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八十八話
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「取り敢えず、彼らから地図を回収しよう。チェックポイントもすぐそこだ、ついでに討伐ポイントも加算更新したほうがいいよ」
「分配の方はいかが致しますかな? やはり、等分ですかな」
「それなら、それぞれが討伐した人数でいいんじゃないかな? 分配はパーティーメンバーで行えばいいよ」
「ならば、クォリス殿は我らの方でカウントしましょう!」
「そうして頂けると助かるよ!」
リッシュ、ブロッサムの両名が語り合う。
先の襲撃で参加総数のおおよそ三分の一、八十名を鎮圧したのだから、見返りも大きい。
ギデのチームは約250ポイント獲得。
リッシュのチームは約150ポイント獲得。
現時点での総合ポイントはギデ1815、リッシュ940となる。
二人の勝負はチェックポイントの差によりギデオンの方が優勢となっていた。
ただし、このチェックポイントで更新できなければ、リッシュに逆転されてしまう。
双方とも、それは理解しているはずだ。
頃合いを見定めて、どちらかが勝負を持ち掛けてくるだろう。
「アイツら大丈夫なのか?」
フレイムランスの直撃をうけた暴漢たちにギデオンが目を向ける。
リッシュが、指先で頬をさすりながら何とも言えない表情をしている。
「いくら死なない程度に調節したとはいえ、救護班が来るまでの間は辛いだろうね。もっとも返り討ちにあう覚悟で彼らも仕掛けてきたんだ。文句のつけようもないさ」
「意外とシビアな発現をするんだな」
「君こそ、もっと激情家だと思っていたんだけど……ずいぶんと落ち着いているね」
「どうだかな。それこそ、ケースバイケースだな」
全員で地図の回収をすることになった。
地図を入手するために、気を失っている生徒たちの荷を漁ってゆくのは容易ではない。
通常ならば、探知魔法を使い地図が入っている所を見つける。
迅速、かつ的確に地図を集めてゆくギデオン。
基本、補助魔法に頼らない彼は、探知系魔法など一個も習得していない。
その不自然な動きを見て、カナッペが絶句していた。
まるで、未知なるモノを見るような目で凝視している。
魔術師がゆえの弊害。
魔法以外の不可思議な力の存在を素直に受け入れることができないのだ。
気不味さから、なるべく彼女の方を見ないように努めた。
「よく、魔法も使わず探し出せるわね?」同様の疑問を尋ねてきたのはバージェニルだった。
「鼻が利くんだ。地図の匂いで探し当てられる」
「犬ね……貴方」
若干、失礼な物言いではあるが、そう言いたくなる気持ちも分からなくもない。
そう思い彼は、あえてバージェニルの言葉を聞き流した。
地図を回収し終えると、次は古城だ。
第四チェックポイントは、この中にある。
その前に皆に一つ注意喚起しておかなればならないことがある。
暴漢どもリーダーについてだ。
結局のところ、先ほどの集団にそれらしき人物はいなかった。
そうなると、場内に潜んでいる線が濃厚になる。
「リッシュたちはファルゴという人物に心当たりあるか? コイツらを指揮している奴らしいが、どうにも見当たらない」
ギデオンの問いに三人とも互いに顔を合わせていた。
反応からすると、どうやら悪い意味でファルゴのことを知っているようだ。
凄んだ目と引きつった口元がすべてを物語っている。
「ハザードクラスのファルゴといえば、誰でも知っているほどの悪評の持ち主だな。事あるごとに、ロークラスの俺たちを馬鹿にしやがる……ムカつく野郎だ!!」
「彼の場合は自力でポイントを稼いでいるわけじゃない、自身の家柄を笠に着て手下たちにポイントを貢がせる。本人は効率的なやり方だと自負するが、ハッキリ言って何もしていないのと変わらない」
「彼みたいな人は苦手ね。ハーレムとかいって女子をはべらせているけど、見ていて不快だわ。ついてゆく女子も、彼の社会的地位や財産が目的なのは傍から見ても一目瞭然よ」
オッド、リッシュ、カナッペが順々にファルゴについて語る。
おかげで、彼がどういう人間なのか見えてた。
どうしようもないクズだ……哺乳瓶を片手にギデオンはそう確信した。
「……ってお前は、人が真剣に話している最中に何してんだよ!?」
「仕方ないだろう。時間通りに、水分を与えないとぐずる」
「魔物の赤子か……ああ、もう! そんな持ち方じゃダメだ。貸してみろ」
指摘するオッドに哺乳瓶とアルラウネが入っているカバンを渡した。
知らない人間にアルラウネが拒絶するかもしれない。
そう想像するも、オッドは慣れた手つきで赤子を抱いていた。
「へぇー。上手いな」
「まぁな。うちは兄弟が多いからよ、弟や妹の面倒は俺が見てやってたんだよ」
「よしっ、オッド。しばらく彼女のことを頼む」
「はあっ!? どういう―――」
「どうもこうも、そろそろ決着をつけないとな。だろ? リッシュ」
ギデオンの一声に彼も静かに立ち上がる。
その瞳には強い光が宿っているようにも見える。
「そうだね。どうせなら、古城の中で手合わせ願おうか、決戦の舞台に相応しいだろ?」
ギデオン対リッシュ。
両者、雌雄を決する時は刻一刻と迫っていた。
「分配の方はいかが致しますかな? やはり、等分ですかな」
「それなら、それぞれが討伐した人数でいいんじゃないかな? 分配はパーティーメンバーで行えばいいよ」
「ならば、クォリス殿は我らの方でカウントしましょう!」
「そうして頂けると助かるよ!」
リッシュ、ブロッサムの両名が語り合う。
先の襲撃で参加総数のおおよそ三分の一、八十名を鎮圧したのだから、見返りも大きい。
ギデのチームは約250ポイント獲得。
リッシュのチームは約150ポイント獲得。
現時点での総合ポイントはギデ1815、リッシュ940となる。
二人の勝負はチェックポイントの差によりギデオンの方が優勢となっていた。
ただし、このチェックポイントで更新できなければ、リッシュに逆転されてしまう。
双方とも、それは理解しているはずだ。
頃合いを見定めて、どちらかが勝負を持ち掛けてくるだろう。
「アイツら大丈夫なのか?」
フレイムランスの直撃をうけた暴漢たちにギデオンが目を向ける。
リッシュが、指先で頬をさすりながら何とも言えない表情をしている。
「いくら死なない程度に調節したとはいえ、救護班が来るまでの間は辛いだろうね。もっとも返り討ちにあう覚悟で彼らも仕掛けてきたんだ。文句のつけようもないさ」
「意外とシビアな発現をするんだな」
「君こそ、もっと激情家だと思っていたんだけど……ずいぶんと落ち着いているね」
「どうだかな。それこそ、ケースバイケースだな」
全員で地図の回収をすることになった。
地図を入手するために、気を失っている生徒たちの荷を漁ってゆくのは容易ではない。
通常ならば、探知魔法を使い地図が入っている所を見つける。
迅速、かつ的確に地図を集めてゆくギデオン。
基本、補助魔法に頼らない彼は、探知系魔法など一個も習得していない。
その不自然な動きを見て、カナッペが絶句していた。
まるで、未知なるモノを見るような目で凝視している。
魔術師がゆえの弊害。
魔法以外の不可思議な力の存在を素直に受け入れることができないのだ。
気不味さから、なるべく彼女の方を見ないように努めた。
「よく、魔法も使わず探し出せるわね?」同様の疑問を尋ねてきたのはバージェニルだった。
「鼻が利くんだ。地図の匂いで探し当てられる」
「犬ね……貴方」
若干、失礼な物言いではあるが、そう言いたくなる気持ちも分からなくもない。
そう思い彼は、あえてバージェニルの言葉を聞き流した。
地図を回収し終えると、次は古城だ。
第四チェックポイントは、この中にある。
その前に皆に一つ注意喚起しておかなればならないことがある。
暴漢どもリーダーについてだ。
結局のところ、先ほどの集団にそれらしき人物はいなかった。
そうなると、場内に潜んでいる線が濃厚になる。
「リッシュたちはファルゴという人物に心当たりあるか? コイツらを指揮している奴らしいが、どうにも見当たらない」
ギデオンの問いに三人とも互いに顔を合わせていた。
反応からすると、どうやら悪い意味でファルゴのことを知っているようだ。
凄んだ目と引きつった口元がすべてを物語っている。
「ハザードクラスのファルゴといえば、誰でも知っているほどの悪評の持ち主だな。事あるごとに、ロークラスの俺たちを馬鹿にしやがる……ムカつく野郎だ!!」
「彼の場合は自力でポイントを稼いでいるわけじゃない、自身の家柄を笠に着て手下たちにポイントを貢がせる。本人は効率的なやり方だと自負するが、ハッキリ言って何もしていないのと変わらない」
「彼みたいな人は苦手ね。ハーレムとかいって女子をはべらせているけど、見ていて不快だわ。ついてゆく女子も、彼の社会的地位や財産が目的なのは傍から見ても一目瞭然よ」
オッド、リッシュ、カナッペが順々にファルゴについて語る。
おかげで、彼がどういう人間なのか見えてた。
どうしようもないクズだ……哺乳瓶を片手にギデオンはそう確信した。
「……ってお前は、人が真剣に話している最中に何してんだよ!?」
「仕方ないだろう。時間通りに、水分を与えないとぐずる」
「魔物の赤子か……ああ、もう! そんな持ち方じゃダメだ。貸してみろ」
指摘するオッドに哺乳瓶とアルラウネが入っているカバンを渡した。
知らない人間にアルラウネが拒絶するかもしれない。
そう想像するも、オッドは慣れた手つきで赤子を抱いていた。
「へぇー。上手いな」
「まぁな。うちは兄弟が多いからよ、弟や妹の面倒は俺が見てやってたんだよ」
「よしっ、オッド。しばらく彼女のことを頼む」
「はあっ!? どういう―――」
「どうもこうも、そろそろ決着をつけないとな。だろ? リッシュ」
ギデオンの一声に彼も静かに立ち上がる。
その瞳には強い光が宿っているようにも見える。
「そうだね。どうせなら、古城の中で手合わせ願おうか、決戦の舞台に相応しいだろ?」
ギデオン対リッシュ。
両者、雌雄を決する時は刻一刻と迫っていた。
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