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九十一話
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神話の中でのみ語られる架空の存在。
天を駆ける神は、此処に顕現した。
生きる伝説を目にし誰もが静観する、したまま圧倒される。
荘厳と気品を兼ね備えた容姿、人知を超越した神の化身はあまりにも煌びやかで美しい。
存在自体が奇跡と称えられるのも納得だ。
可視化される神気が後光となり、ケツァルコアトルが他生物と一線を画すことを強調していた。
蜷局を巻いた身体を素早く、回転させ神たる力をいかんなく発揮する。
言葉すら出せない一瞬だった。
ギデオンを横を通り抜けたかぎ爪が、リッシュを捉えた。
獲物をつかむと吹き抜けの天井を上昇し、今度は折り返すように急降下する。
「ぐあああっ……クソっ! 放せぇ!」
「精算の時間ダ……スカイドライバー!!」
事態の変化に、思考が追いつかない。
一体、どうして、何が、あってリッシュが狙われたのだ?
シオン賢者を警戒するのなら、ホワイトナイトと対峙するべきなのではないか!?
様々な憶測が、頭の中飛び交っている。
ホワイトナイトとケツァルコアトルよって板挟みにされたギデオンは、どちらを優先するべきか迷ってしまった。
わずかな足踏みが取り返せない遅延をうんだ。
かぎ爪が真下に向かって押し出される。
依然、リッシュは窮地から抜け出せていない。
このままでは、彼の身体は床との摩擦で、摺り潰されてしまう。
手を伸ばさずにはいられなかった……。
例えの行為自体に意味を見いだせなくとも、人の倫理が身体を突き動かしてくる。
せめて、銃がつかえれば状況を逆転できるはず……だが――――――
現実は何時だって、無情だ! もはや、クラスメイトを救う手立てがない。
「う、うにゅにゅうぬぬぬ~ん!!」
「ぎゃっひ!?」
二本の線が宙を飛び立ち伸長する。
何の前触れもなく、現れた緑の線。
ケツァルコアトルの足首に巻き付き、即座に収縮してゆく。
引っ張る力に、神の足下が揺らいだ。
リッシュを締め付けていた爪先が紐状の何かによって打ちつけられた。
直後、降り立った箇所にドスン!! と衝撃が走る。
黒曜石の床が砕け、みるみるうちに陥没していく。
パラパラと粉塵が舞う……。
合間から躍り出る人影は、身体に巻き付いた蔦に手繰り寄せられているリッシュだった。
肉の感触がない事に気づかないケツァルコアトルではない。
逃すまじと追走姿勢を取り、すぐさま彼らの方へと舵を切る。
「ヤベェ――! こっちに来てやがる。早く! もっと速く、リッシュを引き寄せてくれ」
「にゅうにゅ―――!」
縮みゆく蔦の先には、オッドに抱えられたアルラウネの姿があった。
産れたての小さな身体。
まだ、葉でできたおくるみに包まれた身でありながらも、赤子は人を救おうと奮闘していた。
「うしっ! 引き上げたぞ!! オッサン頼むわ」
「承知!」ブロッサムはリッシュを担ぐと一目散に退却した。
「皆、下がって!! 万物に宿る、魔の息吹よ……盟約の名のもと束ね、連ね、盤石なる礎を築け。プロテクション・エフェクトォ――!!」
カナッペにより、速やかに魔法障壁が幾重にも張り巡らされる。
「やるわね! 一遍に防御壁を造りだすなんて至難のワザよ」
感心するバージェニルだが、悠長に構えている暇はない。
神たる大蛇が、防御壁を砕くため頭から突入してきた。
ドガッガガガ―――!!!
障壁全体が大きく震動する。
先頭の障壁が容易く崩された。
歯を食いしばりカナッペがさらに魔力を込めるが、長時間維持する事は目に見えて不可能だ。
彼女は目だけ動かし、クォリスたちに伝えた。
「このままだと、数分しか持たない……皆、今のうちに逃げて!」
「カナッペは……どうするの?」
「隙を見て、逃げるわ」
「ウソ……に、逃げるなんてできっこないよ。私も、一緒にぃ……魔法であの、かか怪獣をとめる、から!」
「そうね! 貴女一人、恰好つけさせるなんて、義賊怪盗の名折れよ! クォリスさん、こうなれば私たちの女子力によるスペシャルでパーフェクトな魔法を、あの怪獣に見せつけてやるわよ!!」
「か、怪獣って……」カナッペが若干呆れていた。
ここまで来ると神の化身も形無しだ。
バージェニルとクォリスとって巨大な生物は全て怪獣枠に収められていた。
勝算があるから挑むのではない。
二人にはとっては、いかにイケてるかが、肝だ。
ここで、ケツァルコアトルを撃退できれば、最高に輝ける!
他者にとって、信じられない話ではある。
常識を疑われても、仕方がない。
それでも、彼女たちにとっては尊いのは今、この一時なのだ……。
「来るわ! 二人とも迎撃準備――――」
「式陣、氷結の塊!!!」
「その剣は闇夜に浮かぶ、無音で忍び寄り急所を射抜く……一にして全となる餓狼、その牙の名はシェイドバイト!」
魔法障壁がすべて破砕された。
大顎を開いた蛇神が、その巨体をくねらせ床を滑走してくる。
その凶悪な口を岩石ような氷の塊で塞ぐ。
四方八方から闇属性のダガーナイフが暴雨ように降り注ぎケツァルコアトルを取り囲んだ。
天を駆ける神は、此処に顕現した。
生きる伝説を目にし誰もが静観する、したまま圧倒される。
荘厳と気品を兼ね備えた容姿、人知を超越した神の化身はあまりにも煌びやかで美しい。
存在自体が奇跡と称えられるのも納得だ。
可視化される神気が後光となり、ケツァルコアトルが他生物と一線を画すことを強調していた。
蜷局を巻いた身体を素早く、回転させ神たる力をいかんなく発揮する。
言葉すら出せない一瞬だった。
ギデオンを横を通り抜けたかぎ爪が、リッシュを捉えた。
獲物をつかむと吹き抜けの天井を上昇し、今度は折り返すように急降下する。
「ぐあああっ……クソっ! 放せぇ!」
「精算の時間ダ……スカイドライバー!!」
事態の変化に、思考が追いつかない。
一体、どうして、何が、あってリッシュが狙われたのだ?
シオン賢者を警戒するのなら、ホワイトナイトと対峙するべきなのではないか!?
様々な憶測が、頭の中飛び交っている。
ホワイトナイトとケツァルコアトルよって板挟みにされたギデオンは、どちらを優先するべきか迷ってしまった。
わずかな足踏みが取り返せない遅延をうんだ。
かぎ爪が真下に向かって押し出される。
依然、リッシュは窮地から抜け出せていない。
このままでは、彼の身体は床との摩擦で、摺り潰されてしまう。
手を伸ばさずにはいられなかった……。
例えの行為自体に意味を見いだせなくとも、人の倫理が身体を突き動かしてくる。
せめて、銃がつかえれば状況を逆転できるはず……だが――――――
現実は何時だって、無情だ! もはや、クラスメイトを救う手立てがない。
「う、うにゅにゅうぬぬぬ~ん!!」
「ぎゃっひ!?」
二本の線が宙を飛び立ち伸長する。
何の前触れもなく、現れた緑の線。
ケツァルコアトルの足首に巻き付き、即座に収縮してゆく。
引っ張る力に、神の足下が揺らいだ。
リッシュを締め付けていた爪先が紐状の何かによって打ちつけられた。
直後、降り立った箇所にドスン!! と衝撃が走る。
黒曜石の床が砕け、みるみるうちに陥没していく。
パラパラと粉塵が舞う……。
合間から躍り出る人影は、身体に巻き付いた蔦に手繰り寄せられているリッシュだった。
肉の感触がない事に気づかないケツァルコアトルではない。
逃すまじと追走姿勢を取り、すぐさま彼らの方へと舵を切る。
「ヤベェ――! こっちに来てやがる。早く! もっと速く、リッシュを引き寄せてくれ」
「にゅうにゅ―――!」
縮みゆく蔦の先には、オッドに抱えられたアルラウネの姿があった。
産れたての小さな身体。
まだ、葉でできたおくるみに包まれた身でありながらも、赤子は人を救おうと奮闘していた。
「うしっ! 引き上げたぞ!! オッサン頼むわ」
「承知!」ブロッサムはリッシュを担ぐと一目散に退却した。
「皆、下がって!! 万物に宿る、魔の息吹よ……盟約の名のもと束ね、連ね、盤石なる礎を築け。プロテクション・エフェクトォ――!!」
カナッペにより、速やかに魔法障壁が幾重にも張り巡らされる。
「やるわね! 一遍に防御壁を造りだすなんて至難のワザよ」
感心するバージェニルだが、悠長に構えている暇はない。
神たる大蛇が、防御壁を砕くため頭から突入してきた。
ドガッガガガ―――!!!
障壁全体が大きく震動する。
先頭の障壁が容易く崩された。
歯を食いしばりカナッペがさらに魔力を込めるが、長時間維持する事は目に見えて不可能だ。
彼女は目だけ動かし、クォリスたちに伝えた。
「このままだと、数分しか持たない……皆、今のうちに逃げて!」
「カナッペは……どうするの?」
「隙を見て、逃げるわ」
「ウソ……に、逃げるなんてできっこないよ。私も、一緒にぃ……魔法であの、かか怪獣をとめる、から!」
「そうね! 貴女一人、恰好つけさせるなんて、義賊怪盗の名折れよ! クォリスさん、こうなれば私たちの女子力によるスペシャルでパーフェクトな魔法を、あの怪獣に見せつけてやるわよ!!」
「か、怪獣って……」カナッペが若干呆れていた。
ここまで来ると神の化身も形無しだ。
バージェニルとクォリスとって巨大な生物は全て怪獣枠に収められていた。
勝算があるから挑むのではない。
二人にはとっては、いかにイケてるかが、肝だ。
ここで、ケツァルコアトルを撃退できれば、最高に輝ける!
他者にとって、信じられない話ではある。
常識を疑われても、仕方がない。
それでも、彼女たちにとっては尊いのは今、この一時なのだ……。
「来るわ! 二人とも迎撃準備――――」
「式陣、氷結の塊!!!」
「その剣は闇夜に浮かぶ、無音で忍び寄り急所を射抜く……一にして全となる餓狼、その牙の名はシェイドバイト!」
魔法障壁がすべて破砕された。
大顎を開いた蛇神が、その巨体をくねらせ床を滑走してくる。
その凶悪な口を岩石ような氷の塊で塞ぐ。
四方八方から闇属性のダガーナイフが暴雨ように降り注ぎケツァルコアトルを取り囲んだ。
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