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五十四話
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親しくなった者を失い、打ちひしがれるギデオン。
それでも、まだすべてが解決したわけではない。
その事を告げるように、彼の意思に関係なくステータス画面が開示される。
「よう、つながったようだな。どうやら、まだ無事みたいだな……何かあったのか? 酷い顔をしているぞ」
「斜華か。 訊きたいのはこっちの方だ。当然、空から隕石が降ってきたが、どう考えても不自然すぎる。アンタなら、原因を知っているよな!?」
「まぁな。俺の方もそのとこで連絡したんだ。恐らく、今し方の隕石は神の裁きによるものだ」
「神の裁き? アンタとは別の神が、この世界に介入してきたとでもいうのか?」
「そう! それだ。どの神なのか? 特定できんが、俺たちの動きに合わせて動き出したようだ」
「ソイツの目的も、ミルティナスなのか?」
「かもしれんし、そうでないかもしれん。とにかく、落ち着いてきけ。神の裁きはまだ終わっていない! 次はさらにデカいのが来るぞ!!」
隕石が再び、落下してくる。
驚愕の事実を耳にしたギデオンはローゼリアと眼を合わせた。
言葉はないが、固まった表情から彼女が抱く恐怖が伝わってくる。
「これ以上はジャングルを傷つけさせない。エルフたちは僕が守る」
ローゼリアの不安を払拭しようと、ギデオンは画面越しの歩帝斗に断言した。
「助力できなくてすまん。ミルティナスに変わって礼を言う。いいか! ヤバイと感じたらで出来るだけ遠くへ逃げるんだ!」
「逃げる意味はない。さきほどの隕石は小さな破片ていどだったが、それだけで森の三分の一は駄目にされてしまった。それよりも大きい奴がくるのなら、なおのこと何処に避難しても一緒だ」
「それもそうだな。聖域のことについては後日、話そうぜ。それじゃ、頼んだぞ! 冒険者ギデ」
「ああ」歩帝斗と会話をすませた直後、彼の上着の袖口をローゼリアが引っ張ってきた。
何か、話しておきたい事があるようだ。
伏し目がちになっている彼女は、どこか落ちつかない様子だ。
「聖域で思い出した。ギデ、さっきの人間、宝物殿から宝珠を盗んだ。盗むの誰かに頼まれたって言っていた!」
「宝珠を! となると、やはり敵も女神を捜している線が濃厚だ。奴ら略奪者の依頼主は、フリードマンしか考えられない。隕石も奴のしわざなのか!?」
「考えている時間はない。まずは、隕石をどうにかしないと」
「僕に任せてくれ。ローゼリアこの辺りに丘になっている場所はないか?」
「ある。こっち」
ギデオンとローゼリアは灰降る森を全力疾走で移動する。
時間はそう残されていない。
次の隕石襲来まで、一刻を争う。
ローゼリアが岩肌を飛び乗りながら、上へ上へと昇っていく。
その後をギデオンが追う、最中――――――
第二の襲来を告げる、カウントダウンが始まった。
天より響く
……破壊の
轟 …………音
エンデリデ島、全体が空から振動を浴びていた。
あってはならない現象、起きてはならない不足の事態。
間違いなく、次の隕石は島全部を大海に沈める規模。
終末の裁きだ。
ほんの数時間で、平穏な暮らしを壊され、家族や同胞の命を奪われ、挙句、恩恵の緑を失った彼らエルフ。
それでもまだ足りず、住む場所までも消そうとする。
理不尽な運命。
失意のどん底に彼らは落とされた。
港街で暮らす人々は、尋常ではない空模様と鳴り止まない天からの悲鳴に耳を塞ぎならが、止むのをジッと待っている。
どれだけやりきれない想いがあるのか分からない。
けれど、ここで終わるのは誰も納得できない。
黒い雲を押し飛ばし巨岩サイズの隕石がその絶大な姿を出現させた。
その真下では、丘陵まで昇ってきた冒険者が手にする猟銃を構え出す。
「スコル、全力でいくぞ! 魔銃進化発動――――!!」
ギデオンの叫び声が辺りに反響する。
その中で真紅の輝く銃身から黒煙が飛び出し燃え広がってゆく。
その熱により銃が溶け落ち、炎と混ざりあう。
ギデオンの腕に絡みつくと黒炎は巨大な砲身へとカタチを形成してゆく。
「セカンドモード……魔装砲バハムート」
蜜酒の力により得た、スコルの新なるスキル自己進化。
これにより、銃だった魔獣が、銃砲となった。
変わったのは見た目だけではない。
どちらかと言えば、武器としての性能が飛躍的に向上している。
並みのハンターなら取り扱うことすら困難な魔装砲バハムート。
少しでも、相性が悪ければ黒炎が使用者をたちどころに焼き尽くす。
ギデオンは魔銃ガルムをものともせずに扱える。
この世界で唯一のハンターだった。
「失せろ、厄災め!! マイクロブラックホール」
圧縮された、暗黒エネルギーが砲身の中で加速し小さな球となる。
迫り来る巨大の隕石を退ける為の、特異点が超高速で解き放たれる。
遥か、天空で隕石と接触すると、球体が弾け伸びてゆく。
ほどなくして小さな渦を作る。
渦は、炎をまとい呻りながら押し寄せてくる隕石を圧縮させ飲み込もうとしていた。
圧倒的な物量をまえに、小規模の渦では対処できない――――
そう見えたのは、ほんの一、二秒手……。
暗黒の渦が回転し、隕石を削り出すとすぐに巨岩がひび割れ粉砕してゆく。
それは奇跡に等しかった。
砕かれた隕石は塵一つ残さず、ブラックホールの中に吸い込まれてゆく。
吸い込むモノが無くなるのと同時に、暗黒の穴は再度、収縮し徐々に消滅してゆく。
ローゼリアが歓喜の声を上げてギデオンに抱きつく。
その後ろには、雲一つもない蒼穹が広がっていた。
それでも、まだすべてが解決したわけではない。
その事を告げるように、彼の意思に関係なくステータス画面が開示される。
「よう、つながったようだな。どうやら、まだ無事みたいだな……何かあったのか? 酷い顔をしているぞ」
「斜華か。 訊きたいのはこっちの方だ。当然、空から隕石が降ってきたが、どう考えても不自然すぎる。アンタなら、原因を知っているよな!?」
「まぁな。俺の方もそのとこで連絡したんだ。恐らく、今し方の隕石は神の裁きによるものだ」
「神の裁き? アンタとは別の神が、この世界に介入してきたとでもいうのか?」
「そう! それだ。どの神なのか? 特定できんが、俺たちの動きに合わせて動き出したようだ」
「ソイツの目的も、ミルティナスなのか?」
「かもしれんし、そうでないかもしれん。とにかく、落ち着いてきけ。神の裁きはまだ終わっていない! 次はさらにデカいのが来るぞ!!」
隕石が再び、落下してくる。
驚愕の事実を耳にしたギデオンはローゼリアと眼を合わせた。
言葉はないが、固まった表情から彼女が抱く恐怖が伝わってくる。
「これ以上はジャングルを傷つけさせない。エルフたちは僕が守る」
ローゼリアの不安を払拭しようと、ギデオンは画面越しの歩帝斗に断言した。
「助力できなくてすまん。ミルティナスに変わって礼を言う。いいか! ヤバイと感じたらで出来るだけ遠くへ逃げるんだ!」
「逃げる意味はない。さきほどの隕石は小さな破片ていどだったが、それだけで森の三分の一は駄目にされてしまった。それよりも大きい奴がくるのなら、なおのこと何処に避難しても一緒だ」
「それもそうだな。聖域のことについては後日、話そうぜ。それじゃ、頼んだぞ! 冒険者ギデ」
「ああ」歩帝斗と会話をすませた直後、彼の上着の袖口をローゼリアが引っ張ってきた。
何か、話しておきたい事があるようだ。
伏し目がちになっている彼女は、どこか落ちつかない様子だ。
「聖域で思い出した。ギデ、さっきの人間、宝物殿から宝珠を盗んだ。盗むの誰かに頼まれたって言っていた!」
「宝珠を! となると、やはり敵も女神を捜している線が濃厚だ。奴ら略奪者の依頼主は、フリードマンしか考えられない。隕石も奴のしわざなのか!?」
「考えている時間はない。まずは、隕石をどうにかしないと」
「僕に任せてくれ。ローゼリアこの辺りに丘になっている場所はないか?」
「ある。こっち」
ギデオンとローゼリアは灰降る森を全力疾走で移動する。
時間はそう残されていない。
次の隕石襲来まで、一刻を争う。
ローゼリアが岩肌を飛び乗りながら、上へ上へと昇っていく。
その後をギデオンが追う、最中――――――
第二の襲来を告げる、カウントダウンが始まった。
天より響く
……破壊の
轟 …………音
エンデリデ島、全体が空から振動を浴びていた。
あってはならない現象、起きてはならない不足の事態。
間違いなく、次の隕石は島全部を大海に沈める規模。
終末の裁きだ。
ほんの数時間で、平穏な暮らしを壊され、家族や同胞の命を奪われ、挙句、恩恵の緑を失った彼らエルフ。
それでもまだ足りず、住む場所までも消そうとする。
理不尽な運命。
失意のどん底に彼らは落とされた。
港街で暮らす人々は、尋常ではない空模様と鳴り止まない天からの悲鳴に耳を塞ぎならが、止むのをジッと待っている。
どれだけやりきれない想いがあるのか分からない。
けれど、ここで終わるのは誰も納得できない。
黒い雲を押し飛ばし巨岩サイズの隕石がその絶大な姿を出現させた。
その真下では、丘陵まで昇ってきた冒険者が手にする猟銃を構え出す。
「スコル、全力でいくぞ! 魔銃進化発動――――!!」
ギデオンの叫び声が辺りに反響する。
その中で真紅の輝く銃身から黒煙が飛び出し燃え広がってゆく。
その熱により銃が溶け落ち、炎と混ざりあう。
ギデオンの腕に絡みつくと黒炎は巨大な砲身へとカタチを形成してゆく。
「セカンドモード……魔装砲バハムート」
蜜酒の力により得た、スコルの新なるスキル自己進化。
これにより、銃だった魔獣が、銃砲となった。
変わったのは見た目だけではない。
どちらかと言えば、武器としての性能が飛躍的に向上している。
並みのハンターなら取り扱うことすら困難な魔装砲バハムート。
少しでも、相性が悪ければ黒炎が使用者をたちどころに焼き尽くす。
ギデオンは魔銃ガルムをものともせずに扱える。
この世界で唯一のハンターだった。
「失せろ、厄災め!! マイクロブラックホール」
圧縮された、暗黒エネルギーが砲身の中で加速し小さな球となる。
迫り来る巨大の隕石を退ける為の、特異点が超高速で解き放たれる。
遥か、天空で隕石と接触すると、球体が弾け伸びてゆく。
ほどなくして小さな渦を作る。
渦は、炎をまとい呻りながら押し寄せてくる隕石を圧縮させ飲み込もうとしていた。
圧倒的な物量をまえに、小規模の渦では対処できない――――
そう見えたのは、ほんの一、二秒手……。
暗黒の渦が回転し、隕石を削り出すとすぐに巨岩がひび割れ粉砕してゆく。
それは奇跡に等しかった。
砕かれた隕石は塵一つ残さず、ブラックホールの中に吸い込まれてゆく。
吸い込むモノが無くなるのと同時に、暗黒の穴は再度、収縮し徐々に消滅してゆく。
ローゼリアが歓喜の声を上げてギデオンに抱きつく。
その後ろには、雲一つもない蒼穹が広がっていた。
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