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百八十二話
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「ゴールデンパラシュート! オッサンか……?」
ギデオンの周りをポンと跳ね上がるそれは、拳大のケサランパサランだった。
今よりも数倍に膨れ上がったソレが、ジロリと見つめる。
「うおっ! 目玉がついていたのかよ、ソイツ!」
『本気を出せば、ここまで育つ』
当たり前のように開眼した毛玉にギデオンが度肝を抜かれていると、頭の中でジェイクの声が反響した。
念話だ。以前、説明してもらったケサランパサランの特殊能力だ。
『オッサンが通信機ではなく、直に連絡してくるってことは相当、ヤバイ事になったというわけか!?』
『ああ……詳しくは後で話すが、今はファルゴだ。コイツをどうにかしにないと収拾がつかないんだろう?』
「おい! ゴールデンパラシュート、裏切り者のテメェが今更、なんの用だ!?」
二人の念話を遮るようにファルゴが吼えた。
この戦いに水をさされたと感じ、憤慨しているようだ。
「オッサンは、お前の弱点を教えにきてくれたんだとよ」
「弱点だぁ? デタラメを言うのも大概にしろ! ソイツは俺の弱点どころか、能力すら把握できてねぇぞ」
ギデオンのブラフは、あっさりと見抜かれてしまった。
『マジかよ……オッサン』と心で囁くと『マジだな』と即答が返ってきた。
内心、期待していたギデオンだったが、少し考えてみれば分かることだ。
ジェイクが、ウィナーズカースについて知っていれば、とっくの前に話していたはずだ……。
『そう落ち込むな。知らなくても、暴く方法ならある』
『そう、なのか……? なら、先に言ってくれよ!』
『だが、これこそギャンブルだ。成功するか? しないか? はギデオン、お前の行動にかかっている』
さらりと大事を伝えてくるジェイクに、ギデオンの口元が緩んだ。
賭けるモノなら、とうに出ている。
これの以上、負担が増えようとも勝機を見出せる一手が得られるのであれば、申し分のない成果だ。
『隙をみてファルゴにケサランパサランをつける、それで奴の能力のすべてが分かる!』
『なるほど、僕に隙を作れと言うわけか……なかなか骨が折れる仕事を』
『一瞬だ、その一瞬が大事だ。だから、奴を徹底的に叩きのめせ!』
無茶ぶりなのも良いところだが、やるしかない。
両腕に魔力をそそぎエンチャントをかける。これを何度も繰り返せば、腕が使いモノにならなくなる。
覚悟の上での一撃は、対策を練られていない今しか通用しない。
そう思えば、恐怖も和らぐ。留まることなく突き進める。
「何か、企んでいるようだが……まあ、いい。ゴールデンパラシュートごと、目論見も打ち砕いてやろう」
『行くぞ! オッサン。しっかりと、掴まっていろよ』
地を蹴り上げ、加速していくギデオンが大きく振りかぶった。
スコルの魔力も底をつき、グリンガムジーベンも使用できない以上は生身で戦うしかない。
他の武器に属性付与させること自体も成功率が低い。
選択の余地はなかった。
「アスラ・マダ!!」
ヴァリィトラァをその腕に吸収し金剛杵と化す。
ファルゴの冴えわたる妙技が、大地を削り取ってゆく。
その鋭い五つの刃はどこまでも伸び、どんな杵よりも重く、振り下ろせば、ありとあらゆるモノを粉砕する。
最強の法具こそが彼のオーソライズ・キャリバーだった。
衝撃がプロミネンス・ワン全体を轟かせた。天を穿つほどの土煙が視界を遮る中で、彼らの死合は継続していた。
いくら、威力が絶大でも攻撃範囲の外に逃げれば問題はない。
ギデオンはパーミッショントランスを使い、上空へと飛び上がっていた。
大振りの攻撃は、外した時のリスクが高い。
そこを狙い地上へと急降下してゆく。
「馬鹿がぁ!! そうする事などお見通しだ。舞え! ヴァリィトラァ!!」
瞬時に、オーソライズ・キャリバーを解除すると龍が天に昇る。
プラーナと魔力を混ぜ合わせた、凶器がギデオンを包囲する。
「もらったああ――」
などとは言わせない。敵の攻撃が行く手を阻むのなら何であろうとも、ギデオンは殴り飛ばすだけだ。
「コイツ……信じらねえーことしやがる!!」
魔力を放出する拳がヴァリィトラァを押し返した。
理屈上、あり得ないが発生しファルゴの思考力が鈍化していた。
緻密に計算し予想したことが、わけも分からず容易に崩される。
そのような経験を彼はしたことがない。
だからこそ、余計な魔が差した。ここで、ギデオンから一発貰ったらどう事態が転んでゆくのか? と思い描いてしまった。
「歯ぁ食いしばれよ、ファルゴ!! ディストーションフレアァァ!!!」
一発どころか、連打の応酬がファルゴの全身を打ち抜いてゆく。
防御も追いつかないほど、苛烈なラッシュ。
それに耐えながらも、カウンターの右フックを見舞うが、ディストーションフレアの勢いは増すばかりだ。
ギデオンの拳がファルゴの頬にめり込んだ。そのまま、押し倒すように制裁の鉄拳を振り抜いた。
ギデオンの周りをポンと跳ね上がるそれは、拳大のケサランパサランだった。
今よりも数倍に膨れ上がったソレが、ジロリと見つめる。
「うおっ! 目玉がついていたのかよ、ソイツ!」
『本気を出せば、ここまで育つ』
当たり前のように開眼した毛玉にギデオンが度肝を抜かれていると、頭の中でジェイクの声が反響した。
念話だ。以前、説明してもらったケサランパサランの特殊能力だ。
『オッサンが通信機ではなく、直に連絡してくるってことは相当、ヤバイ事になったというわけか!?』
『ああ……詳しくは後で話すが、今はファルゴだ。コイツをどうにかしにないと収拾がつかないんだろう?』
「おい! ゴールデンパラシュート、裏切り者のテメェが今更、なんの用だ!?」
二人の念話を遮るようにファルゴが吼えた。
この戦いに水をさされたと感じ、憤慨しているようだ。
「オッサンは、お前の弱点を教えにきてくれたんだとよ」
「弱点だぁ? デタラメを言うのも大概にしろ! ソイツは俺の弱点どころか、能力すら把握できてねぇぞ」
ギデオンのブラフは、あっさりと見抜かれてしまった。
『マジかよ……オッサン』と心で囁くと『マジだな』と即答が返ってきた。
内心、期待していたギデオンだったが、少し考えてみれば分かることだ。
ジェイクが、ウィナーズカースについて知っていれば、とっくの前に話していたはずだ……。
『そう落ち込むな。知らなくても、暴く方法ならある』
『そう、なのか……? なら、先に言ってくれよ!』
『だが、これこそギャンブルだ。成功するか? しないか? はギデオン、お前の行動にかかっている』
さらりと大事を伝えてくるジェイクに、ギデオンの口元が緩んだ。
賭けるモノなら、とうに出ている。
これの以上、負担が増えようとも勝機を見出せる一手が得られるのであれば、申し分のない成果だ。
『隙をみてファルゴにケサランパサランをつける、それで奴の能力のすべてが分かる!』
『なるほど、僕に隙を作れと言うわけか……なかなか骨が折れる仕事を』
『一瞬だ、その一瞬が大事だ。だから、奴を徹底的に叩きのめせ!』
無茶ぶりなのも良いところだが、やるしかない。
両腕に魔力をそそぎエンチャントをかける。これを何度も繰り返せば、腕が使いモノにならなくなる。
覚悟の上での一撃は、対策を練られていない今しか通用しない。
そう思えば、恐怖も和らぐ。留まることなく突き進める。
「何か、企んでいるようだが……まあ、いい。ゴールデンパラシュートごと、目論見も打ち砕いてやろう」
『行くぞ! オッサン。しっかりと、掴まっていろよ』
地を蹴り上げ、加速していくギデオンが大きく振りかぶった。
スコルの魔力も底をつき、グリンガムジーベンも使用できない以上は生身で戦うしかない。
他の武器に属性付与させること自体も成功率が低い。
選択の余地はなかった。
「アスラ・マダ!!」
ヴァリィトラァをその腕に吸収し金剛杵と化す。
ファルゴの冴えわたる妙技が、大地を削り取ってゆく。
その鋭い五つの刃はどこまでも伸び、どんな杵よりも重く、振り下ろせば、ありとあらゆるモノを粉砕する。
最強の法具こそが彼のオーソライズ・キャリバーだった。
衝撃がプロミネンス・ワン全体を轟かせた。天を穿つほどの土煙が視界を遮る中で、彼らの死合は継続していた。
いくら、威力が絶大でも攻撃範囲の外に逃げれば問題はない。
ギデオンはパーミッショントランスを使い、上空へと飛び上がっていた。
大振りの攻撃は、外した時のリスクが高い。
そこを狙い地上へと急降下してゆく。
「馬鹿がぁ!! そうする事などお見通しだ。舞え! ヴァリィトラァ!!」
瞬時に、オーソライズ・キャリバーを解除すると龍が天に昇る。
プラーナと魔力を混ぜ合わせた、凶器がギデオンを包囲する。
「もらったああ――」
などとは言わせない。敵の攻撃が行く手を阻むのなら何であろうとも、ギデオンは殴り飛ばすだけだ。
「コイツ……信じらねえーことしやがる!!」
魔力を放出する拳がヴァリィトラァを押し返した。
理屈上、あり得ないが発生しファルゴの思考力が鈍化していた。
緻密に計算し予想したことが、わけも分からず容易に崩される。
そのような経験を彼はしたことがない。
だからこそ、余計な魔が差した。ここで、ギデオンから一発貰ったらどう事態が転んでゆくのか? と思い描いてしまった。
「歯ぁ食いしばれよ、ファルゴ!! ディストーションフレアァァ!!!」
一発どころか、連打の応酬がファルゴの全身を打ち抜いてゆく。
防御も追いつかないほど、苛烈なラッシュ。
それに耐えながらも、カウンターの右フックを見舞うが、ディストーションフレアの勢いは増すばかりだ。
ギデオンの拳がファルゴの頬にめり込んだ。そのまま、押し倒すように制裁の鉄拳を振り抜いた。
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