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二百三十一話
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翌日、アビィを筆頭にギデオンたちはロッジを出立した。
二人の他に、メンバーはエイルとロッティをくわえた計四人。
エイルに留守番を頼んだが、ギデオンをついてゆくの一点張り、主人の命令すら受けつけない姿勢に、周囲が譲歩するしかなかった。
エイルが出掛けるとなれば無条件で、ロッティも同行してくる。
アビィに「ロッチさんは来なくてもいいよー」軽薄に言われていたが、めげずに後から追ってくる。
トラロック山の中腹でアビィが急に足を止めた。
すぐそばには、採掘場へ向かう下り坂が見える。
アビィがハンドサインを送りながら、先へと進んでゆく。
ギデオンも続こうとするが、エイルの背負うクロオリが狭い道幅を塞いでしまい、先へと進めない。
仕方なく、ロッティと一緒にここで待機しているように指示をだし、自身は一人採掘場へと向かった。
「ここが、その目的地なのか? アビィ」
岩場の陰から採掘場の様子を眺めるアビィに合流しつつ問いかける。
辺りの気配をすべて感知しているのだろう。
視線は常に遠方へと向けられていた。
「いんや……。目的地に向かう前の寄り道だよ。ギデ君、君はこれから選らばなければらない……この国で何を成し、どう進んでゆくのか? 自分で決めなければならない。そのために大元導士はワタシのところに君を寄こしたんだろうから」
「前にも似たような会話をしたが、僕は友人を助けないといけない。連れ去らわれた者、はぐれてしまった者……彼らを見つけ次第、共にこの国を出る」
「ずいぶん簡単に言ってくれちゃってるけど、公国とは一つの国が四つに分断されていると言っても過言ではないよ。そんな魔境が、素直に君の要望を受け入れてくれるはずもないからねー。場合によっては、この国自体を敵に回しかねないよ」
「何が言いたいだ? 障害はすべて排除する。そのつもりで今までやってきたんだ」
冷たく重い眼光を放つ少年を一瞥すると、アビィは立ち上がりおもむろにストレッチを始めた。
「それじゃ、採掘現場に行こうか。手前の洞窟を進んだ先に見せたいモノがあるの」
要点だけ伝えると、アビィは足音も立てずに駆けてゆく。
洞窟の前の見張りが手薄であることは、すでに察知済みだ。
奥に進むつれ、どこからか物音が聞こえてきた。
それは洞窟の出口の方から響いている。
地面を掘削するような騒音に混じり、鋭く打ちつけられた鞭の音がうなりを上げ洞窟内まで反響していた。
洞窟を抜けると、そこは妙に開けた場所となっていた。
どうやら、ここがアビィの言っていた採掘現場とみて間違いないようだ。
「なっ……何をやらされているんだ? 彼らは!? アビィ、これがアンタの言っていた……」
「よーく、見て考えるのよ。これが公国の民の日常よ」
その先に待ち構えていた光景にギデオンは固唾を飲んだ。
大勢の大人、子供らがツルハシを懸命に振るい岩盤を掘削している。
無論、彼らの意思でそうしているのではない……お約束といわんばかりに監視役が配置され、彼ら動向を見張っている。
「おらぁ! モタモタしてないで、さっさと削った石を運べ!! 後ろがつっかえてんだろうがぁああ!」
荒々しい声で鞭を振るう監視は、年寄りだろうが病人だろうが容赦しない。
列を乱したり、手を休めたりする使い物ならなくなった者に暴行を加えて、見世物にし、他の者たちに自らの立場と威厳をしらしめていた。
「お前ら、ナンダ様に対する感謝が足りんぞ!! たるんどる……いったい誰のおかげで、無能、愚劣、ゴミ同然の、お前らでも食いぶちが稼げていると思っているんだよ。言ってみろ、ああっ!!!」
「我々が……日々、不自由なく暮らせるのは…………守護代であるナンダ様のおかげです」
「声が小いぃぃぃさぁあああいい!!! その程度か!? その口は何んためについているんだよぉぉぉ!!」
身勝手極まりない役人の横行に、人々は苦悶と無気力に苛まれていた。
まるで生きる屍のようだ。
恐怖で支配され、思考も感情も殺されていた。
何故、このようなことに至ったのかは、ギデオンの知るところではない。
ただ、支配者の言いなりになって好き勝手されている人々の苦しむ様を見て、どうしようもない怒りがこみ上げてきた。
「ナンダっていうのは北の守護代の名。つまり、ワタシたちのいる北域の実質的なトップさ……って、ギデ君!!」
ズダァァァン!! ギデオンの魔銃が火を噴いた。
狙った先は監視者の耳もと近く。
「あっ……がががあ……」
魔法弾が炸裂すると耳から血を噴き出しながら、監視の男はその場に倒れ込んだ。
「これで、もう声の大きさを気にする必要はないだろう」
ギデオンは言葉を吐き捨てた。
二人の他に、メンバーはエイルとロッティをくわえた計四人。
エイルに留守番を頼んだが、ギデオンをついてゆくの一点張り、主人の命令すら受けつけない姿勢に、周囲が譲歩するしかなかった。
エイルが出掛けるとなれば無条件で、ロッティも同行してくる。
アビィに「ロッチさんは来なくてもいいよー」軽薄に言われていたが、めげずに後から追ってくる。
トラロック山の中腹でアビィが急に足を止めた。
すぐそばには、採掘場へ向かう下り坂が見える。
アビィがハンドサインを送りながら、先へと進んでゆく。
ギデオンも続こうとするが、エイルの背負うクロオリが狭い道幅を塞いでしまい、先へと進めない。
仕方なく、ロッティと一緒にここで待機しているように指示をだし、自身は一人採掘場へと向かった。
「ここが、その目的地なのか? アビィ」
岩場の陰から採掘場の様子を眺めるアビィに合流しつつ問いかける。
辺りの気配をすべて感知しているのだろう。
視線は常に遠方へと向けられていた。
「いんや……。目的地に向かう前の寄り道だよ。ギデ君、君はこれから選らばなければらない……この国で何を成し、どう進んでゆくのか? 自分で決めなければならない。そのために大元導士はワタシのところに君を寄こしたんだろうから」
「前にも似たような会話をしたが、僕は友人を助けないといけない。連れ去らわれた者、はぐれてしまった者……彼らを見つけ次第、共にこの国を出る」
「ずいぶん簡単に言ってくれちゃってるけど、公国とは一つの国が四つに分断されていると言っても過言ではないよ。そんな魔境が、素直に君の要望を受け入れてくれるはずもないからねー。場合によっては、この国自体を敵に回しかねないよ」
「何が言いたいだ? 障害はすべて排除する。そのつもりで今までやってきたんだ」
冷たく重い眼光を放つ少年を一瞥すると、アビィは立ち上がりおもむろにストレッチを始めた。
「それじゃ、採掘現場に行こうか。手前の洞窟を進んだ先に見せたいモノがあるの」
要点だけ伝えると、アビィは足音も立てずに駆けてゆく。
洞窟の前の見張りが手薄であることは、すでに察知済みだ。
奥に進むつれ、どこからか物音が聞こえてきた。
それは洞窟の出口の方から響いている。
地面を掘削するような騒音に混じり、鋭く打ちつけられた鞭の音がうなりを上げ洞窟内まで反響していた。
洞窟を抜けると、そこは妙に開けた場所となっていた。
どうやら、ここがアビィの言っていた採掘現場とみて間違いないようだ。
「なっ……何をやらされているんだ? 彼らは!? アビィ、これがアンタの言っていた……」
「よーく、見て考えるのよ。これが公国の民の日常よ」
その先に待ち構えていた光景にギデオンは固唾を飲んだ。
大勢の大人、子供らがツルハシを懸命に振るい岩盤を掘削している。
無論、彼らの意思でそうしているのではない……お約束といわんばかりに監視役が配置され、彼ら動向を見張っている。
「おらぁ! モタモタしてないで、さっさと削った石を運べ!! 後ろがつっかえてんだろうがぁああ!」
荒々しい声で鞭を振るう監視は、年寄りだろうが病人だろうが容赦しない。
列を乱したり、手を休めたりする使い物ならなくなった者に暴行を加えて、見世物にし、他の者たちに自らの立場と威厳をしらしめていた。
「お前ら、ナンダ様に対する感謝が足りんぞ!! たるんどる……いったい誰のおかげで、無能、愚劣、ゴミ同然の、お前らでも食いぶちが稼げていると思っているんだよ。言ってみろ、ああっ!!!」
「我々が……日々、不自由なく暮らせるのは…………守護代であるナンダ様のおかげです」
「声が小いぃぃぃさぁあああいい!!! その程度か!? その口は何んためについているんだよぉぉぉ!!」
身勝手極まりない役人の横行に、人々は苦悶と無気力に苛まれていた。
まるで生きる屍のようだ。
恐怖で支配され、思考も感情も殺されていた。
何故、このようなことに至ったのかは、ギデオンの知るところではない。
ただ、支配者の言いなりになって好き勝手されている人々の苦しむ様を見て、どうしようもない怒りがこみ上げてきた。
「ナンダっていうのは北の守護代の名。つまり、ワタシたちのいる北域の実質的なトップさ……って、ギデ君!!」
ズダァァァン!! ギデオンの魔銃が火を噴いた。
狙った先は監視者の耳もと近く。
「あっ……がががあ……」
魔法弾が炸裂すると耳から血を噴き出しながら、監視の男はその場に倒れ込んだ。
「これで、もう声の大きさを気にする必要はないだろう」
ギデオンは言葉を吐き捨てた。
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