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三十五話
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「走れ走れ走れ――!! 労働は喜びだ。したたる汗は努力の勲章だぁあ!」
ジャングルに奇妙なかけ声がひびく。
いつも通うこの道も三人だとこうも違和感があるものなのか?
ギデオンはひたいの汗をぬぐう。
この汗はかきたくてかいているわけではない。
すべてはカナタ・弁慶。
この男のせいだ。
新人に対して先輩風をふかし後方からあおってくる。
悪路になれているギデオンは平気だが、メリッサには相当キツイ。
肩をはげしく上下させながら、青ざめた顔をしている。
試験の目的は、金鉱石の発掘。
しかし、ただ見つけ出せばいいわけではない。
日没までの制限時間内で、高純度のモノをとってこなければならない。
ジャングルの魔物が出てこない。
その事に気づいたのはやはり、弁慶。
豚のように鼻をフガフガ鳴らしている。
嗅いで、さぐっているつもりかもしれないがフリでしかない。
超嗅覚を持つギデオンは、辺りに魔物がいない事をすでに把握済みだ。
連日、あれだけ虫相手に発砲しまくったんだ、魔物のほうも彼の気配を覚えてしまったのだろう。
ぜったいに近寄ってこない。
ともあれ、魔物という障害が除去された今、残る課題は罠と結界だ。
「もう…も……無理ぃ~。そろそろ、休憩しませんか?」
早くもメリッサがダウン寸前になっている。
慌てて、ギデオンが肩をかすと彼女はニコッと明るく微笑む。
「ありがとう、ギデさん。すみません、走るの苦手で~!」
「構わないさ。君に無理させて、肝心な時に動けなくなったら僕も困る。マッパーとしての活躍期待しているよ」
「うん、任せてね。マッピングは得意だから! でも、ギデさんのベースアビリティも便利だよね。他の人のスキルがわかる能力とかスゴイですよ!」
「おい! 貴様ら。何をイチャイチャコラコラしておるんか! 小生は先に進めと言ったはずですぞ。話を聞いとるのかぁ――!」
二人の距離の近さに、弁慶が歯ぎしりする。
特に何もしていないギデオンたちにとっては、そんなに早く試験を終わらせたいのか?
という疑問しか出てこない。
「メリッサ、大丈夫か?」
「うん、ダイジョウブ。平気だよ」
「もうじき、アルラウネの大木につく。彼は、そこで寝ていてもらおう」
ほどなくして、アルラウネの大木が見えてきた。
体力だけは、ありあまっているのか弁慶につかれている様子はなさそうだ。
アルラウネと遭遇するなり、臨戦態勢をとる。
「むむっ! 何奴――さては貴様、妖怪変化だな~小生こそ、わっ――――」
「まったく、うるさい男ですの~。レディを妖怪、呼ばわりするなんて失礼にもほどがありますわ。まあ、ギデ様! わざわざ、会いにきてくださるなんて、妾カンゲキぃ~ですのよ」
「この前のゴロツキは、すまなかったな。今日は、若い奴をつれてきたけど、どうだ?」
「どうだと……言われましてもねぇ~。ブヒヒモントは魔物じゃありませぬか。妾は、人外とは種付けいたしませんの!」
「いや、君が地中に沈めようとしているのは人だ……一応。彼は、ギルドの人間だから見逃してやって欲しい」
ギデオンの頼みにアルラウネは弱かった。
ヒヒの魔物と間違えるほどの見るにたえない醜悪な男。
自分にや刃をむけるかもしれない冒険者を生かしておくのは、彼女のポリシーに反する。
それでも、ギデオンにご執心な彼女はついついしたがってしまう。
一つだけ気になることを除いては……。
「ギデ様? 一つよろしいでしょうか?」
「どうしたんだ?」
「さきほどから、貴方様の背中にいる女は何者なのですか!?」
「は、初めましてスリィツゥギルドの受付けをしていますメリッサと申します」
「彼女には、今回の冒険者試験に同行してもらっているんだ。そこの彼と共にね」
「そうでしたの~。妾は、てっきりそのメスがギデ様に種づけをせがんでいるのかと――」
「なっななな! 何を言っているんですかぁあああ!? 貴女、本当に魔物なんですか? こんな下品なのは見た事ないわ」
顔を赤面されるメリッサにアルラウネが疑惑の眼差しをむける。
一人の男をかけて女たちの合間に熱い火花が飛びかっている。
むろん、ギデオンがそれをしるわけもない。
「ほわっ!」
飛び起きた弁慶が、薙刀でアルラウネを一刀両断しようとした。
振り下ろされる刃に合わせ、ギデオンが近距離から瞬時に発砲する。
刃と柄の合間を直撃した魔力の弾丸が、薙刀を真っ二つに破壊した。
「ねわあああ!! ナギ子ぉおぉおおおお!!」
吹き飛ばされた自分の獲物を見て、弁慶が号泣する。
一瞬の出来事に、ギデオン以外の二人は呆然していた。
「な、何をすんだぁああ。小生のナギ子をよくもよくもよくもぉぉおお」
よほど、愛着がわいていたのか? 弁慶は薙刀に女性の名前をつけていた。
「そこまで泣くのならなぜ、武器として使ったんだ?」
「黙れ! 貴様こそ、魔物にかたいれするなど言語道断。冒険者、失格だぁああ!」
「ナギ子のカタキだ! 行けぇー千脇!!」
弁慶は腰に差していた脇差を抜き、ギデオンに斬りかかった。
直情的なのか?
頭に血がのぼりすぎた弁慶は実に隙だらけだ。
「あいたぁあああ!」弁慶がたまらず表情を歪める。
振り上げられた魔銃のグリップ部分が弁慶の利き手を突き上げる。
パァンと弾かれ、宙を舞う脇差がどこか寂しげに映ってみえる。
千脇はジャングルの彼方へと旅立っていった。
ジャングルに奇妙なかけ声がひびく。
いつも通うこの道も三人だとこうも違和感があるものなのか?
ギデオンはひたいの汗をぬぐう。
この汗はかきたくてかいているわけではない。
すべてはカナタ・弁慶。
この男のせいだ。
新人に対して先輩風をふかし後方からあおってくる。
悪路になれているギデオンは平気だが、メリッサには相当キツイ。
肩をはげしく上下させながら、青ざめた顔をしている。
試験の目的は、金鉱石の発掘。
しかし、ただ見つけ出せばいいわけではない。
日没までの制限時間内で、高純度のモノをとってこなければならない。
ジャングルの魔物が出てこない。
その事に気づいたのはやはり、弁慶。
豚のように鼻をフガフガ鳴らしている。
嗅いで、さぐっているつもりかもしれないがフリでしかない。
超嗅覚を持つギデオンは、辺りに魔物がいない事をすでに把握済みだ。
連日、あれだけ虫相手に発砲しまくったんだ、魔物のほうも彼の気配を覚えてしまったのだろう。
ぜったいに近寄ってこない。
ともあれ、魔物という障害が除去された今、残る課題は罠と結界だ。
「もう…も……無理ぃ~。そろそろ、休憩しませんか?」
早くもメリッサがダウン寸前になっている。
慌てて、ギデオンが肩をかすと彼女はニコッと明るく微笑む。
「ありがとう、ギデさん。すみません、走るの苦手で~!」
「構わないさ。君に無理させて、肝心な時に動けなくなったら僕も困る。マッパーとしての活躍期待しているよ」
「うん、任せてね。マッピングは得意だから! でも、ギデさんのベースアビリティも便利だよね。他の人のスキルがわかる能力とかスゴイですよ!」
「おい! 貴様ら。何をイチャイチャコラコラしておるんか! 小生は先に進めと言ったはずですぞ。話を聞いとるのかぁ――!」
二人の距離の近さに、弁慶が歯ぎしりする。
特に何もしていないギデオンたちにとっては、そんなに早く試験を終わらせたいのか?
という疑問しか出てこない。
「メリッサ、大丈夫か?」
「うん、ダイジョウブ。平気だよ」
「もうじき、アルラウネの大木につく。彼は、そこで寝ていてもらおう」
ほどなくして、アルラウネの大木が見えてきた。
体力だけは、ありあまっているのか弁慶につかれている様子はなさそうだ。
アルラウネと遭遇するなり、臨戦態勢をとる。
「むむっ! 何奴――さては貴様、妖怪変化だな~小生こそ、わっ――――」
「まったく、うるさい男ですの~。レディを妖怪、呼ばわりするなんて失礼にもほどがありますわ。まあ、ギデ様! わざわざ、会いにきてくださるなんて、妾カンゲキぃ~ですのよ」
「この前のゴロツキは、すまなかったな。今日は、若い奴をつれてきたけど、どうだ?」
「どうだと……言われましてもねぇ~。ブヒヒモントは魔物じゃありませぬか。妾は、人外とは種付けいたしませんの!」
「いや、君が地中に沈めようとしているのは人だ……一応。彼は、ギルドの人間だから見逃してやって欲しい」
ギデオンの頼みにアルラウネは弱かった。
ヒヒの魔物と間違えるほどの見るにたえない醜悪な男。
自分にや刃をむけるかもしれない冒険者を生かしておくのは、彼女のポリシーに反する。
それでも、ギデオンにご執心な彼女はついついしたがってしまう。
一つだけ気になることを除いては……。
「ギデ様? 一つよろしいでしょうか?」
「どうしたんだ?」
「さきほどから、貴方様の背中にいる女は何者なのですか!?」
「は、初めましてスリィツゥギルドの受付けをしていますメリッサと申します」
「彼女には、今回の冒険者試験に同行してもらっているんだ。そこの彼と共にね」
「そうでしたの~。妾は、てっきりそのメスがギデ様に種づけをせがんでいるのかと――」
「なっななな! 何を言っているんですかぁあああ!? 貴女、本当に魔物なんですか? こんな下品なのは見た事ないわ」
顔を赤面されるメリッサにアルラウネが疑惑の眼差しをむける。
一人の男をかけて女たちの合間に熱い火花が飛びかっている。
むろん、ギデオンがそれをしるわけもない。
「ほわっ!」
飛び起きた弁慶が、薙刀でアルラウネを一刀両断しようとした。
振り下ろされる刃に合わせ、ギデオンが近距離から瞬時に発砲する。
刃と柄の合間を直撃した魔力の弾丸が、薙刀を真っ二つに破壊した。
「ねわあああ!! ナギ子ぉおぉおおおお!!」
吹き飛ばされた自分の獲物を見て、弁慶が号泣する。
一瞬の出来事に、ギデオン以外の二人は呆然していた。
「な、何をすんだぁああ。小生のナギ子をよくもよくもよくもぉぉおお」
よほど、愛着がわいていたのか? 弁慶は薙刀に女性の名前をつけていた。
「そこまで泣くのならなぜ、武器として使ったんだ?」
「黙れ! 貴様こそ、魔物にかたいれするなど言語道断。冒険者、失格だぁああ!」
「ナギ子のカタキだ! 行けぇー千脇!!」
弁慶は腰に差していた脇差を抜き、ギデオンに斬りかかった。
直情的なのか?
頭に血がのぼりすぎた弁慶は実に隙だらけだ。
「あいたぁあああ!」弁慶がたまらず表情を歪める。
振り上げられた魔銃のグリップ部分が弁慶の利き手を突き上げる。
パァンと弾かれ、宙を舞う脇差がどこか寂しげに映ってみえる。
千脇はジャングルの彼方へと旅立っていった。
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