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百二十九話
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「あの、ファルゴ相手によく勝ってたな……」
そう言いながら半笑いするジェイクだが、どこか力無い。
壮絶な戦いが終わたことに安堵した感じの表情にも見える。
「そんなわけないだろ!」ギデオンが、言葉を吐き捨てた。
「どういう事だ?」
「この程度で、止められる奴じゃない。今は地中に埋まっているが、しばらくしたら自力で出てくる。僕には、それが分かる」
「戦った者同士にしか分からない。直感というヤツか」
「それよりも、彼女は大丈夫なのか!?」
視線で示す、その先に高熱にうなされるカナッペの姿があった。
ファルゴによって蜜酒を過剰摂取してしまった、その身体は抗体反応により浮腫み始めている。誰が見ても早急に手当する必要がある。
「早めにシルクエッタ君に診てもらう必要があるな」
「そうだが、それだけじゃないだろう! 僕を助けるためにカナッペに幸運付与したんだろう? おそらく、彼女は相当量の幸運を前借りしてしまったはずだ!! そんなことをして問題ないとは言い切れないぞ」
「心配するな、使用した運を元に戻す方法なら、いくつかある」
「本当か? ……その言葉信じるぞ!!」
「ここは、少し埃っぽいな……」
ジェイクは眼鏡を外し、ハンカチでレンズの汚れ拭き取る。
どうやら、スケジュール的に余裕はなさそうだ。
彼らはダンジョンを後にした。
「ガルベナールは何か吐いたか?」
「薬を用いたおかげで、わりかし簡単にな。お前が探していたラボの存在も判明したぞ」
「ラボか、出来れば奴自身に案内させたいところだが、調査の邪魔にしかならないだろう。もっとも、そのラボから鬼がでるか蛇がでるか? しらないがな」
「それでも、聖王国から自ら出向いて証拠隠滅をしにきたわけだ。非道なる人体実験に関与していることを裏づける証拠があるのは想像に難くはないな…………着いたぞ!」
車を走らせ、十五分ほどで迎賓館に到着した。
シルクエッタは今、付き添いとして館内にいる。
彼女が付き添っている相手とは、もちろん聖王国、宰相ガルベナール・エンブリオンだ。
「ジェイク、トランクの中の爺さんはどうするつもりだ?」
「不安か? コイツは私にとっても仇だ。そう易々と殺しはしないさ。丁度、うってつけの場所がある、そこに運んでおこう」
「計画通り、ラボには明日突入する。それでいいよな?」
「ああ、ケサランパサランをつけておく。何かあったら、それで連絡してくれ」
*
「確か、この建屋の裏側だったな」
ジェイクと別れて、すぐにカナッペを背負いながら指示された場所に足を運んだ。
その場所とは、警備の目をかいくぐり、問題なく迎賓館内部に侵入するためのルートだ。
「僕だ、着いたぞ」通信用を魔道具を使用し連絡を取ると、建屋上階の出窓がバタッと開いた。
三階に相当する位置から、植物が蔦がスルスルと流れ落ちてくる。
手元に届いたそれをつかむと、今度は彼らを引き上げるように蔦が短くなってゆく。
「うきゅ!」
外壁を蹴って出窓に飛び込むとアルラウネのウネが彼の懐に飛びついて来た。
産着姿の彼女はまだ歩くのもままならないが、すでに周りの言葉を理解し魔力を扱い、植物を操作することができる。
ちょうど、部屋の片隅に成長しすぎている観葉植物が置かれている。
その葉の一部はギデオン手の中におさまっていた。
「お前ら、泥だらけじゃないか! カナッペ? 大丈夫か!? しっかりしろよ」
ウネのそばにこの男あり、室内で待機していたオッドが急いで駆け寄ってきた。
同級生の彼がここにいるのは、ほぼ成り行きだ。成り行きついでに、ウネを面倒を見てもらっていた。
「オッド! シルクエッタを呼んでくれ。彼女を治癒しないと」
「分かった。大急ぎで連れてくるから、そこのベッドに寝かせておけ」
五分後――――「急患だって!?」
彼の言った通り、シルクエッタが部屋に飛び込んできた。
ベッドに横たわるカナッペを見るなり、その手を取って身体の状態を確認する。
「どうだ?」
「脈が乱れ、ひどく衰弱している……けど、治癒魔法をかけ続ければ、ちゃんと回復するよ」
「そっか、忙しいことろ済まない」
「何って言っているの。これも、治癒師の役目だよ!」
専門家の診断結果に辺りから、ほっとした吐息が漏れる。
だいたいがオッドだが、その真後ろにいるガルベナールも彼女の容態を気にしていた。
「いや、お前が此処にいると色々と不味いんだが……どうしてついて来た、宰相」
「ええっ!! ダメだったの~。ていうかー、オジイチャンの姿でいるのもう、イヤなんですけど?」
「その姿で喋られると、気色ワリィな……」
「ちょっと! 短髪君、言い方ぁー。先輩に失礼だよ~。ギデっち、こんなんアイドルのやることじゃなぁーい!!」
オッドに気味悪がれ、機嫌を損ねた宰相の表面がドロドロに溶けてゆく。
中から出てきた少女はホワイトナイト、シゼル・アマンその人だった。
そう言いながら半笑いするジェイクだが、どこか力無い。
壮絶な戦いが終わたことに安堵した感じの表情にも見える。
「そんなわけないだろ!」ギデオンが、言葉を吐き捨てた。
「どういう事だ?」
「この程度で、止められる奴じゃない。今は地中に埋まっているが、しばらくしたら自力で出てくる。僕には、それが分かる」
「戦った者同士にしか分からない。直感というヤツか」
「それよりも、彼女は大丈夫なのか!?」
視線で示す、その先に高熱にうなされるカナッペの姿があった。
ファルゴによって蜜酒を過剰摂取してしまった、その身体は抗体反応により浮腫み始めている。誰が見ても早急に手当する必要がある。
「早めにシルクエッタ君に診てもらう必要があるな」
「そうだが、それだけじゃないだろう! 僕を助けるためにカナッペに幸運付与したんだろう? おそらく、彼女は相当量の幸運を前借りしてしまったはずだ!! そんなことをして問題ないとは言い切れないぞ」
「心配するな、使用した運を元に戻す方法なら、いくつかある」
「本当か? ……その言葉信じるぞ!!」
「ここは、少し埃っぽいな……」
ジェイクは眼鏡を外し、ハンカチでレンズの汚れ拭き取る。
どうやら、スケジュール的に余裕はなさそうだ。
彼らはダンジョンを後にした。
「ガルベナールは何か吐いたか?」
「薬を用いたおかげで、わりかし簡単にな。お前が探していたラボの存在も判明したぞ」
「ラボか、出来れば奴自身に案内させたいところだが、調査の邪魔にしかならないだろう。もっとも、そのラボから鬼がでるか蛇がでるか? しらないがな」
「それでも、聖王国から自ら出向いて証拠隠滅をしにきたわけだ。非道なる人体実験に関与していることを裏づける証拠があるのは想像に難くはないな…………着いたぞ!」
車を走らせ、十五分ほどで迎賓館に到着した。
シルクエッタは今、付き添いとして館内にいる。
彼女が付き添っている相手とは、もちろん聖王国、宰相ガルベナール・エンブリオンだ。
「ジェイク、トランクの中の爺さんはどうするつもりだ?」
「不安か? コイツは私にとっても仇だ。そう易々と殺しはしないさ。丁度、うってつけの場所がある、そこに運んでおこう」
「計画通り、ラボには明日突入する。それでいいよな?」
「ああ、ケサランパサランをつけておく。何かあったら、それで連絡してくれ」
*
「確か、この建屋の裏側だったな」
ジェイクと別れて、すぐにカナッペを背負いながら指示された場所に足を運んだ。
その場所とは、警備の目をかいくぐり、問題なく迎賓館内部に侵入するためのルートだ。
「僕だ、着いたぞ」通信用を魔道具を使用し連絡を取ると、建屋上階の出窓がバタッと開いた。
三階に相当する位置から、植物が蔦がスルスルと流れ落ちてくる。
手元に届いたそれをつかむと、今度は彼らを引き上げるように蔦が短くなってゆく。
「うきゅ!」
外壁を蹴って出窓に飛び込むとアルラウネのウネが彼の懐に飛びついて来た。
産着姿の彼女はまだ歩くのもままならないが、すでに周りの言葉を理解し魔力を扱い、植物を操作することができる。
ちょうど、部屋の片隅に成長しすぎている観葉植物が置かれている。
その葉の一部はギデオン手の中におさまっていた。
「お前ら、泥だらけじゃないか! カナッペ? 大丈夫か!? しっかりしろよ」
ウネのそばにこの男あり、室内で待機していたオッドが急いで駆け寄ってきた。
同級生の彼がここにいるのは、ほぼ成り行きだ。成り行きついでに、ウネを面倒を見てもらっていた。
「オッド! シルクエッタを呼んでくれ。彼女を治癒しないと」
「分かった。大急ぎで連れてくるから、そこのベッドに寝かせておけ」
五分後――――「急患だって!?」
彼の言った通り、シルクエッタが部屋に飛び込んできた。
ベッドに横たわるカナッペを見るなり、その手を取って身体の状態を確認する。
「どうだ?」
「脈が乱れ、ひどく衰弱している……けど、治癒魔法をかけ続ければ、ちゃんと回復するよ」
「そっか、忙しいことろ済まない」
「何って言っているの。これも、治癒師の役目だよ!」
専門家の診断結果に辺りから、ほっとした吐息が漏れる。
だいたいがオッドだが、その真後ろにいるガルベナールも彼女の容態を気にしていた。
「いや、お前が此処にいると色々と不味いんだが……どうしてついて来た、宰相」
「ええっ!! ダメだったの~。ていうかー、オジイチャンの姿でいるのもう、イヤなんですけど?」
「その姿で喋られると、気色ワリィな……」
「ちょっと! 短髪君、言い方ぁー。先輩に失礼だよ~。ギデっち、こんなんアイドルのやることじゃなぁーい!!」
オッドに気味悪がれ、機嫌を損ねた宰相の表面がドロドロに溶けてゆく。
中から出てきた少女はホワイトナイト、シゼル・アマンその人だった。
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