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二百十六話
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シユウを見たロッティの食指が動いた。
文字通り、指先を動かすだけでワイヤーが連動しクロオリを意のままに操ることができる。
「まだ、本体は無傷だ! いけぇいいい」
トラップマスターの掛け声とともに傀儡が腕を伸ばした。
スコルが威嚇するように吠え、傾斜を登ってゆく。
「くっ、なかなか素早い奴め。が、しかぁし!! クロオリの先読を使えば、どこに逃げようとも一緒よ。必ず捕まえてやるわい」
若干、目的がズレ始めてきたロッティはスコルを追いかけるのに躍起になっていた。
クロオリの胸部にある左右上下の四枚のパネルが一斉に開き、砲身が剥き出しとなった。
どうやら、直に捕らえる方法から射撃による進路妨害へと切り替えたようだ。
砲身の射出口に貼りつけられたパネルが眩いばかりに輝く。
強烈な光を帯びたオートマタから四本のレーザー砲が同時に放たれ木々を焼き払ってゆく。
倒木が次々とスコルの行く手を塞ぐ。
スコルは加速し大木が倒れるよりも早く、駆けていた。
速度を上げるのに精一杯で、敵の動きが読めない。
その弱点をうまくついてクロオリが前方に待ち構えている。
「そこだぁ! 小僧もろとも捕まえ……どこだ? どこに行った? 小僧の姿が見えんぞ」
「どこって、ここだが」クロオリの背後を取ったギデオンがシユウを背負っていた。
魔獣の行動ばかりに気を取られていて、ギデオンがシユウの身を確保したことすら見逃していた。
ロッティは悔しさのあまり下唇を噛みしめていた。
追い詰めたと思ったら、先に進んでいる。
身元すら定かではないギデという少年が邪魔だ。
「どうする? ロッティ・マウワ。クロオリが挟み撃ちになってしまったぞ」
「しれたこと! ガキを背負った貴公に何ができようぞ。このまま、くびり倒してやろう」
自信たっぷりな宣言にギデオンは冷笑した。
それはないと強調している態度に、ロッティは科学者として憤慨していた。
シユウに安全な場所に隠れるよう、指示する姿に、その余裕を壊してやろうとクロオリで消しかかる。
「スコル、遊びは充分だろう? 戻ってこい」
潜影したスコルが瞬きする間にギデオンの影から銃として出て来た。
「神威、魔銃ガルム。マズルブレーキ着装!」
銃身の先端に筒状のパーツが取り付けられていた。
マズルブレーキとは発砲時におこる銃身の反動を抑えるための装置である。
この局面でギデオンがどうして持ちだしてきたのかというと、足場の悪さゆえにだ。
トラロック山の傾斜はかなりキツイ。
立ち上がるのも困難な環境で、銃撃してもまともに身体のバランスを保てるとは思えない。
少しでも精度を高める為には、銃本体の安定感が必要だ。
クロオリが方向転換しきる前に、銃口から何発か魔力弾が飛び出した。
一瞬の出来事により、ロッティは呆然していた。
吹き飛ばされたオートマタのワイヤーが切れてゆく。
甲冑がボロボロに歪み、人のカタチを保っていられなくなっていた。
「ひっぎいいいぎ!!」恐怖した敵将は、クロオリを放置したまま、その場から逃げ去ろうとしていた。
その腕を素早くつかむと、ギデオンはロッティを地面に叩き伏せた。
「傀儡人形を置いてゆくつもりか? ちょうど、いい。アンタ、西側の人間なんだろう? 西方地域について色々と話を聞こうじゃないか」
地に押さえつけられたまま、ロッティは叫んだ。
「ギデとか申したな。貴公も早く逃げろ!! あの状態になったクロオリは危険だ。まさか、制御用のワイヤーが破壊されるなど、想定外だ!」
「どういうことだ? あれはもう、身動きも取れないはずではないのか?」
「ち、違う……クロオリは黒い檻を意味する。あれは側だ! 本体はあの中で眠っている。一度……目覚めたら最期、自立稼動型のソレは手当たり次第に辺りを破壊しつくすぞ!!」
血相を変えて、怯えきった目をしている男が、ブラフや嘘をついているようには見えなかった。
何より、クロオリを作った張本人である。
以前、何が起きたのか? 事細かに説明してきた。
「アレを古代遺跡で発見した当初、側が機能していなかった。おかげで、少し燃料を与えた途端、我々の手元から逃げ出し、一夜にして近隣の街一つが地図から消えた」
「それが、クロオリの本体ということか……?」
「そうとも! あの時は運よく燃料切れを起こしてくれたおかげで収拾がついたが、今は永久炉まで修復させてある。止める手立てはないぞ」
「どうして、そんな危険なモノを持ちだしてきた! その恐ろしさを知っていながら修復するなど、正気ではないだろう!!」
「科学者の想いは、同胞にしか分からんよ。素人なんぞに、分かってたまるか……」
文字通り、指先を動かすだけでワイヤーが連動しクロオリを意のままに操ることができる。
「まだ、本体は無傷だ! いけぇいいい」
トラップマスターの掛け声とともに傀儡が腕を伸ばした。
スコルが威嚇するように吠え、傾斜を登ってゆく。
「くっ、なかなか素早い奴め。が、しかぁし!! クロオリの先読を使えば、どこに逃げようとも一緒よ。必ず捕まえてやるわい」
若干、目的がズレ始めてきたロッティはスコルを追いかけるのに躍起になっていた。
クロオリの胸部にある左右上下の四枚のパネルが一斉に開き、砲身が剥き出しとなった。
どうやら、直に捕らえる方法から射撃による進路妨害へと切り替えたようだ。
砲身の射出口に貼りつけられたパネルが眩いばかりに輝く。
強烈な光を帯びたオートマタから四本のレーザー砲が同時に放たれ木々を焼き払ってゆく。
倒木が次々とスコルの行く手を塞ぐ。
スコルは加速し大木が倒れるよりも早く、駆けていた。
速度を上げるのに精一杯で、敵の動きが読めない。
その弱点をうまくついてクロオリが前方に待ち構えている。
「そこだぁ! 小僧もろとも捕まえ……どこだ? どこに行った? 小僧の姿が見えんぞ」
「どこって、ここだが」クロオリの背後を取ったギデオンがシユウを背負っていた。
魔獣の行動ばかりに気を取られていて、ギデオンがシユウの身を確保したことすら見逃していた。
ロッティは悔しさのあまり下唇を噛みしめていた。
追い詰めたと思ったら、先に進んでいる。
身元すら定かではないギデという少年が邪魔だ。
「どうする? ロッティ・マウワ。クロオリが挟み撃ちになってしまったぞ」
「しれたこと! ガキを背負った貴公に何ができようぞ。このまま、くびり倒してやろう」
自信たっぷりな宣言にギデオンは冷笑した。
それはないと強調している態度に、ロッティは科学者として憤慨していた。
シユウに安全な場所に隠れるよう、指示する姿に、その余裕を壊してやろうとクロオリで消しかかる。
「スコル、遊びは充分だろう? 戻ってこい」
潜影したスコルが瞬きする間にギデオンの影から銃として出て来た。
「神威、魔銃ガルム。マズルブレーキ着装!」
銃身の先端に筒状のパーツが取り付けられていた。
マズルブレーキとは発砲時におこる銃身の反動を抑えるための装置である。
この局面でギデオンがどうして持ちだしてきたのかというと、足場の悪さゆえにだ。
トラロック山の傾斜はかなりキツイ。
立ち上がるのも困難な環境で、銃撃してもまともに身体のバランスを保てるとは思えない。
少しでも精度を高める為には、銃本体の安定感が必要だ。
クロオリが方向転換しきる前に、銃口から何発か魔力弾が飛び出した。
一瞬の出来事により、ロッティは呆然していた。
吹き飛ばされたオートマタのワイヤーが切れてゆく。
甲冑がボロボロに歪み、人のカタチを保っていられなくなっていた。
「ひっぎいいいぎ!!」恐怖した敵将は、クロオリを放置したまま、その場から逃げ去ろうとしていた。
その腕を素早くつかむと、ギデオンはロッティを地面に叩き伏せた。
「傀儡人形を置いてゆくつもりか? ちょうど、いい。アンタ、西側の人間なんだろう? 西方地域について色々と話を聞こうじゃないか」
地に押さえつけられたまま、ロッティは叫んだ。
「ギデとか申したな。貴公も早く逃げろ!! あの状態になったクロオリは危険だ。まさか、制御用のワイヤーが破壊されるなど、想定外だ!」
「どういうことだ? あれはもう、身動きも取れないはずではないのか?」
「ち、違う……クロオリは黒い檻を意味する。あれは側だ! 本体はあの中で眠っている。一度……目覚めたら最期、自立稼動型のソレは手当たり次第に辺りを破壊しつくすぞ!!」
血相を変えて、怯えきった目をしている男が、ブラフや嘘をついているようには見えなかった。
何より、クロオリを作った張本人である。
以前、何が起きたのか? 事細かに説明してきた。
「アレを古代遺跡で発見した当初、側が機能していなかった。おかげで、少し燃料を与えた途端、我々の手元から逃げ出し、一夜にして近隣の街一つが地図から消えた」
「それが、クロオリの本体ということか……?」
「そうとも! あの時は運よく燃料切れを起こしてくれたおかげで収拾がついたが、今は永久炉まで修復させてある。止める手立てはないぞ」
「どうして、そんな危険なモノを持ちだしてきた! その恐ろしさを知っていながら修復するなど、正気ではないだろう!!」
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