくる、それを死角と呼んでいる。
恐ろしいことにナンダは、その見極めが正確無比であるということだ。
チオンチの能力由来のモノかは知らないが、これをどうにかしなければ、無敵状態を解除できない。
「イメージしろ。そうイメージだ……」ギデオンはナンダを見据えながら極天の起源に触れていた。
すべては、暴君ファルゴ・エンブリオとの死闘で得たものだ。
力ですべてを動かそうとしていた傍若無人の暴力の徒ではあったが……ギデオンと同格並みの戦闘センスを持っていた。
魔法と練功を意図して合成でできたのは、未だファルゴしかいない。
仮説ではあるが、もし、この新たなる魔術が実用化されるのなら人類の魔法文明はさらに一段階、進化を遂げる。
それほどまでの功績を思いつきだけで成してしまったファルゴは実に末恐ろしい存在ともいえる。
近代魔術の黎明期がすぎ、幾年月が過ぎた。
魔法は生活魔法として一般人にも広く知れ渡り利用されるようになった。
しかしながら、一部の人間は魔力を持っていても魔法を一切使用することができない。
ギデオンもまた、その内の一人であった。
幼い時分から、いくら練習しても一向に上達することはなく、下位魔法ですらろくに放てることができなかった。
「自分に向いていない」あっさりと見切りをつけた彼は、その後は剣術を徹底して鍛え上げて、魔法には見向きもしなかった。
声のヌシは確かに言っていた。
今の君ならできなかったことも自然とできるようになると……。
その言葉を借りるのであれば、やらずして匙を投げるのは愚かな行為となる。
意識を一点に集中し魔力を溜めて、魔法が発動するように強く願う。
大事なのはイメージだ。
魔法を使用する自分を客観的な視点で見えるようにすることで、現実としての魔法を生み出すことができる。
ギデオンはイメージした。自分にとっての魔法とは―――――すなわち武術だった。
「ダメだ……長年、剣術ばかりにのめり込んでいたせいで、考えれば考えるほど魔法から遠退いてゆく」
「バカな!! 貴様……今の一撃を避けたというのか!?」
騒然となるナンダを無視し、思いにふけるギデオン。
その様子が気に食わないと当然ながら、ナンダは鼻息を荒くし怒り心頭となる。
「おのれぇぇええ……貴様もワシを弱者と蔑むのか……。ここまで力の差を見せつけても、まだ認めぬというのかぁぁ!!」
左右両腕のカランドリエが、肘側へ後退するようにスライドした……。
「滅せよ、欺瞞の種よ。インフィアリアリティ・ブローバースト」
「見えた! これが僕の魔法……僕だけが使える唯一無二の力だ……」
「カァ、ハッハハハア! 何を見出したのかは知らんが、もう手遅れだ。この お お わざ―――で……どうした? なに か が――――おか し い?」
「手遅れだと? その言葉そっくりそのまま返すぞ。不遜なのはお前の方だ、ナンダ! 僕に誰を重ねて見ていた? お前が何を引きずっているのか……興味もないし、知りたくもない。ただ……今、ここで戦っているのは僕とお前だけだ。一時でもそのことを忘れた時点で勝敗は見えている」
ズドドドドッ! ドドドドッ! 軽快な音と共にチオンチの表皮に風穴が開いていた。
「へっ? いったい……何が起きた?」事態が飲み込めず、棒立ちになるナンダの身体からは血がにじみ出していた。
謎の少女と言葉だけしか交わせなかったのに不思議と胸の奥からじんわりとした温かさが拡がってゆく。
信じられないことに、あれほど感じていた手足の痛みが消し飛んでいた。
まるで、これから始まる奇跡を予期させるかのように運命の流れはギデオンの方へと向きだしていた。
意識が回復すると世界がスローモーションに展開していた。
ナンダが放つ不朽のカランドリエが、闘気で出来た指先を広げるようにして間近に迫っていた。
三十センチも満たない狭い隙間からスッと後退し抜け出す。
ギデオン自身でも理解が追いつかない―――タキサイキア現象。
自然とそうできてしまったのだから、言葉を用いても説明しようがない。
いつになく頭の中が鮮明になっていた。
――――何故、ナンダには通じるはずの極天が届かないのか? 考えている間に、並列思考が展開される。
今の自分には何が必要なのか? ヒントはロッティからもらい受けている。
遠距離のでの極天攻撃が必須だった―――ナンダとの距離が近ければ近いほど死角がなくなる。
油断も隙もないことがチオンチ強みを最大限に引き出してくる。
死角とは、通常は視界が届かない角度を指す言葉である。
しかし、練功術の場合は、それはまた別の意味を持つ。
全身をくまなく防御する為には絶えず気を循環させる必要がある。
いくら達人でも全身の隅々まで気を張り続けるのは至難の業だ。
少しでも注意がそれれば手薄な部分が出てくる、それを死角と呼んでいる。
恐ろしいことにナンダは、その見極めが正確無比であるということだ。
チオンチの能力由来のモノかは知らないが、これをどうにかしなければ、無敵状態を解除できない。
「イメージしろ。そうイメージだ……」ギデオンはナンダを見据えながら極天の起源に触れていた。
すべては、暴君ファルゴ・エンブリオとの死闘で得たものだ。
力ですべてを動かそうとしていた傍若無人の暴力の徒ではあったが……ギデオンと同格並みの戦闘センスを持っていた。
魔法と練功を意図して合成でできたのは、未だファルゴしかいない。
仮説ではあるが、もし、この新たなる魔術が実用化されるのなら人類の魔法文明はさらに一段階、進化を遂げる。
それほどまでの功績を思いつきだけで成してしまったファルゴは実に末恐ろしい存在ともいえる。
近代魔術の黎明期がすぎ、幾年月が過ぎた。
魔法は生活魔法として一般人にも広く知れ渡り利用されるようになった。
しかしながら、一部の人間は魔力を持っていても魔法を一切使用することができない。
ギデオンもまた、その内の一人であった。
幼い時分から、いくら練習しても一向に上達することはなく、下位魔法ですらろくに放てることができなかった。
「自分に向いていない」あっさりと見切りをつけた彼は、その後は剣術を徹底して鍛え上げて、魔法には見向きもしなかった。
声のヌシは確かに言っていた。
今の君ならできなかったことも自然とできるようになると……。
その言葉を借りるのであれば、やらずして匙を投げるのは愚かな行為となる。
意識を一点に集中し魔力を溜めて、魔法が発動するように強く願う。
大事なのはイメージだ。
魔法を使用する自分を客観的な視点で見えるようにすることで、現実としての魔法を生み出すことができる。
ギデオンはイメージした。自分にとっての魔法とは―――――すなわち武術だった。
「ダメだ……長年、剣術ばかりにのめり込んでいたせいで、考えれば考えるほど魔法から遠退いてゆく」
「バカな!! 貴様……今の一撃を避けたというのか!?」
騒然となるナンダを無視し、思いにふけるギデオン。
その様子が気に食わないと当然ながら、ナンダは鼻息を荒くし怒り心頭となる。
「おのれぇぇええ……貴様もワシを弱者と蔑むのか……。ここまで力の差を見せつけても、まだ認めぬというのかぁぁ!!」
左右両腕のカランドリエが、肘側へ後退するようにスライドした……。
「滅せよ、欺瞞の種よ。インフィアリアリティ・ブローバースト」
「見えた! これが僕の魔法……僕だけが使える唯一無二の力だ……」
「カァ、ハッハハハア! 何を見出したのかは知らんが、もう手遅れだ。この お お わざ―――で……どうした? なに か が――――おか し い?」
「手遅れだと? その言葉そっくりそのまま返すぞ。不遜なのはお前の方だ、ナンダ! 僕に誰を重ねて見ていた? お前が何を引きずっているのか……興味もないし、知りたくもない。ただ……今、ここで戦っているのは僕とお前だけだ。一時でもそのことを忘れた時点で勝敗は見えている」
ズドドドドッ! ドドドドッ! 軽快な音と共にチオンチの表皮に風穴が開いていた。
「へっ? いったい……何が起きた?」事態が飲み込めず、棒立ちになるナンダの身体からは血がにじみ出していた。
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