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八十五話
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第三チェックポイントの更新を済ませる。
ここまで進むと手のひらに転写された模様が魔法陣だとハッキリしてきた。
この魔法陣に意味はあるのだろうか?
専門家である魔術師の彼女の話によれば、獲得ポイント情報を簡易術式に置き換えたモノらしい。
ただ、それだけの為にと思われがちではある。
実際のところ、盗難防止や情報改ざんなどの対策として採用されたのがこの形式だ。
学校側もそれなりに気を配っているということが窺える。
怪盗ミスリムこと、バージェニルをどうするか?
三人は話し合った。
くわえて、自分たちが目にしてきた模擬戦の実情を簡潔に説明した。
彼らの話にバージェニルはうなづく。
ただそれだけで、自身について自主的には語ろうとはしない。
特に、どうして単独で行動していたのか?
その経緯を訊だそうとしてもバージェニルは沈黙を貫いたままだった。
このまま放置しておいた方が、無難な流れである。
が、ブロッサムたちが連れていくべきだと進言してきたので受け入れるしかない。
そうでもしなければ、この怪盗はまた無暗矢鱈と生徒を襲い続けるだろう。
三人を奇襲したという否定できない……前科がある。
ギデオンとしては彼女の処遇には興味を持ていなかった。
というより、極悪人でなければ彼は他者を裁こうとはしない。
自身もまた咎人であると理解しているからだ。
それとは別に、彼は彼女の天職に興味を持っていた。
キンバリー・カイネンの部屋で発見した手帳。
マジックロックで施錠されている禁忌の記録。
怪盗である彼女なら、専用スキルでロック解除できるかもしれない。
淡くとも期待を抱かずにはいられない。
「バージェニル。君は、マジックロックを解除したことがあるか?」
「何なの? 唐突ね……できるけど? ナイトレイドはシーフの上位職だし」
「なら、一つ頼みがある。コイツのロックを外したい」
カバンから手帳を取り出し、バージェニルに渡す。
くまなくロックの仕組みを探り、彼女は自身の力量と施錠した術者との差を見定める。
「かなり、分厚い手帳ね。解錠できなくはないけど、今は無理! 鍵解除のスキルを使用するには専用ツールが必要になるから模擬戦が終わるまでお預けね」
「分かった、後で頼む」
約束を取り付け終わると、偵察に出ていたブロッサムたちが戻ってきた。
彼女と手帳について会話するまでの少し間、二人には席を外してもらっていた。
手帳の出所を問われるのはギデオンにとってマイナスだった。
相手が誰であろうとできれば、人目を避けたい。
下手をすれば、バージェニルを巻き込んでしまう可能性は大いにある。
極力、リスクを減らしたい、それが彼の本音だった。
人数が四人ともなると、さすがに独断専行するわけにはいかない。
そう判断したギデオンはパーティー会議を開き今後の行動を決めることにした。
最初にブロッサムが声をあげた。
「一つ確認、宜しいですかな? バージェニル殿。聞けば此処以外のチェックポイントは未通過のこと! 我らはすでに三箇所を通過しております。同行することに関して問題はありませぬか?」
「いいのよ、模擬戦でポイントを稼ぎにきたわけではないから。それに貴方たちの話だと低ランク組の皆は上手く切り抜けたようだし、平原にさえ出ればその後は散り散りになるはずだから少なくとも全滅はないわね」
「ならば、次の課題は古城と断崖までどう向かうかですな。此処からだと、相当な距離を移動しなければ!」
「じ、時間も気になりま……じき、日も暮れそうです」
「魔術師殿の言うとおり、ギデ殿どういたしますか?」
「どうやら、テイマーとしての力を発揮する時がきたようだな」
一同が注目する中で、ギデオンは静かに答えた。
あたかも、本物のテイマーであるかのように誇張し語る。
「やるのですか? アレを」
「ああ。確認してもらった通りだ」
素性はともかく、移動の算段がついていたのは事実だ。
彼らは草原エリアまで移動すると早速、お目当ての群れに遭遇した。
六つ眼の象、アグカリモス。
サトラが乗っていたのを思い出し、どうにかこの象を利用できないかとギデオンは考えていた。
先ほどブロッサムたちに周辺を探らせたのは、暗に人払いをしただけではなく、象を見つけるのが目的だった。
「ほ、本当にあんな大きな生き物を、つ……捕まえるんですか?」
魔術師の少女の疑問に、蜜酒を取り出しながら彼は肯定した。
「まぁね、できない事はないさ。僕に任せてくれ」
「ちょっ! 貴方のバックパック、何やらモソモソと動いているんですけど!」
「ああ、蜜酒の匂いで起きたみたいだな」
ギデオンがカバン開けると中から、赤子のアルラウネがひょっこりと顔を出した。
「うにゅっ?」
「「か、可愛えぇぇぇぇっ――!!」」
普通は、なかなかお目にかかれない魔物の赤ちゃんに、女子陣は揃って黄色い声をあげる。
その目は、完全にアルラウネの虜になっていた。
「何ですの!? 何ですの!? こんなのズルいわぁ――!!」
「だだだだ、抱っこしてもいいですか!?」
感動と動揺が入り混じっていた……。
想定外の反響にギデオンも苦笑するしかなかった。
興奮した彼女たちをなだめるのに、しばし時間を要した。
ここまで進むと手のひらに転写された模様が魔法陣だとハッキリしてきた。
この魔法陣に意味はあるのだろうか?
専門家である魔術師の彼女の話によれば、獲得ポイント情報を簡易術式に置き換えたモノらしい。
ただ、それだけの為にと思われがちではある。
実際のところ、盗難防止や情報改ざんなどの対策として採用されたのがこの形式だ。
学校側もそれなりに気を配っているということが窺える。
怪盗ミスリムこと、バージェニルをどうするか?
三人は話し合った。
くわえて、自分たちが目にしてきた模擬戦の実情を簡潔に説明した。
彼らの話にバージェニルはうなづく。
ただそれだけで、自身について自主的には語ろうとはしない。
特に、どうして単独で行動していたのか?
その経緯を訊だそうとしてもバージェニルは沈黙を貫いたままだった。
このまま放置しておいた方が、無難な流れである。
が、ブロッサムたちが連れていくべきだと進言してきたので受け入れるしかない。
そうでもしなければ、この怪盗はまた無暗矢鱈と生徒を襲い続けるだろう。
三人を奇襲したという否定できない……前科がある。
ギデオンとしては彼女の処遇には興味を持ていなかった。
というより、極悪人でなければ彼は他者を裁こうとはしない。
自身もまた咎人であると理解しているからだ。
それとは別に、彼は彼女の天職に興味を持っていた。
キンバリー・カイネンの部屋で発見した手帳。
マジックロックで施錠されている禁忌の記録。
怪盗である彼女なら、専用スキルでロック解除できるかもしれない。
淡くとも期待を抱かずにはいられない。
「バージェニル。君は、マジックロックを解除したことがあるか?」
「何なの? 唐突ね……できるけど? ナイトレイドはシーフの上位職だし」
「なら、一つ頼みがある。コイツのロックを外したい」
カバンから手帳を取り出し、バージェニルに渡す。
くまなくロックの仕組みを探り、彼女は自身の力量と施錠した術者との差を見定める。
「かなり、分厚い手帳ね。解錠できなくはないけど、今は無理! 鍵解除のスキルを使用するには専用ツールが必要になるから模擬戦が終わるまでお預けね」
「分かった、後で頼む」
約束を取り付け終わると、偵察に出ていたブロッサムたちが戻ってきた。
彼女と手帳について会話するまでの少し間、二人には席を外してもらっていた。
手帳の出所を問われるのはギデオンにとってマイナスだった。
相手が誰であろうとできれば、人目を避けたい。
下手をすれば、バージェニルを巻き込んでしまう可能性は大いにある。
極力、リスクを減らしたい、それが彼の本音だった。
人数が四人ともなると、さすがに独断専行するわけにはいかない。
そう判断したギデオンはパーティー会議を開き今後の行動を決めることにした。
最初にブロッサムが声をあげた。
「一つ確認、宜しいですかな? バージェニル殿。聞けば此処以外のチェックポイントは未通過のこと! 我らはすでに三箇所を通過しております。同行することに関して問題はありませぬか?」
「いいのよ、模擬戦でポイントを稼ぎにきたわけではないから。それに貴方たちの話だと低ランク組の皆は上手く切り抜けたようだし、平原にさえ出ればその後は散り散りになるはずだから少なくとも全滅はないわね」
「ならば、次の課題は古城と断崖までどう向かうかですな。此処からだと、相当な距離を移動しなければ!」
「じ、時間も気になりま……じき、日も暮れそうです」
「魔術師殿の言うとおり、ギデ殿どういたしますか?」
「どうやら、テイマーとしての力を発揮する時がきたようだな」
一同が注目する中で、ギデオンは静かに答えた。
あたかも、本物のテイマーであるかのように誇張し語る。
「やるのですか? アレを」
「ああ。確認してもらった通りだ」
素性はともかく、移動の算段がついていたのは事実だ。
彼らは草原エリアまで移動すると早速、お目当ての群れに遭遇した。
六つ眼の象、アグカリモス。
サトラが乗っていたのを思い出し、どうにかこの象を利用できないかとギデオンは考えていた。
先ほどブロッサムたちに周辺を探らせたのは、暗に人払いをしただけではなく、象を見つけるのが目的だった。
「ほ、本当にあんな大きな生き物を、つ……捕まえるんですか?」
魔術師の少女の疑問に、蜜酒を取り出しながら彼は肯定した。
「まぁね、できない事はないさ。僕に任せてくれ」
「ちょっ! 貴方のバックパック、何やらモソモソと動いているんですけど!」
「ああ、蜜酒の匂いで起きたみたいだな」
ギデオンがカバン開けると中から、赤子のアルラウネがひょっこりと顔を出した。
「うにゅっ?」
「「か、可愛えぇぇぇぇっ――!!」」
普通は、なかなかお目にかかれない魔物の赤ちゃんに、女子陣は揃って黄色い声をあげる。
その目は、完全にアルラウネの虜になっていた。
「何ですの!? 何ですの!? こんなのズルいわぁ――!!」
「だだだだ、抱っこしてもいいですか!?」
感動と動揺が入り混じっていた……。
想定外の反響にギデオンも苦笑するしかなかった。
興奮した彼女たちをなだめるのに、しばし時間を要した。
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