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二百二十一話
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「ギデ君、狙うなら魔力供給している部分よ。そこを絶てば、オートマタは行動不能になるはず!」
アビィのアドバイスに頷きながら、疾風のごとく崩落した岩石を飛びかってゆく。
足場が悪い場所では走るよりも跳躍の反動を利用して八艘飛び(約六メートル)したほうが断然早い。
先を見越し、眠り姫に反撃のチャンスをあえてはいけないと判断したギデオンは先手を取ろうとしていた。
問題は眠り姫の本体がどこに埋もれているのか? おおよそでしか分からないことだ。
いくら、嗅覚が優れていても、オートマタのような精密機械の臭いまでは辿ることができない。
それ以前に土埃が酷く、呼吸するのもキツイ。
なら、どうやって岩石の山から敵を見つけ出すべきか。答えなど、とっくに決まっている。
分からないのであれば、すべて取っ払えばいい。
魔銃をエイミングポイントに向けて、グラバスタ―を一発、見舞ってやれば即終わることだ。
思いっきりの良さは、ギデオンにとって長所とも呼ぶべきところで、過去に何度も自身の窮地を救ってきた。
きっと、今回も大丈夫……。
意識下にある慢心が、自身の判断を狂わせようなどと彼は微塵も思っていなかった。
「グラバスタ―発射っ!!」
バハムート形態から漆黒の球体が放たれた。
グラバスタ―は、その用途に合わせ、形態変化させられる特殊な闇属性攻撃である。
ほぼ、超級魔法に等しいそれが、今回は閃光状ではなく大規模なエネルギー波として撃ち込まれた。
地面に着弾して一秒で解除しなければならない。
攻撃範囲にあるモノは、すべて超重力に飲み込まれてしまう。
何より霊峰の雄大な光景を破壊しつくしてしまうのは忍びない。
技に異変を感じたのは、攻撃に破壊力が乗っていないと気づいてからだ。
本来ならば、着弾してすぐに攻撃対象が破壊されてゆく。
それが、どうしたことだろう……膠着したまま、何も起きない。
よく確認すると、時間経過とともに威力が激減している。
まだ、解除すらしていないのにだ。
訝しげな顔をするギデオンの眼下に人影が見えた。
全身を魔力で満たし、光輝く眠り姫の姿を目にしギデオンは激昂した。
通常なら、あり得なない出来事がそこにはあった。
「魔力吸収するのか!? グラバスタ―自体が消滅効果のある技なんだぞ……それすら無効化するなんて完全に見誤っていた!!」
当てが外れたことよりも、ギデオンが心底焦ったのは、眠り姫に魔力を献上してしまったことだ。
今の彼女は、フル充電されているのとおなじだ。
その状態から繰り出されるエルミナンスアポトーシスは、一回目の比ではない。
すぐ様、魔素が集積し降魔水を精製してゆく。
そこから爆破の術式を込めることで一気に殲滅の炎を宿す。
攻勢から一転して最悪の事態に見舞われることになった。
次は未然に防ぐことができない。
ギデオンが真っ先に想い浮かべたのはエンデリデ島の密林での出来事だった。
あの時のような、悲劇を無くすために生み出された技だったはずなのに、逆に利用されてしまっている。
言いようのない苦悩と怒りがギデオンの意識を加速させてゆく。
マダラ模様に塗れになった球体が野に放たれた。
このオートマタはどうしても大地に大海の炎をまき散らしたいらしい。
膨張する元凶を前に、ギデオンが待つ武装練功の剣に蒼い光が走った。
「オオオオオオッ!! ウオオオオォォオオオ―――――!!!」
凄まじい速度の斬撃がエルミナンスアポトーシスを斬り裂いていた。
衝撃を加えれば、そこで爆ぜるはず――――なのに、宙に浮いた状態のままギデオンの嵐撃を受け続けていた。
冷静な判断ができていればリスクを避けてしまう。
ゆえに、このようなデタラメでしかない攻撃を仕掛けようとは思わない。
瞬発的な判断、鋭い洞察力、そして命知らずな覚悟、これらによって一つの奇跡がもたらされた。
天の属性は地を無効化し光をも切り裂く。
エルミナンスアポトーシスは火と水と地、三種の混合属性できている。
これだけ見れば、どうにも転んでも影響を及ぼさないように思えるが実際は異なる。
火と水の属性が交わることで天属性に転換されている。
さらに、反発する地属性により大爆発を引き起こす。
天属性の特色は神速にある。
よって、術式までの起動時間を短縮できたり、ギデオンのように神速の連撃を繰り出すことが可能だ。
爆破反応が起きるよりも先に、剣撃による天属性相殺と地属性無効化。
偶然、思いついた発想により一塊になっていた降魔水が形を維持できなり、眠り姫の方へと雪崩こんでゆく。
「終わりだぁ!! オープンステータス」
ギデオンの左手に煌めく手鏡が機械の視界を狂わせた。
鏡から伸びる光が機械仕掛けの身体の一点を射し示す。
「そこだ!」練功武装の剣が、眠り姫のミゾオチ部分に突き刺さった。
アビィのアドバイスに頷きながら、疾風のごとく崩落した岩石を飛びかってゆく。
足場が悪い場所では走るよりも跳躍の反動を利用して八艘飛び(約六メートル)したほうが断然早い。
先を見越し、眠り姫に反撃のチャンスをあえてはいけないと判断したギデオンは先手を取ろうとしていた。
問題は眠り姫の本体がどこに埋もれているのか? おおよそでしか分からないことだ。
いくら、嗅覚が優れていても、オートマタのような精密機械の臭いまでは辿ることができない。
それ以前に土埃が酷く、呼吸するのもキツイ。
なら、どうやって岩石の山から敵を見つけ出すべきか。答えなど、とっくに決まっている。
分からないのであれば、すべて取っ払えばいい。
魔銃をエイミングポイントに向けて、グラバスタ―を一発、見舞ってやれば即終わることだ。
思いっきりの良さは、ギデオンにとって長所とも呼ぶべきところで、過去に何度も自身の窮地を救ってきた。
きっと、今回も大丈夫……。
意識下にある慢心が、自身の判断を狂わせようなどと彼は微塵も思っていなかった。
「グラバスタ―発射っ!!」
バハムート形態から漆黒の球体が放たれた。
グラバスタ―は、その用途に合わせ、形態変化させられる特殊な闇属性攻撃である。
ほぼ、超級魔法に等しいそれが、今回は閃光状ではなく大規模なエネルギー波として撃ち込まれた。
地面に着弾して一秒で解除しなければならない。
攻撃範囲にあるモノは、すべて超重力に飲み込まれてしまう。
何より霊峰の雄大な光景を破壊しつくしてしまうのは忍びない。
技に異変を感じたのは、攻撃に破壊力が乗っていないと気づいてからだ。
本来ならば、着弾してすぐに攻撃対象が破壊されてゆく。
それが、どうしたことだろう……膠着したまま、何も起きない。
よく確認すると、時間経過とともに威力が激減している。
まだ、解除すらしていないのにだ。
訝しげな顔をするギデオンの眼下に人影が見えた。
全身を魔力で満たし、光輝く眠り姫の姿を目にしギデオンは激昂した。
通常なら、あり得なない出来事がそこにはあった。
「魔力吸収するのか!? グラバスタ―自体が消滅効果のある技なんだぞ……それすら無効化するなんて完全に見誤っていた!!」
当てが外れたことよりも、ギデオンが心底焦ったのは、眠り姫に魔力を献上してしまったことだ。
今の彼女は、フル充電されているのとおなじだ。
その状態から繰り出されるエルミナンスアポトーシスは、一回目の比ではない。
すぐ様、魔素が集積し降魔水を精製してゆく。
そこから爆破の術式を込めることで一気に殲滅の炎を宿す。
攻勢から一転して最悪の事態に見舞われることになった。
次は未然に防ぐことができない。
ギデオンが真っ先に想い浮かべたのはエンデリデ島の密林での出来事だった。
あの時のような、悲劇を無くすために生み出された技だったはずなのに、逆に利用されてしまっている。
言いようのない苦悩と怒りがギデオンの意識を加速させてゆく。
マダラ模様に塗れになった球体が野に放たれた。
このオートマタはどうしても大地に大海の炎をまき散らしたいらしい。
膨張する元凶を前に、ギデオンが待つ武装練功の剣に蒼い光が走った。
「オオオオオオッ!! ウオオオオォォオオオ―――――!!!」
凄まじい速度の斬撃がエルミナンスアポトーシスを斬り裂いていた。
衝撃を加えれば、そこで爆ぜるはず――――なのに、宙に浮いた状態のままギデオンの嵐撃を受け続けていた。
冷静な判断ができていればリスクを避けてしまう。
ゆえに、このようなデタラメでしかない攻撃を仕掛けようとは思わない。
瞬発的な判断、鋭い洞察力、そして命知らずな覚悟、これらによって一つの奇跡がもたらされた。
天の属性は地を無効化し光をも切り裂く。
エルミナンスアポトーシスは火と水と地、三種の混合属性できている。
これだけ見れば、どうにも転んでも影響を及ぼさないように思えるが実際は異なる。
火と水の属性が交わることで天属性に転換されている。
さらに、反発する地属性により大爆発を引き起こす。
天属性の特色は神速にある。
よって、術式までの起動時間を短縮できたり、ギデオンのように神速の連撃を繰り出すことが可能だ。
爆破反応が起きるよりも先に、剣撃による天属性相殺と地属性無効化。
偶然、思いついた発想により一塊になっていた降魔水が形を維持できなり、眠り姫の方へと雪崩こんでゆく。
「終わりだぁ!! オープンステータス」
ギデオンの左手に煌めく手鏡が機械の視界を狂わせた。
鏡から伸びる光が機械仕掛けの身体の一点を射し示す。
「そこだ!」練功武装の剣が、眠り姫のミゾオチ部分に突き刺さった。
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