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百九十八話
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夜空の追走劇が始まった。
いくら眼が案順応したからといっても、ギデオンには何も見えない。
周囲の景色はおろか、肝心のガルベナールの姿さえも見えない。
頼みの綱は、オッドだった。
グリフォンは夜目が利く。
動体視力も優れていて、自分が今、どの辺りを飛行しているのか? ちゃんと把握している。
南陽門の手前でガルベナールの姿を発見した。
このままでは国境線を越えてしまう。
そうなって、しまえば追走を断念させざるを得ない。
国境線ことはガルベナールもよく理解していた。
何が何でも抜けだせれば、自身の安全は保障される。
公国の地理もある程度は明るい。
このまま、川沿いを避けるように迂回して南東方向へすすめば公都、天楼閣にたどり着く。
どちらにとっても、共和国を出るまでが勝負だった。
ガルベナールに急接近したオッドは油断から飛行速度を落としてしまった。
それを、黒衣龍は見逃さなかった。
追走する相手の隙をついて、更に翼を広げる。
風圧の渦を巻き起こし、そこから爆発的な推進力を生み出し一気に遠退いてゆく。
すぐに気づくも、制止させるタイミングなど掴めるはずもなく完全に後の祭りだった。
「クッソォォ――――!! やられた! 気が緩んだところをで引き離されっちまった」
「このままでいい、オッド。先に進むんだ」
「じょ、冗談だろ……!? このまま公国入りをしたら俺とお前は領空侵犯で、お縄になるだけだぞ!!」
「ガルベナールを取り逃せば、共和国民ように、また大勢の人が不幸になる。放置しておけるわけがない」
刻一刻を争う中、空を飛翔するグリフォンに物事を天秤にかける暇などなかった。
ここで止まるか? 継続して追うかのどちらかだ。
『二人とも奴を追うんだ。公国の間者にカナッペ君を連れ去らわれてしまった。できるだけ足止めはしたものの……失敗して、この有様だ。どうやら、ナズィールでの混乱に乗じて公国に帰郷したようだ……ゴールデンパラシュートの包囲網での察知が利かない』
同じパーティメンバーとして、苦楽共に戦ってきた。
仲間の窮地を耳にし、迷っている場合ではないとオッドは、ようやく腹をくくった。
『ギデ、今の私は聖獣としての縛りがあるせいで、共和国の先から移動することはできない。だからこそ、君やオッドに託そうと思う。どうか、戦火の犠牲になった者たちの仇を討ってくれ』
「勿論だ。奴の罪はすべて清算させる。そう、でもしなければ今度は、魔道具抜きで暴動に発展する」
『頼んだぞ! 若き希望たちよ』
南陽門を通過したのを皮切りに、ジェイクとの念話が途絶えた。
孤立無援の状態で、よく知らぬ土地を進まないといけない。
前をゆくガルベナールに、追いつく算段はない。しかし、一方的に相手の方が有利になるとは考えにくい。
案の定、無理やり移動速度を上げていたことがたたり、確実に速度が落ちてきている。
ギデオンたちが追撃を継続させてきたことが、彼にとっての大誤算だった。
より速く、もっと先へ、そういった想いを念頭に翼を動かすが、少しも前に進めてはいない。
「この光は? 視界がやけに明るくなってきたぞ」
まるで、夜明けの朝の陽ざしのように少しずつ、辺りが鮮明になってきた。
朝を迎えたのではなく……夜が存在しないのだ。
どういう理屈なのかは、ギデオンたちには想像もつかなかった。
地上全体が色濃く輝いていた。
本当にそこが現実の世界なのか? 疑ってしまうほどの眩さが彼らの来訪を歓迎していた。
「ここが、軍事国家ドルゲニア……軍事というからには、もっと灰色の街並みとか想像していたんだけど?」
オッドの言いたいことは、よく分かる。
軍事どころか兵器すら見当たらない大自然が大地を埋めつくす様は、平穏無事な国だと錯覚を覚えるほどだ。
とにかく、これで黒衣龍のいる位置がハッキリと見える。
「観念しろ!! ガルベナール、ここで貴様に引導を渡してやる」
「空中で戦うこともままならない、人間ごときに何ができるというのだ」
「落下することは出来るぞぉぉ!!」
ギデオンの声に視線を上に向けるとグリフォンから飛び降り高高度落下してくる、その姿が見えた。
ごく僅かな時間だった。
カーミ・ターミスを両手で握り、全力を込めた一振りを振り抜く。
ガルベナールは防御することも忘れ叫んでいた。
「いつ、どこで間違えた! どこの馬の骨ともしらないコイツがグラッセ家に引き取られた時か? いいや、違う!! アイツのせいだ。エゼックトの奴がぁあああぁあ、聖歌隊なんぞ、創設したからこうなったんだぁぁ」
頑強なバトルメイスが龍の頭部を粉砕した。
いくら眼が案順応したからといっても、ギデオンには何も見えない。
周囲の景色はおろか、肝心のガルベナールの姿さえも見えない。
頼みの綱は、オッドだった。
グリフォンは夜目が利く。
動体視力も優れていて、自分が今、どの辺りを飛行しているのか? ちゃんと把握している。
南陽門の手前でガルベナールの姿を発見した。
このままでは国境線を越えてしまう。
そうなって、しまえば追走を断念させざるを得ない。
国境線ことはガルベナールもよく理解していた。
何が何でも抜けだせれば、自身の安全は保障される。
公国の地理もある程度は明るい。
このまま、川沿いを避けるように迂回して南東方向へすすめば公都、天楼閣にたどり着く。
どちらにとっても、共和国を出るまでが勝負だった。
ガルベナールに急接近したオッドは油断から飛行速度を落としてしまった。
それを、黒衣龍は見逃さなかった。
追走する相手の隙をついて、更に翼を広げる。
風圧の渦を巻き起こし、そこから爆発的な推進力を生み出し一気に遠退いてゆく。
すぐに気づくも、制止させるタイミングなど掴めるはずもなく完全に後の祭りだった。
「クッソォォ――――!! やられた! 気が緩んだところをで引き離されっちまった」
「このままでいい、オッド。先に進むんだ」
「じょ、冗談だろ……!? このまま公国入りをしたら俺とお前は領空侵犯で、お縄になるだけだぞ!!」
「ガルベナールを取り逃せば、共和国民ように、また大勢の人が不幸になる。放置しておけるわけがない」
刻一刻を争う中、空を飛翔するグリフォンに物事を天秤にかける暇などなかった。
ここで止まるか? 継続して追うかのどちらかだ。
『二人とも奴を追うんだ。公国の間者にカナッペ君を連れ去らわれてしまった。できるだけ足止めはしたものの……失敗して、この有様だ。どうやら、ナズィールでの混乱に乗じて公国に帰郷したようだ……ゴールデンパラシュートの包囲網での察知が利かない』
同じパーティメンバーとして、苦楽共に戦ってきた。
仲間の窮地を耳にし、迷っている場合ではないとオッドは、ようやく腹をくくった。
『ギデ、今の私は聖獣としての縛りがあるせいで、共和国の先から移動することはできない。だからこそ、君やオッドに託そうと思う。どうか、戦火の犠牲になった者たちの仇を討ってくれ』
「勿論だ。奴の罪はすべて清算させる。そう、でもしなければ今度は、魔道具抜きで暴動に発展する」
『頼んだぞ! 若き希望たちよ』
南陽門を通過したのを皮切りに、ジェイクとの念話が途絶えた。
孤立無援の状態で、よく知らぬ土地を進まないといけない。
前をゆくガルベナールに、追いつく算段はない。しかし、一方的に相手の方が有利になるとは考えにくい。
案の定、無理やり移動速度を上げていたことがたたり、確実に速度が落ちてきている。
ギデオンたちが追撃を継続させてきたことが、彼にとっての大誤算だった。
より速く、もっと先へ、そういった想いを念頭に翼を動かすが、少しも前に進めてはいない。
「この光は? 視界がやけに明るくなってきたぞ」
まるで、夜明けの朝の陽ざしのように少しずつ、辺りが鮮明になってきた。
朝を迎えたのではなく……夜が存在しないのだ。
どういう理屈なのかは、ギデオンたちには想像もつかなかった。
地上全体が色濃く輝いていた。
本当にそこが現実の世界なのか? 疑ってしまうほどの眩さが彼らの来訪を歓迎していた。
「ここが、軍事国家ドルゲニア……軍事というからには、もっと灰色の街並みとか想像していたんだけど?」
オッドの言いたいことは、よく分かる。
軍事どころか兵器すら見当たらない大自然が大地を埋めつくす様は、平穏無事な国だと錯覚を覚えるほどだ。
とにかく、これで黒衣龍のいる位置がハッキリと見える。
「観念しろ!! ガルベナール、ここで貴様に引導を渡してやる」
「空中で戦うこともままならない、人間ごときに何ができるというのだ」
「落下することは出来るぞぉぉ!!」
ギデオンの声に視線を上に向けるとグリフォンから飛び降り高高度落下してくる、その姿が見えた。
ごく僅かな時間だった。
カーミ・ターミスを両手で握り、全力を込めた一振りを振り抜く。
ガルベナールは防御することも忘れ叫んでいた。
「いつ、どこで間違えた! どこの馬の骨ともしらないコイツがグラッセ家に引き取られた時か? いいや、違う!! アイツのせいだ。エゼックトの奴がぁあああぁあ、聖歌隊なんぞ、創設したからこうなったんだぁぁ」
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