異世界アウトレンジ ーワイルドハンター、ギデ世界を狩るー

心絵マシテ

文字の大きさ
上 下
94 / 362

九十四話

しおりを挟む
激闘の末、ギデオン一向は敵の猛攻をしのぎ、撃退に成功した。

ワイズメル・シオンが放った刺客と神の化身ケツァルコアトル。
両者の関係性は未だ、明かされていない。
現状では、どちらとも敵対勢力と考えていいだろう。

第四、チェックポイント古城での更新が開始された。
更新台座は、謁見の間に向かう手前、大広間から続く大食堂に設置されていた。
ギデオンの現在ポイントは3085。
内訳はチェックポイント通過合計点3000プラス、討伐ポイント85となる。

パチパチパチパチ!!

室内に拍手が響く。
見るとオッドに肩を借りながら、リッシュが大食堂までやってきた。

「おめでとう、ギデ君。僕の完敗だ」手を差し出し握手を求める。

「大丈夫……とはいかないようだな。できれば、君とはジャマが入らない状態で戦いたかった」来た手を握り返す。

互いの健闘をたたえ合い固く握手を交わす二人。

「次こそは負けないよ!」

「ああ、再戦を楽しみにしている」

リーダー同士の堂々としたやり取りに、双方のメンバーから笑みがこぼれる。
絆と呼ぶには、まだまだ成熟しきれていない小さきモノだが、今回の共闘で彼らは少しだけお互いを知る事ができた。

「皆、ここらで一息入れませんか? 戦闘で疲れていると思うし」

「賛成……もう、くたくたよ。それに私たち、まだ夕食とっていないままだしぃ」
テーブルに突っ伏したままバージェニルが小さく手を上げる。
因みにテーブルクロスは持参したモノを敷いたらしい……。


カナッペの提案で、休憩を挟むことになった。
魔力切れを起こしているギデオンも酷いが、他メンバーも疲労感を色濃く出している。

「ブロッサム、平気か?」ギデオンが声をかける。

「ええ。ですが、今回の演習で己が持久力なさを思い知らされましたな」

「無理もないさ。一人で二十人以上も相手したんだ、疲れて当然だ」

「何をおっしゃる、ギデ殿など白騎士と大蛇にまで立ち向かっていたではありませぬか! 我が、もっと動けていれば、ギデ殿だけに負担を押し付ける結果にはならなかったはずですぞ」

「場数を踏んでいるだけさ。各自ができる範囲でやればいい、僕も今回、ブロッサムには助けられている。そこは変わらない事実だろ?」

「ですが……いや、そう言ってもらえると、有り難いですぞ」


「クォリスはどうだ? 最後まで僕たちに同行してくれるか? 折角、パーティーメンバーと合流できたんだ、どうするかは君にゆだねる……」

「それは……」椅子に腰かけた状態で、リッシュたちの反応をうかがうクォリス。
どうやら、自パーティーの仲間に気を遣っている様子だ。

リッシュとオッドが揃ってうなずく。
「僕らの事は気にする必要はないよ、クォリス。僕らは時間的にも次の瀑布ばくふで打ち止めだ」

「そもそも、スタート地点からして違うからな。今更、俺たちに合わせてもメリットなんてないだろう」

二人の言葉に背中を押され、クォリスがギデオンの方に振り向く。

「わ、私も最後まで行きます! ギデ君が……いいって言ってくれるなら」

「無論さ。君がいれば心強い」彼女の精一杯に、ギデオンも力強く答える。


「あり合わせしかないけど、準備できたわよ」

同じのテーブルを囲み、全員で夕食をとる。
カナッペによりバゲットとチーズ、干し肉に野菜スープが配膳される。

「あと、これもね」カナッペが軽くウィンクしながら紅い小瓶を手渡してきた。

マジックポーションだ。
彼女が気を利かせて自身の物を分けてくれたのだ。

「すまない。手持ちがなかったから助かるよ」

「お互い様よ。そのかわり、クォリスのことお願いね!」

「カナッペ……」

「友達思いなんだな」

ギデオンとクォリスから向けられる敬愛の眼差し。
余程、照れ臭いのか? 彼女はコホンと咳払いし何事もないといった感じで自分の席についた。

「なごんでいる所、悪いんだけど。そろそろ、最終ポイントに向かう準備を始めたほうがいいんじゃない? 残り時間も三時間半をきったわ」

「ミスリム殿?」

ブロッサムが不思議がるのも当然だった。
ここに来て、バージェニルの様子が急変した。
どこかソワソワして落ち着きがない。
これまで、彼女はポイントなど関係ないと言い切り、実際に気にする素振りは見せなかった。

「どうした? 時間を気にするなんてらしくないじゃないか?」

「別に、ここまで来たのに時間に遅れたら馬鹿馬鹿しいと思っただけよ。貴方たちだって苦労してここまできたんでしょ!?」

「断崖のチェックポイントだね。ここからだと、そんなに遠くないよ。二時間ちょいで頂上まで登れるはずさ」

「ただし、ロックマンキーの群れには注意してね。こちらの邪魔をしてくるから」

「ロックマンキーか……最悪だったな、アイツら」

リッシュたち三人からアドバイスを受け、早々に身支度を整えることに決めた。
もう少し、のんびりしていきたい所ではあるも、バージェニルの事もある。

「そう言えば、リッシュ。ケツァルコアトルはどうして君を執拗に狙ってきたんだ?」

「そ、それは……」

ギデオンの疑問に、言いよどむリッシュ。
何か、言えないような理由でもあるのだろうか?
尋常じゃないほどに額から発汗している。

間近でドサッと荷が落ちる音がした。

「ラッキースター…………そうよ! それしか思い当たらないわ」

ポツリと呟くバージェニル。
その顔は、すっかり青ざめたモノになっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

レティシア公爵令嬢は誰の手を取るのか

宮崎世絆
ファンタジー
うたた寝していただけなのに異世界転生してしまった。しかも公爵家の長女、レティシア・アームストロングとして。 あまりにも美しい容姿に高い魔力。テンプレな好条件に「もしかして乙女ゲームのヒロインか悪役令嬢ですか?!」と混乱するレティシア。 溺愛してくる両親に義兄。幸せな月日は流れ、ある日の事。 アームストロング公爵のほかに三つの公爵が既存している。各公爵家にはそれぞれ同年代で、然も眉目秀麗な御子息達がいた。 公爵家の領主達の策略により、レティシアはその子息達と知り合うこととなる。 公爵子息達は、才色兼備で温厚篤実なレティシアに心奪われる。 幼い頃に、十五歳になると魔術学園に通う事を聞かされていたレティシア。 普通の学園かと思いきや、その魔術学園には、全ての学生が姿を変えて入学しなければならないらしく……? 果たしてレティシアは正体がバレる事なく無事卒業出来るのだろうか?  そしてレティシアは誰かと恋に落ちることが、果たしてあるのか? レティシアは一体誰の手(恋)をとるのか。 これはレティシアの半生を描いたドタバタアクション有りの爆笑コメディ……ではなく、れっきとした恋愛物語である。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

処理中です...