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七十八話
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「コンパスに地図、それと携帯食料か」
事前に手渡された荷を確認する。
今回の模擬戦は、校内奥にあるダンジョンで行われる。
この名もなきダンジョンは、勇士学校が創立される以前からあったそうだ。
一見すると、岩場にある洞窟だが騙されてはいけない。
学校指定のガイドブックによれば、ダンジョンにしては珍しくオープンワールドタイプの物だ。
オープンワールド――――洞窟の中には、外と異なる別の世界が存在する。
勿論、本物ではなく創造魔法で作成された疑似空間である。
仮想空間との違いは実物であるかどうかだ。
ダンジョン内にある、土、水、空気、植物や生物などはすべて実在する物だ。
現実であるからこそ、探索距離も限られている。
別世界とはいえ、ダンジョンの総面積以上は移動できない。
それでも、充分すぎるほど広さがある。
丸一周、走破するのに数年はかかると言われている。
「相変わらず、メチャクチャな場所」
瞼を重そうに開くジト目の女子生徒がボソッと呟いた。
確か、カナッペと呼ばれていた。
魔術師用のローブをまとう、彼女を筆頭にリッシュたち他メンバーが続いていく。
「十五分後に開始だ、いいかい?」とリッシュ。
「ああ、ルールはシンプルだ。この模擬戦でより多くの得点を稼いだ方が勝者だ。君たちが勝ったら何でも従おう」
ギデオンの示す条件にオッドが眉をひそめる。
「待てよ。それだと、集団で動く俺らが圧倒的有利だろ? そんなんで勝負するつもりかよ」
自分たちに優位すぎて納得できていないようだ。
「無論だ。集団には集団の利点がある反面、欠点もある。一概にアドバンテージがあるとは言えない」
「ぬふふふ、なら! その子をモフ撫でさせてぇぇぇえ――――!!」
「ヤベェ……カナッペのヤツ暴走し出しているぞ! おい、リッシュ手伝え! お前も、ソイツを引き離せ」
スコルを一目見たカナッペの瞳が怪しく輝いていた……。
自身の能力を周囲から隠ぺいするために、今日は銃ではなく、テイムした魔獣として彼を連れてきた。
どうにも、カナッペの心を鷲掴みにしてしまったようだ。
スコルに触れようと半狂乱になっている。
そんな彼女を仲間二人で必死に取り押さえている。
「少しぐらいならいいぞ。触っても……」
「ダメだ、駄目だ駄目だ! コイツは毛並みフェチは尋常じゃない。触らせでもしたら、お前の犬お持ち帰りされるぞ!!」
「先に行ってくれ、ギデ! 僕達も少ししたらスタート地点に向かう」
異常性の塊を羽交い締めにしリッシュが懇願してきた。
それほどまで支障をきたすのかと、錯綜しながら、その場を後にした。
スタート地点は、すでに多くの生徒であふれていた。
基本、模擬戦は学年単位で行われる。
その為、今ここにはティアハザードからローまでの生徒がいる。
ロークラスの生徒たちにとっては、酷な話だった。
これだけ戦力差が離れていると、上位クラスの者にとって、彼らは点数稼ぎの的でしかない。
模擬戦、開始そうそう狙い撃ちにされる事は、確定だ。
開始を告げる笛の音と共に、各自、各員、散開してゆく。
まずは、すぐそこに拡がる湿地帯を抜けて第一チェックポイントを通過しなければならない。
「スコル、行くぞ!」
「ちょい待ち――ブッ!!」
スタート直後から、肩を掴んでくる輩に遭遇した。
有無をいわさず、ギデオンの裏拳が敵の顔面に炸裂する。
それを皮切りに、低レベルクラス狩りは始まった。
マキシマムやトップクラスがミドルとローを取り囲んでゆく。
こうなると、一点突破でしかこの場から抜け出せない。
集団から孤立すれば即座に餌食になる。
そう忠告しても彼らに、冷静な判断はできない。
いくら、殺傷性の高い武器の使用が厳禁されていても、大人数に揉みくちゃにされてしまえば、無傷じゃ済まない。
「英雄志望が、弱者狩りとはずいぶんと見下げたモノだな。皆! 僕の後ろについて来るんだ!! 今から、道を開ける」
ギデオンは、落ちていた木の枝を勢いよく踏みつけた。
「おふ!!」跳ね上がった枝が股間に直撃し敵の一人が身を屈ませた。
その男の衣服をスコルくわえ、迫り来る上級クラスの群れに向かって放り込んだ。
「ぐわああああ――――!! 何だ!? あの、馬鹿デカい犬は! マジでヤベェぞ!!」
一撃で押し寄せる大群を薙ぎ払う。
飛ばされた、男が障害物となり、後続がつかえた。
言うまでもなく、急停止などできない。
次から次へと、バランスを崩し転倒してゆく。
わずかにできた人集りの隘路を低クラスの者たちがなだれ込み、一気に押し広げてゆく。
ギデオンを先頭に襲い掛かってくる敵を殴り飛ばしていく。
「くそぉ!! アイツら、抜け出しやがった!!」
背後から恨めしい声が上がっているが、敗者の弁に耳を貸す者は誰もいない。
残った全員、追手をまくのに必死だった。
けれど、彼らとて互いに競い合う者同士だ。
それでも、第一チェックポイントまでは全員で向かう。
暗黙の了解がそこにはあった。
事前に手渡された荷を確認する。
今回の模擬戦は、校内奥にあるダンジョンで行われる。
この名もなきダンジョンは、勇士学校が創立される以前からあったそうだ。
一見すると、岩場にある洞窟だが騙されてはいけない。
学校指定のガイドブックによれば、ダンジョンにしては珍しくオープンワールドタイプの物だ。
オープンワールド――――洞窟の中には、外と異なる別の世界が存在する。
勿論、本物ではなく創造魔法で作成された疑似空間である。
仮想空間との違いは実物であるかどうかだ。
ダンジョン内にある、土、水、空気、植物や生物などはすべて実在する物だ。
現実であるからこそ、探索距離も限られている。
別世界とはいえ、ダンジョンの総面積以上は移動できない。
それでも、充分すぎるほど広さがある。
丸一周、走破するのに数年はかかると言われている。
「相変わらず、メチャクチャな場所」
瞼を重そうに開くジト目の女子生徒がボソッと呟いた。
確か、カナッペと呼ばれていた。
魔術師用のローブをまとう、彼女を筆頭にリッシュたち他メンバーが続いていく。
「十五分後に開始だ、いいかい?」とリッシュ。
「ああ、ルールはシンプルだ。この模擬戦でより多くの得点を稼いだ方が勝者だ。君たちが勝ったら何でも従おう」
ギデオンの示す条件にオッドが眉をひそめる。
「待てよ。それだと、集団で動く俺らが圧倒的有利だろ? そんなんで勝負するつもりかよ」
自分たちに優位すぎて納得できていないようだ。
「無論だ。集団には集団の利点がある反面、欠点もある。一概にアドバンテージがあるとは言えない」
「ぬふふふ、なら! その子をモフ撫でさせてぇぇぇえ――――!!」
「ヤベェ……カナッペのヤツ暴走し出しているぞ! おい、リッシュ手伝え! お前も、ソイツを引き離せ」
スコルを一目見たカナッペの瞳が怪しく輝いていた……。
自身の能力を周囲から隠ぺいするために、今日は銃ではなく、テイムした魔獣として彼を連れてきた。
どうにも、カナッペの心を鷲掴みにしてしまったようだ。
スコルに触れようと半狂乱になっている。
そんな彼女を仲間二人で必死に取り押さえている。
「少しぐらいならいいぞ。触っても……」
「ダメだ、駄目だ駄目だ! コイツは毛並みフェチは尋常じゃない。触らせでもしたら、お前の犬お持ち帰りされるぞ!!」
「先に行ってくれ、ギデ! 僕達も少ししたらスタート地点に向かう」
異常性の塊を羽交い締めにしリッシュが懇願してきた。
それほどまで支障をきたすのかと、錯綜しながら、その場を後にした。
スタート地点は、すでに多くの生徒であふれていた。
基本、模擬戦は学年単位で行われる。
その為、今ここにはティアハザードからローまでの生徒がいる。
ロークラスの生徒たちにとっては、酷な話だった。
これだけ戦力差が離れていると、上位クラスの者にとって、彼らは点数稼ぎの的でしかない。
模擬戦、開始そうそう狙い撃ちにされる事は、確定だ。
開始を告げる笛の音と共に、各自、各員、散開してゆく。
まずは、すぐそこに拡がる湿地帯を抜けて第一チェックポイントを通過しなければならない。
「スコル、行くぞ!」
「ちょい待ち――ブッ!!」
スタート直後から、肩を掴んでくる輩に遭遇した。
有無をいわさず、ギデオンの裏拳が敵の顔面に炸裂する。
それを皮切りに、低レベルクラス狩りは始まった。
マキシマムやトップクラスがミドルとローを取り囲んでゆく。
こうなると、一点突破でしかこの場から抜け出せない。
集団から孤立すれば即座に餌食になる。
そう忠告しても彼らに、冷静な判断はできない。
いくら、殺傷性の高い武器の使用が厳禁されていても、大人数に揉みくちゃにされてしまえば、無傷じゃ済まない。
「英雄志望が、弱者狩りとはずいぶんと見下げたモノだな。皆! 僕の後ろについて来るんだ!! 今から、道を開ける」
ギデオンは、落ちていた木の枝を勢いよく踏みつけた。
「おふ!!」跳ね上がった枝が股間に直撃し敵の一人が身を屈ませた。
その男の衣服をスコルくわえ、迫り来る上級クラスの群れに向かって放り込んだ。
「ぐわああああ――――!! 何だ!? あの、馬鹿デカい犬は! マジでヤベェぞ!!」
一撃で押し寄せる大群を薙ぎ払う。
飛ばされた、男が障害物となり、後続がつかえた。
言うまでもなく、急停止などできない。
次から次へと、バランスを崩し転倒してゆく。
わずかにできた人集りの隘路を低クラスの者たちがなだれ込み、一気に押し広げてゆく。
ギデオンを先頭に襲い掛かってくる敵を殴り飛ばしていく。
「くそぉ!! アイツら、抜け出しやがった!!」
背後から恨めしい声が上がっているが、敗者の弁に耳を貸す者は誰もいない。
残った全員、追手をまくのに必死だった。
けれど、彼らとて互いに競い合う者同士だ。
それでも、第一チェックポイントまでは全員で向かう。
暗黙の了解がそこにはあった。
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