異世界アウトレンジ ーワイルドハンター、ギデ世界を狩るー

心絵マシテ

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百三十一話

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「ン! ンンン――――ンン!! 来ました! 来ましたぞ」

 ミチルシィの未来予知。それは喉の違和感ともにやってくる。
 彼自身の意思では、一切コントロールがきかないベース・アビリティ。
 その的中率は脅威の100パーセントを誇る。
 曖昧かつ、断片的なモノが多いとは言え、能力自体は強力で有意性が高い。
 やはり、知っているのと知らないのは段違いだ。

 ミチルシィは自身の能力を活かし、これまで何人者も才覚ある若者たちを勇士学校にスカウトしてきた。
 その中には、ファルゴやカナッペも含まれている。
 彼ら、最終的にどこに行き着くのか? ミチルシィにも分からない。
 能力は視覚情報ではなく、音で知らせてくる。
 まるで、頭の中に受信装置があるように音声、物音で彼に伝えてくる。

「ど、どうだ……未来は好転しているのか?」ガタッと椅子を鳴らしゴーダは前のめりに立ち上がった。

「ンンン!! ンンン!! 未来は――――最悪です……大勢の人間の喧騒が聞こえています、これは……争いの声です!!」

「終わった……きっと、我が校の不祥事を聞きつけ民衆が弾圧しに来るんだぁ――」

 腰を落としアホ面で天を仰ぐゴーダ。
 もはや、学長としての威厳も感じられず、ただ失意に打ちのめされ醜態をさらしている。
 感情の起伏きふくが激しいのか、事あるごとに一喜一憂する姿は、良くも悪くも騒々そうぞうしい。

「待ってください! 学長、微かにですが聞こえます。世界が光に包まれ、その中で救いを求める者たちの声が、彼らは絶望していません! まだ、諦めていないようです」

「んで~? 俺達にどうしろと? 事態は悪化することが確定しているわけだが……」

「学長……我々も抗ってみませんか? ご存じ通り、私の能力は結果までは追えません。例え、その先が最悪でも、それがあるという事は、まだ終わりではありません。我々、教師勢が何もせず生徒を導かないというのは、ただの職務怠慢ですぞ。最低でも、生徒たちに道は示せるはずです。でなければ、誰が我らを教師と仰ぐのでしょうか!?」

 言葉の隅々に熱がこもっていた。
 真摯に問いかける学年主任に、臆病風に吹かれていた学長も心を突き動かさずにはいられなかった。

「賭けてみるというわけですか……フッ、いいでしょう! 逆境に立ってこその天衣無縫! 生徒に見せてやりますか、我々のサンブレイクを!!」

「ふふっ、相変わらず意味不明なことを……」

「「フフッフ、アッハハアアアハハアハハ――――!!」」

「一体、何を見せられているんだ……僕は?」

 生徒が見ているのも忘れて高笑いする、学長と学年主任にギデオンは並々ならぬ不安を覚えた。

「要件はそれだけですか? でしたら、僕は……」

「いや、待ってくれ! もう一つある、実はだね――――」

 いい加減、付き合いきれないと会議室を去ろうとする彼をミチルシィが呼び止めた。
 少々、面倒に感じてきていたが、教諭の驚愕発言にギデオンは瞳を見開いていた。

「どういう事ですか……ミドルクラスのブロッサムが掴まったって!?」

「フム。キンバリー先生の遺体が何者かに持ち出されたことは君も既知しているね。バミューダ生徒会が、率先して遺体を捜索する中で、くだんの生徒に死体損壊の容疑がかけられた。いまは、軍警の留置所にて身柄を確保されている」

「それが、僕と何か関係あるんですか?」

「いや、彼が君を懇意こんいにしているという噂を耳にしていたからな。そうか、関係ないのか! 別段、疑ったわけではないから、気を悪くしないでくれ」

「ええっ、気にはしませんよ。それでは、今度こそ失礼します」


 一階、ロビーに向かい颯爽と歩いてゆく。
 その足取りは、どこか覚束おぼつかない。
 あり得ない、あのブロッサムが事件に関与しているわけがない! その一心がギデオンの中で反響していた。
 彼は無実だ。
 そう信じようとするも……悪癖か、一方では疑いの目をかけようとする自分が存在した。

 冷静に思い返してみれば、最初からブロッサムの言動は違和感だらけだった。
 見ず知らず自分に、曖昧な回答で着いて来た彼を信じていいのか? 分からない。
 ブロッサムの素性を一切知らない以上、考えれば考えるほど泥沼にはまってゆく。
 胸中にモヤモヤしたモノが詰まってゆく感覚に、ギデオンは顔をしかめた。
 疑り深い自身の気質に、ここまでウンザリすることは今までに無かった。

「身動きがとれない現状、留置所に向かうわけにもいかない……どうする?」

「いや、僕は何を考えているんだ。留置所の場所すら知らないのに……しかも、行ってどうしたいんだ。彼の無実を証明する物的証拠はないんだぞ……」

 独り、ボソボソと語る。
 ブロッサムが無実かどうかは関係なく、彼の焦点は自身がどうしたいのかだった。
 明日は、朝からラボへと向かわなければならない。
 現実的な思考をすれば、最初から手立てはなく助け出す義理もない。
 所詮はアカの他人、そう思えばすぐに気が楽になる……。

「クッソォ―――!!」壁に拳を打ちつけるギデオンは、眉間にシワを寄せながら苦悩していた。
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